液晶テレビは蘇らない

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 液晶テレビが捨てられていたのは、廃墟と化した倉庫であった。
 そこには沢山の液晶テレビが山積みになっており、まるで墓場のようであった。
 その場所にあったのは、すべて不良品。
 液晶画面に縦線が入っていたり、常にモザイクだったり、半分しか映らなかったり、スイッチを切る事が出来なかったりして返品されたモノ。
 その場所に、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、液晶テレビに機械的なヒールを掛けた。
「エキショウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した液晶テレビが、耳障りな機械音を響かせ、廃墟と化した倉庫を飛び出すのであった。

●セリカからの依頼
「アクア・スフィア(ヴァルキュリアのガジェッティア・e49743)さんが危惧していた通り、都内某所にある廃墟で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟。
 この場所は以前まで倉庫であったが、今では廃墟と化しているようだ。
「ダモクレスと化したのは、液晶テレビです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは沢山の液晶テレビが合体して、ロボットになったような姿をしており、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)
香月・渚(群青聖女・e35380)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのガジェッティア・e49743)
柄倉・清春(あなたのうまれた日・e85251)
オズ・スティンソン(嘯く蛇・e86471)
 

■リプレイ

●都内某所
「どうやら、この場所でダモクレスの存在が確認されたようですね。色々なテレビが捨てられていて、可哀そうな気もしますが、ダモクレスとなって被害が拡大する方が悲惨ですので、ここで食い止めましょう」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのガジェッティア・e49743)は、セリカから受け取った資料を参考にして、仲間達と共に廃墟と化した倉庫にやってきた。
 その場所は沢山の液晶テレビが山積みになっており、まるで墓場のような感じであった。
「やっぱり精密な機械は壊れやすいのでしょうね。その分、大事にしてあげないといけないとは思いますけど……」
 彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)が複雑な気持ちになりつつ、傍にあった液晶テレビを優しく撫でた。
 おそらく、修理をすれば、直るはず。
 だが、そのための費用を考えると、破棄した方が効率的に良かったのだろう。
「液晶テレビは、私も良く使っていましたけど、大切に扱っていたら、あまり故障も起きなかったですね。……ですから、こんなに沢山の液晶テレビが壊れている事自体、驚きなのですが……」
 湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)が、液晶テレビの山を見上げた。
 もしかすると、部品のコストをカットした結果、不良品が出やすくなっていたのかも知れないが、今となっては分からないことだらけであった。
「これだけ不良品を生み出した会社、なんかもう倒産してそう」
 霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が、何処か遠くを見つめた。
 この様子では、動作チェックなどの作業工程を省き、出荷していたのだろう。
 それだけ今までは不良品の数が少なかったのかも知れないが、色々なコストをカットした結果、このような事態に陥ってしまった可能性が高かった。
「壊れて捨てられるのは、機械にとっては宿命なのかも知れないけど、不良品として破棄されたのは、流石に液晶テレビも哀れかなぁ」
 香月・渚(群青聖女・e35380)が、同情した様子で口を開いた。
 それ故に、小型のダモクレスを呼び寄せ、最悪の結果を招く事になったのかも知れない。
「それにしても、綺麗に見えなければ返品だなんて、地球の人は贅沢なんだね」
 オズ・スティンソン(嘯く蛇・e86471)が、深い溜息を漏らした。
 しかし、それが原因で、返品が相次いだのも、事実。
 その程度の事なのかも知れないが、最も注意しなければならない部分でもあった。
「まぁ、最先端の技術と耐久性やら衝撃性やらってのは両立が難しいわな。……とはいえ、こういう不良品は話が違えーか」
 柄倉・清春(あなたのうまれた日・e85251)が、金属バットを肩に置いた。
「液晶テレビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した液晶テレビが、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達の前に降り立った。
 ダモクレスは沢山の液晶テレビが合体したロボットのような姿をしており、今にも襲い掛かってきそうな勢いで殺気立っていた。

