パッチワーク最終決戦~三つ巴の南瓜大戦

作者:雷紋寺音弥

●難波の南瓜祭り
 10月。それは、一年に一度、人々が仮装して街を回る南瓜祭りの行われる季節。
 元は外国の慰霊際であるとか、日本の祭りでないとか言われているが、そんなことは関係ない。人間、楽しい祭りが大好きなのは万国共通。特に、今年は東京でケルベロス大運動会が開かれたこともあって、その対抗意識もあるのだろうか。
「今年の運動会は、凄い盛り上がりだったっちゅう話やで!」
「こりゃ、大阪も負けてられへんな。折角、あのクソッたれ植物どもがいなくなってくれたんや。ここは景気づけに、パーッと楽しむで!」
 大阪の街は、早くもハロウィンの準備で活気づいていた。商店街はオレンジ色の光で包まれ、イベント会場は当日に配る菓子の準備で大忙し。街には既に気の早い者達が、仮装して互いに集まり写真を撮ったり、スマホで動画を実況したりと、大騒ぎである。
「そういや、ハロウィンいうたら、デウスエクスの襲撃がお約束やったね」
「ん~、まあ、大丈夫やろ。毎年、なんやかんやで、ぜ~んぶ撃退されとるっちゅう話やからな」
 この辺りは、関西人の気質もあるのだろうか。なんとも楽観的な考え方だが、それだけケルベロス達に対する信頼が厚いことへの裏返しなのかもしれない。
 今年も、ケルベロスがいれば大丈夫。だから、余計なことは考えずに、今は盛大に楽しもう。そんな雰囲気が漂う大阪の街だったが……やはりというか、この機会をデウスエクスが見逃すはずもない。
 再建中の大阪城。そこに出現した小さなユグドラシルの根の先から、現れ出しはパッチワークの幹部達。そして、彼女達に率いられた白い魔女の軍勢が、大阪の街を目指して行動を開始したのである。

