天使は使われ、馬駆け回り、猫は炬燵でなんとやら

作者:久澄零太

「色々やってきたけど、そろそろ原点回帰もいいと思うの」
 突然の大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)の発言に四夜・凶(泡沫の華・en0169)がカレンダーを見れば、今年もそんな時期だなぁ……と遠い目をする。
「というわけで第二回コタツ祭りを開こうかなって!」
「え、そっち!?」
 目を輝かせて既に書き上がった企画書を取り出すユキに凶がずっこけ、取り残されたブリジット・レースライン(セントールの甲冑騎士・en0312)がポツリ。
「お前達は一体なんの話をしているんだ……?」

「ということで、じゃーん!」
 諸々端折ってユキが暇してた番犬達に見せたのは雪まつりのお知らせ。ユキのお祭りみたいでややこしいが、文字表記が違うから読み分けてほしい。
「みんなでかまくら作って、中でコタツに入ってゆっくりするのはどうかなって思って、ちょっと召集かけてみたの!」
 敵が湧いたわけでもないのに呼び出された面々の反応は大きく二つ。一つは敵襲ではないと安堵した顔。もう一つはカレンダーを見やり、誕生日を理由に凶がこき使われるんだろうなって察した顔だ。
「もちろん普通に雪遊びするのもありだよ!」
「あ、電源は確保してありますから、コタツはちゃんと使えますから、そこはご心配なく」
 変なとこで優秀な凶はさておき、何故か肩を回すブリジットを示した番犬にユキがいう事には。
「雪合戦の話したら、燃え始めちゃって……」
 現場で彼女と遭遇した場合、冷たい襲撃に遭うのだろう。
「何はともあれ、寒くなってきたし……どうかな?」
 ユキは小首を傾げて、じっと番犬の顔を覗き込むのだった。


■リプレイ


「ユキは誕生日おめでとーう!これはプレゼントのタイヤクッションだよ!」
「ありがとー!……なんでタイヤ?」
 クロウの声で幕を開けた今回の雪祭り。白い輪を頭に乗せたユキに、クロウがきょとり。
「ところで第二回ってことは前にもコタツ祭りがあったの?」
「あ、実はね……」
「それは置いといて、今回はいろんな雪像を作ってみようと思うんだ!」
「聞いておいて聞かないの!?」
 マイペース過ぎるクロウにユキが置いてけぼりを食らうが、クロウは気にせず作品を示す。
「まずはランスを構えてるブリジット!雪で脚を支えるのが大変だった。それから凶!この構図はね、酔っ払って他のケルベロスの子を後ろから抱き締めてる時の!」
 一つ目は、蹄と鎧、槍の部分には水を混ぜて氷にしてあるのか、色彩と質感が異なっている人馬の雪像。クロウの技術が光るのは、右前脚を上げて今まさに得物を突き出そうとする瞬間を作っており、さりげなく三点で全身を支えている所だろう。
 一方、凶に関してはハグの体勢でやや前傾かつ両手を前に伸ばした形の雪像。ただでさえ傾いた立体はバランス維持が困難であろうに、更に重心をずらすということまでやってのけた逸品である。
「そしてラストに、三年前に日の目を浴びなかったビキニのユキだー!みんなよく出来てるでしょ?」
「にゃー!?」
 最後に出てきた雪像にユキが絶叫。クロウが作る物は正確にして精緻。早い話、ユキの当時の体型を完全再現してるわけで。
「あっ何をするんだよせー!結構苦労したんだぞー!」
「さすがにこれは恥ずかしいってばー!!」
 まぁ、ボディラインを強調するセクシーポーズで作られてたからなぁ……。
「はっ!これは利用するしかないね!!」
 おっとここで湧いたかエヴァリーナ。ユキの雪像の隣に、ギリギリエロくないエロ服(としか表現できない、方向性カオスなブランド)を着せたマネキンをセット。
「ユキちゃんはぴばー、ハイこれプレゼント!超精密等身大ユキちゃんマネキン!」
「なんで持ってきたの?なんで作っちゃったの!?」
 ツッコミしか出てこないユキに、エヴァリーナはサムズアップ。
「うちの社長とデザイナーさん達が広告効果大好評に喜び勇んで作ったんだって」
「それ絶対暴走の間違いだよ!?」
 正直、あの会社は気にしたら負けだ!!
「あっ、凶くん凶くん。恒例の女装がないまま年越えちゃうとかどういう事なの!?年中行事はちゃんとやらないと!」
「Pardon?」
 やたら綺麗な発音をして虚ろ目をする凶へ、エヴァリーナは婦人服をドサァ。
「ハロウィンに用意してた女装服を凶くんの代わりに着てもらった人達からもぜひ女装を、絶対逃がすなの応援の声が……って、いない!?」
「あれ?ワカクサもいない……」
 消えた凶を追ってエヴァリーナがいなくなってから、雪の一部がもそり。
「すみません、お借りしました……」
「隠れてたのか……って、ワカクサが雪の食べすぎで氷属性になって紛れてるじゃないか!」
 冷凍ワカクサで雪に隠れる、ニンポー・隠れワカクサのジツ!


