泉を守る剣

作者:雨屋鳥


 うねり、うねる。
 極彩色が絶えず移り変わる空間の中で、深く沈んだ変わらぬ色が立っていた。
 ひどく歪んだ虹の暴流に一点の穴が開いていた。
 光沢を空間の色に輝かせながらも、その本質は変わらない。
 息遣いも聞こえぬ、黒。
 静かにそれは、時を待っている。
 数十年、数百年、数千年。もしくは数秒か。
 誰も知らない。
 ただ、それにとって、時間は拘りの必要が無いものだった。
 ただ、己が斬るべき存在が現れるまで、それはここにいた。
 音もなく、剣を握る。
 今、その門を潜らんとするものが現れた。
 ケルベロス。
 それが迫っている。


「魔導神殿群ヴァルハラより双魚宮「死者の泉」へと転移が可能となったことは、皆さまご承知の事かと存じます」
 ダンド・エリオン(オラトリオのヘリオライダー・en0145)は、告げる。
 エインヘリアルの生命線であり、死神の最優先攻略目標でもある、一つの世界の基点。そこへの到達を、ケルベロス達は可能としていた。
「ですが、この死者の泉の門番が、それを防ごうとしています」
 自らを『門』と名乗る、黒い騎士。
 かつて門番であり、今は死者の泉に取り込まれ、その防衛機構の一端と化した存在。
 そこにあるのは機能としての個性と、性能としての力。
『死を与える現象』へと存在を昇華させた門番であり、門そのものでもある黒い鎧を纏うエインヘリアルが、ケルベロスの道を阻んでいる。
「死んでも蘇り『門』を守り続ける守護者……例え倒したとしても、別の個体が生み出されてしまいます」
 だが、終わりが無いわけではない。
「門の数は42体。その全てを倒し始めて我々は死者の泉へと至ることが叶うのです」
 ダンドは、今回接敵する『門』――黒騎士を簡単に説明した。
「剣士」
 強力な剣技を用い、それによって死を与える斬撃という現象。それがこの相手だという。
「この異次元的な回廊の内側では、『門』の戦闘力は数倍に強化されています」
 それは研鑽と実戦を積んだケルベロスであっても苦戦を強いられる程の存在。
「ですが、エインヘリアルが我々が泉の直前にまで手を伸ばしている事にまだ気付いてはいないこの時を逃すわけにはいきません」
 この門を撃破し、無事の帰還を。
「皆さんであれば、この敵をも超えていけると信じています」
 ダンドは祈り、そう告げた。


参加者
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)
ノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)
ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)
ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
メロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)

■リプレイ


 死は音もなく。
 烈風すら、閃光すら、抜き去った剣が闇を裂く。シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)の眼前へと迫る刃は、その瞬間シルディの体を押した銀の鞭を裁断した。
「……っ」
 オウガメタルのオオアリクイ、その舌。シルディが液体金属故に即座に修復するそれを一瞥した、次の瞬間、胸のど真ん中に剣が突き抜けていた。死は音もなく命を染め上げる。
 そんな予感めいた直感が恐怖となってシルディの喉を締め付ける。だが、指先だけは動いた。スイッチに指が届く。
 大気を揺るがす爆音――七色の爆煙の影に姿が隠れた刹那、次元を超越して貫かれた斬撃を避けたシルディはこめかみに指を当て、超音波を打ち放つ。色づく粉塵を無数のコウモリの羽が埋め尽くすように吹き飛ばし、音圧の壁と化した高出力の超音波がその向こうで構えていた門を捉えれば無尽に放たれた剣戟の嵐が誰一人裂く事無く空間に響いた。
 シルディは詰めた息を吐き、震える指先を握る。
「キミたちは」ケルベロスの存在を知っていた。だが、長い時間をどこかで待ち続けていたという。「……何者?」
 いつから、何が。そう問いかけたシルディに返る言葉は一つだった。
「門――それだけだ」
「それだけしか言えないか」
 ノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)は、オウガメタルの光を纏わせた掌を地面へと打ち付け、円を描いて吹いた銀の風で仲間の傷を癒したその指を引き上げながら吐き捨てた。命の匂いは何処にもしない。死だというのなら、生の名残を感じてもいいだろうに、それがない。
 残滓すら。
「死の匂いだけが、現実みたいな顔しやがって」
 銀の名残を溢す指を握り、慣れないこの空間全てに言の葉を向ける。鋭い言にも揺らがず騎士は剣を引き絞る、その瞬間。
「藍ちゃんッ!」
 唸りを上げたライドキャリバーが門へと突っ込み、それに瞬間標的を変えた斬撃が虚空から放たれ跳ねる。同時、言葉によって引きつけた山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)にも放たれていた無数の斬撃が全身を刻むが、その瞬間にオウガ粒子が傷を縫い留めてその動きを補助する。
 激痛が支配する。視界が明滅する。喉が引き裂かれる。だとしても、脚は止めない。
 痛みに叫びはしない。
「――ッ!」
 激痛に歯を食いしばり、その衝動を脚力へ。一気に駆ける。その剣が再び振るわれる前に。
(間に――)
 合わない。既に動き出していた黒騎士にそれを確信した瞬間に、ことほは、しかし更に踏み込む。
 黒い影が駆ける。
 氷の砕ける音がする。
 嵐渦、月光、瞬く。
 虹を纏う脚撃の軌跡が、騎士を貫く。