●今年もやっぱり狙われたようです
「招集に応じてくれ、感謝する。今年のケルベロスハロウィンは、関西市民の熱い要望により、大阪で開催する事が決定した」
 だが、ハロウィンとなれば、デウスエクスの……主に、季節の魔力を狙うドリームイーターの出現がお約束。案の定、今年も連中が懲りずに出現してくれたと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は溜息交じりに、集まったケルベロス達に詳細を告げた。
「今年はパッチワークの魔女の首魁である『最後の魔女・ドロシー』が、拠点であるユグドラシルの根と共に、大阪城に舞い戻った。ドロシーは残された全戦力を投入し、ケルベロスハロウィンを襲撃しようと計画しているぞ」
 ドリームイーター残党であるパッチワークの魔女は、勢力としては既に追い詰められている。本星への帰還手段も失っている今、この作戦を阻止出来れば、勢力として壊滅状態となるのは間違いない。
「そういうわけで、お前達には大阪城から出撃してくるドリームイーターの軍勢と、パッチワークの幹部を撃破してもらいたい。最終目的は、大阪城内で季節の魔法を集める儀式を行っている、最後の魔女ドロシーの撃破だ」
 もっとも、そのためにはまず、パッチワークの幹部が率いる量産型の白魔女を蹴散らさねばならない。彼女達は、コギトエルゴスムにユグドラシルの根のエネルギーを与え、ハロウィンの魔力を奪う事に最適化したドリームイーターとして復活させた存在。故に、コギトエルゴスム化する前のドリームイーターの個性などは全て抹消され、この作戦を行う為だけに調整されている。
「要するに、それだけ敵も本気ということだろうな。だが、量産型白の魔女は、ハロウィンの魔力を奪う事に特化はしていても、戦闘力は高く無い。今のお前達であれば、個々人で複数を相手にしても、余裕で立ち回ることが可能なはずだ」
 ただし、数だけは無駄に多いので油断は禁物。それぞれ、各方面に百体以上は配置されているので、まともに戦うと消耗してしまうのは否めない。
「量産型の白魔女の攻撃は、なにやらハロウィンらしい雰囲気の魔法が主体になっているぞ。まあ、そこまで強力な攻撃を仕掛けてくることもないだろうから、消耗を防ぐ手段を考えて戦えば問題ないだろう」
 量産型の白魔女を突破すれば、その後にはパッチワークの幹部との戦いが控えている。そして、その幹部を撃破した後には、大阪城に陣取る最後の魔女ドロシーとの戦いが待っている。
 集団戦の後に幹部を撃破し、そして最後は親玉の撃破だ。厳しい連戦になることは否めないが、今回はなんと、死神勢力からの助力が得られるという。
「正直、死神もデウスエクスだからな。どこまで信用できるかは不明だが……お前達が討ち漏らした白魔女は、連中が相手をしてくれるようだ」
 もっとも、その際に白魔女が得ていたハロウィンの魔力は、しっかりと回収して行くつもりらしいので抜け目はない。また、死神の側からケルベロスを攻撃するつもりはないようだが、あちらも攻撃を仕掛けられれば、相手がケルベロスであろうとも応戦してくるつもりのようだ。
「死神は以前、ポンペリポッサとの取引で、多くのドリームイーター残党を率いれているからな。当然、季節の魔法の扱い方も習得している。あるいは、こちらに気付かれない方法で、ドリームイーターが集めたハロウィンの魔力を横取りする計画を立てているかもしれないが……」
 だからといって、白魔女と死神の双方を相手にしては、ドロシーはおろかパッチワークの幹部にさえ辿り着けないかもしれない。救援を無視して戦うか、それとも救援を利用して有利に戦うか、あるいは死神に対しても戦闘を仕掛けるか。どれを選ぶかは、同じ方面に向かう者達と相談した上で、それぞれの役割に合わせて決定して欲しいとクロートは告げた。
「ちなみに、お前達に相手をしてもらいたい幹部は、番外の魔女・サーベラスだ。救援には、ベリアル・マリスという死神が魚類型の下級死神を率いて現れる他、戦力の足りない部分には、死神の魔女であるセイレム・カリュブディスも出現するようだな」
 この中でもセイレム・カリュブディスは、死神の魔女を名乗るだけあって、季節の魔力の扱い方に長けている。彼女に白魔女の集めた季節の魔力を渡してしまうのは危険な気もするが……これ以上は、パッチワークの幹部達を放っておくわけにもいかないので難しいところだ。
 幸い、死神とは対エインヘリアル戦で共闘を行う以外、普通に戦いが継続している。そのため、今回の戦いで死神と戦闘を行っても、状況が変化する事がないのは救いである。
「お前達が幹部や最後の魔女を撃破できなくても、ケルベロスハロウィンを守り切れば、ドリームイーター勢力は壊滅となる。だが……この場合は、残党が攻性植物の聖王女勢力や死神勢力に吸収される事になるだろうから、そこは良く考えて行動してくれ」
 誰を倒し、何を守るのか。その判断が問われる戦いになるだろう。
 そう言って、クロートはケルベロス達を、ハロウィンの準備で賑わう大阪の街へと送り出した。


参加者
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)

