お前の心も溶かしてやろうかぁ!?

作者:久澄零太

「くたばれリア充ども!!」
 はーいいつもの(鳥さん)でーす。
「毎年毎年想いの塊などと謳い、こんな菓子を贈り合いおって……!」
 ててーん! 鳥さんは板チョコ(税込八十二円)を取り出した!
「こんなもの、油脂と糖分の塊ではないか。こうして、こうして、こうしてくれる!!」
 ビルシャナクッキーィング!! まずはチョコを千切りして、熱湯に浮かべたボウルに入れたらヘラでゆっくり混ぜ、溶けたら専用の機器に投入。
「どうだ! 込められた気持ち諸共ドロドロである!!」
 チョコフォンデュが完成した!
「行くぞ同志達! 菓子なんぞに何の意味もないと思い知らせてやるのだ!!」
『イェスチョコ! ゴーメルト!!』

「皆様処刑のお時間です」
 開幕早々ぶっ飛んだ事を口にする四夜・凶(泡沫の華・en0169)に流石の番犬も戦慄したが、その空気をぶち壊すように大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)がどーん!
「ヴァレンティ!?」
「みんな大変だよ!」
 凶をぶっ飛ばしておいて、お決まりの台詞を口にするユキ曰く。
「バレンタインにはチョコを溶かすべしってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの!」
 とまー、ここまでならバレンタイン説得を仕掛けて鳥さんを始末するだけでよかったんだけど。
「ビルシャナは恋人がいない人を、カップルへの嫉妬を利用して洗脳してるから説得が難しいみたい!」
 ピクと、一部の番犬が動く。主に非リア充が。
「だから、リア充さんへの憎しみを語って仲間意識を芽生えさせたり、実際に恋人がいる番犬と敵対したりすると効果的だよ!」
「逆に、カップルがとことんイチャつく事で、憤死(気絶)させる事もできるようです」
 などと補足する凶があまりにも爽やかな微笑み。むしろお前が憤死するんじゃねぇかってレベルのアングリースマイル。人の恋路を邪魔する輩を灰塵に還しかねない。
「えっと……みんな仲良くね? はいこれ、喧嘩用のマシュマロ」
 不穏な空気が漂う部隊を宥め、ユキが取り出したのはマシュマロ。バレンタインにおいて最大の悪意とも言える代物をリア充に投げつける事で、敵対の芝居を打たせようとしているのだ。
「そ、それじゃ皆、頑張っていこー!」
 おー! と白猫が協調させようとするが、果たして何人の番犬が心を一つにできただろうか……。


参加者
シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)
霧崎・天音(星の導きを・e18738)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
武蔵野・大和(大魔神・e50884)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ


「ユキさん……」
 武蔵野・大和(大魔神・e50884)は大声である。太陽機が震えるくらい大声である。そんな彼が小声で呼びかけ。
「ユキさんも食べませんか?むしろ早く食べないと大変なことに……」
 大和が取り出したのはチョコクロワッサンやエクレアといった、自店で展開していたバレンタインフェア商品の数々。そして彼が警戒しているのは。
「チョコ……」
 食欲に憑りつかれて狂気に陥っているエヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)。
「あー……ありがと」
 ユキが受け取ろうとした瞬間!
「チョコ!?」
 食欲の怪物が現れた!!
「あなたにはさっきあげたじゃないですか!!」
「うにゃ!?」
 バスケットを奪われまいとユキごと持ち上げた(大和の身長は百八十オーバー、腕を伸ばせば百六十に満たないエヴァリーナでは届かない)ものの、エヴァリーナはエサを取り上げられた駄犬の如く飛び掛かり、ドンガラガッシャン!!
「おいひい……!」
「……」
「違うんです、ユキさん。僕は決してわざとじゃ……」
 よーし、状況説明するぞー。バスケットを強奪したエヴァリーナはパンを頬張り、バランスを崩した大和がユキを受け止めようとした。が、ユキは自力で着地しようとしたのに大和の腕で阻まれてしくじって。
「この……」
 大和の胸元に尻もちをつく形になったユキ、その太腿に顔を挟まれた大和という事態に。
「ド変態ぃ!!」
「どうしてこうなるんですかー!?」
 挟んだ太腿をキュッとしめ、前方に手をつき大回転。大和を脳天から床にシューッ!!視界にお星さまが流れるが、彼の災難は続く。
「俺の目の前でリア充するとは良い度胸だねん、降下する前にお前からだぁ!」
「どこがですか!?」
 白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)の血涙と白焔が大和を襲う!!
「ラッキースケベしておいて非リアを名乗るとか許さねぇぞゴラァ!!」
「火傷はパン屋にとって御法度なんですー!?」
 あ、飛び降りた!!


