レジスターは叫べない！

■リプレイ

●都内某所
「ずっと嫌な予感がしていましたが、まさか本当に存在しているとは……」
　ミント・ハーバルガーデン（眠れる薔薇姫・e05471）は仲間達と共に、ダモクレスの存在が確認されたスーパーの倉庫にやって来た。
　その場所は既に廃墟と化しており、沢山の蜘蛛達によって、パーティが行われているのではないかと錯覚するほど、蜘蛛の巣まみれになっていた。
「しかし、昨日の今日で……というノリで、この手の事件が頻発しているな。……事前に防ぎようがねえからマジで厄介だぜ」
　相馬・泰地（マッスル拳士・e00550）が蜘蛛の巣を払いながら、倉庫の入り口にやって来た。
　それだけ残留思念が溜まりやすい状況になっているのかも知れないが、ここまで頻発していると異常性すら感じてしまう。
「……レジスターか。お金の計算が即座に出来て便利ではあるのだけど、消費税が増える度に対応させないといけないのは面倒だよね」
　そんな中、四季城・司（怜悧なる微笑み・e85764）が、警戒した様子で倉庫に足を踏み入れた。
　倉庫はしばらく誰も出入りしていなかったため、妙にホコリっぽく、息をしただけでも咳き込んでしまうほどだった。
「まあ、レジスターは、レジを打つしか使い道が無いから、遅かれ早かれダモクレスになる可能性が高かったかも……」
　静城・依鈴（雪の精霊術士・e85384）が、深い溜息を漏らした。
　どうやら、問題のレジスターは、かなり旧型だったため、店側からすれば、ちょうど良いタイミングだったようである。
　だからと言って、何か不都合があった訳では無いため、レジスター側からすれば、不満以外のナニモノでもなかった。
「レジで会計する為には便利な物なんだろうけど、年々変化する消費税に対応できていなかったのは致命的ね」
　天月・悠姫（導きの月夜・e67360）が、何処か遠くを見つめた。
　だが、スーパー自体も時代の流れにはついていけず、数年ほど前に廃業してしまったようである。
　そのため、このような結果になる事は、運命づけられていたのかも知れない。
「普段、使う機会が無いので何とも言えませんが……。コンビニのバイトをしたら、扱う機会もあるでしょうか？」
　兎波・紅葉（まったり紅葉・e85566）が、不思議そうに首を傾げた。
　そのためだけにコンビニで働くつもりはないものの、レジスターからすれば納得の行かなかった最後であった事は間違いない。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　次の瞬間、ダモクレスと化したレジスターが、まわりにあるモノを弾き飛ばし、ケルベロス達の前に現れた。
　ダモクレスは、まわりにあったモノを取り込み、ロボットのような姿になっていた。
「どうやら、話している暇は無さそうね」
　その事に気づいたリサ・フローディア（メリュジーヌのブラックウィザード・e86488）が、警戒した様子で身構えた。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　それと同時にダモクレスがガシャコンと音を響かせ、レジスターの中に残っていた硬貨をマシンガンの如く解き放った。
　それは一円玉から五百円玉まで、大小様々。
　そのため、硬貨によって速度も、破壊力も異なっていた。
「いくら酷い目に遭っていたからって、八つ当たりはダメでしょう！」
　その攻撃から逃げるようにして、六星・蛍火（武装研究者・e36015）が山積みになっていたダンボールの後ろに隠れた。
　しかし、ダモクレスから放たれた硬貨はダンボールを貫き、その先にあった壁にめり込んだ。
「雷の属性よ、仲間を護る盾を形成しなさい！」
　すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、雷属性の盾を形成し、ダモクレスの放った硬貨を防いだ。
　その拍子に、力を失った硬貨が床に落ち、チャリンチャリンと音を立てながら、散らばるようにして床に転がった。
「……と言うか、この攻撃……地味に痛いね」
　司がダモクレスの攻撃を警戒しながら、気力溜めでオーラを溜めた。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァ！」
　その事に腹を立てたダモクレスが、すべての殺気を硬貨に込め、ケルベロス達を狙って再び発射した。
「そう何度も同じ手を喰うと思っているのか。だったら、甘いな、甘すぎる！」
　即座に、泰地が筋肉ガード（キンニクガード）を発動させ、筋力流の構えのひとつで気合いを入れ、筋肉を誇示するポージングを取って、自己回復と共に己の肉体の硬度を引き上げた。
　そのおかげでダモクレスが放った硬貨を喰らっても、泰地はビクともしなかった。
「その硬貨と、吹雪の様に舞う鈴蘭……どちらが勝つか、ここで勝負してみましょうか」
　その間に、依鈴が鈴蘭の吹雪（スズランノフブキ）を発動させ、まるで吹雪の如く勢いで鈴蘭の花弁を飛ばし、大量の硬貨を弾き返した。
　その拍子に大量の硬貨が次々と床に落ち、鈴蘭の香りが辺りを包んだ。
「とりあえず、動きを封じた方が良さそうですね」
　続いて、紅葉が尋常ならざる美貌の放ち、その呪いでダモクレスの動きを封じ込めたようとした。
「レ、レ、レ・ジ・ス・タァ……」
　だが、ダモクレスはケモノのような機械音を響かせ、必死になって抵抗をした。
「ならば、これで何もかも凍結させてあげますよ」
　ミントがイガルカストライクで杭（パイル）に、雪さえも退く凍気を纏わせ、ダモクレスに突き刺した。
　その部分がみるみるうちに凍りつき、ダモクレスの動きが鈍くなった。
「どうやら、まだ動けるようですね。ならば、この霊弾を喰らいなさい！」
　一方、悠姫はダモクレスの死角に回り込み、プラズムキャノンを撃ち込み、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「今度は、こちらの番です！」
　その隙をつくようにして、ミントがダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「さぁ、行くわよ、月影。共に戦いましょう」