■リプレイ

●モザイクパレード
 白魔女の群れを抜けると、そこに待っていたのは、モザイク野菜の大群だった。
 季節的なものもあるのだろうか。大半は南瓜の姿をしているが、中にはニンジンやピーマンな、そしてキノコの類まで、様々な野菜が雑多に紛れている。
「三つ巴の乱戦……。戦場では一番乱戦が危険なのですよね」
 指揮も乱れれば、敵の動きも予測し難い。そんな戦場へ憂いを込めた視線を向けるラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)だったが、幸いにして今回は、白魔女を死神が引き受けてくれている。
「やっぱりハロウィンに魔女たちが来たね! さぁ、ここで全て終わらせるよ! 援軍さんもいるからね!」
「うん。パーティの前に、一仕事だね」
 後ろのことを気にしなくて良いためか、夢見星・璃音(輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)や影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)は、臆することなくモザイク植物の群れへ飛び込んで行く。が、その一方でルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)は、親友であるリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)の様子が気になった。
(「リリちゃん……死神に友人を利用されたこともあるのに……」)
 かつて、リリエッタが死神に親友を利用されたこと。その結果、二度に渡って親友を自らの手で葬らねばならなかったこと。それにも関わらず、我慢して死神との共闘を選んだ彼女の本心が、どうしても心配だったのである。
「どうしたの、ルー? ……ん、リリは大丈夫だよ。だから、早く魔女を倒してハロウィンを楽しもう」
 だが、そんなルーシィドの心情を察してか、リリエッタは敢えて何事もなかったかのように振舞った。もっとも、本心でどう思っていたかまでは分からない。そして、そのやるせなさや憤りをぶつけるかの如く、モザイク植物に向けた彼女の視線は、途端に険しいものになって行き。
「毎年毎年、せっかくのお祭りを邪魔して許せないんだよ。ドリームイーターに邪魔されるのは、これが最後にしてやるよ!」
 蹴りの動作と共に、情け容赦なく星型のオーラを叩き込む。鋭い角に斬り裂かれ、モザイクの南瓜が潰れて消える。
「守りは任せろ。思う所があるなら、存分に暴れればいい」
 剣を掲げ、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)が言った。広がる星辰の力によって、仲間達の自然回復能力を高めるために。普段よりも人数が多い故、拡散して効果が薄まるのは否めないが、それでも大群相手にないよりはマシだ。
「楽しいハロウィーンのため、頑張りましょう。今日もお願いしますね、らぶりん」
 相棒のナノナノ、らぶりんに告げつつ、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が仲間達の背後で盛大な爆発を巻き起こす。その勢いに押され、次々と突撃して行く仲間達。
「皆の笑みを曇らす訳にはいかん。故に此処で宿縁に蹴りは付ける!」
 髪を強く結い直し、リィン・シェンファ(蒼き焔纏いし防人・e03506)が駆けた。戦場を駆ける歌姫風の手から放たれる気弾。それは狙いを外すことなくモザイク南瓜に直撃し、木っ端微塵に粉砕した。

●騙し討ちはド派手に
 倒しても倒しても、次から次へと押し寄せるモザイク植物の群れ。一匹ずつの戦闘力は決して高くないが、こうも数が集まると、殲滅するだけでも一苦労。
 それでも、単なる有象無象であれば、あるいは力技で突破できたかもしれない。だが、モザイク植物の後方では、サーベラスが指揮を執っている。そのため、敵の動きには無駄が少なく、おまけに統率も執れており、そのことが突破を余計に困難にさせていた。
「い、忙し過ぎ……というか、そろそろ喉が枯れそうです……」
 先程から、めぐみはずっと歌いっぱなしだった。無理もない。敵の主力は、食した者を一撃で死に至らしめる程の猛毒攻撃。そんなものが四方八方から、誰彼構わず巻きこまんと飛んで来るのだ。
 とてもではないが、めぐみの歌声だけで、その全てを払うことは難しかった。おまけに、今は味方の数が多いため、どうしても声が拡散してしまう。らぶりんのフォローがあるとはいえ、思ったように毒を除去できない状況は、どうしても苛立ちを募らせる。
「このままでは、こちらが先に削り殺されてしまいそうですわね。……あら? あれは……」
 そんな中、緑の茨を広げていたルーシィドが何かに気付いた。
 モザイク植物の後方から指揮を執るサーベラスは、当然のことながら正面の守りが堅い。しかし、その背後は殆どガラ空きであり、手薄になっているということを。そして、その隙を突いて動き出そうとしている者が、自分達の他にいるということを。
「……好機ですわね。リリちゃん、皆様にお伝えください。可能な限り激しく暴れて、敵を引き付けるように、と……」
「ん、わかったよ。なるべく派手に、目立つように動けばいいんだね」
 ルーシィドに耳打ちされ、それだけで何かを悟ったのだろう。軽く頷き、リリエッタは小型通信機の形をしたヘリオンデバイスの力を使用する。なるべく敵にこちらの意図を悟られないよう、思念だけで会話ができるように。
(「みんな……サーベラスに奇襲を仕掛けるよ。その準備ができるまで、こっちで敵を引き付けるからね」)
 少しでも多く、少しでも派手に。とにかく暴れて、サーベラスの注意を引き付けろ。一見、無謀にも思える行動だが、しかしそれが勝利への布石となるのであれば、賭けてみるのもまた一興。
「なるほど……ならば、見た目にも目立つよう行動させてもらおうか」
 最初に動いたのはジークリットだ。太刀を振るうと同時に桜吹雪を撒き散らし、その華麗なる剣捌きで敵の目を引き付ける。拡散した桜吹雪は本来の効果こそ十分に発揮しなかったものの、目立つという点では十分だ。
「あまり美味しくなさそうなカボチャだけど……贅沢は言っていられないよね?」
「そうですね。可能な限り、時間を稼ぎましょう」
 璃音の手から放たれた黒い粘液がモザイクの南瓜を飲み込み、ラインハルトの太刀が斬り捨てる。その様は、守りも何もかなぐり捨てて、強引に突破しようとしているようにしか見えず。
「さあ、お料理の時間だよ」
「どこからでも来い。下ごしらえの終わったやつから、串刺しにしてやる」
 リナが薙刀を回転させながら飛び込めば、薙ぎ払われた敵の群れに、リィンが剣の雨を降り注がせる。それでも、足並みを乱さずサーベラスを守ろうとするモザイクの植物達だったが……戦いの行末は水面下にて、ケルベロス達にとって有利な流れへと変わりつつあった。

