緊急迎撃! 鋼の巨人

作者:okina

●復活の巨大機兵
 ―――― 大阪湾、海底。
 泳ぐ魚とたゆたう海藻、それから幾つかの粗大ゴミ。大都市近海にありがちな、自然と文明の残骸が不自然な同居を成し遂げている。
 そこをカサコソと這い回る、こぶし大の小さなナニカ。一見、虫のような。しかし、背に無数の針のようなアンテナを背負う姿は、ハリネズミか、さもなくば脚の生えたウニのようにも見える。そして全身、金属製。
 その背に生えた無数のアンテナをしきりに明滅させていると、次第にどこからともなく無数の小型ロボットが集まりだし、一斉に地面を掘り始める。辺りの魚たちは一斉に逃げ出し、たちまち海底はもうもうと立ちのぼる土煙で覆われた。
 程なくして、土煙に濁る海底に灯る鋭い光。冷たい海水を震わせ、辺りに響き渡る駆動音。そして、大量の土砂を巻き上げながら、大質量のナニカが陸地を目指して、急速浮上を開始する。
 目標 ―― 大阪府・泉佐野市。人口約10万を誇る、大阪府南部の港町である。

●緊急迎撃!
「緊急事態っす! 誰か、動ける人は居ないっすかっ!?」
 ざわつくホールに黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)の焦った声が響き、近くに居たケルベロス達がなんだなんだと集まって来る。
「ついさっき、大阪府の泉佐野市に巨大ロボ型ダモクレスの上陸が予知されたっす!」
 その昔、地球に降り立ち、戦いの末、封印された巨大ダモクレス達。それらを復活・回収して戦力増強を目論む計画 ―― それ自体は、ケルベロス達が幾度も聞き、そして何度となく阻止してきた、ダモクレス関連事件の一つである。
 だから、問題なのは……。
「タイミングが最悪っす! おそらく、他の勢力が大きく動いて、こっちの手が塞がる瞬間を狙っていたとしか思えないっす!」
 今回、ドラゴン軍団の襲来を感知し、それに対応するためにケルベロスが全力で動くと踏んで、行動に移したんだろう、とダンテは言う。
「今回復活したのは、全長7m程の人型で、重装甲に特化したパワータイプの巨大ダモクレスっす。ただ、ご存知の通り相手は復活したばかりでグラビティ・チェインが枯渇してるっすから、最寄りの町を襲撃して、グラビティ・チェインを補給しようとしてるっすよ」
 それが大阪府の泉佐野市だと彼は言う。
「上陸場所は泉佐野漁港っす。相手は海底から真っ直ぐ向かってくるので、皆さんには漁港の船着き場で迎え撃って欲しいっす。ヘリオンデバイスの準備は万端だし、周辺住民への避難勧告も既に手配してるっすから、後でヒールして貰えれば、周辺被害は気にしなくて大丈夫っすよ」
 後方支援ならお任せっす、と拳を握りしめるダンテ。尊敬するケルベロス達のため、出来ることは精一杯やって見せる、という意思を込めて、更なる情報を伝える為に手元の資料をめくる。
「巨大ダモクレスとはいえ、今はグラビティ・チェインの枯渇で弱体化してるっす。数々の激戦を潜り抜け、ヘイオンデバイスまで手に入れた皆さんなら、そうそう後れを取ることはないと思うっすが……注意して欲しい点が2点あるっす」
 そう告げるダンテの瞳に、僅かに不安の色が浮かぶ。
「一つ目は、この敵は自身が追い詰められた際に1度だけ、自壊覚悟のフルパワー攻撃を放ってくる事っす。それまでのダメージの蓄積具合によっては、残りの体力を一気に持って行かれる恐れもあるっす」
 つまり、無理は禁物。体力管理は大事。
 それは戦場に立つケルベロスにとって大切な事であり、今更言うまでもない当然の事だ。しかし……。
「けど、ここで2つ目の問題が出てくるっす。この敵は襲撃の成否にかかわらず、上陸してから7分経つと、魔空回廊が開いて回収されてしまうっす。そうなったら、次に会う時は万全に再整備された状態で、その脅威度は今回とは比べ物にならないっす」
 だから、決して逃がしてはならない。要、速攻。
 ただし、命は大事に。つまり、二律背反。
「正直、投入戦力次第ではかなりシビアな状況になる可能性もあるっすが……少なくとも、交戦して足止めさえできれば、泉佐野市民約10万人への虐殺は防げるっす」
 苛酷が予想される戦場へ、それでも向かって欲しいと頼まざるをえない痛みに、ダンテの表情が苦しげに歪む。
「だから……どうか、動ける人だけでも、向かって欲しいっすっ!」
 一同へ向かって、そう頭を下げるダンテに、ケルベロス達は力強く頷き、応えを返した。