●ダモクレス
「エキショウテレビィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
 そのビームは、まわりに山積みされていた液晶テレビを破壊し、大量の破片を撒き散らした。
 それは液晶テレビの時であれば、絶対にやらなかった事。
 だが、今にダモクレスには、液晶テレビ達の悲鳴は、聞こえなかった。
「さぁ、行くよ、ドラちゃん。サポートは任せたからね!」
 すぐさま、渚がボクスドラゴンのドラちゃんに声を掛け、左右に分かれるようにして、ダモクレスが放ったビームを避けた。
 それに合わせて、ドラちゃんが属性インストールを使い、自らの属性を渚に注入した。
「僕らも行くよ、トト」
 続いてオズがウイングキャットのトトに声を掛け、ハートクエイクアローで心を貫くエネルギーの矢を放ち、ダモクレスの装甲を貫いた。
 その間に、トトが清浄の翼で羽ばたき、辺りに漂う邪気を祓った。
「テレビィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時に、ダモクレスが穴の開いた装甲から真っ黒なオイルを垂れ流し、耳障りな機械音を響かせ、再び超強力なビームを放ってきた。
「まさか、これで本気か! 見た目がハデな割に、まったく痛くねぇぞ! こっちは普段から、もっとドギツい攻撃を受けているんだ! こんなんじゃ、傷ひとつつかねぇぞ!」
 清春が攻撃を真正面から受け止め、イラついた様子で、ダモクレスに吠えた。
 実際には、ビームで傷を負ったものの、気合と根性で乗り切った。
「エキショウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 ダモクレスが怒り狂った様子で、再びビームを放ってきた。
「……と言うか、怒ってますわよ、今の発言で」
 その事に危機感を覚えた紫が、液晶テレビの山に身を隠した。
 だが、ダモクレスの狙いは、清春のみ。
 清春が挑発した事によって、狙いが彼に移ったようだ。
「それならば、ビームの発射口を破壊すればいいだけです」
 即座に、アクアが一気に間合いを詰め、スターゲイザーを仕掛けて、ダモクレスをヨロめかせた。
「このまま地獄の業火で焼かれてしまうと良いですよ」
 それに合わせて、麻亜弥がブレイズクラッシュを発動させ、海神の三叉槍に地獄の炎を纏わせ、ダモクレスに叩きつけた。
「ん? 何か映ってますね……って、よりにもよって、恋愛モノですか」
 裁一がイラッとした様子で、月光斬を繰り出し、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスのボディを切り裂いた。
「エキショウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その拍子にボディの液晶画面が傷ついたため、ダモクレスが殺気立った様子で、液晶テレビ型のアームを振り回し、テレビウムの黒電話を殴り飛ばした。
「……!」
 その一撃を喰らった黒電話の身体が宙を舞い、バウンドするようにして転がった。
「おい、コラ! その程度の攻撃で、動けなくなる程ヤワじゃないだろ! つーか、タフさが売りのブラウン管なんだから、頑丈だけは取り柄だろ! 逆に、ぶん殴らて、ちょっとは映りが良くなったんじゃねえのか!」
 清春は軽く皮肉を言いながら、黒電話を護るようにして、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「……!」
 その間に、黒電話がヒョコッと起き上がり、何事もなかった様子で、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
 しかも、殴られた影響で、黒電話の映りが良くなっていた。
「それにしても、なんで恋愛モノしか映っていないのかな? リモコンがあれば、チャンネルを変える事が出来るかも知れないけど……」
 オズが複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスに視線を送った。
 ダモクレスの身体にある液晶画面に移っているのは、すべて恋愛モノ。
 その上、すべてイチャラブモノであったため、戦いに集中できないレベルであった。
「……と言うか、液晶はすべて壊してしまいましょう。大鎌を液晶画面にシュゥゥゥゥ! 超エキショウティング!!」
 裁一が苛立ちを隠せない様子で、デスサイズシュートを繰り出し、鎌を回転させながら投げつけ、ダモクレスの液晶画面を木っ端微塵に破壊した。
「エ、エ、エキショゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その途端、ダモクレスがパニックに陥った様子で、壊れたアームを振り回した。
 どうやら、ダモクレス自身、ノリノリで映していたらしく、それを邪魔されて少なからずショックを受けているようである。
「少し頭を……いえ、身体を冷やしてあげましょう」
 その間に、麻亜弥が距離を縮め、達人の一撃を繰り出し、ダモクレスを凍りつかせた。
「だったら、キミの時間ごと、凍結させてあげるよ!」
 それに合わせて、渚が時空凍結弾を放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「このエアシューズで、一刀両断です!」
 続いて、アクアが溜め斬りで全身に力を溜め、超高速斬撃を放って、ダモクレスのアームを破壊した。
「ダークマターよ、敵を取り囲み、その身を飲み込みなさい!」
 次の瞬間、紫がレゾナンスグリードを発動させ、ブラックスライムを捕食モードに変形させ、ダモクレスを丸呑みさせようとした。
「エキショウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、液晶テレビ型のミサイルを飛ばしてきた。
 そのミサイルは地面に落下すると爆発し、大量の破片をケルベロス達めがけて飛ばしてきた。
「そう何度もミサイルを発射させる訳にはいきませんわね!」
 その破片を避けながら、紫がペトリフィケイションを仕掛け、古代語の詠唱と共に魔法の光線を放って、ミサイルの発射口を石化した。
「雷光よ、爆ぜよ!」
 続いて、渚が一気に距離を縮め、ダモクレスに戦術超鋼拳を炸裂させた。
「エキショウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスのコア部分を覆っていた装甲が宙を舞い、真っ黒な煙がブスブスと上がった。
「オーバーヒートしてしまいなさい!」
 それに合わせて、アクアがグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「テレビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その途端、ダモクレスの身体が炎に包まれ、悲鳴にも似た耳障りな機械音を辺りに響いた。
「ククク、そんだけ薄型じゃ衝撃を受け流すことも出来ねえだろ?」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、清春が含みのある笑みを浮かべながら、ファナティックレインボウを仕掛け、天空高く飛び上がって、美しい虹をまとう急降下蹴りを、ダモクレスに浴びせた。
「テレビィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、ヒビの入った液晶画面を守りつつ、ヨロヨロと後ろに下がった。
「ダモクレスの不思議パワーで、何か液晶画面に映るかなと期待しましたけど、恋愛映画モノだけなんて……。それこそ、不要。液晶画面は粉砕あるのみ。デストローイ!」
 次の瞬間、裁一が嫉妬爆特攻(ジェラシーミサイル)を仕掛け、高めた嫉妬を力に変えて纏い、凄まじい速度でダモクレスに接敵すると、近距離で自爆した。
「エ、エキ……ショウ……」
 それでも、ダモクレスは反撃を仕掛けようとしていたが、既に身体はボロボロ。
 そのため、身体を動かすたび、パーツが飛び散り、真っ黒な煙が上がった。
「ここまでボロボロになっても、まだ向かっているのですか。ならば、吹き飛んでしまいなさい!」
 その事を気づいた麻亜弥がサイコフォースを発動させ、ダモクレスのコア部分を爆破した。
「エ……キ……ショ……ウ……」
 それと同時に、ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
「みんな、お疲れ様。後はヒールで修復した後、倉庫の土地を適正に処分できるようにしないとね」
 そう言ってオズがヒールを使って、辺りを修復し始めるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月23日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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