コスモスと鳥と

作者:坂本ピエロギ

 秋も終わりを迎えつつある、十一月の朝。
 この日、とある山麓に広がる景勝地の庭園では、コスモスが最後の見頃を迎えていた。
 白、桃、赤。可憐な美しさを湛えたコスモスの花々が、広大な庭園の一面をを満たすように咲き誇る。その景色を楽しもうと、園内は多くの人々で賑わっていた。
 今年の秋桜もこれで見納め。来年もまた素敵な景色が見られるといい――。
 そうして人々が秋の名残りを惜しんでいた、その時であった。
『許っさああああんっ!!』
 空の彼方から、怪鳥のごとき雄叫びが轟く。
 いや、声の主は実際怪鳥であった。
 ばっさばっさと空飛ぶ鳥人間――それもよく見れば、頭のてっぺんに攻性植物をぴょこんと花咲かせたビルシャナだったのだ!
『コスモスは早咲きこそ正義! 秋のコスモスなど滅べええええ!!』
 そうして鳥人間は怪光線を乱射しながら、庭園を焦土に変えていった。

「ふむ。攻性植物化したビルシャナが事件を起こす、か……」
 まったく傍迷惑な連中だと嘆息して、ナザク・ジェイド(とおり雨・e46641)は如意棒の『ちくわ』をぶるんぶるんと振るった。
「どうやら戦いは避けられんようだな。ダンテ、説明を頼む」
「了解っす。事件が起こるのは、とある山の麓にある景勝地っす」
 景勝地の庭園内に咲き誇る、一面のコスモス畑。そこを1体のビルシャナが襲撃するのだと黒瀬・ダンテは告げた。
 敵の名前は『早咲き以外のコスモス全部滅べ明王』。秋のコスモスを地球上から根絶するために活動しているビルシャナだ。彼はユグドラシルの力で強化されており、ビルシャナと攻性植物の性質を持っているという。
「1体だけ……つまり信者はゼロか。なら説得も要らないな」
「そっすね。物理でサクッと解決するのが一番手っ取り早いハズっす」
 現場は庭園に面した広場。周囲に障害物はなく、現着する頃には避難も済んでいるため、戦闘には問題なく集中できる。
 明王は飛行中ポジション、つまり地上からの近距離攻撃が届かない点にのみ注意すれば、特に脅威となる能力はないとダンテは言った。
「この作戦ではヘリオンデバイスが使用可能っす。ガンガン利用して下さいっす!」
「デバイスか。なんだか色々出来るらしいな? 例えばほら、飛べたりとか」
「ええ。コイツで飛べば飛行中の敵にも近距離攻撃が届くんで、めっちゃ有利っすよ!」
 何なら、デバイスの練習と思って戦ってみるのも良いかもしれない――そう言って依頼の説明を終えると、ダンテの話は戦闘後の事に及んだ。
「戦いが無事に終われば庭園も開放されるっす。コスモスの咲き誇る園内を散策しながら、秋のひと時を過ごすのもいいかもっすね!」
 広大な庭園には、可憐なコスモスが秋の名残を惜しむように咲き乱れる。
 今年の見納めとなる景色を眺めに、花園には多くの人々が訪れるようだ。人と花の大切なひと時を守るためにも、確実な遂行を頼みたいとダンテは話を結んだ。
「大菩薩が滅んだ事で、ビルシャナの一部はユグドラシルに信仰を変え始めたみたいっす。明王の不届きな狼藉、必ず阻止して下さいっすね!」


参加者
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)
シャルフィン・レヴェルス(なんかアレ・e27856)
蘇芳・深緋(ダンジョンレア倉庫・e36553)
エトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)
ナザク・ジェイド(とおり雨・e46641)