参加者
シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)
カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
村崎・優(黄昏色の妖刀使い・e61387)
青沢・屏(シルバーの銃手・e64449)
リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)

■リプレイ

●勇士集う
 大阪府・泉佐野市、泉佐野漁港 ―― 船着き場。既に一般人の避難が完了し、閑散とした埠頭に、重厚な装甲を持つ一人のレプリカントが降り立った。
「どうやら間に合ったようだな」
 駆け寄ってくる仲間達と港の無事な姿を視界に収め、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)は安堵の呟きを漏らす。
「マークさん! ドラゴン迎撃、お疲れ様です」
 そう声を掛けたのは、青い髪と瞳を持つシャドウエルフの少女、シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)だ。
 さしものダモクレスも、11体もの合体ドラゴンが、わずか30分足らずで全滅するとは想定外だろう。
「お身体は大丈夫でしょうか。十分に休まれまして?」
 こげ茶の髪にタンザナイトの髪飾りを差した、ドラゴニアンの女性 ―― アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)が気づかわし気に声をかける。
「気遣いありがとう、アリッサム。大丈夫、ここへ来るまでに十分に休ませて貰った。体調は万全だ」
 軽く装甲を叩いて、マークはそう答えた。ヘリオンデバイスによる急速回復。これもまた、ケルベロスの新しい力の一つである。
「こっちも準備は万端だ」
 鋭い紫の眼差しで告げるのは、漆黒の髪を持つシャドウエルフの少年、村崎・優(黄昏色の妖刀使い・e61387)だ。万一にも一般人が戦場に迷い込む事がないように、今も殺界を形成して、不意の侵入を防いでいる。
「で……そっちは、どんな感じだったんだ?」
 そう問いかける優の声に、隠しきれない純粋な好奇心が浮かんで見える。無論、速報は聞いているが、実際に参加した人から詳しい話を聞けるとなれば、やはり気になる所だろう。
「あ、その話……僕も、聞きたいです」
 橙の瞳を輝かせながら控えめに申し出るのは、波打つ金髪のウェアライダーの青年 ―― 幼く見えるが、これでも二十歳越え ――である、カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)だ。期待するように、兎耳が小さく揺れている。
「そうだな、それならば……」
 マークが語り始めれば、自然と広がる歓談の輪。戦いの前の、ひと時の休息だ。
「緊張は……もう、大丈夫そうだね」
「えっ……?」
 ニッコリ微笑むシルにそう声をかけられ、茶髪に藍色の瞳の青年、青沢・屏(シルバーの銃手・e64449)はいつの間にか、強張っていたはずの身体がほぐれている事に気づく。
「なに、これだけの面子がそろっているのだ。各々が自分にできる事を確実に果たせば、それで十分だ」
 そう告げるのは、白衣をまとった金髪赤眼の女性、カタリーナ・シュナイダー(断罪者の痕・e20661)だ。仲間の不安を取り除くように、敢えて楽観を口にする。
 鋭い眼差しの、その奥に。万一の時は命を張ってでも止めて見せる、という決意を秘めて。
「皆様。そろそろ、お時間のようでございます」
 手元のアラーム付き『特製リストウォッチ』に目を落としたレプリカントの女性、リリス・アスティ(機械人形の音楽家・e85781)が仲間達にそう促した。
「っ、反応あり! 距離、約1キロです!」
 ゴットサイト・デバイスがデウスエクス反応を捕らえ、屏が警戒の声を上げる。
「速いな、もう五百を切った。来るぞ、迎撃用意!」
 カタリーナの鋭い声が飛び、ケルベロス達は一斉に武器を構え、海面を注視する。
 直後 ―― 海面が一瞬盛り上がり。盛大な水飛沫と共に、巨大ロボ型ダモクレスが、その姿を現した。

