目覚まし時計は鳴りやまない

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した時計店に、目覚まし時計が並べられていた。
 この目覚まし時計は、設定した時間になると、爆音が鳴り響く仕組みになっており、どんなに眠くても飛び起きてしまうほど、強力なモノだったらしい。
 そのため、御近所トラブルに発展する事も多く、色々な意味で心臓に悪いため、売れなくなってしまったようである。
 だが、目覚まし時計にとっては、納得の出来ない事。
 ただ、やるべき事をやっただけなのに、避難される筋合いなどない。
 そもそも、持ち主の目を覚まさせるため、爆音を響かせていたのだから、責められる理由など何もない……はずだった。
 しかし、現実は、非情。
 必要とされなくなって、ゴミ扱い。
 それが残留思念となって、辺りに漂った。
 その残留思念に引き寄せられるようにして、小型の蜘蛛型ダモクレスが姿を現した。
 小型の蜘蛛型ダモクレスはカサカサと音を立てながら、目覚まし時計に機械的なヒールを掛けた。
「ジリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した目覚まし時計が、耳障りな機械音を響かせながら、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)さんが危惧していた通り、都内某所にある時計店で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある時計店。
 ここに放置されていた目覚まし時計が、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、目覚まし時計です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスと化した目覚まし時計は、ロボットのような姿をしており、爆音を響かせながら、攻撃を仕掛けてくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
九竜・紅風(血桜散華・e45405)
赤月・夕葉(黒魔術士・e45412)
エステル・シェリル(幼き歌姫・e51474)
ウィル・ファーレイ(研究の虜・e52461)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
姫神・メイ(見習い探偵・e67439)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
「どうやら、私が危惧していたダモクレスが本当に現れたようですね。幸い、まだ誰にも危害を加えていない段階なので、やれるだけの事をやっておきましょうか」
 兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された時計店にやってきた。
 この時計店は数年ほど前から廃墟と化しており、店内からはカッチカッチカッチと秒針が時を刻む不気味な音が響いているような錯覚を覚えた。
 それが単なる気のせいである事が分かっていても、そう思えてしまうほど奇妙な感覚に包まれていた。
「資料を読む限り、かなりの爆音だったらしいけど、これだと寝起きが最悪だったりしないのかしら? まあ、だから破棄されてしまったのだろうけど……」
 そんな中、姫神・メイ(見習い探偵・e67439)が、事前に配られた資料に目を通した。
 資料を見る限り、寝起きは最悪。
 清々しい目覚めとは無縁であったため、メリットよりもデメリットの方が多かったらしい。
 それでも、確実に起きる事が出来るという理由から、少なからず買う者がいたようである。
「俺は寝起きが悪いから、目覚まし時計は大きな音の方が良いんだが、あまりにも大きすぎる音は近所迷惑になりそうだな」
 九竜・紅風(血桜散華・e45405)が、気まずい様子で汗を流した。
 実際に近隣住民とのトラブルが後を絶たなかったらしく、それが原因で返品が相次いだ事もあったようだ。
「確かに、目覚めが良くないと駄目ね。不快な目覚めは勘弁して欲しいわ」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)も、やれやれと言わんばかりに首を振った。
 幸い辺りに人影がないため、人払いをする必要はなかったが、時計店から不気味な気配が漂っているため、気を抜く事が出来なかった。
「それに、今やスマホでも目覚まし時計の機能は付いているから、目覚まし時計の需要も減ってきているみたいね。それなのに、騒音ともいうべき大音量の目覚まし音を響かせたら、流石に売れないわよ」
 エステル・シェリル(幼き歌姫・e51474)が、呆れた様子で溜息を漏らした。
 だが、目覚まし時計からすれば、そう作られたのだから、自分の役目を果たしただけ。
 別に何か悪い事をした訳ではないため、捨てられた事に対して、不満を持っていてもおかしな事ではなかった。
