パッチワーク最終決戦~魔女と死神のハロウィン狂想曲

作者:白鳥美鳥

●パッチワーク最終決戦~魔女と死神のハロウィン狂想曲
 何時からだろうか、日本にハロウィンが根付いたのは。
 今年もそれは変わらない。特にこの場所は。
「大運動会が東京で大成功、そんなら大阪はハロウィンで負ける訳にはいかんよな!」
「お祭り事はお任せやで! カボチャにコウモリ……他にも色々おもろいもん一杯用意して、派手に明るくや! 料理やお菓子は見て美味しい食べて美味しい、そういうやつとか!」
「僕ね~、こういうのが良い、南瓜ランタンの中身は南瓜プリン! とか!」
 うきうきと楽し気にハロウィンパーティー会場を開設しているのは、大阪市内の人々だ。大人も子供も一体になって、楽しいハロウィンパーティーにする為に力が入っている。
 既に、大きな南瓜のオブジェが会場にはいくつも並び、魔女やコウモリ等の飾り付け、夜のライトアップの準備は順調、美味しいご馳走のメニュー、構想は色々。

 場所は変わって、再建中の大阪城。……ユグドラシルの根からパッチワークの魔女達が集まっている。彼女達の傍には白の魔女の軍勢。
 そして、魔女達は白の魔女の軍勢を率いて大阪城を出立していった。

●ヘリオライダーより
「今年のケルベロスハロウィンは、関西市民の熱い要望で大阪で開催する事が決定したよ。みんな、凄く張り切って準備してくれているみたいなんだよ。嬉しい事だし楽しみだよね」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、今年のケルベロスハロウィンの会場について伝える。そして、その後、目を少し伏せた。
「でもね、パッチワークの魔女の首魁である『最後の魔女・ドロシー』が拠点であるユグドラシルの根と共に大阪城に舞い戻り、残された全戦力を投入してケルベロスハロウィンを襲撃するという事も予知されてしまってね……」
 直ぐに切り替えて、デュアルは魔女達の話を続ける。
「ドリームイーターの残党であるパッチワークの魔女は勢力として追い詰められているから、この作戦を阻止できれば壊滅状態になるのは間違いない。だから大きなチャンスでもあるんだ。みんなには、大阪城から出撃してくるドリームイーターの軍勢とパッチワークの幹部を撃破して、更に、大阪城内での季節の魔法を集める儀式を行っている最後の魔女ドロシーを倒して欲しいんだ」
 続いて、デュアルはまず、敵対する事になるドリームイーターの説明を始める。
「第四の魔女・エリュマントスの能力は詳しくは分からない。……まあ、何となく容姿で方向性は分からない様な事もないんじゃないかなーとは思わないでも無いんだけど、パッチワークの魔女の一人だからね、油断しちゃいけない相手だ。で、魔女が連れている白の魔女達がいるんだけれど、この白の魔女は『コギトエルゴスムにユグドラシルの根のエネルギーを与え、ハロウィンの魔力を奪う事に最適化したドリームイーターとして復活させた』もの、みたいだ。まあ、コギトエルゴスム化する前のドリームイーターの個性を全て打ち消し、この作戦の為だけに調整したドリームイーターだね。だから、ハロウィンの魔力を奪う事が出来る能力は持っているんだけれど、戦闘力はそこまで高くないから、みんななら無双できちゃう位の強さ。問題は、数。各方面に百体以上配置されているから、まともに戦うとかなり消耗してしまうんだ。まず、エリュマントスと戦うには、この大量の白い魔女のドリームイーターを突破しないといけない。そして、最後の魔女ドロシーは、エリュマントスを倒してからになる。つまり、この白の魔女達をどうするかという所が大きなポイントになるね。白の魔女達は南瓜を投げて麻痺させてきたり、お菓子の嵐で催眠を誘ってくる様な魔法を使ってくるから、それも考えつつって所になるかな」
 もう一つ、情報があるとデュアルは言う。
「実は、死神から救援の話が来ているんだ。死神達も、パッチワークの魔女に季節の魔法を奪われたくないみたいなんだよね。だから、今回、死神側からもパッチワークの魔女に向けて軍勢を送り込んでくるそうなんだ。ケルベロスと戦うつもりは無くて、みんなが討ちもらしたドリームイーターを狩り、そのドリームイーターが持っていた季節の魔法は回収するとの事だよ。まあ、援軍としては妥当な内容の話だと思うよ。勿論、みんなが死神なんて信じられるか! って戦いを挑んだら、当然、向こうも応戦してくるけれどね。で、ここで、さっきの大量の白の魔女をどう扱うかっていう話が絡んでくる訳だ。みんなが、最初の魔女ドロシーを倒す為には、パッチワークの魔女を倒していなければ話にならない。でも、この魔女達も、凄い数の白の魔女を従えていて、これをどうにかしないと戦う事が出来ない。ここで、ドリームイーターを倒しにやって来る死神をどう扱うかって事になる。死神を信用するか否か、最後の魔女を倒す事を優先するか否か……この辺りはどれも一長一短、難しい所だから、みんなで相談して欲しい」
 デュアルは、にっこりと微笑みかける。
「どんな道を選ぶのもみんなの自由だと思うし、俺もみんなを信じている。でも、俺としては一番忘れないでいて欲しい事は……大阪ではケルベロスハロウィンの準備を頑張ってくれているっていう事かな。折角のハロウィン、笑顔で終われるように。みんなの事を信じているからね!」