●激突
 ギィイィィィ!
 身長およそ7メートル 、2階建て住宅に匹敵する大きさの人型ダモクレスが金属装甲を軋ませながら、上陸を果す。
「青沢はこの手の任務は初参加だったな。では、派手に飾るとしよう ―― SYSTEM COMBAT MODE」
 マークがグラビティを解き放ち、己の感覚機関に巡らせた。知覚が増幅され、周囲の情景がスローモーションとなり、その身体には破術の力が宿る。
「こんなに大きなものが大暴れしたら、大変なことになってしまいますね……」
 呟くアリッサムが履く魔法のブーツから、理力を秘めた星形のオーラが浮かび出る。
「なんとしても、ここで止めましょう」
 荒事は決して、得意ではないけれど。地球と仲間を守る為、ありったけの勇気と決意を込めて。アリッサムはダモクレスへ向けて、星形のオーラを蹴り放つ。
「確かに。あの巨体は、捨て置けんな」
 赤く鋭い瞳で、ダモクレスをにらみつける、カタリーナ。
「そうだな、まずは……装甲を割るか」
 敵の巨体に高速演算を走らせ、構造的弱点を走査する。スナイパーとしての力と、デバイスの補助。それらが生み出す圧倒的な支援の下、カタリーナはダモクレスのガードを潜り抜け、その脚部に破鎧の一撃を叩き込む。
「機械如きに、私の執念が負けると思うな」
 盛大に飛び散る火花、耳を覆いたくなるような金切り音。ダモクレスの脚部装甲に確かな亀裂を刻み付け、カタリーナは会心の笑みを浮かべた。
「畜生、こっちの隙を狙ってやがって……!」
 冷気を帯びた戦輪を手に、漆黒の髪をなびかせ、優が走る。
 ジャマーはグラビティが持つ特殊効果を増幅させる力を得る。だが、今回のような戦闘では、本当に有効な手は限られてくる。
「凍り付けっ、ガラクタ野郎 ――っ!」
 射出された戦輪が増幅された冷気を放ち、魔法の氷がダモクレスを侵食し始める。
「本当に、今回のはいやらしいタイミングだね。でも……」
 シルの指に嵌まる、6色の小さな宝石が施された『精霊石の指輪』が輝き、光の剣を具現化した。
「だからといって、見逃すとかっ……そんなの、ないから!」
 すれ違いざまに、シルは光の剣を一閃。その身に宿すのは、脅威を打ち砕き悲劇を退ける、クラッシャーの力。デバイスによって更に強化されたその一撃を、仲間が作った装甲の亀裂めがけて叩き込む。
 ギギィイィィ!?
 巨大ダモクレスの装甲が激しく軋み、その巨体が僅かに傾ぐ。その時、装甲に取り付いた魔氷が更なる侵食を開始した。仲間による追撃を起点として相手を蝕む魔法の氷 ―― 手数に勝るケルベロスが短期決戦を挑む際の数少ない最適解の一つである。
 カシャ、カシャッ。
 よろめくダモクレスの全身から、小さな開閉音が聞こえてきた。重厚な装甲の溝や隙間に隠された、極小のミサイルポット群。それらが一斉に開き、大量の小型ミサイルが白煙を上げて吐き出された。
「皆さん、僕らの後ろへ!」
 そう叫んで、バトルオーラをまとい、ミサイル群へ向けて駆け出す、カロン。
「FORM CHANGE ―― GUARDIAN MODE」
 退避する仲間達と入れ替わる様に躍り出たマークは、脚部パイルバンカーを起動。コンクリートを穿ち、地面に突き刺さった杭で自身を固定。ショルダーシールドを構えて防御姿勢を取る。
 直後に着弾 ―― 立て続けに襲い掛かる、閃光・爆音・炎熱・衝撃。前衛を狙って放たれた小型ミサイル群を我が身をもって受け止める、ディフェンダーの2人。
「お二人とも、ご無事ですか!?」
 爆音の嵐が止むやいなや、爆煙を搔い潜って、メディックのリリスが駆けつける。
「うん ―― 大丈夫、だね。まだまだ、いけるよ」
 少しだけ拍子抜けしたような、カロンの笑み。
「EXACTLY」
 それに同意するように、マークが頷く。
 ディフェンダーの力と防具耐性による二重の防御効果。そこにデバイスによる耐久強化が加わった今、立て続けに10回くらい受けても、十分に耐えきれるんじゃないかと思えてしまう。
「では、予定通りに……ですわね」
 リリスが安堵の笑みを浮かべて、ブレイブマインを起動させる。
「回復はお任せ下さい。皆様は、どうぞ攻撃を!」
 力強い言葉と共に、カラフルな爆発が仲間達の背中を押す。更に強化された治癒の力が受けた傷を癒し、メディックの力が仲間を縛る麻痺の呪縛を退ける。そして、ブレイブマインに込められた勇気の力が、敵を打ち砕く力を仲間達に与えるのだ。
「うん、任せて!」
 頷き、駆け出すカロンの手のひらから現れたドラゴンの幻影が、巨大ダモクレスに灼熱のブレス吹き付け、火だるまにする。
「好きにはさせません……ゼロ・インキュベーター!」
 狙いを定めた屏が放つ、合計12発の改造弾「タイムアルター」―― 巨大ダモクレスの足元に古典時計模様の魔法陣が召喚され、その動きを足止めする。
 そして、被弾した巨大ダモクレスを魔氷が蝕み、更なる追い打ちをかける。
「効果確認、皆 ―― お願い!」
 足止めに成功し、仲間達に追撃を頼む、屏。
 これ以上先へは、絶対に進ませない ―― 背後に背負う都市とそこに住む人々を強く思い浮かべ、屏は戦場を駆ける足に力を込める。

