魔導神殿追撃戦~異貌の巨人 双児宮編

作者:のずみりん

「アスガルド・ウォーの結果、アスガルドゲートは完全に破壊され、死翼騎士団も倒れた。ありがとう、ケルベロス」
 人々からの労いを代表するように敬礼したリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は、戦いも終わったばかりですまないが……と集まったケルベロスたちに広げた写真図を示す。
「エインヘリアルの残存兵力が魔導神殿群ヴァルハラの宮殿と共に地上に浮上してきている。ここ双児宮『ギンヌンガガプ』もその一つなのだが……」
 リリエが指し示すのはその後ろに鎮座するもう一つの巨人、『載霊機ドレッドノート』だった。
「出現した双児宮は載霊機ドレッドノート付近で停止しているんだが、そこから宇宙に向けて謎の電波が送られていると報告があった。そして双児宮を指揮するモーゼス王子はダモクレス由来の技術を取り入れている……」
 放たれた電波が何を意味するのかはまだわからない。だが放置しておくにはあまりに不穏な要素がそろっていた。
「モーゼス王子率いるエインヘリアルが何らかの策略を練っている可能性は高い。ケルベロス、停止している双児宮へと突入し、調査を行って欲しい」
 不確定要素の多い作戦だが、双児宮はまだ停止したままだ。最悪情報を持ち返る事が出来れば、その情報を元に再突入も可能だろうとリリエは説明した。

「双児宮の周囲は、巨大エインヘリアルが防備を固めている。過去に確認された個体も多く、おそらく双児宮の装置から作り出されたのだろう」
 双児宮『ギンヌンガガプ』にはレプリゼンタ・スルトを残して滅んだとされる「終末の巨人族」の模倣体を造る装置が存在という。
 リリエの用意した資料に写っているのは佐賀県唐津市に出現した『ユミルの子』、北海道苫小牧市に出現した『謎の獣型巨人』。
 更に残り一つには見覚えのない巨大な炎とも光ともつかぬ人型の姿もある。
「模造体といえ、巨大エインヘリアルの力は同等だ。この光の巨人も彼らと同等以上の力を持つと見ていいだろう……はっきりいう、正面突破は無理だ。引き離し、隙を狙え」
 巨大エインヘリアルたちの体躯をしても双児宮はさらに大きく、数も少ない。外縁部で一体を狙って撃破すれば間隙をついて接近することができるはずだとリリエは説明する。
「『ユミルの子』と『謎の獣型巨人』は過去に交戦したものもいると思うが、それと同等の力を有しているとみていい」
『ユミルの子』は敏捷と理力に秀でて、異常な再生能力を。
『謎の獣型巨人』は頑健で敏捷な体躯から毒の爪、防具を切り裂く角による破壊力を。
 一度撃破されたといえ、決して油断できる相手ではない。
「『光の巨人』は断片的な情報になるが、どうもこの光は星霊甲冑のものらしい。放つ光は浸食性……つまり毒のような性質が確認されており、それをまとう本人も状態異常に強い耐性を有していると考えられる」
 ただ伸ばす四肢だけでもその破壊力は強大で、また組んだ腕や頭部から光線状に放つ姿も見られたという。
「何処を狙うかケルベロス、皆に任せる。自分たちとの相性や、突入後の行動を考慮して決めて欲しい」

 言いながらも、リリエはあまり猶予はないかもしれないと漏らした。
「モーゼス王子はダモクレス由来の技術に明るかった……かの電波がダモクレスや、竜業合体のドラゴンとの交信だとしたら……いや」
 できれば宇宙と交信している装置を発見し、破壊しておきたいところだが何より情報だ。
「生還し情報を持ち帰れれば後の作戦に生かすこともできる。頼むぞ、ケルベロス」


参加者
キルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
神宮寺・結里花(雨冠乃巫女・e07405)
霧崎・天音(星の導きを・e18738)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ