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
隠・キカ(輝る翳・e03014)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)

■リプレイ

●パッチワーク最終決戦~魔女と死神のハロウィン狂想曲
「少しでも……少しでも時間を稼ぐ! 稼がなくちゃ……!」
 第四の魔女・エリュマントスは、必死で逃げ回っていた。ケルベロスとの交戦も出来るだけ避けて、とにかく逃げて……。逃げているのには理由がある。まず、対戦人数が多い上に援軍は望めない事。そして、何より大切なのは最後の魔女・ドロシーの儀式を無事に行わせる事だ。だから、どんな手を使っても時間を稼ぎたい。その為に必死に逃げているのだから。
(「ドロシーの儀式が終わるくらい迄は……私でもなんとか時間稼いで……!」)
 それでも受けた傷は数知れない。その傷を癒しつつ、逃げた先には……。
 相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)、フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)、隠・キカ(輝る翳・e03014)、那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)、ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)、如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)の6名。皆から逃げ回るエリュマントスに対してデバイスを使い待ち伏せていたのだ。
「ヘリオンデバイス、初めて使うよ。緊張しちゃうなぁ」
「私を実験台みたいに言わないでー! 怖い事言わないで―!」
 ドローンを飛ばしながら無邪気にはしゃぐ摩琴の言葉に、エリュマントスは真っ青になる。
「いやいや、こっちはキミを倒して最後の魔女ドロシーを倒さないといけないの。そりゃあ初めて使う相手は実験台になるけど……って、キミ、酷い姿してるね」
 わたわたしているエリュマントスにツッコミを入れつつ、摩琴は彼女のただならぬ容姿に気が付いた。最大の特徴ともいえるピンク色の髪の色はくすみ、髪や服も破れ、浅からぬ傷も見え隠れする。
「あれだけの人数をくぐり抜けてきたんだ。その程度の手負いであればよく逃げた方だろう。何か目的があるのだろうが、お前はよく逃げたんだよ。……だが、もう諦めるんだ」
 フィストは冷静かつ戦士としての強い光を持った瞳で、エリュマントスを捕らえる。その視線を受け、エリュマントスも覚悟を決め、強く大鎌を握り締めた。
「……ごめんね、ドロシー。余り時間が稼げなかったみたい。でも、私も第四の魔女・エリュマントス。最後の最後まで諦めずに戦う!」
 既に手負いの身、相手はヘリオンデバイスを装備したケルベロス6名。エリュマントスも現実を分かっている。彼等を撃破し、更に時間を稼ぐ事は難しい。ならば……最期はパッチワークの魔女の誇りをかけて。
「私は第四の魔女・エリュマントス! 私の誇りをかけて戦うわ!」
「その心意気、嫌いじゃないぜ! 喰らえ、このオーラの弾丸を!」
 泰地の放つオーラの弾丸と、エリュマントスの大鎌がぶつかり合い、そのままオーラの弾丸を斬り捨てる。
