夢も希望も映らない

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した施設に捨てられていたのは、大型のプロジェクターであった。
 このプロジェクターが発売された当時は、とても高額で大変大事にされていたのだが、いまとなってはゴミ同然。
 無駄に場所を取る上、重いため、誰からも必要とされなくなっていた。
 しかし、プロジェクターだけは違っていた。
 ……まだ動ける!
 ……もっと頑張れる!
 まだまだ若いモンには負けん!
 そんな強い意志が感じられるほど、プロジェクター自身は、ヤル気であった。
 その情熱に導かれるようにして、廃墟と化した施設に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、プロジェクターから熱い情熱を受け取り、それを具現化させる手助けをするため、破壊的なヒールを掛けた。
「プロロロロロロロ~!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したプロジェクターが、興奮した様子で機械音を響かせ、自分を捨てた人類に復讐を果たすため、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「天月・悠姫(導きの月夜・e67360)さんが危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した施設で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟と化した施設。
 この場所に捨てられていたプロジェクターが、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、プロジェクターです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化したプロジェクターは、ロボットのような姿をしており、自分を捨てた人類に対して激しい憎悪を抱いているらしい。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
青凪・六花(暖かい氷の心・e83746)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
「まさか、わたしが予想していたダモクレスが本当に現れてしまうなんて……。ですが、人々に被害が出る前に対処できる事が不幸中の幸いでしね。ダモクレスが目覚めて暴れまわる前に、わたし達で倒してしまいましょうか」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)は仲間達と共に、セリカから渡された地図を目印にして、ダモクレスの存在が確認された施設にやってきた。
 この施設で怪しげなセミナー等が行われており、たびたびトラブルになっていたようである。
 しかし、グレーゾーンぎりぎりであったため、なかなか問題が解決しないまま、被害者ばかりが増えていったらしい。
「それにしても、まさかプロジェクターがダモクレスと化すとは……。随分と大規模な機械がダモクレスと化すようですが、ここで負ける訳にはいきませんね!」
 そんな中、兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、自分自身に気合を入れた。
 ダモクレスと化したのは、半ば置物状態になっていたプロジェクター。
 それよりも性能が高くて軽く、使い勝手の良いプロジェクターが導入されたため、お払い箱となったモノだった。
「プロジェクターは、あまり使う機会が無かったけど、今後のために見ておきたいところね。もちろん、ダモクレスを倒した後で……という事にはなると思うけど……」
 六星・蛍火(武装研究者・e36015)が半開きになっていた裏口のドアから、室内に入り込んだ。
 この様子では、何らかのトラブルが遭って、夜逃げをしたのだろう。
 その事を容易に想像する事が出来てしまうほど、床には大量の資料が散らばっていた。
 その資料には、楽をして億万長者になれる方法や、誰でもモテモテになれるブレスレット等の効能が書かれていたものの、どれも胡散臭く、信憑性が薄いモノばかりであった。
「何だか随分と胡散臭い事に使われていたようだけど……。古い型の方がダモクレスと化すのであれば、人の死を映しちゃう前になんとかしないとね」
 源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)がダモクレスの奇襲を警戒しつつ、なるべく足音を立てないようにしながら廊下を進んでいった。
「プロジェクタァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、目の前の壁を突き破り、ダモクレスが姿を現した。
 どうやら、ダモクレスは瑠璃達の存在には気づいておらず、たまたま壁を突き破って街に繰り出そうとしていたらしい。
 そのため、二度見。
 ダモクレス自身、自らの目を疑ったのか、『どうして、ここに侵入者が……』と言わんばかりに二度見であった。
 だからと言って、このまま街に繰り出す訳にはいかないと判断したのか、ケルベロス達の行く手を阻むようにして陣取った。
「……昔はとてもハイテクな物だったのでしょうね。破棄された事は可愛そうに思うけど、ダモクレスと化した以上、放っておく訳には行かないわ」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、覚悟を決めた様子で間合いを取った。
「プロジェクタァァァァァァァァァァァ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、様々な映像と共に超強力なビームを放ってきた。
 そこに映っていたのは、セミナーで流されていた映像の数々。
 ハイパワー超聖水の映像や、石の上にも三年式勉強法の映像……。
 中には、洗脳まがいのモノもあり、見ているだけで、気分が悪くなってきた。
 それに合わせて、ビームが放たれたため、ほんの少しだけ避ける事を忘れそうになった。
 幸い、間一髪のところで、みんな避ける事が出来たため、誰一人として傷つく事が無かったものの、背後にあった壁に巨大な穴が開いた。
「きっと、あの映像を見て、被害を受けた人もいるのでしょうね。そう考えると、何だか悲しく思えてくるけれど……」
 青凪・六花(暖かい氷の心・e83746)が複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスに視線を送った。
「プロジェクタァァァァァァァァァァァァ!」
 その視線に気づいたダモクレスが、再び立体感のある映像と共に、超強力なビームを放ってきた。
「雷の属性よ、仲間を護る盾を作りなさい!」
 すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、雷属性の盾でダモクレスの放ったビームを防いだ。