 あれはエインヘリアルなのか、それとも……。
 解へと至る返答はなく、シルディは焦る心を一つ深呼吸して落ち着ける。理解する事が出来るならば争いではない道を探れるかもしれない。
 だが、今は避けれぬ戦いが始まってしまっている。傷が痛む。幾らかは治癒に消えた傷が疼く。
「お疲れかい?」
「……いえ」
 シルクハットにタキシード。戦場にそぐわない風貌のメロゥ・ジョーカー(君の切り札・e86450)が、酷く長閑な声色で語り掛ける。
 シルディには、それが冷徹な、背を向ける事も許容するような言葉に聞こえて、睨み返した。その視線に嬉し気にメロゥはシルクハットの鍔を直し、何もない足元を蹴り上げた。
 サッカーボールのような黒の塊が、巨大な顎となって吹き飛んでいった。
 その瞬間――メロゥの体は弾き飛ばされた。


 痛い。
 ああ、痛い。ああ、面倒くさい。ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)は内沸する不満に引き攣るような笑いを溢す。
 治癒されたは良いものの利き腕に痺れが残っている。だが、彼女の心憂は、あの心というものが希薄な黒い鎧にあった。
 見ていて、触れていて、楽しくないあの黒い塊。
「大丈夫か」
 そんなふうに同じように傷ついているというのに声をかけてきたラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)に、また笑う。
「な、んの、事です、か?」
 ウィルマが振るう超大な剣が、大雑把に振るえばそれで事足りる。
 それより、とウィルマは彼の意識を自分から引き剥がすように、僅かに笑みの残る口に舌を覗かせる。
「ほ、ほら、……来ますよ」
 僅かに明瞭な言葉。
 ああ、嫌だ。弾き出す。
 ラルバは、こうして痛みを恐れる自分の弱さが嫌いだ。いや、嫌おうとしている。
 何かを、誰かを、護るには……この気持ちは邪魔だ。
 ウィルマの言葉に、耳の先を震わせる予感のままに体が動く。誰もが疲弊している。自分はまるで傷を受けていないとでもいうように振る舞うメロゥへと放たれんとした斬撃を感じた。死の音、匂い、そういった目には見えないけれど確かにある色。
 メロゥを押しのけた空間に斬撃が駆け抜けて、ラルバの体を穿つ。背が裂ける、視界の片側が赤に染まる。
 痛い。いやだ、それしかない。
 だが、それでも。
「ッ……ア!」
 ラルバはふらつく足を叱咤するように地面へと打ち付ける。踏みしめた極彩色の地面を罅割る様に白が広がり、その先から氷剣を握る騎士が黒騎士へと、駆け抜けた。
 身命を賭け、味方の一手を護る様に。


「チッ」
「……」
 目が合った瞬間に舌打ちを放たれた。質問と応答、その僅かな休符に息を整えた玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)は憮然と下唇を突き出して見せた。
 舌打ちを放った当人。比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)は可愛くもない顔を早々に忘れて、ただ短く答えた黒い騎士を見やった。
 名前も、取り込まれる前の過去も全部無くした。そんな死を与える現象に昇華したというそれに浮かぶのは嫌悪だ。
 倒されれば他のそれが湧き出して、生み出して、蠢いて。
 潰しても潰しても這い出てくる黒いナニなアレと似たようなもんじゃないか。
「……しつこいな」
 再度、舌打ちを放つ。猛攻を続け、猛攻を受け、それでなお十全とばかりに構えるその耐久力もまさに、である。
「ああ、しつこいな」
 陣内は、そう肯定する。だが、浮かんでいた感情はまるで違うものではあった。表としては、その剣士へ。だが、それは僅かに自分を痛めつける言葉として。
 例えば、一つの想いを抱き続ける事が出来るのか。その覚悟を、ただ死を体感し得ぬそのデウスエクスという存在に芽生えるものか。
 ああ、自慰に耽っても無意味だろうな。
 吹き荒れた斬撃に飛び込んだウイングキャット、猫が、そのひすいの羽を散らす。
 ――俺には、お前のことなどまったくどうでもいいが。
 ノチユの放った銀の風が吹いて、それを癒そうと。
 日本刀を腰溜めに駆けだした。風の悲鳴が耳を揺らす。
 ――八つ当たりには付き合ってもらおう。
「陣」
 その陣内を。
「ぶっ潰せ」
 背を押す――いや、尻を蹴飛ばすような追い風が弾き出す。
 随分と乱暴な激励か。アガサの放った豪風に吹き飛び、孤を描く刃が閃いた。