●死闘! 番犬VS番外
 一糸乱れぬ動きによって、想像以上にケルベロス達を苦しめて来たモザイク植物の群れ。しかし、その動きが唐突に乱れたことに、早くも何人かの者達が気付き始めた。
「……敵の勢いが弱まった!?」
「ん、どうやら、成功したみたいだね」
 戦いの流れが変わった。そう、リナやリリエッタは感じていた。先程までと違い、明らかに敵の動きが悪い。連携は取れず、足並みもちぐはぐ。明らかに、サーベラスへの奇襲が成功し、指揮どころではなくなった証拠だ。
「好機だ! 仕掛けるぞ!」
 ジークリットを先頭に、周囲の敵を蹴散らしながら突撃して行くケルベロス達。こうなれば、もはや有象無象のモザイク植物など敵ではない。瞬く間に防衛網を突破して、サーベラスの前に辿り着けば、先発で奇襲を仕掛けた者達と、上手い具合に挟み撃ちにすることができた。
「どうやら、それなりに痛手を負っているようですね。ならば……」
 咄嗟に宙へと舞い上がり、ラインハルトが先んじてサーベラスへと仕掛けた。混戦状態であることを利用し、仲間の背後から空中へと飛び上がることで、一気に距離を詰めようとしたのだろうが。
「舐めるんじゃないよ! あんたは目立ち過ぎなのさ!」
 刃を振り降ろすよりも先に、サーベラスの両手から放たれたモザイクがラインハルトの手にしていた太刀を直撃した。衝撃で勢いを殺され、地に落ちるラインハルト。この土壇場でこちらの技を相殺してくるとは、やはり魔女の名は伊達ではないということか。
「焦りは禁物ですわ。まずは、体勢を立て直しませんと」
「そういうことなら、お任せください。さあ、らぶりん。最後の一踏ん張りですよ」
 ルーシィドとめぐみが、それぞれ爆風や絵画で仲間達に力を与えて行く。モザイク植物がいなければ、邪魔をされる心配もない。そうして、極限まで力を高めた上で、後はサーベラスの行動を封じれば。
「今年はあんたらのほうが屍になるよ!」
「ん、だったら、殺される前に殺せば問題ないね」
 真横から飛び込んで来たリリエッタの脚が、サーベラスの脇腹に炸裂した。吹き飛ばされつつも立ち上がろうとするサーベラスだったが、そこに襲い掛かったのはリナの放った風の刃。
「今だよ! わたしの風が押さえている間に、早く!」
「任せて! さあ、もう逃げられないわよ」
 風圧で押さえ込まれているサーベラスの腕に、璃音の鎖が絡みついた。それだけでなく、反対側からも空の気を纏った斬撃が襲い掛かり、完全にサーベラスの両腕を封じ込めてしまった。
「くぅ……こ、こんなもので……」
「往生際が悪いぞ! いい加減に、諦めろ!」
 力任せに拘束を引き千切ろうとするサーベラスへ、リィンが斬り掛かる。彼女の斬撃はサーベラスの受けた傷を更に深く、複雑な形に抉り、その腕から力を奪って行く。
 こうなってしまっては、もはや魔女も形無しだった。多勢に無勢、おまけに動きも封じられた状態では、いかにサーベラスが強くとも勝機はない。殴られ、蹴られ、斬られ、焼かれ……散々に屠られた番外の魔女には、もはや立っているだけの力もなく。
「敵ながら、実にロックデス! だけど――」
 愛用のギターでグリッサンドを披露しながら、足を勢いよく振り上げる竜人の女。その先にあるエアシューズのローラーから生じた火花は瞬時に灼熱の炎へと転じ、鋭い矢の如くサーベラスの頭に突き刺さった。
「――ボクたちのほうが何倍もロックデェェェース!」
 衝撃により身体を仰け反らせ、そして崩れ落ちて行くサーベラス。スローモーションの如く、体感の時間だけがゆっくりと進む。そして……その身が地に触れるであろう瞬間に、番外の魔女の肉体は、無数の光の粒子に変じ弾けて散った。

