●都内某所
とある湖の底に、ラジコン飛行機が沈んでいた。
ラジコン飛行機が沈んだのは、持ち主の操作ミス。
びゅーんと飛んで、ちゃぽんである。
しかも、回収される事なく、そのまま放置。
そのため、身体のあちこちが悲鳴を上げても、誰も助けてくれなかった。
それでも、ラジコン飛行機は、願った。
誰かが現れる事を……。
再び空を飛ぶ事を夢見ながら……。
そんな中、ラジコン飛行機の前に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、ラジコン飛行機の中に入り込み、機械的なヒールをかけた。
「ラジコォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
次の瞬間、ダモクレスと化したラジコン飛行機が爆音を響かせ、空に飛び立った。
●セリカからの依頼
「兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)さんが危惧していた通り、都内某所にある湖で、ダモクレスの発生が確認されました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある湖。
ここに沈んでいたラジコン飛行機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、ラジコン飛行機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ラジコン飛行機はダモクレスと化した事で、禍々しい姿になっているものの、空を飛ぶ事が出来るらしい。
ただし、あまり高く飛び事が出来ず、無理をすると煙を噴いてしまうようである。
そのため、低空飛行で攻撃を仕掛けてくるため、普通に戦っていれば、苦戦をする事もないようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716) |
九竜・紅風(血桜散華・e45405) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に現れるとは驚きましたね。ともあれ、人々に危害が加わる前に、何とか倒してしまいましょうか。幸い、いまなら大きな被害を出す事なく、終わらせる事が出来そうですしね」
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された湖にやってきた。
その湖は、とても水が澄んでおり、デートスポットとしても、知られている場所であった。
ただし、今日は平日の昼間。
そのせいか、湖にカップルの姿はなく、小鳥達の囀りだけが、辺りに響いていた。
「今回倒すのは、ラジコン飛行機のダモクレスか。……懐かしいね。俺も昔はよくラジコン飛行機で遊んだものだよ。でも、操作が難しくて壊れる事も多いから、ダモクレス化するのが居てもおかしくないね」
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が昔の事を思い出しながら、何処か遠くを見つめた。
幸い、辺りに人影はない。
その代わり、小鳥達が楽しげに囀っており、幸せな一時を過ごしているようだった。
「まぁ、操作が難しければ墜落するのは一度はある事だが、それが湖の中とは不運だな」
九竜・紅風(血桜散華・e45405)が複雑な気持ちになりながら、ダモクレスが確認された湖に視線を送った。
普段であればカップルが乗るボートが何隻も浮かんでいるようだが、今は何も浮かんでいない。
その分、ダモクレスと戦いやすくなっているものの、空を飛ぶという点が引っ掛かった。
セリカの話では、それほど高く飛ばないという話であったが、実際に見て見ない事には分からない。
万が一、空高く飛び上がった場合は、圧倒的にこちらが不利になってしまうだろう。
「……ん?」
そんな中、湖がポコポコと泡立ち始めた。
最初は小さな泡ばかりが上がっていたものの、それがゴボコボと音を立て、次第に勢いを増していった。
「ヒ・コ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化したラジコン飛行機が、耳障りな機械音を響かせながら湖の中から爆音と共に飛び出した。
ダモクレスは禍々しい姿をしており、機械生命体と言った感じで、ボディのあちこちが脈打っていた。
それが原因で、あまり高く飛ぶ事が出来ないのか、視線の位置辺りでバランスを取っているような感じであった。
しかし、ダモクレス自身は、もっと高く飛べると思っているのか、少しずつ高度を上げていた。
そのたび、ボディのあちこちから異音が響き、真っ黒な煙がボンと上がった。
「ラ・ジ・コ・ンンンンンンンンンンンンンンンンン!」
その事に違和感を覚えたダモクレスが高度を維持しつつ、ケルベロス達と距離を取った。
「空を飛ぶのに憧れるのも良く分かるけど、ダモクレスとなったからには、残念だけど破壊するしかないわね」
その姿に憐みを感じつつ、リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、ダモクレスの行く手を阻むようにして陣取った。
「ヒ・コ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その視線に気づいたダモクレスが、苛立ちを隠せない様子で耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
そのビームは地面を焼くようにしてケルベロス達に迫り、近くにあった樹を薙ぎ倒した。
その途端、焦げ臭いニオイが辺りに漂い、小鳥達が警戒した様子で、湖の傍から離れていった。
間一髪でリサはビームを避けたものの、嫌な汗が止まらなくなるほど、凄まじい破壊力を秘めていた。
「さぁ、いくぞ疾風丸。サポートは任せたからな」
すぐさま、紅風がテレビウムの疾風丸に声を掛け、ダモクレスの死角に回り込むようにして二手に分かれた。
それに合わせて、疾風丸が手斧をブンブンと振り回しながら、応援動画を流し始めた。
「ヒ・コ・ウ・キィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスはまったく臆しておらず、再びビームを放つため、エネルギーをチャージしていた。
「明日からは、本気出します。いや、本当に! ですから、これは明日の頑張り。その前借りのようなモノです!」
それと同時に、紅葉がニートヴォルケイノを発動させ、明日から本気を出すという誓いの心を溶岩に変え、ダモクレスめがけて噴出させた。