「くたばれリア充共ぉ!!」
「リア充が憎いですか?」
「……え、何お前?」
 所変わって現場から生中継です。何故か汗だくで現れた大和に鳥さんは軽く引いたが。
「カッコよくなりたいですか?モテたいですか?」
 非リアへの説教にも思える問いかけ。敵意剥き出しで睨んでくる信者達へ、大和は深呼吸。
「分かりました……では授業を始めます」
『え、この流れで?』
 ホワイトボードをガラゴロ。そこには三つの条件が!
「モテる人には条件があります。一つ目はやはり綺麗であること。あ、イケメンって話じゃないですよ?」
「嫌味かこの野郎!?」
 背の高い野郎に言われたら……ねぇ?大和は気にせず話を続けて。
「毎日お風呂に入って、ヒゲを剃ってますか?身だしなみを整えて『清潔感』を向上させれば第一関門はクリアです。しかし、女性の目は厳しいもの……そこで二つ目ですが」
 はい、次いくよー。
「腕や脚のムダ毛などが見えてしまえば、全ては無駄な努力です。他人を恨む前に、何もしない自分を恨むべきです。清潔感に磨きをかける、爽やかさを持ちましょう」
「分かった、おめー喧嘩売ってるな!?」
 羽毛に包まれた鳥さんにそりゃーねぇっすよねぇ。
「そして最後に、続けること……今から努力しても遅くはないです。だけど、カッコよくなるのは修羅の道です。一年単位の時間と一万越えのお金は覚悟してください」
 と、大和が締めくくると。
「こちとら十年頑張ってもモテなかったんだよぉ!!」
 やべー信者がいたものだ……。
「デストロイでござーる……デストロイでござーる……」
「な、なんだ?」
 信者の悲痛な叫びに呼応して、鍋が泡立ち始めたかと思えば。
「りあじゅーはデストローイでござーる」
 ヌロォ……チョコ鍋の中からカテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)が湧き出した!?
「なんだ貴様!?」
「拙者は血のバレンタインで流された英霊の血を、リアじゅーデストローイの神の祭壇に捧げて、汝ら非リアの戦勝を祈願する者でござる……」
 穏やかな視線を向けるカテリーナ、その手には真っ赤な液体が……。
「バレンタインとは、後に『血のバレンタイン』と呼ばれる、『嫌な……事件だったね』としか言えない一日でござる。やるのは、今でござるよ」
『何を!?』
「やらないか」
『だから何を!?』
 物騒な話をするカテリーナについていけない信者と鳥さんだが、突然彼女は鳥さんにヘッドロック!嘴から真っ赤な液体を流し込みつつ。
「あれでござるよ、お主等が有り難がってるボインちゃんとか、ぶっちゃけチョコと同じ油脂の塊でござるから、ボインちゃんスキーは裏切り者でござるな!ちなみにコイツの正体はオレンジジュースでござる。ドロドロのチョコにたわわな果実を組み合わせてエクスタシーとか言い出すんでござろう!?」
 やめたげてよ!鳥さん発言はおろか呼吸すらままなってないでしょう!?
「さぁ信者達よ、魔女狩りでござる、巨乳好き狩りでござる!ボインの中身は油脂、即ちチョコのお仲間……それが好きな奴はリア充でござる!」
「……なかなかおいしいジュースだね」
「HAHAHA!そうでござ……ろ?」
 背後から聞こえた声に、カテリーナが固まった。
「ウォッカと半々で混ぜて呑んだら、今夜はハッピーになれそう。激しい戦闘のあとには補給が不可欠、決してオーバーカロリーじゃない」
 ぎ、ぎ、ぎ、錆びついた動きで振り返ったら、姉ことリティが酒瓶片手に出来上がってた。
「その脂身はチョコと同じか……じゃあ、フォンデュってみる?でも、その前に湯煎しないといけない……熱湯風呂だな」
「ちょ、姉上!?さっきの登場は色々小細工があったからできたことであって……!」
 カテリーナの頭を掴み、煮えたくるチョコ鍋の中に押し込もうとするリティは首を傾げて。
「テンパリングって……テンパる+ingってこと?まさに今のおまえだな」
「姉上飲み過ぎでござるよ!?」
「HAHAHA、私は全く酔ってないでござる」
「パーフェクツにべろんべろんでござる!?」
 ドブッ……カテリーナはチョコ鍋に消えていった。


