あッ! 服が溶ける! ホワイトスライム使い

作者:大丁

 街路樹の葉が散っていくのを見下ろしている、秋の夕暮れ。
 歩道橋の欄干に肘をつき、除・神月(猛拳・e16846)はしばしたたずむ。
 おセンチになったからではない。
「なーんか、人がいねーナ……」
 歩行者はともかく、車道に一台も走ってこない。たまたま、などと呑気に捉えず、ケルベロスとしての、勘が働くのである。
「誰もいねーなラ、こーんなことだってできるよナ?」
 服の留めてあった部分に手をかけ、悪そうな顔で笑った。八重歯がのぞく。
 視線は、昇ってきたのと反対側の階段に、油断なく向けている。
 果たして、ひとりの女性が、現れたのだった。
 フードを被った金髪で、神月に劣らぬ筋肉質な腕。それが、袖なしレオタード型の首元についたジッパーを、下げていく。
「ケルベロスと、お見受けした。それも位の高い」
 へそより、さらに下まで開けるようになっている。
 神月はもう、戦うつもりの体勢をとっていた。
「あたしらに位なんてもんは、ねーヨ。お前は、ドラグナーなのカ? 豚野郎でも率いてたカ?」
「かつてはな。我は濁天(だくてん)と申す。勝負だ」
 前開きのあいだから、褐色の肌が見えた。
 そして、手に取ったゲル状の武器の白さが際立つ。

 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、急ぎの依頼に、手配できるだけのメンバーを揃えた。
「みんな、ありがとお。除・神月ちゃんが、デウスエクスの襲撃を受けると予知されてねぇ」
 本人との連絡はついていない。神月の救援と、デウスエクスの撃破が依頼内容だ。
「敵は『濁天(だくてん)』を名乗る、ドラグナーみたい。降魔真拳に匹敵する格闘術と、オークの残滓から作った『ホワイトスライム』を持ってる。素手の威力はすごいけど、近くの相手にしか届かない。けど、ホワイトスライムは、無限に増殖するんじゃないかってくらい、遠くにたくさん伸びてくるから、気を付けてね」
 現場は、市街地の歩道橋の上で、周囲に一般人はいない。
「濁天は、レベルやランクみたいなのを気にしてるのかな? ともかく、急いで、急いで!」


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)

