●
「愛の形は?」
闇にうずくまる倉庫の中。響きわたる声が問うた。
声の主。どうやら男であるらしい。らしいというのは、男が人の姿をしていないからで。
男は羽根に覆われていた。鳥怪である。ビルシャナであった。
そして、彼の前には異様な雰囲気を持つ十数人の集団がいた。年齢は様々であり、男も女の姿もある。
「同性愛!」
集団たちが叫んだ。
「そうだ。同性による愛こそ至上である!」
ビルシャナが高々と叫んだ。そして命じた。
「異性で愛し合う者たちを襲い、引き剥がし、同性の愛の素晴らしさを教え込むのだ!」
「おお!」
信者たちが叫び声をあげた。
●
「鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はいった。
「悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が、今回の目的。このビルシャナ化した人間が周囲の人間に自分の考えを布教している所に乗り込む事になります」
「どのような考えだ?」
問うたのはコクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)であった。
「同性の愛こそ至高。それ以外の愛を排除せよ。それがビルシャナ化した人間の考えです」
「同性の愛?」
コクマは苦笑した。同性の愛ん否定するものではないが、彼はやはり異性が良いと思っている。
「今度は同性愛にこだわりのあるビルシャナが現れたのか」
「ええ」
うんざりしたようにセリカは溜め息を零した。
「ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、ほうっておくと一般人は配下になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれません」
セリカはいった。ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのようになってしまう。そうなれば厄介であった。
「インパクトのある主張、か」
コクマは唸った。考えられるのは異性の愛の素晴らしさを見せつけることであるが……。
「ビルシャナさえ倒せば一般人は元に戻ります。配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
「ビルシャナの戦闘方法は?」
「破壊の光を放ちます。さらには炎も。そして経文を唱え、相手の心を乱します」
周りにいる人間の数は十ほど。配下となった場合、多少は強化されるようであった。
「教義を聞いている一般人はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのはインパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれません」
セリカはいった。
「愚かなビルシャナの愚かな考えを粉砕しなければならんな」
コクマはニヤリとした。
参加者 | |
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日柳・蒼眞(落ちる男・e00793) |
皇・絶華(影月・e04491) |
揚・藍月(青龍・e04638) |
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813) |
メレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212) |
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432) |
秦野・清嗣(白金之翼・e41590) |
●
深夜の倉庫。内部には異様な熱狂が渦巻いている。
「同性だけが愛し合う世界を!」
声高に男は叫んだ。ビルシャナであった。
「待て!」
倉庫内に声が響き渡った。凛とした声音である。
「……誰だ、お前らは?」
「私は皇・絶華(影月・e04491)。ケルベロスだ!」
男が名乗った。煌めく銀髪銀瞳、漆黒のロングコートをまとった美しい若者である。
「ケルベロスだと?」
「そうだ」
うなずいてから、絶華はいった。非生産的な愛は良くない、と。
すると、ふふ、と絶華の隣に佇む端麗な男ーー揚・藍月(青龍・e04638)が笑った。なかなかに楽しそうな依頼だと思ったのである。