「むぅ、また変な鳥が現れたんだね。年がら年中現れるけど、見かけたらどんどん駆除するよ!」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)よ、何故鍋の蓋を持っている?
「チョコを台無しにする鳥さんだもんね、チョコをお風呂にするなんてもったいないこと、許せない!」
 おい待て!鳥さんは鍋の横でくたばってる黄色い奴で、鍋の中の金髪は……!
「えーい!」
 あぁ!リリエッタは鍋に蓋をすると火力を最大に!
「ござぁああああ!?」
「ふぅ……駆除、かんりょー!」
 断末魔を聞き遂げたリリエッタだが、信者を前に会議室の話を思い出す。
「説得が難しいんだっけ……えっと、リア充?」
 ぽく、ぽく、ぽく、チーン♪
「むぅ、リリ、りあ充とかよく分からないけど、バレンタインは友達と仲良く遊ぶ日だよね?」
 正解なんて出なかった!!
「この前は、このチョコ菓子を両端から食べていく遊びしたよ。んっ、勝敗はよく分からなかったけど折れなかったから引き分けなのかな?」
 リリエッタが取り出すのは主に十一月辺りに活躍しそうな、チョコ掛けの棒状プレッツェル。一部界隈ではリア充の象徴(?)たる代物を前に、信者は既に額というキャンパスに青筋で抽象画を描いている。ところで、折れなかったって事は最終的に……あ、はい、真面目に仕事します。
「ゲームして遊んだ後は一緒にお買い物にも行ったよ。すごく寒かったからリリがプレゼントしたマフラーを一緒に巻いて歩いたよ」
『このリア充が!!』
 信者の一部が血管を爆散させてぶっ倒れた!その光景を目の当たりにした霧崎・天音(星の導きを・e18738)がきょとり。
「リア充……つまりそれは……?」
 天音が導き出した答え。それは……。
「友情の、一種?」
 そっち!?
「地異さんのことを思い出して……ついつい一緒に居たときのことを思い出して、それで恥ずかしくなったりするけど……私はそういう日々もいいなと思う……」
 ふと、胸を締め付けるような苦しさはあるけれど、決して不快なものではなく。
「……友達、なのかな……でも私は、たまに一人も悪くないかなと思う……みんなもきっとそんな気持ち……かな?」
 不思議な苦しみを抱き留めるように、胸元に両手を重ねて、その心を映すことは滅多にない表情が微かに和らいだ。人はその感情を、きっと愛と呼ぶのだろう……ただまー、そう綺麗に纏まるのってシリアスな依頼の話でね?
『くたばれド畜生!!』
 信者が悔しさのあまり、壁に頭突きして自爆……周囲は戦ってもないのに血まみれである。
「今回は……どう転んでも大惨事にしかなりませんよね?」
 貴様はクリーニングのバイトで来たディッセンバー!
「掃除道具は準備万端です。須らく綺麗に収納、処理しましょう」
 広がる影からモップとバケツを出したり、影が撫ぜた跡が塵一つ落ちてなかったり……待って、掃除道具出した意味、ある?
「こういうのは気分でございますよ」
 雑ぅ!?
「チョコフォンデュ会場はここー!?」
 うわぁ……次はエヴァリーナかぁ……。
「凶くん凶くん、一緒にフォンデュしながら恋バナしよー……ほっといたらチョコ蒸発しそうだし」
 遠い目をしつつ、ここまでに出てきたコイバナ(無自覚)に想いを馳せながら。
「私には幼馴染で彼氏なたっくんがいるんだけども、ご近所さんで生まれた時からのお付き合いだからこう出会いエピ的なのがなくってね……だから他の皆のお話しも聞きたいな」
 何気に出会いの物語って出てこないんですよ、えぇ。
「結婚の約束は幼稚園の時にしたんだけど、気づいた時にはもうラブラブだったなー」
 てへ、などと照れ隠しに苦笑する彼女は、珍しくチョコ(食べ物)に手を出さずに虚空を見上げて。
