スロットを回せ！

■リプレイ

●都内某所
「まさか、わたしが危惧していたダモクレスが、本当に現れてしまうなんて……。正直、驚いてしまったけれど、人々に被害が出る前に倒す事が出来そうな事が幸いね」
　リサ・フローディア（メリュジーヌのブラックウィザード・e86488）は仲間達と共に、ダモクレスが確認されたゲームセンターにやってきた。
　そのゲームセンターは１階から５階まで様々なゲームが設置されていたらしく、活気があった頃は朝か晩まで賑やかだったようである。
　だが、不況の波に飲み込まれ、廃業してしまってからは、不良達の溜まり場になっていたらしい。
「スロットマシーンかぁ。……私も昔は良く遊んだねぇ。でも、今ではちょっとケルベロス活動が忙しくてゲームセンターに行く機会が、めっきり減ってしまったけど……」
　凍月宮・花梨（魔剣使い・e39540）が複雑な気持ちになりながら、廃墟と化したゲームセンターに入っていった。
　室内は不良達によって荒らされており、１階にあったクレーンゲームが破壊され、物置代わりになっていた。
「私は年齢的に、あまりゲームセンターで遊べるわけじゃないけど、何だかとても楽しそうね」
　静城・依鈴（雪の精霊術士・e85384）が床に転がった空き缶やゴミで転ばないように気を付けながら、突き当りの扉を開けて、階段を上っていった。
　階段の端には、幾つも空き缶が積み上げられており、まるで壁のようになっていた。
「僕も、あまりゲームセンターには行った事が無いので、あまり馴染みのない機械ばかりですが……。まぁ、ちょっと面白そうですね」
　バジル・ハーバルガーデン（薔薇庭園の守り人・e05462）が半開きになった扉の隙間から、２階に並べられていたゲームの筐体を横目でチラリと見た。
　ゲームの筐体はテーブル代わりにされていたのか、カップ麺の容器が幾つも並んでいた。
「わたくしの場合は、スロットマシーンで遊んだ事がないのですが、これはなかなか楽しそうですね。特に777が揃った時とか、凄くテンションが上がりそうですし……」
　ルピナス・ミラ（黒星と闇花・e07184）が３階に設置されたスロットマシーンを眺めながら、当時の光景を想像するようにして脳裏に浮かべた。
　どのスロットマシーンもカラースプレーでペイントされており、まるでアートのようになっていた。
「スロットマシィィィィィィィィィィィィィィィィィィン！」
　次の瞬間、近くにあったスロットマシーンが、まわりにあるモノを取り込み、ダモクレスと化すと、耳障りな機械音を響かせた。
　ダモクレスと化したイロットマシーンは、まるでロボットのような姿をしており、殺気立った様子でケルベロス達に迫ってきた。
「何だか、このダモクレス……可哀想な気がしますね」
　それを目の当たりにした兎波・紅葉（まったり紅葉・e85566）が、ダモクレスに対して憐みの視線を送った。
　ダモクレスはカラースプレーでペイントされており、痛々しい印象を受けた。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その視線に気づいたダモクレスが、苛立ちを隠せない様子で、唸り声にも似た機械音を響かせた。
「さぁ、行きますよ、サターン。サポートは任せますからね」
　鹿目・きらり（医師見習い・e45161）がウイングキャットのサターンに声を掛け、スロットマシーンの後ろに隠れながら、少しずつ距離を縮めていった。
「マシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン！」
　それと同時に、ダモクレスは耳障りな機械音を響かせながら、大量のメダルを放出するため、スロットをフル回転させた。
　しかし、絵柄が、なかなか揃わない。
　フルーツ、フルーツ、ベル。
　ベル、ベル、７。
　ダモクレスの意志に反して、絵柄が揃わず、７が並ぶ事も無かった。
「……この戦いに勝ってダモクレスの侵略の足止めをするっす！」
　すぐさま、東堂・雹牙（アイスエルフの螺旋忍者・e85481）が気持ちを切り替え、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　次の瞬間、ダモクレスが７７７を揃え、大量のメダルを弾丸の如く飛ばしてきた。
　ダモクレスから放たれた大量のメダルは、次々と風を切りながら、ケルベロス達に襲い掛かった。
「雪の属性よ、皆を護る盾となり、加護を与えよ！」
　その事に気づいた依鈴がエナジープロテクションを発動させ、雪属性のエネルギーで盾を形成した。
「雷の属性よ、その力で仲間を護る盾を展開しなさい！」
　それに合わせて、リサもエナジープロテクションで雷属性の盾を作り、依鈴と一緒に大量にメダルを防いだ。
　そのおかげで仲間達に怪我はなく、狙いを外した大量のメダルが、次々と壁に刺さっていった。
「さすがに、これを喰らったらヤバそうっすね」
　雹牙が色々な意味で危機感を覚えながら、スノウスピリットを発動させ、雪ダルマに似た氷の精を召喚した。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再び大量のメダルを飛ばしてきた。
「そう言っている間に、第２派が来ましたね」
　その事に気づいたきらりが、大量のメダルを避けるようにして、スロットマシーンの後ろに隠れ、気力溜めでオーラを溜め、同時に状態異常を消し去った。
　それに合わせて、サターンが清浄の翼を使い、羽ばたきで邪気を祓った。
「まずはダモクレスの動きを封じる必要がありそうですね」
　バジルがスロットマシーンを盾代わりにしながら、ダモクレスにスターゲイザーを仕掛けた。
「それじゃ、行くよ……！」
　それに合わせて、花梨がスターゲイザーを放ち、バジルと一緒にダモクレスを足止めした。
「御業よ、敵を鷲掴みにして、その動きを封じなさい！」
　続いて、ルピナスが半透明の御業で、ダモクレスを鷲掴みにした。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その事に腹を立てたダモクレスが、再びメダルを飛ばしてきた。