■リプレイ

●一
 ――世の中なんて、理不尽だらけだ。
 ナザク・ジェイド(とおり雨・e46641)というサキュバスは、たまにそう考える。
 何故なら『理不尽』としか形容できない出来事に、彼はしばしば遭うからだ。
 それは例えば、空飛ぶビルシャナであったり、あるいは空飛ぶ攻性植物であったり、要はこれ見よがしに空飛ぶデウスエクスを、地上から見上げて戦うしかない事であったりする。
 ――おかしいだろう。そんな奴らが飛べるのに、サキュバスは飛べないなんて。
 だがそんな理不尽は、もはや彼にとって過去の事となった。つい数分前の事だ。
「ああ……空を飛ぶって、悪くないな……」
 山麓に咲き誇る一面の花畑を空から見下ろして、ナザクはしみじみ呟いた。
 ジェットパックを背に着けた彼は現在、数人の仲間達と共に現場の上空を飛行している。初使用するデバイスの感覚を戦闘前に掴もうというのだ。無論、飛べるのが嬉しくって我慢できなかったとかそういう理由ではない。断じてない。
「見渡す限りの青空。そして一面のコスモス畑。最高の景色じゃないか」
「確かに。花々の上でぐうたら、夢のようだ」
 翼をぴこぴこ震わすナザクの横を、牽引ビームをつけたシャルフィン・レヴェルス(なんかアレ・e27856)がちくわぶスーツ姿で飛んでいく。常と変わらぬ無表情の彼だが、所作の端々には初めて飛行する楽しさがほんのり滲んでいるようだ。
「コスモス畑か……綺麗な眺めだよな、本当に」
 レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)が地上を見下ろし、呟く。
 なだらかな斜面に広がる花畑。どこまでも続くコスモスが、肌寒さを帯びはじめた秋風にさらさらと靡く。大空からしか見られない眺めがそこにはあった。
「この風景、守りたいよな。頑張ろうぜ!」
「そうだな。よし、そろそろ一旦下りるか」
 そうしてナザクが視線を移した先には、広場で会話する仲間達の姿が見える。
 蘇芳・深緋(ダンジョンレア倉庫・e36553)と、櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)だ。
「えー、千梨さん妖精の恰好しないのー? ほら、これとか」
「ちょっとそれは恥ずかしいな。俺はほら、耳とんがってるだけで立派に妖精だろう」
 深緋のスマホを覗き込みつつ、シャドウエルフの耳を摘まむ千梨。
 そこへばさりと下り立ったナザクが会話に加わる。
「どうしたのかな君達、困り事かな?」
「ああナザクか……いや、困っているというか……」
「敵の迎撃でさ、秋桜の妖精さんの格好したら面白そうって話してたんだよねー」
 そう言って深緋は、とある魔法の王国のキャラクターの絵を見せる。
「ナザクさんも似合いそうじゃない? これとか」
「それ女性の服だと思うんだよなあ。俺、清純派サキュバスなんで肌出しとかはちょっと。そういう深緋はどうなんだ?」
「え、ワタシ? ワタシはアレかな、魔法使いのおばーちゃんとか……」
 そんな3人の傍へ、ジェミ・ニア(星喰・e23256)とエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)が確認を終えて戻って来た。
「皆さん、お疲れ様です!」
「地上の方は問題なク。いつでも迎撃できる状態デス」
 逃げ遅れた人々はゼロ。広場で戦えば、花畑が被害を受ける心配もなさそうだ。
 つまりは全力で戦える状況。ジェミは支度をてきぱきと済ませ、期待に輝いた目を家族のエトヴァへと向ける。
「ねえねえエトヴァ、後で花畑も見て回ろうよ!」
「喜んデ。頑張って明王を阻止しまショウ」
 そう言って微笑むエトヴァの青い髪には、一輪のコスモスが挿してある。
 現場確認の際、庭園の端に落ちていたものだ。恐らく人々の避難に巻き込まれて、運悪く折れてしまったのだろう。
(「貴方のお友達ハ、俺達が守ってみせマス」)
 静かな誓いをコスモスに寄せるエトヴァ。
 そうして戦いの支度が終わると同時、強化ゴーグル型デバイスで周囲の索敵を行っていたエニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)が仲間達に警告を発する。
「注意を。来たようですわ」
 果たしてエニーケが指さす先、空の彼方から飛んでくるのは鳥人間のシルエットだ。
 深緋とナザクは直ちに牽引ビームを照射すると、千梨を除く全員で飛翔。花畑を背にして飛行状態となったエニーケは、迫りくる敵に向けて吐き捨てるように呟いた。
「秋のコスモスを恨むなら竹林の笹でも食ってなさいな」
 秋桜の庭園を守る戦いが、いま始まろうとしていた。