●輝ける巨人
 光の巨人の額に浮かぶ宝石めいた輝きから怪光線が放たれる。
 頭を巡らせ地を薙ぎ払う巨人に、跳躍したケルベロスたちは即座にヘリオンデバイスを起動した。
「さすがに音より早く飛んできたりはないようだな」
「そっちの巨人だとヤバすぎっすねー……ではいきましょうか、年末大掃除大作戦です」
 ライフルと一緒に軽口を抜き打つキルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)の体が、神宮寺・結里花(雨冠乃巫女・e07405)のジェットパック・デバイスに引っ張り上げられる。
 デバイスの推進に『雷装天女』の羽衣めいたオーラが羽ばたくさまは天女の光翼にも見えた。
「その光は少々危険だ、おとなしくしてもらおう」
「ドェアッ!?」
 解放される『美貌の呪い』が巨人をとらえる。
「殲滅する!」
「ROGER.COMBAT MODE,LU100 ACTIVE」
 巨人の動きが鈍ったところへ、上空から飛び掛かっていくのはティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)とマーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)。
「来る……回避!」
 空へとむけられた巨人の光線を旋回してかわす霧崎・天音(星の導きを・e18738)の『ウィング・フィラデルフィア』から伸びるけん引ビーム。
 火花散る翼を広げた天音に続き、空中ブランコのように弧を描いた二人のスターゲイザーが突き刺さる。
 無限軌道が巨人の輝きをごっそりと削り取ったところへ、二人の専用エアシューズが中核をぶちぬく。
「ドゥワッ!」
「なんダ! あンまし食えルとこねーナ!」
 腕を振るい反撃を試みる巨人だが、届かない。
 伸びた腕にアリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)のチェーンソー剣がズタズタラッシュを叩き込めば、光は儚くも切り裂かれ実態を失っていく。
「やはり空への対処は苦手なようだね……問題は再生能力か」
 だがしぶとい。リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)はすぐさま再生を開始した光肌へ『電磁施術攻杖』を向けながら、さてどうしたものかと一案。
「再生するなら、ずっと食えルんじゃねーノ?」
 アリャリァリャの答えはシンプルだった。
「星霊甲冑は徹せそうです。一気に押し切りましょう」
「そうだね、ここで止まってても仕方がない」
 ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)が『忍者刀【紅竜鱗】』を順手に持ち替え降下するのに、リティも合わせて準備する。
「ドァッ!」
「っく!」
 無論、巨人も無策に待つだけではない。腕を組み放つビームが空を切り裂く。天音たちジェットパック・デバイスを構えたケルベロスを撃ち落とし、あわよくば動きを封じようと。
「このままいきます! 衝撃に備えて!」
 それでも結里花はひるまない。
 『雷装天女』を信じ、終末の光を突き抜けた体が旋刃脚を叩きつけて着地する。
「六秒後に穴をあけます。霧崎さん、ロートクロムさん、再生前に最大火力を」
「わかった……!」
「イタダキマス!」
 忍者刀の柄をハンマーとしたピコの破鎧衝が巨人を打ち据え、光を散らす。視認された聖霊甲冑めがけて氷炎のパイルバンカー、リティにエレキブーストを施されたチェーンソー剣が同時に突き立てられた。
「ダブル、スパイラル……!」
「ダイ、コン――おろーし!!!!」
 削岩機とグラインダー、穿孔と切削のコラボレーションが再生を超える速度で命を刈り取っていく。
「なンだ、もう終わりか?」
「いいや、まだ前菜のようだ」
 光を失った巨人にアリャリァリャがこぼすのと、キルロイがマインドウィスパー・デバイスから新たな戦いを告げるのはほぼ同時だった。