●戦いは終わらず
 激闘の末、サーベラスを撃破したケルベロス達。だが、大群と魔女を相手に奮闘した代償は大きく、さすがにこれ以上の連戦を行えば、望まぬ死傷者が出るのは確実だった。
「無事ですか、皆さん?」
「私は問題ない……と、言いたいところだが、この後に更なる魔女と戦えるかと問われれば、答えは否だな」
 ラインハルトの問いに、リィンが首を横に振った。もう一戦くらいであれば余裕で行えそうなものだが、相手が強大な力を持ったデウスエクスとなれば話は別だ。
「まあ、それでも魔女は1人倒せたんだし、後は他の人達に任せるしかないのかも……」
 刃を納め、呟くリナ。ドロシーに届かなかったのは残念だが、自分達が魔女を撃破できたということは、その分だけ他の誰かの負担を軽減することができたということ。
「どうやら、ドロシーとの戦いには間に合わなそうだな。だが、私達には、まだやることがある」
 それでも、ここで休んでいる暇はないと、ジークリットが立ちあがった。その言葉に、リリエッタも続いて銃の弾を込め直し、小さく頷く。
「ん、死神は信用ならない相手だからね。ハロウィンの魔力を、これ以上くれてやるつもりはないよ」
 ドロシーと戦うだけの余力はなくとも、残った白魔女を倒すことは、まだできる。死神の支援を利用させてはもらったが、これ以上は、ハロウィンの魔力をタダでくれてやる理由もない。
「そういうことであれば、早急に引き返しましょう」
 手短に仲間と周囲のヒールを終えて、ルーシィドもまた他の者達へと促した。これは退却ではなく、新たなる戦いの始まりだ。敵の首魁は叩けずとも、戦いはまだ終わらない。
 残る白魔女を掃討すべく、今しがた来た道を引き返して行くケルベロス達。去り際に、ヒールによって少しばかりメルヘンチックな風貌へと変わった街並みを見て、めぐみがどこか納得したように呟いた。
「普段だと微妙ですけど、ハロウィーン中ですし、これはこれでアリですよね?」
 街の修復と同時に、飾り付けまで出来たのであれば、一石二鳥。そんな彼女の言葉に、璃音も賛同の意を示し。
「此岸には夢が溢れてないといけないからね。さあ、残りも早く片付けよう」
 人々の楽しい夢を、これ以上は奪わせない。楽しいパーティのために、邪魔者は早々に退散させよう。それこそが、ケルベロス達が大阪の人々に送る、最大にして最高のtreatだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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