「そもそも、音さえ大きければよいって訳でもないものね。寝ている人が気持ちよく起きられる、そういう目覚まし時計が理想よね」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、何かを悟った様子で答えを返した。
 そんな現実をメーカー側が理解していれば、このような悲劇を生む事もなかっただろう。
「ジリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、廃墟と化した時計店から、ダモクレスと化した目覚まし時計が飛び出し、鼓膜をブチ破る勢いで爆音を響かせた。
「……さすがにこれは、心臓に悪いな」
 その音に驚いた赤月・夕葉(黒魔術士・e45412)が、ドン引きした様子で間合いを取った。
 ダモクレスはロボットのような姿をしており、自らの存在を示すようにして、爆音を響かせながらケルベロス達に迫ってきた。
 それは一言で言えば、近所迷惑。
 これには近隣住民達も一斉に窓を開けて、『うるせぇぞ!』と叫んでしまうほどの爆音だった。
「……このまま放っておくと、騒音問題でかなり大変になりそうですね」
 その事に危機感を覚えたウィル・ファーレイ(研究の虜・e52461)が、ダモクレスに視線を送った。
「ジリリリリリィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!」
 その視線に気づいたダモクレスが爆音を響かせながら、超強力なビームを放ってきた。
「雷鳴の蒼螺子よ、雷の障壁で仲間を護りなさい!」
 すぐさま、リサがエナジープロテクションを発動させ、雷属性のエネルギーで盾を形成し、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
 だが、爆音までは防ぐ事が出来なかったため、頭がガンガンして、眩暈にも似た感覚に襲われた。
「……大丈夫。これだけの人数がいれば、決して負ける事はありません」
 ウィルが仲間達に声を掛けながら、頭を押さえてフラつきながら、ダモクレスのまわりを囲むようにして陣取った。
「メ・ザ・マ・シィィィィィィィィィィィ」
 その途端、ダモクレスがウィル達に威嚇するようにして、再びジリリリィンと爆音を響かせた。
「さぁ、行くぞ疾風丸。サポートは任せたからな!」
 そんな中、紅風がテレビウムの疾風丸に声を掛け、爆音から逃れるようにして、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
 それに合わせて、疾風丸が応援動画を流して、紅風をサポートした。
「ジリィィィィィィィィィィィィン!」
 次の瞬間、ダモクレスは爆音を響かせながら、アスファルトの地面を削るようにそして、ケルベロス達に迫ってきた。
「まずはその動き、封じてあげるよ!」
 それを迎え撃つようにして、エステルがメイと息を合わせてスターゲイザーを放ち、ダモクレスを蹴り飛ばした。
「メザマシィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩し、座り込むようにして尻餅をついた。
「エクトプラズムよ、敵の動きを止めてしまいなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、悠姫がプラズムキャノンで圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作り、ダモクレスめがけたブチ当てた。
「ジリィィィィィィィィィィィィン!」
 それと同時に、ダモクレスが怒り狂った様子で爆音を響かせ、再びビームを放とうとした。
「そんな攻撃、当たるかよ! 鉄をも溶かす高温の炎を受けてみるんだな!」
 その間に、夕葉がダモクレスの死角に回り込み、グラインドファイアでローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りを炸裂させた。
「ジリィィィィィィィィィィィィィィィン!」
 その拍子にダモクレスがバランスを崩し、ビームが夕葉の横に逸れて、ブロック塀をゴッソリと削り取った。
「……油断しましたね。この状況で月光の如き華麗なる剣術を見切れますか?」
 その間に、紅葉が一気に間合いを詰め、月光斬で緩やかな弧を描く斬撃を放ち、ダモクレスの急所を斬り裂いた。
「メザマシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、爆音を響かせながら、半ばヤケになりつつ、ケルベロス達を殴っていった。
「……クッ! これは、さすがに利いたな。忌まわしき血の力だが、今はその力を貸して貰う事にするぞ」
 即座に紅風が咎人の血で傷口から溢れる血液を操り飛ばし、傷ついた仲間を治療した。
 疾風丸も応援動画を流す事で、紅風の傷を癒していった。
「……大丈夫よ、落ち着いていれば安全だからね」
 その横で、リサが鎮めの風を使い、竜の翼から心の乱れを鎮める風を放った。
