あたりが出たら、もう一本!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した店舗に、アイス用の冷蔵ショーケースが捨てられていた。
 この中には様々なアイスがしまわれていたものの、今は空っぽ。
 たまにホームレスが、小物入れに利用していた事もあったが、いまは何も入っていない。
 その場所に、小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、カサカサと音を立てながら、アイス用の冷蔵ショーケースに機械的なヒールを掛けた。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、アイス用の冷蔵ショーケースがダモクレスと化し、耳障りな機械音を響かせながら、廃墟と化した店舗を飛び出すのであった。

●セリカからの依頼
「瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)さんが危惧していた通り、都内某所にある廃墟で、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟。
 この場所は以前まで駄菓子屋だったようだが、今では廃墟と化しているようである。
「ダモクレスと化したのは、アイス用の冷蔵ショーケースです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスはアイス用の冷蔵ショーケースがロボットになったような姿をしており、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
ヒルデガルダ・エメリッヒ(暁天の騎士・e66300)
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)

■リプレイ

●都内某所
 駄菓子屋にとって、アイスは売れ筋商品であった。
 そのため、アイス用の冷蔵ショーケースは、無くてはならないモノ。
 それがあるだけで、子供達もハイテンション!
 みんなで群がるようにして、アイス用の冷蔵ショーケースのまわりに集まり、アイスを買っていくほどの人気であった。
 その中でも、特に売れ筋だったのは、当たりつきのアイスであった。
 だが、不況の波に飲まれて、駄菓子屋は廃業に追い込まれてしまったようである。
「寒くなってきたのに、アイスって……。しかも、これでもかっていうくらいアイスなのね、今の時点で頭痛くなりそぉ」
 そんな中、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)は魂の抜けた表情を浮かべながら、仲間達と共にダモクレスの存在が確認された店舗にやってきた。
 以前まで此処は駄菓子屋であったが、既に廃墟と化しており、壁を伝うようにして、無数の蔦が絡まっていた。
 それでも、アイス食べ放題は、魅力的。
 その上、いくら食べてもタダなのだから、食べないという選択肢は存在しなかった。
 隙あらば、食べる。
 ただ、それだけ。
 最悪、ペインキラーで痛みを誤魔化し、頭がキィーンと来るのを解除である。
 ただし、誤魔化す事が出来るのは、たったの10時間。
 その後には、地獄が待っている。
 その事を考えるだけで、ゾクゾクッと寒気が走るものの、ここで考えてしまったら負けである。
「とりあえず、アイスと聞いて寒冷適応を用意してきたわ! もうちょっと早い時期に出てきてくれれば、ちょうど……ってところだったけど、真冬じゃないだけ許してあげようじゃない?」
 ヒルデガルダ・エメリッヒ(暁天の騎士・e66300)が、廃墟と化した店舗の前に陣取った。
 その途端、廃墟と化した店舗から、ケルベロス達を包み込むようにして、真っ白に冷気が漂ってきた。
 それは体の芯まで凍えてしまう程の寒さであったが、何故か無性にアイスが食べたくなった。
 これで、近くに炬燵でもあれば、最高の気分でアイスを食べる事が出来るものの、残念ながら、まだその時期ではない。
「今回ダモクレスと化すのは、アイス用の冷蔵ショーケースか。よくコンビニやスーパーで、開けてから迷ってる人がいるけど、あれやられると扉が真っ白になって困っちゃうんですよね……ってことは開けて戦うと有利……?」
 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が辺りを警戒しつつ、キープアウトテープを張った。
 廃墟と化した店舗は、以前まで駄菓子屋であったため、アイス用の冷蔵ショーケースのサイズも小さめ。
 その分、効果は薄いかも知れないが、試してみる価値があった。
「そう言えば、ダモクレスが撃ってくるのって、当たりつきなんだっけ? もう一本貰えるのは、嬉しいかもしれないけれど、中々立て続けに食べられるものじゃないよね? あれ? そう思うのは、僕だけかな?」
 そんな中、オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、不思議そうに首を傾げた。
 どうやら、仲間達の考えは違う様子。
 どちらかと言えば、ヤル気満々。
 全員とは言えないが、頭がキィーンとなっても立ち向かう勇者が、その中にいる事は間違いなかった。
「ショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオケェェェェェェェス!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したアイス用の冷蔵ショーケースが、耳障りな機械音を響かせ、ケルベロスの前に降り立った。
 ダモクレスはアイス用の冷蔵ショーケースがロボットのようになった姿をしており、まるで息をするようにして、真っ白な冷気を吐き出した。