　それに合わせて、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛け、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
　その指示に従って月影が蛍火を援護するため、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　それと同時にダモクレスがケモノのような咆哮を響かせ、怒りの鉄拳パンチを繰り出した。
「どんなに強力な攻撃であっても、凍らせてしまえば問題ないね」
　即座に、司がダモクレスの攻撃を避け、螺旋氷縛波で氷結の螺旋を放って、左腕を凍りつかせた。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　それでも、ダモクレスの殺意が消える事はなく、右腕が風を切ってケルベロス達に迫ってきた。
「……まずは左腕から破壊してしまいましょうか」
　そんな中、紅葉がダモクレスの死角から迫り、月光斬を繰り出し、凍りついたままになっていた左腕を木っ端微塵に破壊した。
「これで左側の守りが手薄になったわね」
　その隙をつくようにして、依鈴がスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスのバランスを崩した。
「……この業火で焼き尽くしてあげましょう」
　それに合わせて、ミントがグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァァァァ！」
　その苦しみから逃れるようにして、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、あちこちにぶつかった。
「……まだやる気か。なら、遠慮をする必要もないな」
　それを迎え撃つようにして、泰地がファナティックレインボウを仕掛け、天空高く飛び上がって、美しい虹をまとう急降下蹴りを、ダモクレスに浴びせた。
「その硬い頭を、かち割ってあげるわ」
　そこに追い打ちをかけるようにして、悠姫が高々と飛び上がって、スカルブレイカーを仕掛け、ダモクレスの頭を叩き割った。
「レ、レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァ……」
　その一撃を喰らったダモクレスが、悲鳴にも似た機械音を響かせ、眩暈にも似た感覚に襲われて頭をフラつかせた。
「オーラの弾丸よ、敵に喰らい付きなさい！」
　続いて、蛍火が気咬弾でオーラの弾丸を放ち、ダモクレスに食らいつかせた。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァァ！」
　次の瞬間、ダモクレスが唸り声にも似た機械音を響かせ、レジスター型のミサイルを発射した。
　それが天井や壁にブチ当たり、次々と爆発しながら、大量の破片を撒き散らした。
「みんな、こっちに来て！　すぐに治療するわ」
　すぐさま、リサがゴーストヒールを発動させ、大地に眠る霊達の力を借りて、仲間達の傷を癒した。
「レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァ！」
　その事に気づいたダモクレスが、再びミサイルを放とうとした。
「もうミサイルを撃たせる訳にはいかないわ！」
　即座に、悠姫がガジェットガンを発動させ、魔導石化弾を撃ち込んだ。
　その影響でダモクレスの身体が石化し、ミサイルの発射口が完全に塞がった。
「……この舞を見ても、立っていられるかな？」
　それに合わせて、司が華麗に舞うようにしながら、薔薇の剣戟でダモクレスを幻惑した。
「レ、レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァ！」
　その途端、ダモクレスが幻惑に惑わされ、見当違いな方向に殺意を向けた。
「……相手が悪かったな」
　その隙をつくようにして、泰地がジグザグスラッシュを仕掛け、ダモクレスの身体を斬り刻み、頑丈な装甲に傷をつけた。
「……まずは装甲を破壊します！」
　続いて、紅葉が達人の一撃を仕掛け、ダモクレスの装甲を破壊した。
「レ、レ、レ・ジ・ス・タァァァァァァァァァァァ！」
　それと同時に無防備なコア部分があらわになり、ダモクレスが動揺した様子で、ケルベロス達に背を向けた。
「もう少し広げた方が良さそうね」
　そこに追い打ちをかけるようにして、依鈴が絶空斬を繰り出し、さらに装甲を剥ぎ取った。
「レ、レ、レ・ジ・ス・タァァァァァァァア」
　その影響でコア部分を完全に隠す事が出来なくなり、ダモクレスが動揺した様子で耳障りな機械音を響かせた。
「弱点を見抜いたわ。この一撃を喰らいなさい！」
　次の瞬間、蛍火が破鎧衝を繰り出し、高速演算で敵の構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃でダモクレスのコア部分を破壊した。
「レ・ジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、完全に機能を停止させて崩れ落ちた。
「どうやら、終わったようね。後は念の為、戦闘の跡はヒールで直しておきましょう」
　リサがホッとした様子で、辺りをヒールし始めた。
　そのおかげで、ボロボロになっていた倉庫が、みるみるうちに元通りになった。
　そして、ケルベロス達は次の戦いに備えるため、廃墟と化したスーパーの倉庫を後にするのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年4月8日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 1／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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