●轟雷
「っ、今なら……やれます!」
 鉄くずで修復された巨大ダモクレスの脚部へ、アリッサムが硬質化した爪を叩きつける。仲間のグラビティで、幾重にも拘束された巨体の動きは、現れた時とは雲泥の鈍さだ。敵が得たはずの強化魔術を粉砕し、鉄くずで出来た簡易装甲をえぐり取る。
 対する巨大ダモクレスも、標的を後列へと切り替え、見えない地雷と小型ミサイルで応戦する。
「木偶の坊が、ただナリが大きいだけでは実力とは言わんぞ」
 羽織った武装白衣をひるがえし、地雷に耐え、ミサイルを避ける、カタリーナ。敵の2種類の攻撃に、防具耐性の回避と防御をそれぞれ割り当て、総合的な被害を最小限に食い止める。
「4分、経過したよっ!」
 戦闘の轟音にかき消されないよう、精一杯の大声でシルは叫ぶ。心中に浮かび上がるのは、僅かな焦り。戦況は極めて優勢だし、かなりの損傷を与えているはずだが、相手も倒れる気配はまだ見せない。
(「ううん、ダメ。焦りも、弱気も、禁物だよね」)
 不安を振り払うように、最愛の人との誓いの指輪をそっと撫で――。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ」
 今、自分がすべき事を確実に果たす為に、最大火力のグラビティに力を注ぐ。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 シルの背中に1対の青白い魔力の翼が展開され、増幅された莫大な魔力の奔流が、巨大ダモクレスへと叩きつけられる。
「まだだ……海の藻屑になるまで、全力で叩き潰してやる!」
 シルに続くように、透明な刃の特殊な喰霊刀 ―― 我零刀『織心』を手にした優が巨大ダモクレスに肉迫する。
「こおおぉわれよ!!!」
 優の右目に紫の炎が宿った。喰霊刀の刀身が灰色の岩石の様に変化し、敵の装甲の只一点に向けて、ひたすらに斬撃に斬撃を重ねてゆく、優。ジャマーで強化された増呪の力が、巨大ダモクレスを蝕む無数の呪縛を増幅させる。
 ―― ガクン。
 ケルベロス達の猛攻の中、突如、巨大ダモクレスが電源が落ちたように、動きを止めた。
「一体、何が……?」
 怪訝そうに、屏が呟く。倒した――訳ではない事は、ゴッドサイト・デバイスのデウスエクス反応からも明らかだ。
 バチリ ―― どこかで大気が焦げる音がした。
「っ、皆様 ――っ!」
 絶叫にも似た、リリスの警告。己の使命を果たす為、カロンとマークが咄嗟に走り出す。
 そして閃光が視界を埋め尽くし、落雷にも似た轟音と共に、荒れ狂う雷撃が辺りに破壊を振りまいた。