「羽根豚さん達、一気に突撃よ!」
 大鎌を振り下ろしたと同時に、エリュマントスは泰地に向かって羽根豚達を一気に放った。
 だが、その羽根豚達はフィストのドラゴンスレイヤーで一閃される。
「本気で戦う気になったな。だが、窮鼠は猫を噛むと言う。こちらも全力でいかせて貰うぞ」
「ええ、当然よ! パッチワークの魔女の誇りをかけて!」
 それが、本格的な対エリュマントス戦の幕開けだった。
「みんなの集中力を上げるよ!」
 摩琴は薬瓶を投げ割り、周囲に集中力を劇的に高めるレンギョウの香りを香らせて泰地達の神経を研ぎ澄ませていく。
「喰らいなさい!」
「みんなが盛り上げてくれるお祭を、きぃ達が守るの」
 沙耶とキカの竜砲弾がエリュマントスへと次々と撃ち込んでいった。
「Vallop! (ぶちのめせ!)」
 続いてエリュマントスに襲い掛かって来るのは、ヴィクトルの放った猫型の大型ガジェット。
「……まだ、猫に噛みつけるわよ!」
 大鎌でガジェットを受け止めつつ、エリュマントスは脂汗を浮かべながら、そのまま斬り払った。そう、開戦時のフィストの言葉『窮鼠猫を噛む』、その通りに。
「中々、骨のある鼠のようだぞ、ヴィクトル」
「そりゃ、俺も見習わないとな」
 ヴィクトルがクマネズミのウェアライダーだからだろう。からかうように言うフィストにヴィクトルは肩をすくめる。
「よし、守りを固めるぞ」
「お手製調合薬、もう一発いくね!」
 フィストは黄金の美しい葦原を生み出して周囲の守りを固め、摩琴はもう一度レンギョウの香りをまき散らした。フィストのウイングキャット、テラも加護の風を送っていく。
「まだまだ……!」
 エリュマントスは大鎌で斬りかかり、羽根豚を飛ばして攻撃してくる。本当に捨て身の攻撃を仕掛けて来るので、こちらも油断が出来ない。暫く、守りや回復も重ねつつ、エリュマントスの猛攻を凌いでいく。だが、エリュマントスも力の消耗が激しく、段々と弱弱しいものに変化していった。
「喰らえ、マッスルキャノン!」
 泰地の全力のオーラの弾丸がエリュマントスに直撃し、畳みかける様に沙耶のエネルギー光弾が叩き込まれる。
「動いちゃだめだよ、もっと痛いから」
 更にキカの幻の無数の光の槍が突き刺さり幻痛を与えている間にヴィクトルの高速の斬撃が入った。
 大鎌を杖の様に使い、ゆらりと起き上がるエリュマントス。ケルベロス達を見上げる目は、まだ強い光を秘めている。回復も追いつかない、鎌を振り下ろす事も厳しい。でも、もう少し、もう少しで良い。ドロシーの時間が稼げれば……。
 託す技は一つだけだ。
「羽根豚さん達!! 今度こそあいつらを……!!」
 エリュマントスの全身全霊を込めた羽根豚達が襲い掛かって来る。それを泰地が全身を使って止めに入った。
「……流石、全力! ……でも、オレは負けないぜ!」
 全力の羽根豚達と泰地の力。それは均衡を保っているらしく鍔迫り合いの様になっている。一方のエリュマントスは力尽きたかのようにへたり込んでいた。
「勝利の運命を切り開く砲弾を……そして、彼女へのはなむけの光を!」
 沙耶の占いによる『戦車』。それは赤銅色の戦車へと化し、エリュマントスに向かって次々と砲弾を撃ち込む。その砲弾の光は、優しい光へと変わって……空を突き抜ける光の柱が優しく空を照らした。
 風が囁く。『ごめんね、ドロシー』と。――それが、第四の魔女・エリュマントスの最期だった。