「大神さんはお誕生日おめでとうございます?」
 ミリアが疑問形になるのも無理はない。開幕早々自分の再現人形(水着&エロ衣装擬き)が並ぶという展開に苦笑しか出ないユキへ、シンプルにおめでとうとは言いづらい。
「……誕生日とかどうでもいいですよね、コタツを温めてあるのでどうぞ。今ならおせちも食べ放題ですよ?」
「あ、ありがとー」
 断熱材の上に設置された炬燵に先に納まったミリアが重箱の蓋を取る。並んでいるのは綺麗に作られた年始のごちそうなのだが、妙にユキのテンションが上がらない。というのも、彼女の中にある疑惑が浮かんだからだが、その疑惑は次の瞬間確信へと変わる。
「……それとも、毛繕いのほうが好みでしょうか?」
「私の事猫扱いしてない!?そのおせち、ペット用だよね!?」
「ペット用ではありません、猫用です」
 何がどう違うのかはさておき、ミリアはハッとして。
「もしくは、コタツで温まりつつ、猫変身した大神さんを愛でる……という至福の時間が……?」
「逆!私はちゃんと猫になれなくて……!」
 目を輝かせて迫りくるミリアから逃れようとするユキへ、凶が助け船。
「そのくらいにしてやってください。ユキは一度完全に猫になってしまうと、戻るのに時間がかかるから人前では絶対に変身しないんですよ」
「つまり長時間ネコ神さんをモフモフできると……!?」
 どうやら助けに来た舟は泥でできていたようだ。
「大神さん……寝落ちしてもヒールで治しますからね、安心してぐっすりお眠りください」
 ユキの猫姿を想像して、ヘヴン状態に陥ったミリアの隙をつき、白猫は全力で逃げ出したのであった。

「お誕生日おめでとう、ユキ」
「わー、ありが……なにこれ?」
 逃げ出したユキが遭遇したのはアウレリア。渡された贈り物は、深紅の液体が収まった小瓶。なんとなく、聞かない方がいい気もしたが、もらったからには聞いておかないと後が怖い。返答は案の定。
「私も愛用している特製ソースよ」
 原液のままなら、デウスエクスすら屠る可能性があるアレですね。
「今年もホットな一年になるといいわね」
 それでは、と去っていくアウレリアを見送って、ユキが凶に調味料を押し付け……もとい、預けた頃。
「こうして自然に触れ合うくらいのサイズが丁度いいのよね」
 二畳あるか否か、というささやかなかまくらの中、コンロの上で煮立っているのは深紅のキムチ鍋。サイズが小さいだけに、かまくら内部は唐辛子のエキスでも舞っているのか、その入り口に立つだけで目と鼻をやられてしまう。
「あら、アルベルト寒いの?なら早く暖まらないと、ね」
 などと、アウレリアはゆっくりと鍋をかき混ぜて味むらを防ぐが、アレ絶対違うよ。アルベルトの旦那はここ最近で一際やべぇ辛さを誇るであろう鍋を前に恐怖してるだけだよ。
「はい、あーん」
 けれど、嫁が口元に運ぶものだから食べざるを得ないアルベルト。もちろん、強制はされていない。『一般人なら即死する可能性がある辛さ』程度を理由に飯を食わず、嫁を悲しませたくないだけだ。耐えられるか否かは別問題だが。
「まったく……皆、元気ね」
 アウレリアが外で女物の服を手に走るエヴァリーナと、見つかって逃げる凶を眺めている隙にアルベルトが悶絶。嫁にだけは絶対に苦しむ姿を見せずに鍋を消費するのだった。