 ことほが駆ける。
 その黒い剣の斬撃が放たれる目前、不定形の牙がそれを包み込んだ。メロゥの蹴ったブラックスライムが躍りかかったのだ。黒色の咢檻に鎖された騎士へとラルバの召喚した白氷の騎士が剣を振るう。
 ブラックスライムを斬り散らし、肉薄する騎士と剣を合わせる。瞬きの間に数合の剣戟。砕ける剣を捨てた白騎士が拳を黒騎士に突き立てる刹那に、嵐が舞う。
 アガサの奮い起こす風が、僅かに黒騎士の動きを乱し、氷の拳が突き刺さったその背後から、月孤を描く剣閃と、黒剣が一瞬を鬩ぎ合う。
 陣内の放った抜刀斬撃が、掬い上げる黒刃に弾かれるのはほんの僅かな均衡の後。陣内の刃を弾いたそのままに、黒騎士は、肉薄することほへと刃を薙ぎ払った。
 だが、そこにあるのは、虹の残滓。
 ことほの姿はそこにはなく。
 頭上。側転するように天地を逆転させた彼女が、魔力のカタパルトに急降下し、虹色の極光を吹き散らす強烈な蹴りを打ち放っていた。
 泥濘を思わせる極彩とは真逆、澄んだ光を見せる極光が円状の余波となって、瞬いて消える。
 直上からの一撃に吹き飛んだ黒騎士は、地面にバウンドする瞬間、剣を突き刺し強引に体を縫い留める。
「……」
 手ごたえのある一撃。その鎧を砕き散らした強蹴。
「――え」
 そして、ことほの捕らえた視界に移るのは、吹き飛ばしたはずの黒騎士が眼前に刃を振るい落とす。その瞬間だった。