■リプレイ

●橋上の衝突
「身体で語りあうってんなラ、付き合うゼ!」
 歩道橋の狭い通路を、除・神月(猛拳・e16846)は駆け出した。
 拳を振り上げると、脱いだ革ジャンの袖が抜けて、夕闇のせまる空にすっ飛ぶ。
 胸に巻いたサラシは速力にほどけ、ジーンズのダメージ部分も、デザイン以上に広がった。
 襲撃者・濁天も応じて走り寄り、両太腿の筋肉のあいだで、ジッパーの金具を激しく揺らす。
「はぁッ!」
「オウっ!」
 互いに頬を殴り合い、反動で通路左右の欄干へと背中をぶつけた。
 メシッと金属のひしゃげる音がして、格子がゴムのように開き、のけぞった顎が、橋下の車道へと向く。
 白い粘りに濁天のレオタード姿は支えられたが、神月はサラシとジーンズの切れ端を撒きながら、頭から堕ちていった。
「つ、次に位の高いケルベロスを、探さねば。……ツゥっ」
 ずれたフードを直し、濁天は向かいの欄干を眺めた。
 歪んだ格子の先、いつの間にか、柱状に光がさしている。
「もーいっかイ、言うゼ」
 全裸の神月が、ジェットパック・デバイスを装着し、ゆっくりと視界にせり上がってきた。
「あたしらに位とか偉さとかはねェ」
 続いて、ピンクのハイレグと、黒の零式忍者服が、それぞれのジェットパックで浮いてくる。ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)と、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)だ。
 さらに、2人からの牽引ビームが、歩道橋よりも上へと、仲間たちを陣取らせるのだった。
「せっかくの大通り、ギャラリーが居ないのは残念ではありますが、と」
 エル・ネフェル(ラストレスラスト・e30475)は、膝を高くあげた姿勢から、フォーチュンスターを蹴り込む。
 星型のオーラは、濁天のジッパーの切れ込みを、尻側まで抜ける。
「貴女も『大丈夫』な方でしょう? でしたらコレで同格ですね?」
 あげた膝からY字バランスをとった。エルの着衣は技を放ったフェアリーブーツと、垂らした数本のリボンだけ。
 秘められてもいない秘部を見せつける。
「もう、手下が集まってきたか。きさまらが同格なものかよ。黙っていろ!」
 言い返しつつ濁天は、エルの指摘どおり、ジッパーのワレメを隠さず、立ち上がった。
「あんたも今となっては位に拘る必要なんてないだろ?」
 ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が重力を増して、流星のキックをくらわせる。
「うぐウっ」
 再びフードがめくれる。
 蹴り抜いたエアシューズが通路に接地し、階段辺りまでインラインスケートで滑っていき、キュっとブレーキをきめて振り返った。
「勝負なら受けて立つぜ。ただし、上も下もない対等の立場同士でだ」
 涼やかに言葉をかけたが、金髪からのぞいた赤い眼が、憎悪をかえしてきた。
「あ、ロディくんヤバイ。ピンチになるヤツ?!」
 神宮・翼(聖翼光震・e15906)が危惧したとおり、濁天の手足からホワイトスライムの触腕が、四方八方へと伸びる。
 男子は粘質にとりまかれ、あれよあれよという間に着ていたものを溶かされる。
「くう、出来ればこいつには、戦い以外の道を見つけて欲しかったぜ」
 そんなカッコであっても、仲間を庇いに跳躍した。
 肌も露わなエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)の前に、男の身を挺す。彼女は元々、ビキニアーマーではあるが。
 レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)も囮役として、レスキュードローン・デバイスを仲間のほうへと動かす。
 メディック本人は、粘液の渦に飲み込まれた。
「むしろ、どんとこいです!」
 眉を吊り上げ、口元には笑みをたたえる。
 そんな自信満々な態度が気に食わないのか、スライムは服を溶かすだけでなく、一部を固くして、レイファの下腹部に潜りこみはじめた。
「裸でも、螺旋忍者には関係ないということを、教えてあげましょう!」
 渦の回転に抵抗せず、残った装甲をオウガ粒子に変えて、螺旋と共に放出する。
 メタリックバーストが働くあいだ、硬化した二本には、ぐちゅぐちゅと前後穴を出入りされていた。
 笑みに、悶えが生じる。
「ちょーっと目に毒な敵だけど実力は本物みたいねー。神月さんに勝負を挑んだのもプライドのためとかそんなのかも?」
 翼は、オウガ粒子によって覚醒された感覚でもって、『Vivid☆Beat☆Vibration(ビビット・ビート・バイブレーション)』を奏でる。
 それは、かつてデウスエクスの『楽器』として調律された魔性のリズム。
 ひとりのケルベロスによって助け出された今では、悪を挫く自由のメロディ。
 濁天は、スライムまみれの手で、頭を抱えた。
「我は、レベルの低さに負けは……」
 歌がこれほどまでに響いているのは、ロディの蹴りが入っていたせいでもある。
 神月は、あえて敵の眼前に降りた。
「けド、強さならあたしは誇ってんゼー? なんセ、あたしってばサイキョーだからヨ♪」
 降魔真拳に、『追式(ツイシキ)』を加える。
 連続での殴打のひとつひとつが、相手の魂を喰らう一撃となる。濁天の格闘術には、当初の冴えがなくなり、苦し紛れの白い粘液も、翼のリズムに浸食を狂わされた。
「本当のスライムとは何か、戦いの年季の違いを思い知らせてあげます」
 ハイレグピンクのミスラは黒い液体を擁して、ボディブローに沈んだ敵の頭上をとった。
 後ろからみれば、ハイレグはTバックでもあるとわかり、股布の要所は穴あき構造である。
「ミスラさん、いつもは服の下に着ているような格好で、出撃なのね?」
 バトルオーラを拳に溜めて、銀子もホワイトスライムを潜り抜けて接敵してきた。
「相手に合わせて、気分が出るように。痴女みたいかしら」
 ブラックスライムには、固い部分をつくらせ、さらにイボつきのシャフトになる。フードを破って、濁天のうしろから挿入させた。
 レゾナンスグリードによる捕縛だ。
 銀子は正面から胸部に音速拳をあてて、残ったレオタードを吹き飛ばし、開いたジッパーに引っかかっていた両方の膨らみを、まろび出させた。
 しかし、彼女が見立てたとおり、相手の鍛えられた肉体と操る粘液は、それでしまいにはならない。
 忍者服もとろけていくのに、銀子は血のたぎりを感じつつ、眉根を寄せた。
「痴女ではな……私のことではなかったか」
 やや遅れてエメラルドが、ライトニングウォールを張った。
 電撃杖に、ホワイトスライムも痺れている。
「ミスラ殿、銀子殿。敵の武器は無力化して……。ナ、ナニをするのだ?!」
 穴あき股布の開口部に、白い先端がズブと埋まった。
 忍者服の網の隙間から、臀部の中央へと、もう一本が導かれる。
「上下の区別なく、スライムの技を競うのです」
「き、近接格闘なら、私も負けないのよ」
 白やら黒やらの触手でつながりあって、水気をおびたいやらしい音が漏れ出ている。レイファもエルも引き寄せられてきた。
 いっぽうで、護りにいくかどうか迷うロディを、翼は握って留めた。
 エメラルドは、杖にかじりつくようにして、身をよじる。
「完全に毒気が抜けたわけではないのだぞ。危険だ。キケ……はう」
 アーマーパンツの後ろから、神月が指をつっこみ、また抜いてみせた。エメラルドの匂いをひと嗅ぎすると、濁天に語りかける。
「誇りてーことガ、まだあったゼ。こいつらサ」