「凶がこき使われてるこの喧騒、実家に帰ってきたような安心感……」
「一枚!一枚でいいから!!」
「嫌ですよその一枚が最大の地雷なんでしょう!?」
「ふっふっ、地獄の影響で体温が高いからねん、寒い所での作業には強いのさ」
 などと目の前で女装を迫られる凶から目を背けて現実逃避するのは永代。
「あ、温もりたくなったら抱き着いてきても良いのよん。ユキちゃんとか、可愛い女の子限定でねん!」
 しかし悲しいかな、寒さをものともしないくらい元気がいいんですよね、今回のメンツ。
「ふはぁー……炬燵にはみかんだよねん」
 などと炬燵で溶けて、ぐでっと皮を剥きながら。
「あ、凶、鍋よろしくー」
「キムチ鍋でいいですか?さっき調味料いただきまして……」
「安全の為に頼んでるんだからちゃんと食べられるやつ出してよねん!?」
 死を予感した永代は釘を刺しておきつつ。
「待ってる間にユキちゃんもみかん食べる?」
「あ、もらおうかな」
 誘われて炬燵にインしたユキもぐてぇ……寒さっていうより精神的に疲弊した彼女の前に、みかんと一緒に箱が一つ。
「はいこれ、俺からのプレゼント、バースデー仕様のアイスケーキ。冬場に炬燵へ入って、アイスって乙だよねん」
「なんていうか、矛盾した贅沢だよね……ありがと」
 とはいえ、今は鍋を待っている身。受け取るだけ受け取っておいておこうとした時だった。
「あれ、なにこれ……」
 ソレを見た途端、ブワッ!ユキは尻尾まで毛を膨らませ、ゆっくりと元に戻っていく。
「お鍋できましたよー」
「お、待ってまし……赤くない!?」
「正しく使えば、何故か味はいいんですよね、アレ……」
「ちょちょちょ、まさか、入れたの!?」
 鍋に含まれたとある代物について永代と凶が議論を交わす傍らで、炬燵に突っ伏したユキの頬は、微かに染まっていた。

「無いとは思いますが、転ばぬ先の杖です。多少の救急道具はありますし」
「意外と活躍してしまうかもしれませんよ……?」
 凶と二人がかりで大型のかまくらを作り上げたバラフィールは、中にストーブ二台と炬燵を設置。簡易的な救護部屋を作り上げると、かまくらの上に海苔を貼って十字架を描く。
「とはいえ、何事もなければ暇なんですよね……」
 医者が暇であるに越したことはないが、何もせずに終わってしまっては味気ないというもの。ストーブの上にアルミホイルを敷いて、お餅を並べるとバラフィールは調味料の詰まった鞄を開く。きなこ、砂糖、醤油、漉し餡、味付け海苔など、基本的なものは一通り揃っている……ていうか逆に妙なものがない。冒険して変な怪我をしないのが、やはり医者としての性格なのだろうか。
「あ、いけません。お餅が焼ける前にあちらも……」
 などと、反対側のストーブに鍋を乗せたバラフィールは酒粕と砂糖で仕立てた甘酒をコトコト。
「あとは皆様に飲んでいただければ……」
 と、餅を食べたら配りに行こうかな、と思ったバラフィールだったが。
「……四夜さんにだけは絶対にあげられませんね」
 クロウが作っていた氷像を思い出し、アルコール摂取は何としても回避させようと心に決めるのだった。