●最後の魔女・ドロシー
「はい、これで大丈夫だよ」
「ああ、ありがとう。助かるぜ」
「この先は何が待ってるか分からないからね、万全にしておかないと」
 泰地の傷の手当を終えた摩琴は、礼を伝えてくる彼にっこりと笑うと、それから向こうを見た。
 ここは大阪城。最後の魔女・ドロシーが儀式を行おうとしているのだ。
「見つけた。ドロシーは、こっち」
 デバイスを使ったキカが示した方角は、どのチームも同じ。そして、反応は一つ。最後の魔女・ドロシーだ。
 賑やかな来客達に、儀式を行っていたドロシーは、その手を止める。
「そう……他の魔女は皆倒されてしまったのね」
 幾多の魔法陣が描かれ、そこから立ち昇る光の柱の中、ドロシーは何とも言えない笑みを浮かべた。
「ドロシー、最後の魔女……あなた達の目的は何だ」
「そう、お前たちは何も知らないのね」
 結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)の問い掛けに、宿敵であるドロシーは鷹揚と笑って告げる。
「始まりはポンペリポッサ。赤ずきん可愛さに魔女の力を死神に譲渡してしまったの。季節の魔力を得た死神が次にする事は……自分達以外に季節の魔力を扱えるドリームイーターを滅ぼす事、でしょうね」
 自虐気味に笑うドロシー。そう、今回の戦いは、ハロウィンの魔力を使い、死神に奪われた魔女の力を全て取り返し、ドリームイーターが生き残る為の作戦だったのだ。
「けれど、それもお前たちのせいでお終いね」
 ドロシーは嗤う。モザイクに隠れているが、それでも分かる強い瞳でケルベロス達を見据えて。
「その責は、取ってもらうわ」
 魔女の嗤い……それは微睡みとなって気付けば意識を保つことが難しくなってしまっていた。

「みんな、しっかり! しっかりして!」
 微睡む意識の中、優しい風と摩琴の声が聞こえる。
「……っ! 流石、最後の魔女だな。意識が吹き飛びかけたぜ。キカもしっかりしろ!」
「……ん、ありがとう。きぃ、もう大丈夫だよ」
 泰地のオーラによる治療でキカもしっかりと意識を持ち直す。一気に全員やられたらしい。
「すまない、助かった」
「感謝する。摩琴の嬢さん」
「ありがとうございます」
 フィスト、ヴィクトル、沙耶の状態も確認し、摩琴も息をつく。
「よし! みんな、体勢を立て直そう!」
 それぞれ、ドロシーに向かって構えを取る。幸いにもドロシーは4チーム、27名を相手に戦っている。つまり、彼女が如何に強力とはいえ、それにも限界がある筈だ。
「皆に守りを……!」
 フィストが黄金の美しい葦原による守りの結界を放ち、テラも護りの風を送っていく。摩琴も薬瓶を投げ割り、集中力を高めた。
「喰らえ、マッスルキャノン!」
「この砲弾は如何ですか?」
 泰地のオーラの弾丸と沙那の砲弾がドロシーに直撃する。
 他チームとの攻防もあり、ドロシーも守りに入ったり攻撃を振り払ったりと、中々、初撃以降の攻撃に入るのが難しそうに見える。
 そんな激しい戦いの中、キカが他チームの割り込みボイスに気が付く。
「ドロシーはディフェンダー、属性は炎と推測……そう連絡が来たよ」
「ディフェンダーか……。こっちもガンガン攻撃を入れていかないとね。ヴィクトルさん、沙耶さん、宜しく!」
「ああ、任せろ」
「これが最後です。思いっきりいきます!」
 摩琴の言葉に、ヴィクトルと沙耶は頷く。だが、その直後に炎がヴィクトルに向かって襲い掛かって来た。鍵から放たれるその炎は暗くて重い不気味な色をしていて、まるで地獄を思わせる、そんな炎。だが、その炎はヴィクトルの眼前で斬り裂かれた。斬り裂いた人物は、彼の相棒であるフィスト。
「お前の活躍、もっと見せて貰わないとな」
「ああ、存分にやってやるさ」
 にっと笑うフィストに、ヴィクトルも笑みを返す。そして、炎のお返しだと言わんばかりの残像を残すような高速の斬撃をドロシーに喰らわせた。
「ようやく剣捌きが様になったか?」
「流石に本職には及ばないだろ、Mein Schatzt(俺の宝物)?」
 そんな二人のやり取りに沙那は笑みを零す。
「信頼……いえ、それ以上の関係なのでしょうね。私も守りたい人達……家族の為に全ての力を尽くします……!」
 沙耶はバスターライフルからエネルギー光弾を思いっ切り放った。
「パッチワーク、12人の魔女。ここで、物語をおわりにしようね。だいじょうぶ、こわくない。楽しいハロウィンが待ってるから。ね、キキ」
「みんな、頑張っていこう!」
 キカも大切な玩具のロボ『キキ』にそう話しかけると、竜砲弾を撃ち込む。摩琴も癒しの風を吹かせてバックアップに努めていった。
 泰地はオーラの弾丸を、沙耶は竜砲弾を放ち、キカはバールを投げつけ、ヴィクトルは猫のガジェットを解き放つ。一方、フィストとテラは仲間の守りと護り固めていき、摩琴は特製の薬による攻撃の支援と怪我の回復をしていく。
 相手は最後の魔女・ドロシー。一筋縄ではいかない事は分かっている。襲い来る催眠の波や地獄の業火に耐えつつ、次々と攻め立て続ける。総勢に攻め立てられるドロシーは、少しずつ攻撃の手数が減っていき、その身には生々しい傷が刻まれていく。稀に動きが鈍る間はどうやら回復も図っている様だ。しかし、それだけでは間に合うはずもない。しかし、ドロシーも捨て身で戦ってきたエリュマントスと同じ、いや、それを遥かに上回る気迫とオーラで戦い立ち回る。モザイクのかかったその表情ですら、戦意に満ち溢れている様に見えるのだから。
 だが、ケルベロス達も負けてはいない。持てる力全てを使って攻撃を仕掛け、余裕を与えたりはしない。確実に追い詰めていく。
 そして、その時は来た。
「最後の魔女、ドロシー! これで、終わりだ――!」
 レオナルドの声が響き渡る。彼の渾身の一撃を受けたドロシーは、遂に崩れ落ちていったのだった。