●ケルベロス、西へ
「キメラディオス……!」
 リティの声が上ずる。
 双児宮へと駆け付けたケルベロスたちの前に現れた異形の巨人、『電子戦・連携支援ユニット』が表示する情報は『終末の巨人族』の模倣体を代表する巨大戦力。
 既に四チームを数えるケルベロスたちが飛び掛かっているが状況は一進一退だ。
「おーっシ、ウチらモ……」
「アリャリァリャ、ステイ」
「エーッ!?」
 既に飛び込み参加、もとい加勢する気満々のアリャリァリャだったが、それを押しとどめたのはリティと先陣を切った仲間たちからの声だった。
「こちらからなら西側に回り込める、か」
「頼めるなら任せたいな。まだこれで終わりでもあるまい」
 キルロイが伝えてきた仲間たちからの連絡にマークはバックパックから伸びる『ベルトリンク』を指して賛同する。
 グラビティチェインは有限であり、特に彼の武装は実弾中心だ。最悪の事態を考えると弾薬は突入後まで温存したいし、駆け付け支援をするには東側は少々遠い。
「まぁ難しく考えなくてもいいんじゃないっすか? できる限りで援護しながら、できる限り探索するってことで……伸びろ、如意御祓棒っ」
 提案しながら結里花は『如意御祓棒』を突き出した。銃弾のごとき速度で伸びた御幣の先端がキメラディオスを一撃し、態勢を崩す。
「ツマミ食いカー……」
「でも、一理ある」
 未練を残しつつも駆けだすアリャリァリャに続き、天音の『インフェルノパイルバンカー』がフレイムグリードを飛ばす。
『【M158】の使用を提案。弾薬80%までなら火力低下は10%未満』
「決まりだな。SYSTEM WAKE UP」
 続く仲間たちのライフル斉射に振り向く巨体に対し、『R/D-1』戦術支援システムの提案にマークが両腕で『M158』を掃射。
 注意が引いたところに正面を戦う仲間たちが一斉攻撃を叩き込んでいくのを確認し、緊急展開用『メインブースター』を起動する。
「双児宮西部、突入ポイントを確認。マグノリアさん、いけますか?」
「皆まで言うな!」
 ピコの先導に戦域を離れるや、ティーシャは『ゴッドサイト・デバイス』を起動。デウスエクス配置を確認すると『アームドフォートMARK9改』を変形する。
「突破する! デウスエクリプス!」
 テレサ・コールの残霊から分離・合体した『ジャイロフラフープ』を加速し、ティーシャは閉まりかけの隔壁へと叩きつけた。