「にゃっはっはー!雪合戦に必要なのは人手!そして、わらわにはこの『神光の腕』がある!背から生えた触腕を最大本数で展開し、それらで一斉に雪玉を作りつつ投げつける……即ち、わらわ一人で数人分の働きが可能となるのじゃ!誰かが雪玉作りを手伝ってくれれば、もっと連射速度が上がるぞ」
「八本の触手に二本の腕と来たか……相手にとって不足はない!!」
 さぁ始まってしまいましたスノーウォーズ。向かって左に見えますのが触手四本で雪玉を作りながら二本で手元に運び、残り二本と自分の腕で投げるという生きた機関銃、ミココ。対して右手に見えますのが馬脚で雪を塊のまま打ち上げて、それを拳の連打で雪玉にしてばらまくという散弾銃の暴れ馬、ブリジット。数の暴力同士がぶつかるという、クッソ寒い中のデッドヒートでございます。
「まぁ、速度重視じゃから、誰を狙う、ということはできん。射線に入った者は運が悪かったと諦めてもらうしかないのう。あと、わらわ自身もあまり俊敏には動けん」
 で、実際人馬と触手はお互いに一歩も譲らない(膠着したともいう)事態に。
「ふふふふふふふんふ~……♪」
「……」
 雪による砲撃戦が展開される傍らで、とても投げられるサイズではない大型の雪玉を作っているのはシーリンとジグ。鼻歌交じりに揚々と雪玉を転がすシーリンに対して、何故かまくらを先に作らないのか?という疑問を飲み込んで、代わりにため息を吐き出したジグはぽつり。
「……いやに元気だな。お前はよ」
「……?」
 チラと、視線が重なる。互いを横目に見つめながら雪の塊を転がしていた故に、声をかけられれば自ずと顔が向き合うのだが。

 バフッ!ドババババ!!

「「……」」
 振り向いた顔面に雪玉が直撃したシーリンが見遣れば、その場でクイックターンして雪を巻き上げながらそれを拳で連打し、広範囲に絨毯爆撃するブリジット。一方、背中に多段ヒットしたジグが見たのは、ブリジットに対抗すべく動くのを諦めて座り込んだミココ。彼女は六本の触手で雪玉を作りながら腕二本と触手二本で装填速度を上げて、雪上でも跳躍回避を行う人馬へ確実に当てるべく、狙いすら放り出して弾幕を展開していた。
「くく、やるな触手女……!」
「お主こそ、中々の身のこなしよ……!」
 流れ弾に被弾したのだと理解した途端、雪ダルマコンビがプッツン☆
「あの人馬許さん……!」
「いい度胸だその喧嘩買ってやらぁ……!」
 自身の身の丈サイズの雪玉をシーリンとジグが持ち上げて片手に投球セット、投げたー!
「ん?ぅおお!?」
 第一球、ヒット!躱しきれなかったブリジットが後ろ半身に食らって雪上でスピン、ぶっ倒れて雪の深みにシューッ!超!コールド!!
「な、なんじゃ、新手の敵……のじゃー!?」
 続く第二球もヒット!巨大な雪玉が頭部を直撃したミココは首から上が雪玉に突き刺さり、スノウメェンな事に!!が、投げてしまってからジグが気づく。
「俺の雪だるまが!!」
 寒い中で、手が冷えるのも我慢して転がしていたジグがショック!人って、一時の感情で全てを台無しにするよね……。
「やろう、ジグ。あいつら絶対許さない……」
「おう、雪だるまの恨み、晴らしてやる……!」