●結ばれる想い
 白い触手の一撃が、体内に効いたはずだが、何も起こらない。
 オークの元指揮官は、息が荒くなるのをこらえ、ただ神月を睨んだ。全裸で仁王立ちの彼女を。
「前開きレオタードなんて格好してんだかラ、判んだロ。このエメラルドがスゲーのは、どう言われよーが街中で半裸ダ」
「神月殿……、それは」
 照れそうになったヴァルキュリアの戦士だが、相手の動揺を誘う作戦なのは、打ち合わせがなくとも判った。
 グッと、胸をそらせてビキニアーマーを誇示する。
 挑発にのって濁天は、スライムでそのアーマーを剥ぐ。
 道路わきに建つビルと、その窓の並びに裸体をむけている状況に、エメラルドはブルっと下半身を震わせたが、『それみろ、痴女じゃないか』という罵倒も、妄想だった。
 濁天は、破鎧衝をくらっていた。
 急降下してきたロディの銃剣に突かれ、彼の下にぶら下がった翼とファミリアに弱点をえぐられる。
 プライドの高さにより、隙を狙われた格好だ。
「もう、脱がすものなんか無かったけどな」
「あたしたちは、全力でお相手するよ」
 ぎゅっと握りを強くする。
 もし、このドラグナーが、過去のしがらみに縛られて戦っているのだとしたら、それはとても悲しいことだ。
 そんな思いが、翼の脳裏をよぎる。
(「あたしも昔、色々あったけど、なんだかんだあって今は幸せだよ」)
 手をつないでいるケルベロスの、救いによって。
 神月は、カップルにグイと親指を立てた。
「スゲー、ラブラブだロ? オークは貪欲だったガ、愛しちゃくれねェ。……おっト」
 視線を、銀子に移す。
 開脚前転の終わりかけのような姿勢で悶絶していた。
 8本の触手をもったデウスエクスとの闘いを、そのお尻で渡ってきたような彼女だ。
 残滓に思い出すところがあるのか、ホワイトスライムの触手を入れられて、抗おうにも抗えず、任せようとも任せきれず。
「獅子の力をこの身に……あんっ、出てこない」
 自分の指で、門を広げている。
「何本入るカ、試してみるカ?」
 またもや、神月は挑発をはじめた。濁天はもう、顔を背けてしまった。ずっとミスラのイボ付きが、掻き回しているのだ。
「私のスライムも良い感じでしょう。我慢しなくていいですよ、蕩けた顔見せて下さい……」
 使い込んで磨いた熟練のテクニック。どれほど『スゲー』か、説明も不要だ。
 内壁を掃除されて、ついに声が出た。
「ひうう、くはっ」
 そして、レイファとエルは絡み合い、とっくに何度もイッていた。
「アッ、アッ、アアーッ」
「あん、ああああっ!」
 ふたりが絶頂しながらも、気をしっかり持っているのは、宙をかくような脚に履いたフェアリーブーツから、花や星を舞わせての実戦参加で明らかだ。
「こーなるト、エロさの自慢カ? 甲乙はつけらんねーナ」
 どれ、と神月は、魔人降臨の呪紋を、肌に這わせた。収めた下腹部へも浸蝕させる。
 レイファは、込み上げてくるものを、エルに告白していた。
「わ、私の、個人的には、ああいう女性も良いのですが……敵であれば容赦はできませんね!」
「連携といきますか。わたしもキテますから支えてくださいな」
 エルは強く締め付けると、3穴への触手を切断する。その両脚を開いた姿勢で抱えたレイファは、歩道橋の欄干の上に登って立った。
「みなさん、離脱してください。……あひぃ!」
 ジョロロロロ!
 黄金色の放物線は、夕日を透かして濁天の顔にかかる。
「わぶ、なんてこと……!」
 視界を塞がれたところへ。
「天開地闢の気を通じ、秘奥の舞を御覧あれ……♪」
 エルにちぎり取られた3本が、つっかえされた。『陰陽有頂昇天波(コイカ・トエ・ハカ)』の勢いが加わり、4つの水流が、褐色の肌を滴り落ちる。
「んで、あたしがサイキョー、っト」
 神月のそこは、猛々しく起立する。変貌した魔人。もはや、ぐったりと通路に寝そべるデウスエクスに、勝負をきめにいった。
 正面から覆いかぶさる。
 旋刃脚は、電光石火に貫いた。濁天は、無人のビル街に響く嬌声をあげた。
「貴殿らは最低だが、みな、それぞれが最高であった……」
 ホワイトスライムは崩れ果て、街路樹からはまた、枯れ葉が散った。

