冬のお供、暴れる

作者:寅杜柳

●しばれる寒さは敵
 都内某所。
 冬の寒さも極まった時期、ぽつんとそびえ立つ廃家電倉庫の一つに使い古されたやぐらこたつがあった。足が割れてテープ補修、電源周りもコードが半分千切れた状態で、熱源体である電球もひび割れてしまっていてテーブル部分も相当な年代物、当然こたつ布団も取り払われている。
 そんな壊れた炬燵に忍び寄る小さな影。拳大のそれは蜘蛛のような機械の足を巧みに操って割れた熱源体の中へと潜り込んでいく。
 そしてその直後、こたつが激しく振動し質量を増す。割れた足は機械染みた頑丈さを獲得して熱源体は電源コードが繋がっていないにもかかわらず高温を発し、さらにはテーブル部分から紙のように薄く引き伸ばされた金属がスカートのように幾重にも湧き出して布団のようなものを形成する。
 更に足が伸びテーブルは広がり縁からは頭部も生やして――変化を終えた頃にはリクガメ、もしくはテントを思わせる大柄なダモクレスとなっていた。
『アタタメマスカー! アッタマリナサーイ!』
 そんな事をわめきながら元やぐらこたつ、現こたつダモクレスは熊のように二本足で立ち上がり、周囲の他の家電達を踏みしめながら獲物を求め倉庫の外へと踏み出さんと歩き始めるのであった。

「年も明けて寒さも厳しくなってきたけどダモクレスは休んじゃくれないみたいだねえ」
 ヘリポート、集まったケルベロスに冬の装いの雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)が世間話のように切り出した。
「都内の廃家電倉庫に放置されていたやぐらこたつがダモクレスになってしまう事が予知されてね。ちょっと力を貸してくれないかい」
 今のところ被害者は出ていないが場所は一応都内、放置すれば人のいる場所へ移動してグラビティ・チェインを略奪する為に暴れだすだろう。
「今仕留めれば被害を出すこともない。年明け早々だけど一仕事頑張ってきてほしい」
 そういう彼女が取り出した資料に描かれていたのはこたつ。割と多くの家庭で見かける何の変哲もないものだ。
「これがこう……全体的に大型にしつつ基本四足歩行だけど二足歩行もできるようになった亀形のロボットになった感じでね。こたつ布団は金属製なのに中の熱を逃がさないのはこだわりなのかねえ?」
 そして知香の説明は戦闘能力のものへと移る。
「能力としては見た目の通りこたつに纏わるものが多い。胴体部分から熱線を放ってきたり、金属製のこたつ布団が伸びてこちらに巻き付いて縛り付けてきたり、鋭い刃のようにしてカッターのように切り裂いてくるみたいだね。そこまでは強力ではないから油断しなければ大丈夫だろうね……けど」
 うーんと唸り知香が続ける。
「現場は真冬の倉庫、夕方でもかなり寒いし風も強い。その上なんか変な電波が出てるのか……こたつの中に潜り込みたくなってくるみたいなんだ。まあ何となく、程度で強制力の強いものではないけど。……ちなみにこたつ内だとこたつ布団は伸びてこないし切り裂かれもしないが、時たま放つ熱線はもろに受けることになるから注意した方がいいだろうね」
 あと中に人が入ってるとこたつとしての本懐達成中だからか二足歩行で立ち上がらず外へはこたつ布団系の攻撃しかしてこないみたいだね、と白熊は付け加える。
「何とも言えないダモクレスだけど元は人の為に活躍していたこたつだ。罪のない人々を傷つけるような事をさせるのはきっと酷い事だし、やらかす前に撃破してきてほしい」
 そう言って知香は話を締め括り、ヘリオンへとケルベロスを乗せ空へと導くのであった。