●ダモクレスを撃て
「付近にデウスエクス反応3、備えろ!」
『R.F.NVゴーグル』を下し、ティーシャが叫ぶ。臨戦状態の今は『ゴッドサイト・デバイス』は使えないが、おおよその配置は確認済だ。
「エインヘリアルの残勢力はもうそうないはず……だけど」
「ここまでの戦力はすべて巨人出会ったけど、噂が確かなら油断はできないね」
 部屋内、そして後方を警戒しながら隔壁を乗り越える天音とリティ。
 その前に飛び込んできたものへ、会話が途切れた。
「なんダ? ずいぶんチッけーナ!」
「エインヘリアルではありません、これは……!」
 青白い光のラインが走る三体、腕に接合した大型剣と巨大な手甲を構えた三体は一見して全身鎧にも見える。
 だがそのサイズ、その挙動は間違えようもない。
「ダモクレス!」
 首をかしげながら構えるアリャリァリャより、ピコの驚く声より早く、キルロイの剥き出しの憎悪が駆けた。
「でぇえやあああああああ!」
 体ごとぶつかるフェアリーレイピアは無限増殖機械軍すら反応できない。赤黒く『断罪の劫火』が吹き上がり、装甲胸部を爆裂させる。
「ここまで来て出会えたかァッ!」
 激情を叩きつける猛攻はそれが人であれば怯み後ずさらずにはいられまい。だがそんな感情を持たぬ機械はただ反撃に各々が武器を振り上げる。
「CRAWLING,NOW!」
 振り戻すのは間に合わない。だからキルロイは電子音声と同時に身を下げた。
 瞬間、炸裂する機関砲弾。
 蹴り飛ばし離れた部屋から炎が轟音をあげた。
「TARGET CLEAR」
「これって、ダモクレス技術をエインヘリアルが……とかじゃなくて」
 マークに庇われた結里花が思わず顔をしかめたが、肉の焦げる匂いは漂わない。飛び散る破片は金属か、得体のしれない無機物だけ。
「そういうことだ。モーゼスめ!」
 定型的な礼を頷き、キルロイは結里花の推測を結論付けた。
 宮を預かるエインヘリアルの王子は、彼の因縁の宿敵と手を組んだのだ。
「新型ダモクレスを識別子『ケ型』『オ型』で登録します……厄介な事態になりました」
 残骸を踏み越えて迫るダモクレスたち、その頭部モニターに輝くカナ風の意匠から名付けたピコは感想を漏らす。
 ただでさえ複数勢力と技術が入り乱れるダモクレス軍だが、更に新手が協力者と共に現れたのだ。
「オー、イっぱいキたゾ!」
 幸い、個々の個体はそう強くない。強くはないが、アリャリァリャが快哉をあげてズタズタに裂いたオ型……拳撃タイプの向こうには更なる新手が顔を出す。
「いつものことだが、キリがないな」
 大剣を突き出して突っ込んでくる『ケ型』に『バスターライフルMark9』を連射するティーシャ。ゼログラビトンの爆ぜる低音がリズミカルに響き、しかし鉄靴の足音にかき消されていく。
「SPIRAL ARM IGNITE」
 ビームのように飛んでくる剣閃をリティのマインドシールドが受け止め、近接モードに切り替えたマークがバリアごとスパイラルアームで殴り飛ばす。
「このルートは無理、上……!」
「なるほど、その手が!」
 戻す間もなく『如意御祓棒』を振り回す結里花は、天音の声に天井を見た。
 通気口か、あるいは吹き抜けなのか。どちらにしろ潜り抜けるには十分な広さだ。
「ダミー投影開始。離脱支援を行います、今のうちに」
 第二波を蹴散らすと同時、ピコの『多重分身の術』が無数の分身を生み出し『チェイスアート・デバイス』と共に仲間たちの退避を支援する。
「マークさん、その隔壁を……!」
「オッ、これカ?」
「THANKS」
 打ち出される拳、剣閃にさらされながら天音は仲間たちを引っ張り上げていく。
 隔壁の残骸をアリャリァリャが切り分け、マークが『アームドアーム・デバイス』で引っ張り上げる。
 全員が上階へ飛び出すと同時、叩きつけて閉じれば封鎖完了。少しは時間が稼げたはずだ。

「さぁて問題は何を探すかだが……」
「このまま上に行ってみよう。宇宙に電波を送っている発信施設は高台か、高台のアンテナの近くにあるはずだ」
「お前さんがそういうなら、ここは従おうか」
 指揮連携支援型として生まれたリティの考えなら恐らくダモクレスにも通じるだろう。
 キルロイは努めて感情を殺し、異論はないと答える。
 そしてその判断が間違いなかった事は、歩みを進めてすぐに証明された。