●二
 程なくして姿を現したのは、一輪の花を頭に咲かせたビルシャナだった。
 攻性植物と化した孤独な明王、『早咲き以外のコスモス全部滅べ明王』である。
『我の邪魔をする気か? 何者だ!』
「ふっ……コスモスの空飛ぶ化身、とでも名乗っておこう」
 ちくわをぷるぷる震わせるナザクが、敵意も露わに言い放つ明王へ答える。
「ならオレは、遍く全宇宙のコスモスを守護(まも)る孤高の戦士――レヴィンだ!」
 そこへ続くは、ゴーグルを装着してワイルドな笑みを浮かべるレヴィン。
「俺は秋桜の妖精。秋桜の守護者にして代弁者、的な……まあ、俺の事は余り気にせず」
 何だかもう色々と諦め混じりの声で、地上でぽちぽちスマホを操作する千梨。
 そんな彼らの言葉を宣戦布告と受け取ったらしく、明王は怒り狂って大空に吠える。
『ふざけおって! まずは貴様等を焼き払ってくれる!』
「やれやれ。では俺は、裏方として頑張らせて貰おう」
 千梨もまた即座に気持ちを切り替え、圧縮霊弾の一撃を戦闘の嚆矢とした。
 プラズムキャノンの直撃を浴びて吹き飛ぶ明王。同時、その頭上から降り注ぐはジェミが蹴飛ばしたフォーチュンスターの一撃だ。
「その羽毛を剥いであげます!」
『ぬうぅっ!?』
 明王は両腕を交差させ、オーラの星をガード。紙一重でクリーンヒットを免れると同時、反撃とばかりに精神を集中させていく。
『早咲きコスモスの光を浴びるがいい!』
 明王の背後に差した後光が、秋桜の文様を描きながら地上へ照射された。
 炎をもたらす怪光線を浴びて炎上する千梨。そこへシャルフィンは空中をぐねぐねと舞い踊り、ちくわぶダンスで花弁のオーラを舞い散らせる。
「大変だ、妖精さんが燃えてしまう。この花で癒してやろう」
「おお有難うシャルフィン、助かる」
「スリップダメージは厄介デス。対策を急ぎまショウ」
 同時、エトヴァは攻性植物を空へと掲げ、黄金の果実の光を後衛に浴びせていく。そんな彼へ、炎を消した千梨がスマホのカメラを向けて一言、
「皆の勇士を動画に収めよう。エトヴァ、スマイルで頼む」
「こ……こうですカ?」
 はにかみのピースを送るエトヴァ。千梨はそれを捉えつつも、
(「あれ、これ写真だなあ。ええと動画撮影は……」)
 今一つ扱いに苦心している様子。
 いっぽうエニーケは竜鎚から発射する轟竜砲で、明王の動きを封じていく。
「馬が空を飛ぶファンタジーなど、おとぎ話ですわよ」
 着弾。轟音。衝撃で吹き飛んだ羽毛が、青空を汚すように舞い散る。
 回避も防御も耐久も、突出した強みを何一つ持たぬ敵に、デバイスがもたらす狙撃に抗う術はない。たまらず悲鳴を上げる明王へ、エニーケは鋭い敵意込めた舌鋒を、砲撃とともに容赦なく投げつける。
「飛行にリソースを注ぐなんて、どこまでも間抜けな明王ですこと」
『お、おのれ……!』
 負った傷を癒さんと、頭の花を太陽に晒す明王。
 刹那、それを深緋の影が遮った。背後を取った明王の頭めがけ勢いよく振り下ろすのは、鋼よりも固い改造スマートフォンの角である。
「昔のテレビとかはこうやって直してたらしいよー。あれー直らないなー?」
『ちょっ、貴様――離れろ!』
 明王が邪魔を振り払おうとした瞬間、手にした経文が打ち払われた。
 ナザクが手にする、ヌンチャク型ちくわの斉天截拳撃によって。
「今がチャンスだ、戦士レヴィン」
「任せろ。コスモスを踏みにじる奴は許さないぜ!」
 チェーンソー型の動力剣を全力駆動。炎を帯びた回転刃が唸りを上げて明王を襲う。
「信者がいないのは珍しいな。営業が苦手なタイプか?」
『ぐぬぬっ、う、うるさい!』
「良いじゃん、得意な事を伸ばせばいいんだよ! お前は飛べるだろ、素敵な特技だ!」
 実際空を飛べば、地上の至近攻撃は当たらない。対ケルベロスの戦いにおいては個性的な性能と言えよう。だが――と、レヴィンは言葉を継いだ。
「オレ達も飛べるからお前は殴られまくるんだけどな、こんな風になー!!」
 ブレイズクラッシュの一撃が明王を焼き焦がす。
 こうしてケルベロスの猛攻は一切の容赦なく、ビルシャナを追い詰めていくのだった。

