最強、熱血ロボ!?

作者:雷紋寺音弥

●熱血ロボの叫び
 愛知県西尾市。
 県内第9位の人口を誇り、抹茶の産地としても知られる、『三河の小京都』の別名を持つ中規模都市。
 だが、西尾駅を中心とした市街地が広がる一方で、中には鉄道路線が廃止されてしまった閑散とした場所もある。それに伴い廃駅となった、松木島と呼ばれる場所で異変は起こった。
「……ウォォォォッ!!」
 廃駅をブチ抜いて地下から現れたのは、妙に悪役じみた、それでいてどこかヒロイックな外見をした巨大ロボ。胸元には髑髏を思わせる怪獣の頭。背中にはコウモリを思わせる翼が生え、両足は太股よりも脹脛の方が太い。
 典型的な、スーパーロボット型のダモクレスだった。長きに渡る封印より目覚めしそれは、身体に付着した土塊が落ちる中、静かに周囲に広がる街を見渡して。
「足リヌ……足リヌゾ! 俺ノ! 動力炉ヲ! 燃エ上ガラセル、タメノ! グラビティ・チェィィィィィン!!」
 何故か、機械音声でありながら妙に暑苦しい叫び声を上げると、両手を高々と掲げて体内に残されたエネルギーをかき集め始めた。
「フンヌゥゥゥ……サンシャイン・ブレイザァァァァッ!!」
 巨大なエネルギー球を、野球ボールの如く投げるダモクレス。その球体が直撃した地点から凄まじいキノコ雲が上がり……やがて、西尾の街は僅か数分で、ペンペン草も生えないような焦土と化した。

●強くて熱い強敵
「召集に応じてくれ、感謝する。愛知県西尾市の旧松木島駅跡で、大戦期に封印された巨大ロボ型ダモクレスが復活することが予知された」
 毎度のことで申し訳ないが、大至急、現場に向かって対処を頼む。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)はケルベロス達に、今回の敵についての詳細を語り始めた。
「復活する巨大ロボ型ダモクレスなんだが……どうにも、季節感を読めない暑苦しいやつでな。子ども番組のヒーローロボットが、そのまま悪堕ちしたような姿をしている」
 その姿形に違わず、攻撃技も必殺技級の威力を誇るものばかり。攻撃力に特化しており、その火力は通常状態でも直撃を食らえば無事では済まないほど。それにも関わらず、戦闘中に一度だけ、捨て身のフルパワー攻撃を仕掛けてくるというのだから、その攻撃力は推して知るべしといったところだ。
「事件発生時、付近住民には避難勧告が出されることになっている。破壊された町の修復もヒールで可能だ。フルパワー攻撃を使用すると反動で自分もダメージを受けることや、戦闘開始後に7分経過すると魔空回廊を開いて撤退するのも、今までの巨大ロボ型ダモクレスと同じだが……」
 他の個体と異なる点としては、やはり敵の暑苦しさが挙げられる。なんでも、このダモクレス、攻撃の度に暑苦しい必殺技名を叫びまくるのだとか。
 心を持たないダモクレスには、当然のことながら感情などない。恐らく、何かの理由で、そういった台詞を吐くようにプログラムされているのだろう。制作者の趣味と言われればそれまでだが……いったい、何を考えてこんなダモクレスを作ったのだろうか。
「敵は冗談のような外見をしているが、その攻撃力は脅威だからな。エネルギー球を投げ付ける、音波兵器であらゆる物体を振動させて破壊する、見えない重力波で捕らえた相手に必殺の正拳突きを食らわせる……どれも、恐ろしい攻撃には違いない」
 ちなみに、このダモクレスが封印されている松木島駅跡。建てられた当初は、神谷駅という名前であったらしい。
「神の谷に封じられた熱血ロボか……。どちらにせよ、ダモクレスの連中との決戦も、そう遠くない日のことかもしれないからな。こんな火力の化け物を、連中の戦力として合流させるわけには行かないぜ」
 これまで数多の激戦を潜り抜けて来た、地獄の番犬の力を見せてやれ。そう言って、クロートはケルベロス達に、改めて巨大ロボ型ダモクレスの撃破依頼した。