●ダモクレス
「何だか、あたしの知っている冷蔵ショーケースと違う気が……。ひょっとして、あの発射口っぽいところから、アイスが出てくるのかしら?」
 ヒルデガルダがダモクレスをマジマジと見つめ、警戒した様子で間合いを取った。
 この時点で、嫌な予感しかしない。
 しかも、死亡フラグがラインダンスを踊る感じで、ヤバイ雰囲気。
 おそらく、それは気のせいではない。
 故に、ここでの油断は、命取であった。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、大量のアイスをビームのように放ってきた。
 それは途切れる事なく放たれており、色取り取りのアイスがケルベロス達めがけて飛んできた。
 おそらく、これが戦闘中で無ければ、ダモクレスに感謝の気持ちを伝えたかも知れない。
 だが、この状況で大量のアイスを放たれる事は、ある意味迷惑。
 ダモクレスにクレームを言っても、仕方がないほど、アレだった。
「いや、さすがにこれは多過ぎだから! さすがに、全部食べるのは無理だし、捨てるのも勿体なしい……う~ん」
 右院が複雑な気持ちになりつつ、ダモクレスが放ったビームを避けた。
 その途端、ブロック塀に当たったアイスがベチャっ嫌な音を響かせ、勢いよく辺りに飛び散った。
「こんな事ならクーラーボックスを持って来れば良かったかも。だからと言って、食べないとは言っていないわよ! 当たりが出るまで、食べて、食べて、食べまくってやるんだから……!」
 そんな中、レイが素早い身のこなしでアイスを手に取り、口元まで運んでいった。
 アイスは、とても美味しく、味も様々。
 途中で飽きがこない仕様になっているため、思わずサムズアップしてしまう程だった。
 しかし、どれもハズレ。
 物凄い勢いでアイスを食べて、食べまくっているものの、ひとつ残らずハズレであった。
 ここまでハズレが多いと『ひょっとして、当たりが入っていないのでは……?』と邪推してしまうものの、一応当たりはある……らしい。
「さすがに寒いね。何か暖かいモノが食べたくなったけど……」
 オズが寒さで体を震わせながら、乾いた笑いを響かせた。
 そんな空気を察したウイングキャットのトトが、オズの身体を擦り寄せた。
 その事に気づいたオズが、トトをギュッと抱き締め、ヌクヌクと暖まった。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、アイス状のアームを振り回した。
 そのアームは刃物の如く鋭く尖っており、先端までキンキンに冷えていた。
 それは、まるでツララのようでもあり、いかにも危険な感じであった。
「……と言うか、冷蔵ショーケースいらないじゃん! そもそも、これから寒くなって、アイスも溶ける事が少なくなるし! だからと言って、私を集中攻撃しないでくれる!?」
 レイが身の危険を感じつつ、ダモクレスの攻撃を避けていった。
 その間に、冷蔵ショーケースから、アイスをゲット!
 ダモクレスの様子を窺いながら、アイスをパクつき、物陰に身を隠した。
「さすがに、このアイスを食べる事は出来ないね」
 すぐさま、オズが紙兵散布を発動させ、祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量散布し、ダモクレスの攻撃から仲間達を守護した。
「ショーケエスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、狂ったようにアームを振り回した。
「確かに、あれを食べる事は出来ないね。だったら、壊してしまおうか。誰かが怪我をする前に……!」
 右院が間合いを取りつつ、気咬弾を仕掛け、敵に喰らいつくオーラの弾丸を放って、ダモクレスの右アームを破壊した。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 だが、ダモクレスはまったく諦めておらず、耳障りな機械音を響かせながら、左アームを振り回し、アスファルトの地面を壊すようにして、ケルベロス達に迫っていった。
「アスファルトの破片が地味に痛いわね」
 ヒルデガルダが自らの身を守りながら、ヒーリングパピヨンを発動させ、パズルから光の蝶を出現させた。
 それと同時に、光の蝶が舞い踊り、味方の第六感を呼び覚ました。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 そんな中、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、アイス型のミサイルを飛ばしてきた。
 アイス型のミサイルはアスファルトの地面に落下すると、大爆発を起こして大量の破片を飛ばしてきた。
「やったー、アタリが出……って、なんで攻撃してくるの!? もう、そっちがその気なら、こっちも容赦しないんだから……!」
 レイが当たりのアイス棒を握り締め、ムッとした様子でスーパー神風デリンジャーアタック!(イザノトキノゴシンジュツ)を仕掛け、空高く舞い上がって、懐からデリンジャーを取り出し、勢いよくブン投げた。
 それと同時に、デリンジャーが勢いを増しながら、ダモクレスのコア部分にブチ当たった。
「アイスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、完全に機能を停止させた。
「何とか倒す事が出来たけど、だいぶまわりが冷えてしまったね。本音を言えば、何処かで暖まりたいところだけど……」
 オズがトトをギュッと抱き締めて、ヌクヌクとしながら、ゆっくりと辺りを見回した。
 ダモクレスが暴れ回ったせいで、辺りはズタボロ。
 駄菓子屋に至っては、お化けでも出そうな勢いで、ボロボロだった。
「本音を言えば、早く帰りたいところだけど……。最低限、テープを外したり片付けぐらいはしておこうか。そういえば家のストーブ、まだ出してなかったから、灯油買わなきゃ」
 そんな中、右院が寒さで体を震わせながら、真っ白な息を吐いた。
 ダモクレスが機能を停止したのと同時に、アイスはドロドロ。
 どうやら、当たりは一本しかなかったらしく、レイが御機嫌な様子で鼻歌を歌っていた。
「名残惜しいけど、丁寧に片づけましょうか」
 そう言ってヒルデガルダが、辺りをヒールで修復し始めた。
 そのおかげもあって、壊れたモノが、少しずつ修復されていった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月8日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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