「うちは一人に恋して一生涯一直線な一族で、それをお母さんから聞いたたっくんが「他の奴相手にそんなのダメ」って貯めてたおこづかいで指輪買ってプロポーズしてくれんたんだよ」
 幼い頃に貰った、おもちゃの指輪。今となっては左手の薬指を飾るには小さいけれど、繋がれた赤い糸は途切れぬままに……。
「……あれ?」
 妙に静かだなーってエヴァリーナが凶を見ると。
「いい話ですねぇ……」
 泣いてた。こいつ長くねぇから、涙腺脆いんだよなぁ……そんな傍らで、シル・ウィンディア(鳳翼の精霊姫・e00695)がとことこ。
「鳥さん。これ、よかったら食べて?」
 ブロックチョコ(一キロ、業務用)が捧げられた!そんな鳥さんの肩を、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)がもふん。
「チョコは溶かさないとダメっすよね」
 純粋無垢な微笑みで、『中身』が取り出された鍋を綺麗に洗ってから。
「まさか裏切る気じゃないっすよね?」
「当然だろうがゴラァ!!」
 鳥さんへシルフィリアスが寸胴鍋を差し出すと、チョコをシューッ!からの麺棒でブレイク!火にかけてメルティング!!なお、近くにブラッドオレンジの果汁で「ペタンスキー」のメッセージを残して力尽きているカテリーナが落ちているが、そちらに触れてはならない。
「この時期にチョコとか嫌がらせかぁ!?」
「全てのチョコは溶かされてフォンデュされるのがこの世の真理っす……!」
 鳥さんを裏切り者に仕立て上げようとしたらしくじったため、せっかくだから(?)信者になってみたシルフィリアス。彼女の魔法の炎でチョコを融解させた鳥オバケに、永代が指を突きつけて。
「あの鳥、女の子からチョコを貰いやがったぞ!?粛清、粛清だ!!」
「チョコなんだから喜べよって雰囲気が駄々洩れだろコレェ!!」
 鳥さんと永代が正面衝突!憎悪の業火と粛清の白焔がぶつかり合い熱血バトル漫画に見える!……暑苦しいなあそこ。
「その熱意(物理)で焦がされたら大変っすからね、これはチョコ管理の上で必要なことっす」
 おいコラシルフィリアス、ホットミルクと混ぜて飲みながらサボってんじゃねぇ!!
「ん-、どうするかなぁ……あ、五年前のクリスマスにお友達から始まった関係の恋人さんと今年、結婚式あげますっ!」
 その瞬間、戦場が凍り付いた。説得という名の惚気話を披露しようとしたシルが、色んな意味でトドメを刺した瞬間である。
「お相手の彼女さんは、まだ婚姻できる年齢じゃないけど……一つの区切りってやつでね?これがもう、かっこよくてかわいくて……もう、メロメロってこういうこと言うんだよねー♪」
 両手を頬に当てて、ぎゅっと目を瞑れば目蓋の裏に焼き付いているのは恋人の姿。恥ずかしさから身をくねらせるシルを前に、エヴァリーナはチョコ鍋を、大和は信者を抱えて逃走。気絶したカテリーナを永代が引きずって、鳥オバケは覚醒イベントかな?ってレベルに重力鎖を強めるものの。
「そして、去年のクリスマスにこの指輪を贈りあったの。下がプロミスリング、上がエンゲージリングなの。ダブルリングってやつだね」
 左手薬指に重なる二つの指輪を示し、「キャーッ♪」と感情の高まりからハートを形作る重力鎖をまき散らすシル目掛けて、異形が動いた。だが、ディッセンバーとリリエッタが布を広げた直後、血飛沫が舞う。布で受け止めてシルへの返り血を防いだディッセンバーが一礼、リリエッタが布をくるくるして証拠隠滅。炭化した異形は朽ち果てた。
「アレが恋路を阻んだ人の末路ですか……あんな馬には蹴られたくありませんね」
 戻ってきた大和が「うわぁ……」って顔するが、その光景をじっと見ていた天音がきょとり。
「人馬じゃなくて天使だよね……?」
「物の例えですよ!?」