参加者
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
呉羽・律(凱歌継承者・e00780)
伊上・流(虚構・e03819)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●復活の熱血巨人
 土塊を巻き上げ、咆哮と共に復活する機械の巨人。さながら、SF映画のワンシーンのようだが、これは紛れもない現実だ。
「ほぉ、如何にも漫画やアニメとかで出てきそうな程の立派な巨大ロボだな……」
 髑髏の如き怪獣の顔を胴体とし、そこから生えた太い手足。まるで、アニメの世界から飛び出してきたようなダモクレスに、伊上・流(虚構・e03819)は思わず見上げて呟いた。
「むぅ、なんとなく元プロ野球選手だったりサッカー部に所属してたり、空手家とかが乗ってそうだけどそんなことないかな?」
 その隣では、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が何やら呟いていたが、細かいことは気にしたら負けだ。というか、そんなこと言っていると、今に走るだけで衝撃波でその辺を破壊したり、古代の超パワーに覚醒しちゃったりするかもしれないぞ……なんとなくだが。
「……正義のヒーローロボが、なぜお茶の産地を急襲してるのかしらね?」
 この地を破壊されたら、名産品の西尾茶が飲めなくなってしまう。願わくは、ヒーローごっこはあの世でやって欲しいと思うエニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)だったが、そんな理屈がダモクレスに通用するなら苦労はしない。
「ウォォォォッ! ゴォォォッド・シャァァァァウトォォォォッ!!」
 ケルベロス達を発見するなり、巨大なダモクレスは胴体部の怪獣の口を開き、そこから凄まじい咆哮を発射して来た。単なる音だというのに、まるで突風を浴びたように全身が震え、周囲の建物がガラスを砕かれながら倒壊して行く。
「……ッ!? なんというパワーだ。それに、技名叫ぶとかなんて暑苦しい敵だ……だが嫌いじゃない♪」
 鎧を早くもズタズタにされながら、それでもジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)は、どこか嬉しそうな表情で立ち上がる。久々の強敵を相手に、身体が滾って仕方がないという程に。
「神の谷に封じられたロボ……か。此方には宇宙から降り立った心持つロボがいるぞ」
 同じく、呉羽・律(凱歌継承者・e00780)もまた、その身を引き裂かれても怯むことなく立ち上がった。所詮、敵の叫びはプログラムされて紡がれた言葉。そんなものに、燃える魂のパワーなど存在しないはず。
「心の内より出づる言葉こそが己を奮い立たせる力……そうだろう、相棒?」
「無論だ。今こそ、それを思い知らせてくれようぞ!」
 防具でダメージを軽減し、徹底的に守りを固めた律でさえ、先の攻撃に4回ほど耐えられれば良いところ。それでも、二人は決して怯みはしない。ここで敗北することは、即ち自分達の中に宿した、魂の炎を否定することになるのだから。
「何とも暑苦しい必殺技を叫ぶダモクレスも居たものね。でも……必殺技は、名前がカッコ良ければ良いと言う訳では無い事を教えてあげるわ」
 必殺技に必要なもの。それは強大な威力でもなければ、カタカナだらけの名前でもない。その内に秘めたる正義の心こそ大切なのだと、リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)は仲間達を集め。
「皆、この魔法陣に入って。守りを固めるわよ」
 次なる攻撃に備え、まずは防御を固めて行く。これより7分、今までになく暑苦しい激闘が、西尾の街にて幕を開けた。

●戦慄の処刑タイム!?