●三
 戦闘開始から数分後、戦場の趨勢は難なくケルベロスの優勢に傾いた。
 花畑の被害はいまだゼロ。千梨は悪戦苦闘して動画機能をONにし、撮影を続行する。
「エトヴァ。後衛の耐性はどうだ?」
「これは少々……減衰が厳しいですネ」
 千梨の疑似霊体をまといながら、エトヴァがかぶりを振った。
 やはり7人という人数では付与も一苦労か。とはいえそれは敵も同じで、炎を浴びている後衛のケルベロスは誰もいない。ナザクなどは余裕の表情を浮かべながら、
「ふむ……きっと霊体達が恥ずかしがっているんだな。空飛ぶ俺が美しすぎて」
「おかしいな、ナザクにはきっちり付与できてるが……」
 千梨はそんな言葉を返しつつ、御業の糸を差し招き始める。
 もはや明王は満身創痍。コスモスに危害が及ぶ前に叩いた方が早そうだ。
「繰る糸は、糸桜か糸薄。或いは哀しき、業の糸」
『ほげげっ!?』
 滑稽な悲鳴と共に、赤みを帯びた糸に絡め取られる明王の体。
 そこへジェミが雷刃突を叩き込み、土手っ腹の羽毛をむしり取っていく。
「そこ、隙だらけですよ!」
 パァン。空気が弾ける軽い衝撃で、青空にばら撒かれる羽毛。そこへ息つく間もなく襲い掛かるのは、エトヴァのレイピアから噴き出す花の牢獄だ。
「心を温かく満たしてくれる花々。そこに早咲きも遅咲きもありまセン」
 一見して遊んでいるように見えるケルベロス達だが、守りを剥ぎ、回避を奪い、更には力までも封じ込める連係プレーにはおよそ無駄というものがない。刃を振るう度に明王は体に傷を増やし、もはや飛ぶ事さえ精一杯の様子だ。
 そんな敵に深緋は憐れみの嘆息を一つ、澄んだ空気を胸一杯に吸い込んだ。
「飛行中の時点で割と詰んでるよねー。じゃ、とっておきの一曲いくよー」
 深緋の朗々たる声が、澄み渡った青空に響く。
 『Your Song&my song』――ケルベロスとして放つ最初の必殺技は、捉えた明王の古傷を容赦なく抉り、トラウマとなって苛み始める。
「響かせよう、キミ(ボク)だけの詩(モノガタリ)を――」
『ぐっ!? やめろ虫共、葉を齧るんじゃない!』
 明王は全身に傷を増やして暴れるも、御業の糸に絡めとられて反撃もままならない。
 そこをブラックスライムの槍で刺し貫くシャルフィン。有毒の一撃を浴びてのたうつ敵へレヴィンが動力剣を振るい、ズタズタラッシュの猛攻撃で羽毛を刈り取っていく。
「ラストスパートだぜ。あとは任せる!」
「その翼を叩き斬って差し上げますわよ!!」
 同時、エニーケが仕掛けた。深層心理の感情を刃に、ゲシュタルトグレイブに纏わせる。そうして放つのは『硝子の薙刀』だ。
「心とは脆く儚く壊れやすいものです。例えばガラスのようにね……!」
『う……うぎゃあああああ!!』
 一閃の後、翼に硝子片を浴びて悶絶する明王。その姿にナザクは嘆息をひとつ、あらゆる意味で頭に花の咲いた明王を、無数の花弁で包み込む。
「じゃあな――お前の事は忘れないよ、5秒くらいな」
 花弁に忍ばせて放つ、白銀の一閃。
 同時、耳障りな悲鳴がぴたりと途絶え、明王は光の粒となって消えていく。
 そうして再び平穏を取り戻した大空で、ジェミは心からの笑顔を浮かべた。
「お疲れ様です。お花畑も無事みたいです!」
「青い空に、咲き乱れる秋桜の花々……守れて良かったデス」
 エトヴァもまた微笑みを浮かべ、現場を修復していく。
 ヒールが降り注ぎ、幻想混じりの姿で繕われていく広場。程なくして修復が完了すると、ジェミは戦闘の被害を免れた絶景をデバイスの飛行で堪能する。それはレプリカントの彼が目にする、初めての景色だった。
「凄いです! メルヘンです! 見渡す限りお花の海です……!」
 もうじき、庭園は人々の賑わいを取り戻すだろう。
 それ迄のひと時、一面に咲き誇るコスモスの絶景を満喫しながら、ジェミは静かに感嘆の吐息を漏らすのだった。