参加者
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
ティユ・キューブ(虹星・e21021)
朱桜院・梢子(葉桜・e56552)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●冬のお供を前に
 見捨てられたような廃倉庫の壁が布のような金属に押し出されて外に弾け、少々不格好なダモクレスの巨体がのっそりと足を踏み出し機体を外気に晒す。
 こたつ。おこた。
 厳しい冬にこそ人々を誘惑するそれを無理に二足歩行にしたようなそれは、布団めいたパーツをポンチョのように纏いどこかコミカルにも見える。
「アレがフートン? エラく物騒ネ」
 ヘリオンより降下し廃倉庫近くに着地したパトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)が訝しむ。
 ブラジル出身の彼女にはあまり見慣れないものだがそのような使われ方ではない事は一見でわかる。
「オコタの誘惑はおそろしいもの……ですが」
 そして呟く声はルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)のもの。冬の炬燵の誘惑をよく知る彼女は秘策を着込んでこの場にいた。
 すなわち。
「暖かいモフモフに身を包んでいればその魅力は半減ですわ!」
 犬の着ぐるみ――もこもこ温かなそれは、この冬の風にもびくともしない。
 そしてもう一人、猫ぐるみ姿のローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)はどこか期待するような目でダモクレスを見ていた。
 彼女のテレビウムのシュテルネも羊の装いで着ぐるみ風味。
 一方、和装の朱桜院・梢子(葉桜・e56552)は寒さにうんざりした様子。
「あー寒い寒い!」
 彼女のビハインドである葉介を傍に、今にもダモクレスに襲い掛からんばかりのテンション。
 そんな彼女を制しつつ、殺界形成を発動した源・那岐(疾風の舞姫・e01215)は新しい型のものが開発されたから捨てられたのかと思案を巡らせる。
 今年の冬は特に寒さが厳しい。森に籠り秘伝を伝えてきた一族の族長である彼女にもこの寒さはキツい。
 今のこのダモクレスなら新型炬燵にも負けない火力があるのだろうかとか考えてしまうのは、ダモクレスが熱線を発しながら二足歩行で歩き出したからかもしれない。
『アタタメマスゾー!』
 きっと本人、本機は人を温めてあげたいだけなのだろう。だがふりまかれる熱線は焼ける程に強烈。
 冬の寒さの中、人を温めるというこたつの本懐は変わらないようなダモクレスの動作をティユ・キューブ(虹星・e21021)は少し好ましく思う。
 けれど、十分人に尽くし働き終えたのだ。人を傷つけさせる訳にはいかない。
「このままだと被害が広がりますので阻止しませんと」
「悪いことをしない内に止めさせて貰うよ」
 那岐がクラシカルな蒸気大槌を構え、ティユがペルルと共に正面に星々の輝きを展開。
 そしてケルベロス達はダモクレスの前に立ちはだかる。