●原状復帰
 壊れた欄干にヒールをかけるのは当然として、戦いに勝利したケルベロスたちは、その場を離れがたく感じていた。
 そんな中で翼は。
「身体中ベタベタしちゃったから、綺麗にしないとね?」
「うんん? 階段の下に、服を用意してきたけど、着替えは……」
 フル状態のロディを、さらに引っ張る。
「あたしたち、ホテルを予約してるから、お先にねー」
 そうなんだ、とロディも皆も、軽く返事した。
 デウスエクスが出現している中で、予約のとれたホテルといえば、すぐ近くとはいくまい。
 結構、がんばらないとたどり着けないとは、誰も思わなかった。
 そんなことよりも、神月が噛み付かんばかりに、残りの5人ににじり寄っている。
 狂月病の再発にあらず。
「濁天のやつを挑発するのに、あたしも強がっちまってヨ。足りねーナ」
「しぇ、神月殿。ここでは問題が……」
 エメラルドは、後ずさりながらも、ライトニングロッドのほかにゲシュタルトグレイブまで股の間に挟んでいて、その柄にポタポタと液体がつたっていた。
「アアッ」
 思っただけで、レイファがまた漏らし、欄干の格子から、下の車道へと降らせる。
 その時、デウスエクスの影響から解放された、最初の一台が通りかかった。
 走行音が聞こえると、喧騒は急速に戻ってくる。
 この場で頼りになるのは、ミスラのブラックスライムのみ。
「このスケベコスチュームは、普段から愛用している露出プレイ用ですから」
 外で着るのが本来の目的だと、神月に同意して唇をすった。
 伸びた触手は、毛深いところを探って入り込み、お尻がわを要求する銀子にも提供される。
「何本でも入れてぇ……」
「どうぞどうぞ。別に通行止めではありませんよ。観ても撮っても構いません、はい」
 階段を昇降する一般人たちに、エルは案内している。
「サイコーだナ。そこのビジネスマン、まとめて相手してやんヨ」
 神月が誘いだすと、もう止まらなかった。
 陽が沈んでも、携帯のフラッシュがチカチカと瞬く。
「うほォ、ひグ、ひぐゥ」

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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