 しかし、一緒に映し出された映像までは消し去る事が出来ず、一瞬背筋がヒヤッとした。
「念のため、奇跡の月の力で、防御を固めておくね」
 その事に危機感を覚えた瑠璃が、太古の月・月虹(エンシェント・ムーンボウ)で希望の虹を描き、仲間に盾の加護を与えた。
「さぁ、行くわよ、月影。頼りにしているわね」
 それに合わせて、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛け、ダモクレスを包囲するようにして陣取った。
 続いて、月影が属性インストールを使い、自らの属性を蛍火に注入した。
「我が声に従い、現れよ! 三つの属性の水晶体よ、敵を取り囲み、魔法を放て!」
 それと同時に、六花がトライアングル・マジックを発動させ、火属性、氷属性、雷属性の三つの水晶体を召喚し、ダモクレスを取り囲むように動かし、水晶体から同時に三属性の魔法を放って攻撃した。
「プ、プ、プロジェクタァァァァァァァァァァァァァ!」
 そのため、ダモクレスは狙いを定める事が出来ず、戸惑った様子でオロオロとした。
「この呪いで、貴方を動けなくしてあげますよ!」
 即座に、紅葉が美貌の呪いを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「プ、プ、プ、プロォォォォォォォォォォォォォ!」
 それでも、ダモクレスが無理やり身体を動かそうとしていたが、その気持ちに反して一歩も動く事が出来なかった。
「エクトプラズムよ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
 その隙をつくようにして、悠姫が放置されたままになっている机を壁代わりにしながら、ダモクレスめがけてプラズムキャノンを撃ち込んだ。
「プロジェクタァァァァァァァァァァ!」
 その途端、ダモクレスが危機感を覚え、自らの怒りを拳に注ぎ込むようにして、パンチを繰り出した。
 その気持ちに反して、思うように体が動かないのか、一発もケルベロス達には当たらなかった。
 それがとても悔しかったのか、ダモクレスがパンチを繰り出すたび、威力が増しているようだった。
「最早プロジェクターじゃなくてロボットだね、これは……」
 瑠璃がパンチを避けつつ、プラズムキャノンを発動させ、圧縮したエクトプラズムで作った大きな霊弾を飛ばし、ダモクレスに足止めした。
「ドローンの群れよ、皆を警護しなさい!」
 一方、蛍火はヒールドローンを発動させ、自らのグラビティで小型治療無人機の群れを操り、傍にいた仲間を警護した。
「プロジェクタァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 それを狙うようにして、ダモクレスが勢いよく拳を振り回した。
 だが、届かない。
 届きそうで……届かない!
 それがとても、もどかしく感じられたのか、ダモクレスの注意が小型治療無人機の群れに向けられた。
「もしかして、ダモクレスと化した影響で、自分がプロジェクターである事を忘れ始めているのでは……」
 リサが警戒した様子で、攻撃射程外に避難しつつ、ダモクレスに視線を送った。
 その間も、ダモクレスは小型治療無人機の群れを凝視しており、隙あらば叩き落そうとしていた。
「……と言うか、プロジェクターに腕なんて要りませんね」
 次の瞬間、紅葉が月光斬を仕掛け、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスの右腕を斬り落とした。
「ジェクタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その途端、右腕の付け根部分から、大量のオイルが噴き出し、辺りを異様なニオイが包み込んだ。
「チェーンソーの扱いは苦手だけど、これでも食らいなさい!」
 続いて六花がチェーンソー斬りを繰り出し、ダモクレスの右腕を斬り落とし、大量のオイルを全身に浴びた。
「これで邪魔なものが無くなったわね。それじゃ、頭をかち割ってあげるわ!」
 それと同時に、悠姫が勢いよく飛び上がって、スカルブレイカーを仕掛け、ダモクレスの頭上にルーンアックスを振り下ろした。
「プロジェクタァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、大量のオイルを撒き散らし、半ばヤケになりつつ、プロジェクター型のミサイルを発射した。
 それが天井に当たって勢いよく始め飛び、大量の破片が雨の如く降り注いだ。
「……大丈夫よ、落ち着いていれば安全だから」
 すぐさま、リサが仲間達に声を掛けながら、鎮めの風で竜の翼から心の乱れを鎮める風を放った。
「でも、このままだと、建物自体が危ないわね」
 六花が大量の破片を避けながら、ダモクレスに近づき、氷の吐息を吐きかけ、凍りつかせようとした。
「プ、プ、プロォォォォォォォォォォ……」
 それと同時に、ダモクレスが半ばヤケになりつつ、再びミサイルをぶっ放した。
 そのミサイルが雨の如く降り注ぎ、天井を破壊し、床の穴を開けていった。
「これで大人しくしてもらうわよ!」
 そんな中、悠姫がミサイルの雨を避けつつ、ガジェットガンを仕掛け、魔導石化弾を撃ち込んだ。
「プ、プロロロロロ……」
 その影響でミサイルの発射口が石化し、大量のミサイルが内部で爆発して、大量の破片と共に散らばった。
「これでミサイルを怖がる必要もなくなったね」
 その隙をつくようにして、瑠璃がドラゴニックスマッシュを発動させ、ドラゴニック・パワーを噴射すると、加速したハンマーをダモクレスに振り下ろした。
「さぁ、この一撃を見切れるかしら?」
 それに合わせて、蛍火がダモクレスに語り掛けながら、気咬弾でオーラの弾丸を撃ち込んだ。
「プロジェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
 それと同時に、オーラの弾丸がダモクレスに食らいつき、分厚い装甲を噛み砕き、コア部分もろとも破壊した。
 ダモクレスは、その痛みに耐える事が出来ず、断末魔にも似た機械音を響かせながら、崩れ落ちてガラクタの山と化した。
「それにしても、酷い有様ですね。すぐにヒールをしておかないと、面倒な事になるかも知れません」
 紅葉が色々な意味で危機感を覚えつつ、ゆっくりと辺りを見回した。
 ダモクレスとの戦いで、辺りはボロボロ。
 まるで大量の爆弾を投下させられたような状態になっているため、修復にはしばらく時間が掛かりそうである。
 それでも、悩んでいる暇はなかったため、根気よくヒールで辺りを修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年4月4日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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