　だが、上手く狙いを定める事が出来ないため、発射されたメダルは、ケルベロス達がいない場所に飛んでいき、壁にザクザクと突き刺さっていった。
「まさか、まだ動く事が出来るとは……。ですが、同じようにメダルを発射する事が出来ると思ったら大間違いですよ！」
　その隙をつくようにして、紅葉が達人の一撃を繰り出し、メダルの発射口を破壊した。
「ス、ス、ス、スロットォォォォォォォォ！」
　その途端、ダモクレスが激しく痙攣し、大量のメダルを溢れんばかりに放出させた。
「これでメダルを撃つ事が出来なくなりましたね」
　きらりがサターンと連携を取りつつ、ルナティックヒールで満月に似たエネルギー光球を仲間にぶつけ、傷を癒すのと共に凶暴性を高めた。
「マシィィィィィィィィィィィン！」
　その事がキッカケでダモクレスが、半ばヤケになりつつ、怒りの鉄拳パンチを繰り出した。
「なかなか素早いパンチのようだけど、そう簡単に当たると思ったら大間違いよ」
　リサが素早い身のこなしで飛び退き、ダモクレスが繰り出したパンチを避けた。
「大地の霊よ、皆を助けてあげてね」
　その間に、依鈴が大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達を癒やしていった。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その事に気づいたダモクレスが、拳をグルグルと回しながら、ケルベロス達に迫っていった。
「このまま紅蓮の炎に、焼かれてしまうと良いよ」
　それを迎え撃つようにして、花梨がグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「さぁ、貴方のトラウマを想起させてあげますよ！」
　続いて、ルピナスが惨劇の鏡像でナイフの刀身にトラウマを移し、それを具現化させた。
　それと同時に、スロットを叩いた者や、不良達が具現化され、ダモクレスをボッコボコにしていった。
「スロットォォォォォォォォォォォォ！」
　そのため、ダモクレスは恐怖で震え、身体を動かす事が出来なくなった。
「これで吹き飛んでしまいなさい！」
　バジルがサイコフォースで精神を極限まで集中させ、ダモクレスの左腕を爆破した。
「ス、ス、ス、スロットォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、傷ついた左肩を庇うようにしながら、再びメダルを吐き出そうとした。
　だが、メダルの発射口が破壊され、肝心のメダル自体も放出されてしまったため、カラカラと虚しく音が響くだけだった。
「この氷を食らえっす、クリスタライズシュート！」
　次の瞬間、雹牙がクリスタライズシュートを仕掛け、射出した氷結輪でダモクレスを切り裂き、強烈な冷気で凍てつかせた。
「ス、ス、ス、ス……」
　そのため、ダモクレスは全く身動きが取れなくなり、悔しそうに耳障りな機械音を響かせた。
「月光の如き華麗なる剣戟を、見切れますか？」
　そこに追い打ちをかけるようにして、紅葉が月光斬を繰り出し、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスの急所を的確に斬り裂いた。
「マシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン！」
　その事に危機感を覚えたダモクレスが、メダル型のミサイルを雨の如く降らせて言った。
　そのミサイルが次々と床に落下し、大爆発を起こして、あちこちに穴を開けていった。
「浄化の風よ、皆の傷を癒し給え！」
　すぐさま、きらりがキュアウインドを発動させ、癒やしの風を巻き起こし、仲間達の傷と心を癒やした。
「この呪いで、その身体を動けなくしてあげます！」
　それに合わせて、紅葉が尋常ならざる美貌の呪いを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「吹雪の様に舞う鈴蘭を、その身に受けてみなさい」
　続いて、依鈴が鈴蘭の吹雪（スズランノフブキ）を発動させ、まるで吹雪の様に鈴蘭の花弁を飛ばし、ダモクレスに攻撃していった。
　その拍子に、鈴蘭の花弁と共に、濃厚な香りが辺りを包み込んだ。
「ギザギザのナイフを、その身に受けてみなさい！」
　そこに追い打ちをかけるようにして、ルピナスがジグザグスラッシュでナイフの刃をジグザグに変形させ、ダモクレスの身体を斬りつけた。
　その拍子に、ダモクレスの身体から幾つもパーツが飛び散り、真っ黒な煙が上がっていった。
「その傷口を更に広げてあげますよー！」
　それと同時に、バジルがチェーンソー斬りを仕掛け、チェーンソー剣の刃で、ダモクレスの傷口を広げるようにして斬り裂いた。
「……これで終わらせるっす」
　次の瞬間、雹牙が螺旋掌を発動させ、螺旋を籠めた掌で、ダモクレスに軽く触れた。
「スロットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、内側から破壊され、断末魔にも似た機械音を響かせ、完全に機能を停止させた。
「終わったねぇ。この散らかったメダルは、もう使えないのかなぁ？」
　花梨がホッとした様子で、足元に散らばったメダルに視線を落とした。
　おそらく、別のゲームセンターでも使えそうではあるものの、その店のルールに合わせて使うかどうか判断した方が良さそうである。
「とりあえず、ヒールをしてから帰りましょうか」
　そう言ってリサがヒールを発動させ、ダモクレスとの戦いで壊れたモノを、ヒールで修復するのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2021年3月29日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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