「さすがに、あの攻撃を何度も食らう訳にはいきませんね」
 ウィルがゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた『惨劇の記憶』から魔力を抽出し、仲間達を癒やしていった。
 ダモクレスのパンチはケタ外れに強力で、マトモに息をする事が出来なくなるほど強力であった。
「だったら、この弾丸で、その身体を石に変えてあげるわ!」
 すぐさま、悠姫が崩れかけたブロック塀に隠れ、ガジェットガンでガジェットを『拳銃形態』に変形させ、魔導石化弾を発射した。
「メザマシィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、石化した左腕を庇うようにして後ろに下がった。
「この杭で、その身を凍結させてやるぜ!」
 続いて、夕葉がイガルカストライクを仕掛け、雪さえも退く凍気を杭(パイル)に纏わせ、ダモクレスに突き刺した。
「メザマシィィィィィ!」
 その影響で、ダモクレスの身体が凍結し、身体の動きが鈍くなった。
「この一撃で、氷漬けにしてあげますよ!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、紅葉が卓越した技量から達人の一撃を放ち、ダモクレスの身体を凍りつかせていった。
「メ・ザ・マ・シィィィィィィィィ」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、フラフラとしながら、逃げるようにしてブロック塀の後ろに隠れようとした。
「どこに逃げても、この爆撃からは逃れられないわよ!」
 次の瞬間、メイが遠隔爆破でスイッチを押し、ダモクレスの身体に貼り付けた『見えない爆弾』を爆発させた。
「メザマシィィィィィィィィィィィィィィィ」
 それと同時に、ダモクレスの右腕が吹っ飛び、轟音を響かせてアスファルトの地面に落下した。
「光の剣よ、敵を切り裂いちゃえー!」
 その隙をつくようにして、エステルがマインドリングから光の剣を具現化し、ダモクレスの身体を斬りつけた。
「ジリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、目覚まし時計型のミサイルをぶっ放した。
 ダモクレスから放たれた目覚まし時計型のミサイルは、次々とアスファルトの地面に落下し、爆音と共に大量の破片を飛ばしてきた。
「この薬品は少々危険ですが、こういう使い方も出来ますよ」
 そんな中、ウィルが覚悟を決めた様子で化学薬品合成(カガクヤクヒンゴウセイ)を発動させ、試験管に入った妖しい緑色と紫色の薬品を合成し、爆発と共に身体を痺れさせるガスをダモクレスに浴びせた。
「私の眼は、欺けないわよ……」
 それに合わせて、メイが探偵の眼力(タンテイノガンリキ)で、探偵の経験によって培われた鋭い視線をダモクレスに飛ばし、畏縮させる事で動きを封じた。
「メザマシィィィィィィィ」
 そのため、ダモクレスは何も出来ず、半ばヤケになりつつ、爆音を響かせた。
「まだ抵抗するのですか? それなら、この呪いで貴方を動けなくしてあげます!」
 紅葉が尋常ならざる美貌の呪いを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「オウガメタルよ、私の腕に集い、破壊力を強化して!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、エステルが戦術超鋼拳で全身を覆うオウガメタルを『鋼の鬼』と化し、自らの拳でダモクレスの装甲を砕いた。
「ファミリアよ、敵に喰らいつけー!」
 続いて、夕葉がファミリアシュートを発動させ、暁の魔杖【緋翼】(ファミリアロッド)をリスの姿に戻した上で、ペットに魔力を籠めて射出した。
 それと同時に、弾丸の如く射出されたリスが、砕けた装甲から中に入り込み、コア部分に齧りついた。
「メザマシィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、爆発四散してガラクタの山と化した。
「……何とか倒す事が出来たようね」
 リサがホッとした様子で、ダモクレスだったモノを見下ろした。
 ダモクレスは既にガラクタの山と化しており、二度と動く事はなかった。
「……みんな無事か? 随分と散らかったな」
 そんな中、紅風が仲間達の無事を確認しつつ、ヒールで辺りを修復していった。
 疾風丸も何かの役に立とうと思ったのか、応援動画を流して何となく紅風を援護した。
「それじゃ、出来る限りヒールで直しておこうか」
 悠姫も何やら察した様子でヒールを使い、辺りを修復していった。
 そして、ケルベロス達は一通りヒールで修復した後、廃墟と化した時計店を後にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年3月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。