「怪我をなさる方がいらっしゃらないといいのですが……」
 バラフィールが見守る視線の先では、ミココが量産した雪玉をブリジットが抱えて走り、回り込んでガードを掻い潜り狙撃する戦法に。対するジグとシーリンは『ぱわーいずじゃすてぃす』(平仮名発音)と言わんばかりの脳筋ぶり。具体的には雪を適当に固めては投げる粗雑なシーリンによる連射の合間に、球にすらせずその辺の雪を塊のままぶん投げるジグ。
「く、この人馬鬱陶しいね……!」
「お前こそ粘るじゃないか、面白い!!」
「あ奴らこの冷える中で熱くなっとるのぉ……」
「くたばれ触手野郎!!」
「わらわは女子じゃ……のじゃー!?」
 雪玉の生産で動きが鈍いミココに、ジグによるダイレクトアタック!!雪合戦の余波で偏っていた雪の残骸がミココの頭上から落とされて、雪山にミココの首が生えた形に。
「何やってるんだ触手女!?」
「余所見とは舐めてくれるじゃない」
 と、ここでミココの撃沈に気を取られたブリジットにシーリンの雪玉が直撃。いやあれ本当に雪玉だよね?人馬のあの図体が吹っ飛んで、かまくらに突き刺さったんだけど……?
「……チッ」
 状況終了と同時、ジグはポケットに手を突っこんで肩をすくませる。冷え込む中で雪を投げていたのだ、すっかり体温を奪われていた。
「ジグは苦手だったっけ……?こういう寒いの……」
「……何でもねぇよ」
 微かに震える体を、腹の底に力を込めて強引に抑え込み、ごまかそうとするジグのポケットへ手を差し込んで、引っ張り出した彼の右手。冷たくなったその中指を口に含み、シーリンは静かにジグを見上げる。
「何やってんだお前はよ……」
(アタシなんかじゃ彼を癒したりする事はできないかも知れないけど……せめて少しでも、彼の側に要られるような、そんな存在になりたい)
 ずっと貴方の傍にいる、そんな意味があったはず。故に、シーリンは言葉にせず視線を送るが、ジグは透き通った空を見上げて、決して彼女を見てくれない。
(どんな状態でも強がってしまうのは昔からの悪い癖だ)
 それが意地なのか、『そうではない』のか、ジグ自身にも分からないけれど。
(そうやって変に強がってでも、俺は彼女を不安にしたくないのだと思う)
 結論づけて、舌打ちを一つ。けれど、シーリンを振り払うような事はしなかった。
「うーむ、やはり義弟のクレイも護衛として無理矢理連れてくるべきじゃったかのぅ?」
 はい、こちらがそんな傍らで雪に埋もれて冷凍保存されかかっているミココさんです。
「それに寒いのじゃ!当り前じゃが!温かい食べ物が欲しいところじゃな」
「甘酒ならありますよ……?」
「まことか!?」
 バラフィールがスコップを持ってくると、救出するまでもなくミココは触手を広げてズボォ!バラフィールのかまくらへと向かっていった。
「お元気そうでよかったです」
 胸を撫でおろしたバラフィールだったが。
「うなぁん」
「猫……?」
 助けを求めるような声に振り向けば、ミリアが白銀の猫を壮絶な勢いで愛でており、その猫の碧眼には見覚えが……。
「四夜さん」
「はい?」
「後でこれを大神さんに……」
 彼女の相方へと三毛猫チャームのボールペンを渡して、そっと見なかった事にするバラフィールなのだった。まぁ、うん、あの雰囲気には近づきたくないよね、あなたカオスの住人じゃないもの……。
「ううん、ここで退いちゃダメ、広告費(という名の食費)の為、フォロワーさん達の期待に応える為……!ブリジットちゃん、お着換えー!」
「寄るんじゃないこの変態女ァ!!」
 体勢を立て直したブリジットにエヴァリーナが立ち向かい、瞬く間に雪像に姿を変える様をアウレリアが眺め、ため息をつく。
「あの子は何をしているのかしら……」
「旦那さんの容態はいかがですか?」
 戻ってきたバラフィールが見遣るのは、アウレリアの膝枕で横たわるアルベルト。
「大丈夫よ、まさか餅を喉に詰まらせてしまうなんて……」
「……そう、ですね」
 診察したバラフィールは知っている。アルベルトが倒れたのは決して餅が原因ではないと。けれど、当の本人が首を振って黙秘を懇願しているのだ。ならば黙っておくのが医者の務めというもの……。
「……2021もこうやって一緒に楽しく過ごしたいねん、本当」
「楽しい……のかな?」
 押しに負けて猫化したユキを遠めに眺め、炬燵でみかんを頬張る永代の傍ら、餅っぽく伸びるワカクサと一緒にもちぃ……するクロウは首を傾げるのだった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月2日
難度:易しい
参加:9人
結果:成功!
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