●地獄と天国
 咆哮と共に熱線がケルベロス達に放たれる。即座にパトリシアとティユが前に出、春を通り越した強烈な熱から後衛を庇う。
「振り撒こう」
 ティユの放ったきらきらと輝く星々の波濤が熱線の侵食を消し去るとペルルが星の輝きと共に属性をインストール、後には程よい温かさだけがケルベロス達の周囲に残る。
 一旦ダモクレスが熱線を止め腕を地につけ亀のような体勢になった瞬間、三人のケルベロスが飛び出す。
「早く暖まらせて頂戴!」
 真っ先に飛び出したのは梢子と彼女に続く葉介。
 その目標はダモクレスの真下。
 冬の夕方、北風も厳しく寒さにうんざりしているそんな時、目の前に炬燵があるならばどうするか――少し火力は強すぎる気もするけれど。
 そんな彼女を追いかけるローレライとシュテルネ。
 ――おこたの温もりを知った上で誘惑に抗えるものがいるだろうか。着ぐるみを着ていてもそれは無理だ。
(「おこたには勝てない! 勝てないにゃん!」)
(「勝つ必要もないにゃん、負けてもいいにゃんのよ!」)
 天使と悪魔、心の中の二匹のにゃんこが彼女に囁きかけていた。どちらも同じじゃないかとツッコミを入れる者はいない。
 それに、思うのだ。
 あのこたつは長い年月人を温めてきたもの、その残留思念の事を考えるなら敢えて飛び込んでもいいのではないか。
 決しておこたで温もりたいが故の正当化ではない。氷炎の騎士がまさかそのような事など。
「さあフートンの中に潜り込むネ!」
 そんな二人に続いてパトリシアも勢いよく走りだし、捲れたこたつ布団が元に戻る前に三人は滑り込む事に成功した。
 そして三人の姿を見送るルーシィドはへその下の捩子ピアスの力を解放、ティユの正面にサキュバス由来の属性の盾を展開。
 ノリノリで飛び込んでいった辺り三人共楽しい事を目論んでいるのだろう、きっと。
 そして中に潜り込まれたダモクレスは何処か戸惑った様子、だがすぐに布団部分がぶわっと広がり冬の寒さの中に残ったケルベロス達に襲い掛かる。
「うん、任せて」
 再び虹色真珠のレプリカントが前に出、敵を巻き取らんとする布団から仲間を庇いつつ戦場を囲うように星の輝きを宿した柱を召喚。
 その輝きが呪縛に抗う加護をケルベロス達に与えると同時、ティユの後方から跳躍した那岐が伸ばされた布団を足場に天翔ける霊鳥の名を冠した妖精靴でダモクレスの頭部まで軽やかに踏み込むと、
「さて披露するのは我が戦舞の一つ、風よ、進むべき道を切り開け!!」
 大槌を軽々振りまわし戦舞を披露。同時、蒸気と空色を孕んだ烈風がダモクレスに叩き付けられる。
 そして勢いのまま足場とした布団が崩される前に飛び退き着地。少々寒さは厳しいとはいえ彼女は森を守護する一族の族長、戦闘が始まったならばその動きに淀みはない。
 反撃とばかりにこたつ布団の一部が鋭い刃と化し回転しルーシィドを狙うが、彼女はそれを見切り回避。
「コタツに入ってる時には、誰にも邪魔されず暖かくて……なんというのでしょうか」
 呟くサキュバス。人を暖めたい、そう思う純粋な想いがこのダモクレスにはあるのだろう。
 だが先程の熱線は至近距離で浴びてはアツイアツイ、やり過ぎな暖めは最早こたつの風上にも置けない恐ろしき破壊兵器だ。
「とにかく、救われていなければダメなのですわ!」
 そんな理想を力強く宣言しながらエクトプラズムを圧縮し巨大な霊弾を放つと、那岐が重ね白鷺模様の銀のライフルを構え冷凍光線を放ち命中。
 連撃を受けてもダモクレスは変わらず動き、咆哮をあげ抵抗する。