 使う技全てが必殺技級の威力を誇り、おまけに攻撃の度に技名を叫ぶというダモクレス。
 想像通り、これはなかなかに暑苦しい敵だった。が、単に暑苦しいだけでなく、その実力は侮れない。
「大丈夫よ、落ち着いていれば安全だから」
 鎮めの風で仲間達のフォローに回るリサだったが、正直なところ、手が足りていないのが現状だった。
 敵の攻撃で厄介なのが、初撃にも繰り出してきた音波攻撃。あれを食らうと、こちらの防具が破壊されてしまうので、できれば即座に修復したい。
 だが、それを行ってしまうと、どうしても負傷の激しい者……特に、先程から独りで仲間の盾となっている、律へのフォローが甘くなる。
 できることなら、彼を最優先に回復しておくべきなのだ。が、しかし、それで他の仲間達へのフォローが手薄になったところを狙われ、特大のエネルギー球でも叩き込まれれば、それで戦列を崩壊させられてしまう。
「心配は無用だよ。俺のことより、他の者が倒れないように立ち回ってくれ」
 自らの歌で自らを癒しながら、律が言った。リサと比べ、気休め程度にしか体力を回復させられないが、何もしないよりはマシである。
「鳥型とか恐竜型とかにも変形しそうだけど壊れてるのかな? とにかく、攻撃力を削らないとだね……」
 このままでは、今に誰かが倒れてしまうと、リリエッタがスコープの照準を合わせて敵を狙い撃つ。これだけ巨大な的だ。狙わなくとも外しはしないが、彼女の目的は敵の急所を射抜くことではなく。
「……全部、ゼロにしてあげるよ」
 暑苦しい叫び声ばかり上げていないで、少しばかり頭を冷やせ。超重力の中和光線を浴びせることで、敵の攻撃力を削ぐのが目的だ。
「ウ……ォォォォッ!!」
 全てのグラビティを中和する波動を受け、敵の巨体が揺れた。こんなロボでも、熱血魂をクールダウンさせられてしまうと何らかの影響があるのだろうか。真偽の程は定かでないが、リリエッタの攻撃を嫌がっているのは確かであり、それは同時に敵の狙いが、前衛からリリエッタに移るということでもあった。
「ヌゥゥゥゥ……グラビティィィィ・ウェェェェイブ!!」
 突然、敵が掌を突き出し、そこに刻まれた複雑な紋様が光り出した。それと同時に、周囲の道路を舗装していたアスファルトが砕けて宙に舞い、物体が重力に逆らって、リリエッタを中心に収束して行く。
「あれは……まずいな、このままでは圧し潰されるぞ」
「リリエッタさん、避けて!!」
 敵の攻撃の性質に気づいた流とリサが叫ぶも、もう遅い。敵の放った重力結界は完全にリリエッタを捕らえており、そこへ更なる追い打ちとして、巨大な拳が迫り来る。
「ォォォォッ! 必殺ゥゥゥ! 超重力ゥゥゥ! 正拳突キィィィィッ!!」
 身の丈程もある拳の一撃が、動けないリリエッタに真正面から激突した。衝撃で吹き飛ばされた小さな体は半壊したビルに激突し、そのままコンクリート壁をブチ抜いて、ビルもまた音を立てて崩れ落ちる。
 鉄塊さえも、粉々に粉砕する程の威力を持った一撃。まともに食らえば全身の骨も内蔵も砕かれ、赤い染みにされてしまうかもしれなかったが。
「……むぅ、熱したり冷やしたりされた後だと危なかったかもだよ」
 白煙の中から、リリエッタは満身創痍になりながらも辛うじて生還した。もっとも、その傷は決して浅くはなく、少しでも急所に近い場所へ直撃していたら、それだけで戦闘不能にさせられていた程だった。
「やってくれるな……。だが、叫びならこちらも負けん!」
 制限時間は既に半分近くが過ぎ去ろうとしている。ここで巻き返さねば勝機はないと、まずはジョルディが高々と跳躍し。
「ドゥァァァァブルゥッ! ディッヴァァァァイドォッ!」
 手にした二振りの戦斧を、真正面から叩きつける。負けじと自分も技の名を叫び、それに合わせて力任せに刃を押し込んで行き。
「素晴らしく刺さる見た目ですが、敵であるならば素晴らしく邪魔臭いですの」
 続けて、追い打ちとばかりにエニーケが、星形のオーラを蹴り出した。見た目はなかなかファンシーだが、それでも威力は抜群だ。オーラの刃は敵の装甲を容易く切断し、怪獣の顔に深々と亀裂が走った。
「悪いが、まだ終わりじゃない。これも受け取ってもらおうか」
 装甲に走った亀裂を狙い、流もまた斧を振り下ろす。さすがに、こう何度も同じ場所を攻撃されては、巨大なダモクレスとて堪らない。
「グ……ギギギ……」
 金属が擦れるような音を立てながら、火花を散らして巨体が退く。一瞬たりとも気の抜けない攻防。互いの死力を尽くした戦いは、ようやく折り返しに向かおうとしていた。

●激突! 必殺技VS必殺技!
