●都内某所
町外れの倉庫にあったのは、沢山のスチームアイロンであった。
このスチームアイロンは、安さを売りにしていたものの、無駄に重く、パワーが弱く、シワが伸びないため、返品が相次いだようである。
その反省を踏まえた上で、改良版を販売したようだが、悪いイメージを払拭する事が出来ず、売り上げには繋がらなかったようだ。
だが、後期版のスチームアイロンからすれば、イイ迷惑っ!
いや、問題があったのは、前期版だから……!
ほら、よく見て! 型番が違うでしょ?
デザインは同じだけど、中身は別物だから!
とりあえず、使って!
何も言わずに使えば、分かるから……!
まるで大合唱をするような勢いで、辺りに漂う残留思念。
それに引き寄せられたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、ダンボールの中に入り込み、その中にあったスチームアイロンに機械的なヒールを掛けた。
「スチィィィィィィィィィィィィィィィイイム!」
次の瞬間、ダモクレスと化したスチームアイロンが、耳障りな機械音を響かせながら、ダンボールの山を弾き飛ばし、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
この倉庫は町外れにあり、ほとんど人気がないようである。
どうやら、この場所に保管されていたスチームアイロンが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、スチームアイロンです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスと化したスチームアイロンは、まわりにあったモノを取り込み、まるでロボットのような姿になっているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) |
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659) |
六星・蛍火(武装研究者・e36015) |
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
「まさか私の恐れていたダモクレスが、本当に出て来るとはね」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)は事前に配られた資料を参考にして、仲間達と共に町外れの倉庫にやってきた。
倉庫のまわりはネットリとした空気に包まれており、リサ達の身体に纏わりついてきた。
そんな空気を振り払うようにしながら、リサ達は倉庫のシャッターを開けた。
「それにしても、廃棄された機械とかがダモクレス化する事件も、まだ終わらないんだね。……とはいえ、暴れ回られると面倒だし、しっかりと壊しておこうか」
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)が仲間達に声を掛けながら、倉庫の中に入っていった。
倉庫の中には沢山のダンボールが積まれており、その中には返品されたスチームアイロンが入っていた。
その横には同じようにダンボールが積まれていたが、こちらはまったく問題の無かった後期版のようである。
「……にしても、この手の事件は事前に防ぎようがねえから厄介だよな。……使われなくなった家電や壊れた家電なんて、それこそ日本全国あちこちにあるわけだし、寄生してくるのも小型の蜘蛛型ダモクレスや、最近では金属粉のような胞子なわけだしな」
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が、困った様子で溜息を漏らした。
こればかりは地道に解決していくしかないのだが、そろそろダモクレス達を一掃したいところである。
「ただ、今回に至っては、少し可哀想に思えるね。悪いイメージを払拭する事が出来ず、不良品扱いされてしまったのだから……」
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、複雑な気持ちになった。
その点だけは同情するものの、だからと言って放っておく訳にはいかなかった。
「確かに、後期版のスチームアイロンからしたら、前期版の所為で売れなかったのだから、可哀そうではあるわね」
六星・蛍火(武装研究者・e36015)が、納得した様子で答えを返した。
それ以外にも色々な要因があったのかも知れないが、後期版のスチームアイロンが納得する理由ではなかったのだろう。
「どんなにいい製品だからと言っても、やっぱり使って貰わなければ、良い所が伝わらないよね」
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)が、何処か遠くを見つめた。
事前に配られた資料を見る限り、後期版には何の問題もなく、様々な点で前期版よりも優れていたらしい。
「昔の悪いイメージと言うモノは、簡単には拭い去れないものなのですね。何だか悲しい現実を知ってしまった気がします」
そんな中、兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、ブルーな気持ちになった。
そのためか、同情した気持ちの方が強くなってしまったものの、ダモクレスと化す事が分かっていながら見逃す事など出来なかった。
「悪いイメージと言う者はそう簡単に挽回する事は出来ないのが世の常なんだよね。ダモクレスにとってはいい迷惑だったかも知れないけど、人々に八つ当たりは良くないね。だから、倒すよ、この場所で……!」
その途端、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、ただならぬ気配を感じ取り、ダモクレスの奇襲に備えて身構えた。
「スチィィィィィィィィィィィィィィィィィム!」
次の瞬間、ダモクレスと化したいチームアイロンが耳障りな機械音を響かせ、まわりにあったダンボールを弾き飛ばしながら、ケルベロス達の前に降り立ち、殺気立った様子で発射口から大量の蒸気を噴出させた。
それは身の危険を感じるほど、危険な蒸気。
そのため、触れただけでも、大火傷を負ってしまいそうなほど危険な感じであった。
「雷鳴の蒼螺子よ、仲間を護る盾を展開しなさい!」
すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、ケルベロス達を包み込む勢いで迫ってきた大量の蒸気を弾いた。
そのおかげで仲間達に危険は及ばなかったものの、その隙をつくようにしてダモクレスが体当たりを仕掛けてきた。
「さすがに、これは厄介だね」
その事に気づいた司が螺旋氷縛波を仕掛け、氷結の螺旋でダモクレスのバランスを崩した。
「確かに、これ以上、蒸気が増えると、戦闘に支障が出そうですね」