「何、自然の営みの一角だ。俺から特に何かを言う気はないよ。まぁ見守るぐらいに収めるとしようか」
「……同性愛の善し悪しはこの際置いておくとして…」
今度は蒼空を映したかのような蒼髪の若者が口を開いた。日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)である。
「異性愛を認めないというけど、自分達もご両親の異性愛の結果として存在しているんだろうにそれを否定するのか…? それに異性愛者を襲って引き剥がすってのは自分達のご両親も襲撃して無理矢理にでも別れさせたいって事か…? ……もし自分の両親は別枠、みたいに考えているとしても遅かれ早かれ今自分の隣にいる方々に襲われるだろうけど、子供の立場からすれば両親を離婚させようとされるというのはどんな気分だろうな…?」
「くっ」
ビルシャナも信者も声をつまらせた。蒼眞のいうことが正しいからである。
その様子を眺め、蒼眞は苦く笑った。
「百合なら可愛ければ良いけど薔薇は一寸、な…。俺のいない所でやってくれ、としか…」
「男同士では女の柔肌を堪能できぬではないか! そんなのあってたまるか!」
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)が傍らの女に手をのばした。
女は二十代半ばほどの妖艶な娘である。吸血鬼を思わせる黒マントで身を包んでいるのだが、そのマントの上からでもわかるほどに肉感的な肢体の持ち主であった。
「ああん」
娘ーーメレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212)は甘い声をもらした。マントの内側でコクマの手が蠢いている。メレアグリスの乳房を揉みしだいているのであった。
たまらずメレアグリスはマントを脱ぎ捨てた。現れたのは輝くばかりに美しく豊満な裸体である。マントの下は裸であったのだ。
のみならず、ここに来るまでにメレアグリスは数人の男性と性行為を行っていた。すでに肉体は濡れていたのである。膣からは残滓である精液が溢れていた。
●
「やめろ!」
怪鳥のような声でビルシャナが叫んだ。信者たちの目が二人のケルベロスたちの痴態に吸い寄せられているからである。
彼は敏感に己の言霊の効果が薄れていきつつあることを感じ取っていた。なんとしてもケルベロスたちの行為をやめさせなければならない。
すると、一人の女が彼の前に立ちはだかった。
巫女装束をゆるやかにまとった可愛らしい娘。露出の多い衣服から覗く肉体はたわわに実った果実のように艶やかだ。男をとろけさせずにはおかぬ色香を放散しているのは、メレアグリスと同じサキュバスであるからに違いなかった。プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)である。
「同性愛のビルシャナ……何で声高に性癖を主張しているの? 男の子も女の子も良い所あるのに」
プランが可愛らしく小首を傾げた。心底不思議でしようのない様子である。
それがビルシャナの怒りを煽った。羽毛に包まれた顔を憤怒にゆがめると、
「愚かな小娘が。知ったような口を叩きおって。どけ!」
ビルシャナが炎を放った。灼熱の火流がプランを飲み込み、その身を焼け爛らせる。
「なんてことしてくれるのよ!」
激痛にプランの顔がゆがんだ。自慢の巫女装束が黒焦げになっている。
「えいっ」
炭化した巫女装束の欠片をばらまきながらプランが跳んだ。流星の重さを秘めた蹴りがビルシャナの腹に炸裂する。鳩尾を蹴られたビルシャナが悶絶した。
「まだだよ」
さらに一人、男ーー秦野・清嗣(白金之翼・e41590)がビルシャナに迫った。純白の翼もつ彼は、その超然とした態度とあいまって、まるで天使のように見える。
「苦しんでいるところ悪いのだが、これも君の罪だ。悔い改めてもらうよ。懺悔と自新の札」
はだけたシャツの胸元から、清嗣は嘉留太の札を一枚取り出した。瞬間、札から青い光が迸り出た。
「うっ」
ビルシャナが呻いた。青い光の中に、彼は重くて苦い過去を見たのである。
次いで白光がビルシャナを包み込んだ。新たな生を掴み取れと促す光であるが、必死になってビルシャナはその誘惑に耐えた。
「こ、こんなもの」
歯噛みしつつ、ビルシャナは顔を上げた。目から放たれた怪光がケルベロスたちを薙ぐ。メレアグリスを庇ったボクスドラゴンーー響銅は細胞そのものを滅殺されて地に落ちている。