「ラ、ラジコォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
その事に動揺したダモクレスがバランスを崩し、フラフラとしながら、茂みに突っ込みそうになった。
「ヒコウキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その寸前でダモクレスが耳障りな機械音と共に急上昇すると、真っ黒な煙を上げつつ、何とかバランスを取った。
それはまるで綱渡りをしているような感じであったが、ダモクレスに迷いはなく、すべての元凶がケルベロス達にあるような素振りで、再びビームを放ってきた。
「そう何度も同じ手が通じると思ったら、大間違いよ」
即座にリサがエナジープロテクションを発動させ、自然属性の力によって、ダモクレスが放ったビームを防いだ。
その途端、ビームが辺りに飛び散り、キラキラと光りながら、地面に飲み込まれていった。
「ラ・ジ・コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
その事に腹を立てたのか、ダモクレスが再度ビームを放つため、エネルギーをチャージし始めた。
「……御業よ、敵を鷲掴みにしてその動きを封じよ!」
すぐさま、カシスが禁縄禁縛呪を発動させ、半透明の『御業』でダモクレスを鷲掴みにした。
「ヒコ、ヒコ、ヒコーキィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その影響でダモクレスはバランスを取る事が出来ず、湖面ギリギリのところを飛びながら旋回し、半ばヤケになりつつ、刃物のように鋭いウイングで紅葉を斬りつけた。
「……クッ!」
その一撃を喰らった紅葉の身体が宙を舞い、近くにあったベンチに激突した。
その拍子に、背中に激しい痛みが走ったものの、休んでいる暇はなかった。
ダモクレスは再び攻撃を仕掛けるために旋回すると、先程よりもスピードを上げて紅葉に攻撃を仕掛けてきた。
「炎よ、高く昇れ!」
次の瞬間、カシスがグラインドファイアを仕掛け、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りでダモクレスに食らわせた。
「ラ、ラ、ラ、ラ、ラァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その拍子にダモクレスが激しくフラつき、紅蓮の炎に包まれながら、真っ黒な煙を上げた。
それでも、何とかバランスを取ろうとしていたが、真っ黒な煙が邪魔をして、視界を確保する事が出来ないのか、今にも墜落しそうな勢いでフラついていた。
「忌まわしき力だが、今はその力を活用させて貰うぞ!」
その間に紅風が咎人の血で傷口から溢れる血液を操り飛ばし、紅葉に浴びせて傷ついた身体を癒やした。
そのおかげで紅葉は再び動く事が出来るようになったため、ダモクレスの攻撃を警戒するようにしてベンチから離れていった。
「それじゃ、今度はこっちの番よ」
一方、リサはダモクレスの逃げ道を塞ぐようにしながら、少しずつ距離を縮めていった。
「ラ・ジ・コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
それと同時にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、怒り狂った様子でミサイルをぶっ放してきた。
そのミサイルが雨の如く降り注ぎ、辺りの地形を変える程の勢いで、次々と爆発していった。
「……大丈夫、みんな落ち着いて」
すぐさま、リサが鎮めの風を発動させ、竜の翼から仲間の心の乱れを鎮める風を放った。
「ラ・ジ・コォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
その事に気づいたダモクレスが、耳障りな機械音を響かせながら、再びミサイルを放とうとした。
「そう何度もミサイルを撃たれても困るので、しばらく大人しくしてもらえますか? ……もう何もしなくていいんですよ」
即座に、紅葉がダモクレスに語り掛けながら、美貌の呪いで動きを封じ込めた。
「ラ、ラ、ラ・ジ・コォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
その途端、ダモクレスがバランスを崩し、フラフラとしながら地面に突っ込み、真っ黒な煙を上げた。
その拍子にダモクレスに左翼がへし折れ、二度と飛ぶ事が出来なくなった。
「ラ、ララ、ラ、ジ・コォォォォォォォォォォォォォォン!」
それがあまりにもショックだったのか、ダモクレスが悲鳴にも似た耳障りな機械音を響かせた。
「ラ、ラ、ラジコォォォォォォォォォォォォォォォ……」
それでも、最後の力を振り絞るようにしながら、フラフラと飛び上がった。
だが、それは飛んでいるというよりも、フラついているだけで、まったくバランスが取る事が出来ないようだった。
そのため、かなり不安定な飛び方をしており、いつ墜ちてもおかしくないような状態であった。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
次の瞬間、カシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を発動させ、罪を浄化する為のエナジー状の光の剣を無数に創造いると、ダモクレスを幾度も切り刻み傷口を広げた。
「ヒ・コ・ウ・キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、真っ黒な煙を上げながら湖に落下し、大爆発を起こして水柱を上げた。
「……再び湖に沈んだか。だが、もう二度と目覚める事はない。だから安らかに眠るといい。もう誰も、その眠りを妨げるモノはいないのだから……」
紅風がダモクレスに語り掛けるようにして、ゆっくりと湖を眺めた。
ダモクレスと化したラジコン飛行機の魂が、救われたかどうかは分からない。
だが、異形な姿になってまで、空を飛びたいとは思っていなかっただろう。
それに加えて、空高く飛ぶ事さえ叶わなかったのだから、何ひとつ救われていない可能性が高かった。
そして、ケルベロス達は辺りをヒールで修復した後、次なる戦いに備えて、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年1月20日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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