 使用する技の全てが必殺技である敵が現れたとしたら、多くの者はどう思うだろうか。
 必殺技など、隙だらけで大振りな技が多いのだから、余裕で回避できると言うだろうか。それとも、エネルギーの消耗が激しいのだから、逃げ回ってガス欠を狙えばいいと言うだろうか。
 一般的なロボットアニメであれば、それは正解になったのかもしれない。が、しかし、西尾の街で起きている戦いは、アニメではなく現実だ。そして、暴れているのは正義のロボットではなくダモクレスである以上、人間の想像した通りに動いてくれるとは限らない。
「まったく……いい加減に、倒れなさいな。グラビティ集めのための破壊活動などというふざけたことをしてると、殺しますわよ」
 抹茶の畑へ敵を行かせないよう牽制しつつ、エニーケは思わず悪態を吐いた。
 強力な攻撃を、適格に命中させて来る厄介な相手。冗談のような外見に反し、予想以上の強敵だ。
「残り時間がない……。もう、これ以上は限界ね」
 仲間のフォローに回っていたリサも、ついに守りを捨てて攻撃に出る。敵は未だ本気を見せていないが、このチャンスを逃してしまえば、ギリギリのところで討ち漏らしてしまうかもしれない。
「この電気信号で、痺れてしまうと良いわよ」
 高速で流れる電気信号を放ち、リサは敵の動きを止めようとした。しかし、初手で食らわせていたのならまだしも、残り時間が殆どない今の状況では、さしたる効果も期待できず。
「ん、だったら、リリ達で動きを止めるよ」
「ここで逃がしてなるものですか! 正義の力を思い出させていただきますわよ!!」
 敵が次なる動きを見せる前に、リリエッタとエニーケが、それぞれ切り札を発動させる。リリエッタがピラーを掲げれば、それは彼女の背後に白羊宮の星辰を刻み、エニーケの身体には空想への憧憬と妄想への依存が、それぞれエネルギーの奔流となって流れ出し。
「行け……スターイリュージョン……」
「空想と妄想の力、お借りします!!」
 リリエッタの背後から白羊宮を形作る星々が、黄金の流星となって降り注ぐ。その一方で、十字に組まれたエニーケの腕から必殺の光線が放たれ、それぞれ巨大なダモクレスを圧し潰して行く。
「ヌゥゥゥゥ……オォォォォンッ!!」
 だが、それでも敵は最後の力を振り絞り、彼女達の攻撃を跳ね返した。強引に振り切ったので、腕は半壊。装甲もめくれ上がり、まともに戦えるような状態ではなかったが。
「フンヌゥゥゥ……サンシャイン・ブレイザァァァァッ!!」
 両手を高々と掲げて体内に残されたエネルギーを集めると、巨大な球体にして投げつける。その狙いが自分の相棒に向かっていると気づき、律が咄嗟に飛び出した。
「下がれ、相棒!」
 光がゆっくりと、しかし確実に迫ってくる。避けようにも避けられない。時間だけが緩やかに流れ、閃光に視界が包まれて行く。
「なっ……!? 相棒ぉぉぉっ!!」
 目の前で巻き起こる凄まじい爆発。手を伸ばせば届く距離にいながら、それでも届かず、ジョルディは叫ぶ。
「くっ……おのれ……やってくれたな!!」
 やがて、視界が晴れたところに現れたのは、力尽き果てた律と、怒りに震えるジョルディだった。
 戦いの始まった序盤から、懸命に仲間の盾となっていた律。だが、そんな彼が、実は最もこの中では打たれ弱かった。いかに守りを固めようとも、体力の低さは誤魔化せない。度重なる攻撃の雨を受け、そこに敵のフルパワー攻撃を食らってしまえば、さすがに耐えきることはできなかったのだ。