「ほう」
怪光に灼かれながら、藍月は感嘆した。範囲攻撃でありながら、怪光はかなりの威力である。さすがはデウスエクスというべきか。
ちらりと走らせた視線の先、ボクスドラゴンの紅龍がメレアグリスの裸に見入っていた。藍月の顔に苦笑が浮かぶ。弟ーー紅龍はけっこう助平なのであった。
「ははは紅龍。注目しすぎではないかな」
可笑しそうに笑いながら、しかし藍月の攻撃は冷徹であった。縛霊手を装備した超高速の突きがビルシャナを貫く。
凄まじい衝撃にビルシャナが仰け反った。呪的装甲である羽毛が千切れ飛ぶ。
「……まったく。なんという威力なのだ」
藍月と同じように慨嘆すると、絶華は地を蹴った。コンクリートを爆砕させて空に舞い上がり、煌めく蹴撃でビルシャナを打ち据える。
●
コクマがメレアグリスの口を自身のそれで塞いだ。舌を差し入れ、メレアグリスのそれにからませる。素直に、いやむしろ積極的にメレアグリスは応じた。
するとメレアグリスはコクマを押し倒した。脱がすのももどかしそうにコクマの下着を取り去る。ビンッとコクマの肉棒が解放されてそそり立った。
「ふふふ。美味しそう」
舌なめずりすると、メレアグリスはコクマの肉棒を濡れた陰唇に押し当てた。そして一気に尻を落とした。
「ひっ、ああん」
メレアグリスの口から悲鳴に似た喘ぎ声が発せられた。猛り立つコクマの肉棒が彼女の子宮にまで達しているからだ。
「だ、だめぇ。奥まで届いちゃってるぅ。はあん」
メレアグリスはむっちりした尻をいやらしくくねらせた。膣でコクマの肉棒を貪らんとするかのように。
そのメレアグリスの奉仕を堪能し、コクマは横たわっていた。自ら動くことはない。
ならばとメレアグリスは動いた。跨がった姿勢のまま、たぷんと乳房を揺らしながら尻を打ち下ろす。パンパンと肉と肉が打ち合う淫らな音が響いた。
「た、たまらん。射精すぞ!」
「ああん。いいよ、来てぇ!」
その瞬間、コクマは精液をメレアグリスの子宮にぶちまけた。メレアグリスもまた秘肉から液体を噴き、コクマを濡らした。
「おのれっ」
怒りと焦りの滲む目を、ビルシャナは信者たちにむけた。ケルベロスたちの痴態に夢中になった彼らに、もはや言霊は届かないだろう。
「奴らさえ排除してしまえば」
ビルシャナは光を放った。死の光線が二人のケルベロスたちめがけて疾る。
瞬間、紅龍が飛び出した。光に灼かれ、地に落ちる。恐るべき破壊力であった。
「まずいな」
絶華は唇を噛んだ。
デウスエクスと戦うに回復役は必須である。が、その回復役であるメレアグリスは説得の真っ最中であった。
絶華は信者たちに視線を転じた。
「貴様らは本当にそれでいいのか。女の…その…柔らかな肌やお胸とか…ぅう…気持ちよくはないのか? 私は…触れ合った時には…恥ずかしかったがすごく嬉しかったぞ。どきどきして…気持ちよかったぞ…?」
羞恥で絶華の顔が赤く染まった。何を口走っているのだろうと内心首を傾げつつ。
恥ずかしさを誤魔化すため、絶華は炎の蹴撃をビルシャナにぶち込んだ。
「まだだ」
藍月の手が素早く動いた。様々な印を指で組む。
「八卦炉招来! 急急如律令!」
藍月が叫んだ。
その瞬間である。ビルシャナを中心とする八角形の頂点に符が壁のように屹立し、結界を形成した。
「行くぞ紅龍! 今こそ俺達の力を見せる時だ!」
倒れたはずの紅龍が一時的に召喚された。上空より放たれたのは神火と呼ばれる炎弾である。
流星雨のように炎が降った。密閉された結界内で紅蓮の炎が荒れ狂う。
「仕方ないわね」
プランは可愛らしく口を尖らせた。回復役がいない以上、治癒のグラビティをもつ者が代わりをつとめるしかなかった。
プランの身から薄紅色の霧が放散された。それはプランの身裡で凝縮された快楽エネルギーで、他者の傷を癒やす効果があった。霧に包まれた絶華の負傷が見る間に再生されていく。
その時、清嗣は信者たちに声をかけていた。
「押し付けはダメだけど、君の心は尊重されるべきだよね。ところで僕と、来ないかい」
清嗣が微笑みかけた。すると男たちが顔を赤く染めた。清嗣は美麗で、男色家にとっては垂涎の的であるからだ。
「これがすんだら一緒にイイ時間を過ごすのも良いよね。さあ、どうする? 君次第なんだよ」
清嗣はウィンクしてみせた。
その時だ。彼は炎に灼かれたビルシャナが戦闘態勢に入ったことを見てとった。
「お楽しみは後だね」
信者たちに告げる清嗣の手から黒い粘塊が噴出した。それは空で形状を槍へと変化、ビルシャナに突き刺さった。
