攻性植物拠点調査隊~消えゆく境界

作者:質種剰

●呼び声の余韻
 城ヶ島は中央に位置するラベンダー畑。
 そこへ3台のヘリオンで乗りつけたケルベロスたちは、別働隊が島のあちこちで敵を引きつけてくれた隙を突いて、空挺降下を行った。
 まずは方々へ移動する竜牙兵とニーズヘッグを殲滅した後、馬の背洞門で他班と協力しての挟み撃ちにも成功。
 後は、未だ島の真ん中に残っていたニーズヘッグを掃討して、城ヶ島大橋で始まっている包囲殲滅戦へ加勢する——はずだった。
 この『不完全で不安定な魔空回廊』を見つけるまでは。
 歪な魔空回廊に一瞬映ったフィンブルの聖華隊の歌は、まるでケルベロスを誘い込む呼び声のように思えた。
 それでも、
「いくら重要な情報を得られるかもしれなくても、あまりに危険すぎませんか?」
 据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)が心配するのも、常識的に考えてもっともである。
「ここは一旦戻って、ヘリオライダーの予知を確認してからのほうが適切でショウ」
 エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)も、仲間の慎重論へ同調した。
 だが、皆が真剣に議論を闘わせる最中、さらなる異変が起こった。
「…………」
 副島・二郎(不屈の破片・e56537)が瞼を伏せてじっと耳を澄ます。
 どうやら敵も城ヶ島の異変に気づいたのか、聖華隊の歌がぴたりと止んだのだ。
「そんな……」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)の瞳が曇る。
 それは、今まで開いていた魔空空間を消しさるという決断に他ならない。
 このままでは、数分もしないうちに魔空回廊が閉じられてしまうかもしれない。
「どうしよう……!」
 夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)が焦るのも無理からぬことだ。
「行くんなら、今まさに決断の時か」
 藤林・九十九(藤林一刀流免許皆伝・e67549)は重々しく溜め息をついた。
「でも、かなり危険が大きい……よね」
 いつも無表情なリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)も、この時ばかりは迷いに瞳を揺らしている。
「ですよね。スルーして大橋へ向かうのも、選択肢の一つかと」
 自然と用心深くなっているのはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)だ。
「どうするべきか……」
 ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)も、すぐには決めあぐねて呻いている。
「敵性存在の異常を確認」
 ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)は冷静に状況を伝えた。
「もう時間がないわ」
 と、氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)も不安そうだ。
 閉じかかっている魔空回廊へ飛び込むか否か。
 全てはケルベロスたちの決断にかかっている。
●突破
 いよいよ『不完全で不安定な魔空回廊』の内部へ飛び込んだケルベロスたち。
「回廊内で情報を得ようとするよりは、速度重視で進むのが良いかと思います」
 と、基本的な行動方針を提案した赤煙は、レスキュードローン・デバイスを引き連れている。
「しかし全員バラバラと成るのは非常にまずい。可能な限り固まって行くべきか?」
 ゴッドサイト・デバイスを嵌めて索敵しながら、ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)も頷く。
「……居ない」
 同じく強化ゴーグルを覗いた状態で小さく叫ぶのは璃音。
 魔空回廊の内部に敵がいないのは、とにかく最速突破を目指す8人にとって、かなり喜ばしい事態だからだ。
「ジェットパック・デバイスで飛行突破、今のうちにいかがでしょうか?」
 そう尋ねるミオリはアームドアーム・デバイスを装着している。
「行こう」
 早速リリエッタのジェットパック・デバイスで皆を牽引して、出口を探す8人。
「速度をあげるのに比例して、歌声が大きくなっていませんか?」
 ずっと耳を澄まして例の歌声を気にしていたミリムが、飛びながら尋ねる。
「多分、歌声が出口から響いているせい……だとしたら、辻褄が合うな」
 櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が頷く。彼のデバイスはディフェンダーの機械腕だ。
 外界では確かに途絶えていたはずの歌が、魔空回廊内部に入ってから、再び聴こえ始めたのだ。
「けれど、外から聴こえなかったということは……この歌も消えている途中かもしれないわね」
 かぐらが推測する。
「歌が完全に消えた時、回廊もまた閉じるのか」
 そう結論づけるのはユグゴト。
「見ろ、我らの通ってきた道は既に無くなっている。HAHAHA」
 8人に沈黙が落ちた。
「この歌が、聖王女の力なのかな?」
 璃音が不安がる。
「魔空回廊を歌で操作する存在、厄介だな」
 千梨も日頃の呑気さは忘れて、低く呻いた。
 それでも、敵のいないことも幸いして、一気に魔空回廊の出口まで辿り着いた8人。
 元より安全第一で無理な探索を控える方針な上、消えいく歌に急かされての行軍だったので、
「魔空回廊の中なんて、比較できる程知らないけど、ここがおかしいことはなんとなくわかるよ」
 そんなリリエッタの呟きが、『不完全で不安定な魔空回廊』の印象の大半であった。