●そして、町へ
「ッ、――!?」
 退避しようとした屏の視界に、雷撃の嵐が迫る。
「耐えて、見せますっ!」
 着込んだ防具の耐性を信じて、防御姿勢をとる、屏。その身体に激しい雷撃が襲い掛かった。
「屏様っ!」
 激しい閃光の中、雷撃に耐える屏の姿を視界に捕らえ、リリスが心配そうに声を上げる。
「行こう。僕は大丈夫!」
 身を挺して、リリスを庇うカロンは、そう促した。仲間を守りたい ―― 共通の想いを胸に、2人は雷撃の嵐の中を走り出す。

 ―― ガ、ガガガッ!
 激しい雷撃を撃ち終え、全身から白煙を上げながら、巨大ダモクレスが再起動を果す。周囲には港湾設備の残骸 ―― 瓦礫の山。そして、全身に損壊箇所多数 ―― 被害は甚大だった。故に、まずは周囲の鉄くずを……。
「さぁあぁぁ」
 瓦礫の陰から、雷撃を耐え抜いた優が我零刀『織心』を手に走り出す。
「せぇえぇぇ」
 別の物陰から、シルとアリッサムも飛び出した。
「るぅうぅぅ」
 防御姿勢を解いたマークが立ち上がり、その後ろから、カタリーナがガトリングガンを突き出した。
「かぁあぁぁぁ――っ!」
 リリスから治療を受けた屏が銃を構え、カロンも負傷に耐えて駆け出した。
 敵は満身創痍 ―― この千載一遇のチャンスを逃す理由は無い!
「一斉攻撃、行くよっ!!」
 シルの白銀戦靴が宙を蹴り、電光石火の蹴りを叩き込む。
「不燃ゴミめ、調子に乗るんじゃない!」
 優が放つ、影の如き視認困難な斬撃が、敵を蝕む呪縛を増大させる。
「皆さん、あと少しです!」
 アリッサムのチェーンソー剣が装甲の亀裂をこじ開け。
「TARGET IN SIGHT」
 マークのバスターライフル ―― DMR-164C がグラビティの光線を発射する。
 ギィイィィ!?
 立て続けに被弾したダモクレスの装甲が悲鳴を上げる。被弾の度に無数の魔氷が侵食を繰り返し、装甲の内外を切り裂いてゆく。
「喰らいな!」
 カタリーナが狙い澄ませて引き金を引いた。銃口から吐き出される、爆炎の魔力を込めた大量の弾丸。それらが装甲の隙間から入り込み、ダモクレスの内部機構に致命的な破壊をまき散らす。
 パキリ ―― どこかで、何かが砕ける音がした。
 ギィ イ゛ィ゛ィ゛――ッ!?!?
 断末魔の金切り音を上げて、巨大ダモクレスの身体が崩壊を始める。
「皆、退避してっ!」
 仲間に声をかけながら、降り注ぐ金属塊から身をかわす、シル。その耳に用意したアラームの音が届く。6分経過の合図 ―― 目標撃破済、完全勝利!

「っぷぅ……これで、一件落着、かな……?」
 飛んできた金属片を払い落とし、優が安堵の声を漏らす。
「そのようだ。皆、お疲れ様だ」
 マークが戦闘モードを解除し、仲間達に声をかける。
「俺は……どうでしたか?」
 少し緊張した面持ちで、そう尋ねる屏に、
「スナイパーとして、私と共に着実に命中打を稼いでくれただろう? それで十分だ、ありがとう」
 カタリーナが豪快に感謝を述べる。
「ひとまず、傷の手当てを致しましょう」
 そう声をかけて、仲間達を癒してゆく、リリス。
「そして、手当が終わったら、後片付けですね」
 自ら治療を済ませたカロンは、率先して辺りの修復を開始する。
「せっかくだから、大阪の名物食べて帰りたいなー」
 瓦礫をどかしながら。そう呟くシルに、
「それは名案ですね! お腹も空きましたし」
 アリッサムが答え、一同の間でいつしか食べ物の話題に花が咲く。
 これから向かう、自分達が守った町 ―― そこに住む人達の営みを思い浮かべながら。

作者:okina 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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