●魔女達の黄昏
「ああ、本当に終わるのね」
 ドロシーが小さく呟いて嗤う。
 最後の一撃を浴びせたレオナルドの方を見つつ、ドロシーは崩れ落ちながら微笑んだ。
「私達、パッチワークが滅べば、魔女の力の全ては死神に奪われるでしょうね……ふふ、死神が何を為すのか見る事も……絶望に打ちひしがれるあなた達ケルベロスを見る事も……どちらも出来ないのは……残念だわ――」
 心から本当に残念だと言い残してドロシーは崩れ去る。そして、彼女が行っていた儀式も全て止まり、光の柱も消滅した。……これをもって、パッチワークの魔女達の脅威も野望も全て終焉を迎えたのだった。

「……何日分も戦った感じだぜ」
「エリュマントスもドロシーも倒しましたからね」
 全てが終り、泰地と沙耶は一息をつく。エリュマントスは手負いの状態、ドロシーは4チーム揃っての戦いではあったが、パッチワークの魔女戦を二連続で行ったのだから、疲れるのは当然だろう。
「だが、死神の動きは気になるな。正直、奴等は好かん」
「エリュマントス、ドロシーを倒す事が出来たのは死神のお陰だが……確かに複雑な心境だ」
 ヴィクトルの言葉に、泰地も同意する。
「それに、ドロシーの言っていた事も気になるよね。どこまでが本当かは分からないけれど、死神が季節の魔力を手に入れたのは確かだからね」
 摩琴の言う通り、ドロシーの話がどこまで本当なのかは分からない。しかし、死神が今回、季節の魔力を手に入れた事は間違いのない事実だ。
「しかし、死神がどう来ようとも、害を為す存在であれば私達が倒す。それは変わらない」
「ああ、そうだな」
 フィストの言葉に、ヴィクトルをはじめ、皆も頷く。
「まずは、ハロウィンを楽しみましょう。大阪の方々が頑張って下さっていますし」
「うん。きぃもハロウィン、楽しみ」
 沙耶の言葉に、キカが笑みを零して頷く。そう、大阪の人達が素敵なハロウィンを用意してくれているのだ。
 大阪ではケルベロスハロウィンが開催される。その熱気も伝え聞いているし、想像しただけでも楽しみだ。
 だから、今は一時の休息を――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月31日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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