それに合わせて、紅葉が仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスの逃げ道を塞ぐようにして陣取った。
「さぁ、行くわよ月影。サポートは任せたからね!」
その間に、蛍火がボクスドラゴンの月影に合図を送り、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「スチィィィィィィィィィィィィィィィィム!」
即座にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再び超強力な蒸気を噴出した。
その熱気でケルベロス達は、ダモクレスに近づく事が出来なくなった。
「……霊弾よ、敵の動きを封じ込めてしまいなさい!」
そんな空気を察した悠姫がプラズムキャノンを発動させ、大きな霊弾をダモクレスにブチ当てた。
「スチィィィィィィィィム!」
その途端、ダモクレスがバランスを再び崩し、悲鳴にも似た機械音を響かせた。
「これでダモクレスの場所を特定する事が出来るわよ」
それと同時に、シルフィアがスターゲイザーを仕掛け、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「とりあえず、蒸気の発射口を封じておくね」
続いて、アリアがペトリフィケイションを発動させ、古代語の詠唱と共に魔法の光線を放ち、蒸気の発射口を石化させた。
「アイロォォォォォォォォォォォォォォン!」
その影響でダモクレスは蒸気を発射する事が出来ず、駄々っ子の如く足踏みをした。
「少しは大人しくしたら、どうなんだ?」
そこに追い打ちをかけるようにして、泰地が旋風斬鉄脚(センプウザンテツキャク)を繰り出し、グラビティの力を全身に込めた後、旋風のような身のこなしで、ダモクレスの死角から高速かつ強靭な回し蹴りを放ち、まばゆい光の弧を描いた。
「スチィィィィィィィィィィィィィィイムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、スチームアイロン型のアームから蒸気を放出した。
「……これは、さっきの攻撃よりも厄介ね」
すぐさま、蛍火がダモクレスの死角に回り、スターゲイザーで蹴り飛ばした。
その拍子に大量の蒸気を浴びてしまったため、傍で待機していた月影が、属性インスト―ルで蛍火を治療した。
「それに、これだと近づく事も難しいかも……」
紅葉がジョブレスオーラで、蛍火を治療しつつ、ダモクレスに視線を送った。
ダモクレスは両腕から蒸気を発し、まるでバリアのように纏っていた。
「なるべく怪我をしないようにしておかないとね」
アリアが警戒した様子でサークリットチェインを発動させ、地面にケルベロスチェインを展開し、仲間を守護する魔法陣を描いた。
「だったら、何の問題もないわ。……パズルに潜む竜よ、その力を解放せよ!」
一方、シルフィアはドラゴンサンダーを発動させ、パズルから竜を象った稲妻をダモクレスめがけて解き放った。
「華麗なる薔薇の剣舞を、見切れるかな?」
続いて、司が薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「スチィィィィィィィィィィムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
それでも、ダモクレスは怯む事なく、半ばヤケになりながら、スチームアイロン型のアームを振り回した。
「いい度胸をしているじゃないか。だったら、正面から行くぜ!」
それを迎え撃つようにしながら、泰地がセイクリッドダークネスを発動させ、光輝く聖なる左手でダモクレスを引き寄せ、漆黒纏いし闇の右手で、蒸気が噴き出す右手を粉砕した。
「もう片方も封じておくわね」
その隙をつくようにして、悠姫がガジェットガンを撃ち込み、ダモクレスの左腕を石化した。
「アイロォォォォォォォォォォォォォォォン!」
次の瞬間、ダモクレスが咆哮にも似た機械音を響かせ、スチームアイロン型のミサイルを発射した。
それと同時に、大量のミサイルが天井に当たって爆発し、雨の如く破片と火の粉が降り注いだ。
それが次々とダンボールに燃え移り、真っ黒な煙が空に上っていった。
「大地に眠る死霊達よ、その力で私達を癒しなさい」
すぐさま、リサがゴーストヒールを発動させ、大地に眠る死霊達の力を借り、傷ついた仲間達を癒した。
「これ以上、ミサイルを撃たせる訳にはいかないわね」
その事に危機感を覚えたシルフィアが、呪言の歌声(ジュゴンノウタゴエ)で、金縛りを引き起こす呪われた歌声を放ち、ダモクレスの動きを封じ込めようとした。
「スチィィィィィィィィィィィイム!」
それでも、ダモクレスは激しく暴れ、ケルベロス達に向かっていきそうな勢いで、耳障りな機械音を響かせた。
「……なかなか、しぶといね」
即座に、アリアが猟犬縛鎖で鎖を伸ばし、ダモクレスを締め上げた。
「だったら、これはどうかな?」
続いて、司が紫蓮の呪縛(シレンノジュバク)でレイピアを華麗に振りかざし、ダモクレスに衝撃波を飛ばした。
「竜砲弾よ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
そのタイミングに合わせて、蛍火が轟竜砲でハンマーを砲撃形態に変形させ、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「これで大人しく……いや、まだのようですね。ならば、そのエネルギーをいただきましょうか」
次の瞬間、紅葉が尋常ならざる怪力で、ダモクレスの装甲を破壊し、溢れた生命エネルギーを啜り始めた。
「アイロォォォォォォォォォォォォン!」
だが、ダモクレスは諦めようとしなかった。
最後の悪あがきとばかりに、耳障りな機械音を響かせ、再びミサイルを発射しようとした。
「……時間切れだ! これで全部諦めろ!」
その事に気づいた泰地が、旋風斬鉄脚(センプウザンテツキャク)を仕掛け、グラビティの力を全身に込め、旋風のような身のこなしで、ダモクレスの死角から高速かつ強靭な回し蹴りを放った。
「スチィィィィィィィィィィィィィィム!」
その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、爆発してガラクタの山と化した。
「何とか終わったかな? 服が汚れちゃったから、洗濯してアイロンがけしなきゃね」
リサが服についた埃を払い、苦笑いを浮かべた。
何となく、タンボールから転がり落ちたスチームアイロンが、期待の眼差しを送っているような錯覚を覚えた。
「それじゃ、後はヒールしておこうかな」
そう言って悠姫がホッとした様子で、辺りをヒールしていくのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2021年4月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|