●さらば双児宮
 それはさながら機械の山であった。
 円錐状に重ね積み上げられたPCのプロセッサや拡張ボードの山が無数のケーブルで連なり、その山には何に使うかわからない真空管じみた部品が街灯のように林立している。
「でっケー!」
 そしてなによりサイズ。
 アリャリァリャの声も上ずる全高は、外のエインヘリアルに勝るとも劣らない。
 外から見える拡張ボード風の部品でさえ、今ここにいる誰よりも大きいのだ。
「この化け物機械が例の電波の発信機というわけか」
「間違いない。そして……気を付けろ!」
 万人の存在を警戒するキルロイの前、ティーシャの声に反応するように機械の山の頂点が飛び出した。
「なるほど。ダモクレスらしい設計ですね」
 飛び出したのは人間を模した上半身。その頭部モニターと、先のピコの命名則に沿えば『イ型』ということになるだろうか。
 発信装置であり、それ自体が装置の番人。これこそ『ゴッドサイト・デバイス』が捉えていた最大反応!
『迎撃プログラムを開始』
 ピコの展開した『多重分身の術』が電撃の嵐に吹き飛ばされる。間髪おかず飛び出してくる火花散らすケーブルが両腕を襲う。
「擬似螺旋炉を起動。出力臨界まで急速上昇……!」
「間に合わせる!」
 ピコを襲う電撃を受け止めたのはキルロイの拳。土蔵篭りの恐るべき膂力がケーブルを素手で引き裂く、食い止める。
 即座に放たれる螺旋氷縛波が修復を阻止し、砕け散る。
「もはや出し惜しみはしません! 大いなる水を司る巳神よ、その身を激流の槍と為し、仇なすものを追い詰め捕らえ喰らいたまえ。急急如律令!」
 結里花の『神宮寺流水術 蛇水槍 八岐』の詠唱が朗々と響き、巳神の化身は水の八岐大蛇となって顕現する。
 阻止せんと放たれる『イ型』の電撃放射。
『ダメージ40%、異常発生。防衛システム作動……作動……』
 次々と突き刺さる八岐の水の槍をも導電体に、双児宮最上層の一室を破壊と暴力の嵐が吹き荒れた。
「ギーヒッヒヒヒ! イキてんナーッ!」
「まずあの漏電を何とかしないとね。メディカル・エスコーター、対象とのデータリンク確立、技術支援を開始」
 八艘飛びでかわしまくるアリャリァリャを見送りつつ、リティは突き立てた『対艦戦用城塞防盾』の後ろから『メディカル・エスコーター』医療支援ドローンを展開。支援と阻止の攻防戦が凄絶さを増していく。
「いただきまス!」
「TARGET LOCK.HELL HOUND MISSILE ON FIRE」
 競り勝ったのはケルベロスだった。
 アリャリァリャの突き立てたチェーンソー剣が避雷針のように電撃を逆流させ、わずかに止んだ間隙をマークの放った対デウスエクス誘導弾が遡る。
『送受信機構に致命的なダメ、ダメ……ダメージ……』
 爆発。
「見えたぞ!」
 温存したありったけの弾頭が『イ型』の下半身をごっそりと消し飛ばす。ダメ押しとティーシャの放つ『カアス・シャアガ』重砲が装甲を吹き飛ばした最奥、青白い輝きを放つ『イ型』のコアユニットは遂に露出した。
「キルロイさん……『獄炎斬華』で、合わせる!」
「知らんぞ!」
 飛び込む天音はスターゲイザーの構えから右脚の地獄の炎を燃やす。ともに飛び込むキルロイの拳と共に。
「私が……全ての恨みを晴らす……エインヘリアルとの戦いも終わらせて……!」
「燃え尽きろ鉄屑がぁぁぁぁぁぁ!」
 犠牲者たちの憎しみを炎の脚刀とした『獄炎斬華・恨壊』、天音の突き刺したそれを媒介に、キルロイの『断罪の劫火』が迸る。
『ダメージ……限……』
 赤黒い劫火がさながら活火山のごとく吹き出し、『イ型』の機影を吹き飛ばしていった。

 通信装置は停止したがケルベロスたちに休む暇はない。
「い、い、いまの地震っすか!?」
 突然の振動に結里花が尻もちをついたのと同時、マークの戦術システムがけたたましいアラートを叫ぶ。
『高度の急激な上昇を確認。迅速な退避を推奨』
「ウチら、ユーカイさレちゃウのン!?」
 アリャリァリャが叫び天窓を見れば、恐ろしい速度で変わる景色。
「そうなる前に脱出だ、急ぐぞ!」
 ティーシャの声にありったけの火力が天井を破る。各々のジェットパックデバイスが仲間たちを引き上げ飛び出したのは間一髪。
 飛び出したケルベロスたちの目前、双児宮の西宮は空を何処までも飛び去っていった。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年1月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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