 一方。
「はぁ~あったかい……私ここに住んでもいいわ……」
「極楽だわー……」
 潜り込んだ梢子とローレライの二人は、完全に溶けた猫のようになっていた。
 猫ぐるみの外から感じる春の陽気めいた空気、猫という生き物はこたつに全身で潜り込む事も多いけれども、そうする気持ちも今なら何となく理解できる。
 更に中が赤く薄暗いのも心地よい眠気を誘ってくる。
「炬燵といったらあいすよね!」
 梢子などどこからか持ち込んだアイスをぺろりと頂いている程。
 寒い、寒い冬の空気とは縁遠いこの場の温かさ。ほわりと梢子に僅かにあったかもしれない緊張感を緩ませて――ごふっと葉介が血を吐いた。
「きゃー! 葉介!?」
 生前から病弱であった婚約者、彼に対し梢子が手慣れた様子で血染めの包帯で血を拭う。
 哀しいかな、天国を堪能するケルベロス達もじわりじわりと体力を削られるのだ。
「インファイトインファイト!」
 そんな二人をよそにパトリシアは地面にどっしり下りた頑丈な金属の足に旋風の如き蹴りを叩き込み罅を入れる。
 外の寒さと故郷になかったこたつも体感しているがそれは攻撃の手を鈍らせるものではない。
 ちょっと手は鈍るかも、と思っていたけれども熱線が放たれている今は温かい通り越して暑い、位置によっては熱いの域。熱中症の恐れさえ感じる程で鈍る理由にならない。
 梢子がとん、とんとステップを踏み花弁のオーラをこたつ内に降らせ傷を癒し、ローレライが竜槌を変形させ砲弾を真上の胴体部分に撃ち込み反撃。
 衝撃に体勢を崩したダモクレスが再び熱を放射する直前にパトリシアが飛び上がり降魔の力宿す拳を熱源にぶち込む。
 真上に見えるそこ、内側からの攻撃を防ぐ手段はないに等しいが反撃はできる。
「熱っ! 熱いっ!!」
 両手に装着した金銀の籠手が熱くなる程に熱源の鈍い赤の輝きが増し莫大な熱を放射。それでいてこたつ布団が熱を外に逃がさないのだから瞬時に中はサウナの如き熱気と化す。
 仲間の分も纏めて熱線を受けて墜落したパトリシアに近寄った梢子が包帯をぐるぐると巻き、シュテルネの応援動画がじくじくと残る傷を癒す。
 こたつの中でテレビを見る。とても堕落しそうな光景ではあるが仕方がない。
 そして反撃にローレライのこたつの中から空へと昇る流星のような飛び蹴り――まだ家電として頑張っていた頃に何度か受けただろう、うっかりの蹴り上げとは段違いの破壊力を胴体部に叩き込むと、葉介の金縛りでダモクレスの動きがびくっと停止。
「夕立の~まだ晴れやらぬ、雲間より~おなじ空とも、見えぬ月かな~……」
 その間に梢子が場の熱気に浮かされた様に千載集の一首を詠み上げれば、天板を無視し夕立後の雲の切れ間から射し込むような柔らかな月光でケルベロス達を照らし癒す。
 周囲のこたつ布団がぶわりと上がる。適度な換気の寒風が吹きこみサウナが瞬時に春の陽気に戻されると同時、内外のケルベロス達の目が合って再び布団に遮断される。
「……あーやって見てると温そうで、うーん」
 外のティユは悩まし気。
 ぱっと見でも中の班も元気そうで何より。けれど外からこたつの中を見、そして中から流れ出た暖かな空気をほんの一瞬味わってしまうと、グラビティでは出せないあの魅力にどうにも惹かれてしまう。
 変な電波など無くてもそれはどうにも人々を惹きつける――と、そんな事を考える内にペルルの属性がインストールされ僅かに残った傷も完治。
 そしてぶわっと広がったこたつ布団を躱した那岐が空の霊力纏う一撃で反撃、重ねてルーシィドが糸球のように魔力を纏う蜘蛛をダモクレスに発射、連撃はテーブルに傷を刻み込んだ。