●対峙
「きゃぁぁああああ!!!」
 8人が外へ出た瞬間、魂切る悲鳴が耳を劈く。
 見ると、フィンブルの聖華隊が、怯えた表情でこちらの様子を窺っている。
 そして、魔空回廊の中で聴いたのとは違う、悲愴感漂う歌を歌い始めた。
 ——まるで、誰かに助けを求めるかのように。
 本来なら『戦闘を避けて安全確保』が作戦の方針なので、8人はフィンブルの聖華隊からも逃げるべきか迷う。
 しかし、どっちへ逃げたかをフィンブルの聖華隊に見られる自体マズいのも事実。
 ましてや、さっきと違う歌を歌っているのも、敵の増援を呼んでいるとしか思えない。
「倒そう。……チキるわけじゃないけど、今逃げたらきっと敵の大群に包囲されてもっとヤバくなる、絶対」
 断言する傍ら、璃音はエゴを具現化した黒鎖を投げつける。
「ええ。彼女らの歌の効果はとても厄介だと、さっき思い知りましたからな」
 赤煙も肯定して、口から炎の息を吐きかけ、聖華隊数人を焼き払った。
「効力射、始めます」
 ミサイルポッドから焼夷弾をばら撒いて、聖華隊たちを炎に包むのはミオリだ。

●索敵
 フィンブルの聖華隊をすぐに殲滅できたのは意外だった。
「余程、歌の力に特化してる分、戦闘力自体は高くなかった……とか」
 首を傾げるかぐら。
 ともあれ、8人は魔空回廊の出口から一旦離れて身を隠した。
「流石の文明の利器も効かないか」
 赤煙のスーパーGPSの甲斐もなく、落胆する千梨。
 ただ、ここが森の中であること、生えている木々や草花の種類から日本と大きく離れていないのは判るが、それだけだった。
「気温は12度。日本の南の植生と北の植生が混在している模様」
 ミオリの分析が、さらに場所の特定を困難にしていた。
「日本にしては、雪は降ってないね……」
 ふとリリエッタが空を見上げれば、決して近くはないがそう遠くもない距離に空気の幕があることへ気づく。
「もしかしたら、あれは何かの結界みたいなもので、攻性植物の拠点を覆い隠してるのかもしれませんね」
 ミリムはそう予想した。
 その時。
「敵群の移動を察知した」
 強化ゴーグル姿のユグゴトが告げた。
「あれは……」
 璃音が木を隠れ蓑にふわりと翼で舞い上がり、敵を確認する。
 遠くに捉えたのは、緑の三角帽子を被ったツインテ魔女っ娘——マソウショウジョモドキの大群だ。
 その緑の集団を、紫のバルーンスカート、ピンクのツインテール、ゴールドのプリーツスカート、赤いボックスプリーツ、青い斧使い——計5色、もとい5体の魔草少女が指揮しているらしい。
「あの数が多いミドリだけなら、出しぬけるでしょうか…?」
 敵群の詳細を聞いて、思案するミオリ。
「行動が単調だし、判断力も無さそうだな。誘導しても良いし、一点突破も可能かも」
 千梨が頷く。
「ですが、あの指揮官がいる限り、そう上手くはいきますまい」
 赤煙の懸念は、単純に悲観的とは言えない。
 何せ、あの5色とも全員が、ユグドラシル・ウォーで見た顔触れである。
 強敵を前にすれば、必要以上に慎重になるのも道理だろう。
「通じるか否か不明だが、陽動や囮で撹乱して1人だけでも脱出させるか」
 ユグゴトが言う。
「或いは、指揮官のみを狙って急襲、撃破した隙に脱出を目指すか……」
 真剣な声になるリリエッタ。
「しかし、指揮官は5体もいますし、1体を攻撃しただけでは、どれほど隙ができるかわかりません、ね」
 とミオリ。
 敵に徐々に囲まれつつある見知らぬ森の中、脱出方法の議論は白熱した。
「いっそのこと、指揮官5体に対して、5人が一斉に攻撃を仕掛けられれば、残り3人の脱出難易度は下がるかもしれない……?」
 しまいには、普段の依頼ではなかなか聞かないような仲間を犠牲にする作戦が、かぐらの口からぽろっと零れる。
 それぐらい、事態は逼迫していた。