「ぎゃあ!」
ビルシャナが苦悶した。粘塊は超硬度鋼並みの硬さを保持しており、ビルシャナの魔性の肉体すら貫いてのけたのである。
●
コクマの精液をしぼり尽くした後、メレアグリスは尻を蒼眞に向けた。
「来て」
コクマの精液が溢れる秘肉をメレアグリスは指で開いた。いつの間にか彼女の肉体は瑞々しい十代の少女のそれと化している。
誘われて拒む蒼眞ではなかった。猛り立った肉棒を背後からメレアグリスの濡れそぼった肉壺に突き入れる。
「ああん」
メレアグリスは喘いだ。蒼眞の肉棒が子宮に届いたからである。
快楽に身を灼かれながら、しかし蒼眞は目的を忘れてはいなかった。信者たちに見せつけるように愛液にぬらぬらと濡れた肉棒をわざと緩やかに動かす。
さらに蒼眞はメレアグリスの膣内の感触を事細かに説明し始めた。揉みしだく乳房の感触も。
「くっ。もうだめだ。射精すぞ!」
「いいよ。膣内に射精して! ああん。来てぇ!」
刹那、蒼眞が白濁液をメレアグリスの子宮にぶちまけた。が、メレアグリスはまだ許さない。意思あるもののように膣内の襞が蠢き、蒼眞の肉棒の硬度を取り戻させる。
「まだよ。まだ抜いちゃいやぁ。ああん。もっとしてぇ!」
今度はメレアグリスが尻を振り始めた。
「や、やめろ!」
怒号を発すると、ビルシャナは死の光を放った。メレアグリスたちにむかって。
「邪魔はさせないよ」
するすると清嗣がメレアグリスたちの前に滑り込んだ。庇って光をあびた清嗣の細胞がぐつぐつと煮え立つ。
「貴様が何故そのような悟りに到ったかは分かっているぞ!」
突然、絶華が叫んだ。爛と光る目がじっとビルシャナを見据えている。
「お前は子をなす事が出来ぬ苦しみに悩んでいるのだろう。そう…卵を産めぬ絶望がそのような悟りを開かせてしまったのだろう」
「な、何?」
ビルシャナが眉をひそめた。何をいっているのか良くわからない。が、かまわず絶華はチョコレートを取り出した。
「だが安心しろ。貴様が卵を産めないのはパワーが足りないからだ! 今より貴様に圧倒的なパワーを与える。我がチョコはその身に圧倒的なパワーを宿し強き卵を産むだろう! さぁ! 元気な卵を産むために! 我がチョコを食せ!」
絶華がビルシャナに躍りかかった。ビルシャナの口にチョコレートをねじ込む。
「感じろ! 宇宙を! 体から溢れる圧倒的なパワーに酔いしれるのだ!」
「ぎゃあ!」
ビルシャナの口から悲鳴にも似た絶叫が迸り出た。チョコレートが恐ろしいほど不味かったからだ。
「大丈夫だ! 足りないか不安なのだろう! たっぷりお代わり自由なぐらい用意している! だから安心しろ」
絶華が哄笑をあげた。なまじ美形であるだけに、その狂気じみた様子は陰惨不気味ですらある。
「ははは。腹ががら空きだ」
薄く笑い、藍月は縛霊手を装備した拳をビルシャナの腹に叩き込んだ。爆発的な衝撃にビルシャナが身を折る。同時に縛霊手から噴出した霊的な網がビルシャナをからめとった。
「今だ。とどめを!」
「わかったよ」
頷くプランの顔に笑みがういた。淫らで魔的な笑みだ。
「女の子相手の気持ち良さをいっぱい教えてあげるね」
プランがいった。
その瞬間だ。プランとビルシャナの姿が消えた。
時間にして十秒ほどのことであったろう。消えた時と同じ唐突さでプランとビルシャナの姿が現れた。がーー。
ビルシャナは息をしていなかった。やつれたようにぐったりしている。けれど、その表情は不思議と満ち足りたものであった。
●
異空間でビルシャナの精を肉体全部を使ってしぼりとったプランは、精液まみれのまま倒れたコクマに歩み寄っていった。
コクマはビルシャナと同じようにぐったりと横になっている。意識はないようだ。サキュバスとセックスしたのだから、それも当然といえた。命知らずとしかいいようがない。隣では、満腹になったからかメレアグリスが気持ちよさそうに眠っている。
振り返ると、絶華がそそくさと立ち去ろうとしていた。清嗣は男の信者たちとどこかに行こうとしている。淫らな夜はまだ終わりそうになかった。
作者:紫村雪乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年11月2日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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