●分つものを砕く
 そして戦闘は続く。
 熱線と自由自在な布団でケルベロス達を責め立てるダモクレスだが、上手く回復を分担し耐性を重ねる事で本格的に悪化する前に呪縛は解除されている。
「ご安心下さい 茨の棘に刺されても あなたがたは決して死にません ただ眠り続けるだけ」
 犬ぐるみの手首辺りから緑の茨が溢れだし、ティユ達を包み込み、夢のように呪縛ごと消え去る。
 しかしダモクレスは怯まず攻撃は緩まない。
 丸鋸を横薙ぎにしたかのように布団が回転、至近の那岐を両断せんとするもティユが割り込み庇う。
 その隙に那岐が跳躍し、亀のようになったダモクレスの背、テーブルに凍気を纏わせた蒸気大槌をしたたかに叩きつける。
 どこか気の抜ける鳴き声を発するダモクレス、けれど強い使命感を持つ那岐は感化されずその真面目さは崩れない。
 森の一族の族長が炬燵に堕ちるなどあってはならない。
 例え中ですっかり堪能している仲間達の姿にちょっとだけ後ろ髪惹かれる想いが湧いたりしつつも、これはあくまでダモクレス。熱に抗うよう凍気帯びる蒸気大槌を連続で叩きつければ内側からもがきん、がきんと凶器を叩き付ける音。
 内に転ずれば天板狙うシュテルネに合わせローレライが凍気纏う竜槌をこたつの足に叩き付ける。
 時折見える外の様子を見る限りパトリシア自身は中に専念する形で良さそうだと判断。
 折角こたつに飛び込んだのだし、中には中で庇うべき仲間もいる。別に外の寒さよりこちらの方が心地よいとかいうわけではないのだ。きっと。
「炬燵で読むのって最高だわ~」
 そんな中、いつの間にやら梢子は彼女お気に入りの熱海の辺りに名シーンの像が立っていそうな小説を読んでいた。
 激戦の中でも楽しむ事を忘れない――少々暗くて暑くもなるけれど。
 とは言っても状況に応じ短歌を詠み花弁のオーラを降らせ、きっちり回復の仕事は熟している為に中の戦況も外に劣らず優勢。
 苦し紛れか熱線が強まり中のケルベロス達を焼かんとする。が、しかし熱線が途切れた瞬間がダモクレスの死角。
 庇った護り手を癒すシュテルネを確認した猫ぐるみのエルフの回避困難な星座剣の一撃が急所を正確に切り裂き呪縛を増幅。
 ワンテンポ遅れ梢子の傍から葉介が機体に飛び掛かり、更に梢子が血塗れの包帯を槍のように鋭く尖らせダモクレスを貫き痛打を見舞う。
 それとほぼ同時、外側ではルーシィドを鋭く切り裂かんとする布団をティユがブロック、反撃にティユが竜の砲弾を放ちダモクレスの頭部に命中、真上に跳ね上げると生じた隙にペルルの星のブレスが追撃を重ね。
 さらに空からルーシィド、星型のオーラを胴の中心に蹴り込んだ直後に外側から那岐の戦舞による烈風、内側からはパトリシアの拳が内外から同時に叩き付けられ熱源をぶち抜いた。
 流石のダモクレスもとうとう機能停止、天板が真っ二つに割れ左右に残骸を倒れさせたのであった。

●一段落の温まり
 真っ二つになった矢倉炬燵の残骸にルーシィドが供養にお茶を供え祈り、ダモクレス退治を終えたケルベロス達は半壊した倉庫のヒールを開始する。
「う~せっかく暖かかったのにちょっと残念だわ……」
 梢子がヒールしながら呟く。やっぱり好きなだけ心置きなく温まれる家のおこたがやっぱり一番かもしれない。
 そしてヒールされた廃倉庫は何の奇縁か元々小さな住居だったようで、修復された装いはどことなく年号二つ前な雰囲気。
 隙間風もなく、修復されたと思しき畳の部屋の中心には建物の一部だろう電気式の掘りごたつ。
 電気を復旧しスイッチを入れれば、そこはルーシィドの準備した簡易ヒーターも合わせ冬とは思えぬ天国の如き暖かさに早変わり。
「これは……いいものですね」
 堀こたつに座った那岐、彼女の雰囲気も少し緩んでいるのは安堵だけでなく部屋の暖かさもきっとあるのだろう。
 ペルルもちゃっかり凹んだ穴に体を入れて少し緩んだ表情で縁に顎を付けてその魅力を堪能している様子。
 こたつ布団はないが――、
「お鍋にしない?」
 そう言いだしたのはローレライ。
「それは楽しみネ!」
 既に掘りこたつに足を入れたパトリシアも同意、ケルベロス達の意志は一つに纏まっていた。
 そしてこたつテーブルにルーシィドが水筒のお茶を人数分湯呑に注ぎ、ローレライがみかんをそっと並べ。
「おひとつどう?」
 先程炬燵の中で頂いていた分以外にも持ってきていた梢子がアイスを配る。
 ローレライが持参していたお鍋(具材準備済)をセット、醤油味にぐつぐつ煮込み味をつける間にアイスの冷たさとみかんの甘みをたっぷりと味わって。
(「もしかしたらお前にも寂しさがあったのかもだね」)
 ティユはそんな事を考えつつ、みかんの皮を剥いていきペルルに一房分けてみる。

 こたつを偲ぶというには賑やかに。冬の夕暮れに温かな鍋をケルベロス達は楽しんだのであった。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年2月4日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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