種類:
出発:1月19日

難度:難しい
参加:8人(あと0人)
質種剰より
>>>マスターより追記
●作戦について
 追加オープニングで作戦案を話していますが、ご自分の話した作戦に沿ったプレイングを掛ける必要は勿論ありません。
 追加オープニングの会話は続いていますので、その続きにあたる相談を『相談掲示板』で行ってから、プレイングをかけるようにしてください。
(ポジション等は相談時のものを反映していますが、プレイング提出時の変更も可能です)。

●敵の動きについて
 ケルベロスの脱出を許すまじと、外縁部から虱潰しに捜索を行っているマソウショウジョモドキ。
 そのおかげで、参加者様たちが隠れている周囲は当面、敵に襲われることはありません。
 しかし、時間が経てば経つほど、外縁部の捜索を終えたマソウショウジョモドキがだんだん内側に入ってくるので、包囲の輪が縮まって脱出が困難になります。

●指揮官について
 指揮官の魔草少女は『自分達は強い』との傲りからマソウショウジョモドキ全てを探索にあてて、後方で指揮を執っています。
 それゆえ襲撃すること自体は可能ですが、全員で戦っても魔草少女1体相手に勝てるかどうかはわかりません。

>>>初期マスターより
 こんばんは、剰です。
 この度、調査シナリオを担当させていただくことになりました。
 よろしくお願い申し上げます。

●リプレイの開始タイミングについて
 前回のリプレイの最後からの続きでタイミングとしては『城ヶ島大橋へ増援に向かう直前』となります。
 危険をものともせずに、『不完全で不安定な魔空回廊』へ飛び込む場合のみ、ご参加なさってください。
 このシナリオは、前回のシナリオにメイン参加、或いはサポート参加してくださった23名様が優先参加となっております(ガイバーンは参加しません)。

●追加オープニングについて
 予知情報が全くありませんので、1月14日の朝8時30分までは『飛び込んだ後、魔空回廊内で探索する方針』や『魔空回廊から外に出た直後の行動方針』などを話しあってください。
 その内容を元に、1月15日中に追加オープニングが公開となりますので、その内容をご確認の上で実際のプレイングをかけるようになさってください。

●作戦について
 作戦の目的は『魔空回廊を突破した後、ヘリオンデバイスなどを駆使して敵拠点から脱出する』ことです。
 お1人だけでも脱出に成功すれば、所在不明だった攻性植物残党の拠点を特定することができます。
(追加オープニングの状況次第では、他の行動も可能になるかもしれません)

 それでは、素敵なプレイング楽しみにお待ちいたしております。

※ 参加者が4人に満たない場合、冒険中止となり、返金されます


参加者
ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■ヘリポート上空

 ここでは参加者だけが発言できます。自己紹介や相談用としてご活用ください。
 なお、ここで相談することは義務ではありません。


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