「すまぬ、相棒……お前の思いは、俺が引き継ぐ……」
 倒れている律の腕から腕輪を外し、ジョルディはそれを自らの腕に嵌めた。彼のフォローなしに必殺技を使うつもりなどなかったが、ここは出し惜しみなどしていられない。
(「相棒……俺に力を貸してくれ!!」)
 反動で動けなくなっている敵に、正面から向かい立つジョルディ。そのまま高々と跳躍すると、自らの持つ武器と肉体を合体させ、巨大な斧に変形させて突撃する。
「超絶変形武機一体! 破断形態『ブレイカー・フォーム』! 今、悪を破壊し闇を断つ……超必殺! ジョルディィィ……ダァァァイナミィィィック!!」
 攻撃の際の隙も、大振りであるが故の当たりの悪さも、全て無視した渾身の一撃。さすがに、これを受ければ巨大なダモクレスとて無事では済まないと思われたが……なんと、敵も然るもので、ジョルディの攻撃を両腕を十字に交差させることで受け止めようとしたではないか!
「ぬぅぅぅ……俺は……俺達は、負けん!!」
 だが、やはり最後は気合の差か、それとも半壊状態で無茶なことをして限界を迎えたのか。
 ジョルディの変形した戦斧が敵の腕に命中した瞬間、凄まじい爆発が巻き起こった。爆風の中から、吹き飛ばされてくるジョルディの身体。変形を解き、なんとか受け身を取ったところで、改めて煙の立つ方を睨みつけ。
「……やったか?」
「ん、まだみたいだね。怪獣の頭だけが逃げ出すよ」
 見れば、リリエッタの指差す方向には、巨大な怪獣の頭だけが飛んで行く。両腕、両足、そして頭まで失っても、胴体部を構築していた怪獣の顔だけで、敵のダモクレスは空高く逃げ出した。
 このままでは完全に逃げられてしまう。もっとも、既に戦うための武器もエネルギーも失ったダモクレスなど、今のケルベロス達の敵ではない。
「……斬り断つ!」
 崩れたビルの瓦礫を足場にして、流が一気に空へと駆け上がる。狙いは勿論、敵の中枢。研ぎ澄まされた斬撃を幾度となく浴びせれば、その度に白い数式や数字の羅列が輝き、飛び交い……最後は元の形さえ分からぬ程に、塵一つ残さず消滅させた。

●正義の源
 戦いが終わってしまえば、西尾の街は元の静けさを取り戻す。暑苦しい敵との戦いがあったとはいえ、まだまだ実際は肌寒い季節。
「ここの抹茶は美味しいのですわよね……。遠くからわざわざ取り寄せて嗜む程に、ですの」
 できれば、街の修復が終わったところで、一緒に茶屋でも探さないか。そんなエニーケの言葉に頷きつつ、リサもまた修復途中のビルを仰ぎ。
「どれだけ強い必殺技でも……魂がこもっていなければ、何の意味もなかったわね」
 必殺技とは、単に威力の高い技のことを指すのではない。それが分からなかった時点で、いくら熱い叫びを再生したところで、全てはイミテーションに過ぎないのだと。
「確かに……仲間がいないと……虚しいものだよ。それは、相棒がよく知っていると思うけれど?」
 そんなリサの言葉に賛同しつつ、律がジョルディの方へ視線を向けた。
 今までも、そしてこれからも、仲間がいるから戦える。それこそが、正義の源であり、ケルベロス達の強さ。魂の叫びを生む本質なのかもしれないと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月6日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。