 ドラゴニック・パワーを噴射で加速させた竜鎚によるの打撃で、即座に黒騎士を打ち離したアガサは、僅かに眉を寄せる。
 僅かに、その剣士の構える剣の音が変わった。擦れた足が、極彩色の境界に響く。噛み合わないようなちぐはぐさがある。
 それは。
「……楽しんでいる?」
 ノチユは、ことほへと落とされた剣撃に庇い出たウィルマへと光の蝶を放ち治癒しながら、感じた違和感を言葉にする。
「お前は……」
 何がそう思わせる。
 ノチユは自問する。言葉はない。浮足立つような隙も無い。必殺とも言える一撃をも威力を削がれ、なお、静かに構えるその動きには、やはり生命は感じない。
 だというのに、ノチユは、その兜の奥に冷たく揺れる笑みを見た気がした。
 死という現象と化してさえ、死という危機を待ち望んでいたというように。
 それをこそ、越え、至ると叫ぶように。
 重い一撃だ。
 その剣は、力は、ここに来たケルベロスを殺すに足るものかもしれない。
「――それでも、僕らを堕とすには足りない」
 だが、そうさせないとノチユはここにいる。
 死を認めはしない。
 それが死というものを与える現象と化しているのならば、その存在を許しはしない。
 暗灰を纏う角に輝きが混ざる。地獄に瞬く漆黒の髪に星が煌めくように、光が揺らめき――祈りの光が放たれた。
 星、瞬きが、生命を奮い立たせる。ただの一人も欠けさせたりしない。諦念にも似た覚悟が、漆黒の中に瞬く。
「お願いねっ!」
 シルディの声に、オウガメタルが粒子を振りまいた。傷を癒し、体の制御を整える白銀を纏い、陣内とことほが挟撃する。
 ことほの放った桜吹雪が星灯、銀光と共に、極彩を、黒を、奪う。白じむ螺旋を潜り抜けた陣内の風を斬るように振るった剣を黒い刃が食い止めた。その向こうでことほの蹴りが掴む腕に阻まれている。
 僅かな膠着に、陣内は言葉を溢していた。
「かつてのお前が何者だったのか」
「……」
 果たして、その剣士を覚えているものはいるのか、それは知らない、知る由もない。刹那、陣内の刃が、それを留めていたはずの黒剣をすり抜けた。
 否、そう、見えた。歩法、呼吸、空の霊力を纏う存在の希薄な刃、噛み合わせた体捌きが踏み込みの瞬間を、見逃させたのだ。
 だが、黒騎士は即応する。ことほから腕を離し陣内へと迫る。陣内の刃が一瞬、遅い。
「痛かった、です、よ」
 地面から湧き上がった細い金属光沢が腕に絡まり、その一瞬が逆転する。
 直ぐの刃が線を引いた。
 黒い鎧、その胴から腕へと一直線に傷が刻まれた黒騎士は、間合いを離そうとした二人を追うこともなく、拘束を放ったウィルマへと向かわんとする騎士に、ひらりと舞うスカーフ。
 その向こうから星の輝きを秘めた蹴りが放たれる。メロゥの強烈な飛び蹴りに、一瞬怯んだ黒騎士にメロゥは手を軽く振る。
「やあ」と気さくな挨拶と入れ替わりに、瞬間、取り合わず振るわれた刃がメロゥの胴体を食い破った。
 鮮やかな赤が、切り裂かれたメロゥの腹から噴き出る。
 だがそれは、液体ではなく、四角に切り取られたカードの背面だった。トランプが血しぶきの代わりに噴出して、メロゥは一瞬警戒し目を奪った黒騎士へと笑いかけた。
 彼らは、同じ風貌でありながら違う動きを見せてくれる。それは、素晴らしい事だ。
「ひどいなあ、新しい驚きのお礼だよ」と空中の一枚。黒剣士が最初に見た一枚を指に挟んだ絵柄に驚いた素振りをする。
「宿れ神風」
 唸る、ラルバの陽炎の髪が揺れた。
 遠慮せず、受け取ってくれたまえ。そうメロゥが指を鳴らした瞬間にそのカードが消え。
 そして、騎士の腕を切り裂いて、その鎧の下から飛び出してきた。
「スペードのエース。ああ、お似合いだ」
 アガサはそんなメロゥの言葉に、少しむっとする。いや、何のことはない。乗せられたようで少し気が引けただけだ。
 仰々しい言葉に振り上げられる刃。今度こそ断頭台のごとくメロゥへと落ちる刃に、ラルバが飛び出した。
「――ッ!」
 迫る死に、しかし迷わない。両の手に渦巻く豪嵐に腕を上げはしない。最中で止める気もない。
 アガサが、ラルバの視線に瞬きで答える。
 仕方ない、とでもいうようなそれに、しかし、信頼厚く覚悟を決めた。
 その瞬間を狙っていたのか、それとも偶然か。ウィルマのウイングキャット、ヘルキャットの放ったリングがその剣をガツンと、僅かに逸らした。
 ラルバの正中線を過たず切り裂いていたはずの剣が、肩から大腿までを切先で削るにとどまる。
「轟き吹き抜け切り……刻めッ!」
 スペード。
 剣を象徴し、騎士を比喩し、死を意味し。
 風を統べ、冬を示す。
「……さっさと、くたばりやがれ」
 そんな言葉もすべて、轟音が飲み込んだ。
 ラルバの両掌から放たれた風神の烈風と、アガサの竜鎚が放つ可能性を鎖す絶対零度が交差する。
 刻まれた傷に、その鎧が凍り、砕け、弾け、崩れていく。
 宙を舞った黒い剣が極彩色の空間に落ち、無数の黒い傷となって掻き消えていった。


「……」
 シルディは、胸に手を当て、静かに瞑目する。戦わざるを得ない相手でも、心を痛める彼女が目を開けるや否や、ことほがその手を掴んでいた。
「ほら、帰んないと。家に帰るまでが任務なんだからねっ」
「あ、はい……」
 あとはヘリオンデバイスの機能もフル活用して逃げるだけだ。
「ひと、ふの……これであと」
 撃破報告のある門の数を思い出していたウィルマに、ヘリオンデバイスのもたらすビームで互いが繋がって顔を上げる。
「……まあもうすぐで、しょう」
「そっすね、もうひと頑張りっす!」
 死者の泉までもう少し。
「随分手こずってたね?」
「何のことだ……ああ、お前がか? そうだな」
「はは、悔しがってやがんの」
 アガサの言葉を聞きながら、陣内はその向こうにいまだ忸怩と残る感情に蓋をするように、僅かに感じる門の復活の兆し、その奥にあるのだろう泉に背を向けた。
「復活する前に行こうか」
 とノチユの言葉に、ケルベロス達は十分に息も整ったと頷き合って駆け出した。
 その時、思い出したようにメロゥが振り返る。
「さようなら、もしくは――また会おうね、近いうちに」
 別れを告げる言葉を、極彩色の空間は、その表情を見せることなく吸い込んでいった。

作者:雨屋鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年11月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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