●四
 無事に開かれたコスモス庭園には、穏やかな時間がゆるゆると流れていた。
「このまま帰るのは勿体ないだろ?」
 レヴィンのそんな一言に、我が意を得たりと頷いて、8人はのんびり園内を散策する。
 暖かい陽光を浴びながら、花畑をそぞろ歩くエニーケ。
 風に揺れるコスモスと一緒に、秋晴れの空を見上げるジェミ。
 千梨は花々の撮影に悪戦苦闘し、エトヴァと深緋に手ほどきを受けている。
 一方でシャルフィンは、
「ああ……いい天気だ、眠くて仕方ない」
 どこか良い昼寝場所はないかと辺りを見回すと、すぐ先に見晴らしの良い場所があった。花畑が一望できる特等席のようだ。
「ふむ。人もいないようだ、少しだけ使わせて貰おう」
 全員が座れそうなシートを敷いて、早速休憩を決め込むシャルフィン。そこへレヴィンが取り出したのは、もっちりと美味そうな団子の山である。餡子に三色にみたらしと、どれも素晴らしく食欲をそそる。
「いい時間だし飯にしないか? 沢山あるから、どんどん食べてくれ!」
「あ、僕も色々持ってきたので、宜しければどうぞ!」
「俺とナザクもこんな物を。つまらないものだが遠慮せず」
 ジェミの飲み物は珈琲、お茶、ハーブティー。そこへ千梨とナザクのチョコが加わって、他の仲間も次々と持ち寄りを揃えれば、即席の宴が賑やかに幕を開けた。
 エニーケは野菜スティックを齧りつつ、青空に映える秋桜をのんびり眺める。
「良き眺めですわね。……お弁当でも持ってくればよかったかしら?」
「果物のタルトなどもございマス。此方のジャムクッキーも是非」
 エトヴァが勧める料理は、どれもしみじみと美味い。
 レヴィンはコスモスを眺めながら、銀色の銃にそっと手を添える。皆で過ごすひと時を、今は亡き少女とも分かち合うように。
「なんかいいな、こういう時間」
「うんうん。んじゃ、ここらで一曲いきますか」
 タピオカミルクティーをくいっとあけて、深緋がバイオレンスギターを爪弾き始めた。
 歌や手拍子で応じる仲間達。ナザクもまた輪に加わりながら、隣の千梨に耳打ちする。
(「うまく撮れたか?」)
(「うむ、何とかな」)
(「そうか。……良かったよ」)
 十一月の晴れた日、降り注ぐ温かな日差し。
 咲き誇るコスモスの園で、夢魔の翼がぴこぴこと踊った。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。