「くっそう!どいつもこいつもリア充しやがって!!」
 永代が号泣しながら帰宅。その漢泣きを聞いて、シルははたと我に帰り。
「……あれ?」
 鳥さんも信者もおらず、シルは疑問符を浮かべるが真の敵が立ちはだかる……。
「人前でいちゃいちゃするんじゃねーっすよ!」
 食虫植物みたいな髪を揺らがせるシルフィリアスである!
「バレンタインとは愛を祝う神聖なる日っす」
 語るのはいいけど、先にその口周りのホットチョコを綺麗にしようか?
「おっと……(ごしごし)こほん、その神聖な日に羽目を外していちゃいちゃいちゃいちゃとするなどと許されることではないっす!」
 憎悪のあまり、偽シルフィリアスかな?ってほど怒り狂い、シルフィリアスのシルエットをした何かへとなり果てている紫オバケ曰く。
「そう、カップル共に裁きを与えるのは正義の行いっす!」
 先端に紫の宝石が付いたステッキを素振りし始めるのだが……あの宝石濁ってない?非リアの憎悪に染まり切ってない!?
「食らうっす!正義の鉄杖!!」
 振るわれた杖がシルの臀部を強打ァ!!
「いったぁい!?」
 被弾箇所を押さえて後ずさるシルは既に涙目だが、シルフィリアスの憎悪は止まらない!
「ちょ、マシュマロを投げるって話じゃなかった!?」
「うるさいっす、正義の前にそんな細かい事はどうだっていいっす!」
 謎の攻防が繰り広げられる様子を傍らに、リリエッタがマシュマロを構え。
「えーい」
「ナイスパス」
 もっきゅもっきゅ、天音が口で受け止めて食べてる……マシュマロ戦争かと思ったら、アグレッシブオヤツタイムになってた。
「食べ物で遊んじゃだめですよー」
 大和が声をかけつつ、マシュマロかじってたらエヴァリーナが両手を挙げてノーガードアピール。
「さぁ、リア充にはマシュマロでしょ!」
 食う気満々のエヴァリーナに大和は言いづらそうにして。
「マシュマロって、恋人と別れるお菓子ですけど、大丈夫ですか?」
「……えっ」
 パン屋の大和せんせー曰く。
「画面端に「尺がねぇ!」ってフリップも出てますから詳細は省きますが、マシュマロは『お前なんか嫌い』クッキーは『これからも変わらずよろしく』キャンディが『末永くよろしくお願いします』って意味がありまして……」
「え、そうなの?でも……」
 話が聞こえたシルが、ぽっ。
「あの人ならむしろマシュマロみたいに全てを受け止めてくれる気がするなぁ……」
「ごふぅ!?」
 嫁(旦那?)の格闘少女を想い、まーた赤面するシルを相手にシルフィリアスが吐血。
「よりによって、似たような名前の相手にやられるなんて……がくりっす」
 死因、急性恋愛糖中毒。
「マシュマロ……でも縁起が……!」
 食欲か、愛欲か、揺らぐエヴァリーナの肩をリリエッタがぽむん。
「ドーナツやバームクーヘンも、美味しいよ?」
「私の救世主さん……!」
 救われたような顔をするエヴァリーナだが、そんなもん大量に持ってなくて絶望する三十秒前のことだった。

「ってゆーことがあってさ……」
 場面変わってヘリポート。一足先に(勝手に)帰ってきた永代が、部隊回収に備えて準備してたユキに愚痴ってるという酷い光景が展開されております。
「なんで戻って来ちゃったの……はい、お菓子でも食べて待ってて」
 ユキが永代にビニル袋に入ったクッキーを渡しながら、作業を進めていると。
「ありがと……菓子貰おうとすると凶が安牌ってのが苦ッ!?なにこれ?毒物!?」
 凶の菓子だと思ってかじった結果、一瞬気絶しそうになった永代へ。
「……どうせ苦いもん」
「……へ?」
 プイ、ユキはそっぽを向き、永代はしばらく呆けていた。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。