朽ちたライブハウスに響く音

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化したライブハウスに、シンセサイザーが置かれていた。
 このライブハウスは、不況の煽りを受けて、廃業してしまったようである。
 その際、ほとんどの楽器が撤去されてしまったが、シンセサイザーだけは放置されたままだった。
 その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れた。
 小型の蜘蛛型ダモクレスは、シンセサイザーにカサカサと入り込み、機械的なヒールを掛けた。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したシンセサイザーが、耳障りな機械音を響かせ、廃墟と化したライブハウスを飛び出すのであった。

●セリカからの依頼
「霧矢・朱音(医療機兵・e86105)さんが危惧していた通り、都内某所にあるライブハウスで、ダモクレスの発生が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるライブハウス。
 この場所にあったシンセサイザーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、シンセサイザーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスはシンセサイザーがロボットになったような姿をしており、耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
 シンセサイザーにとって、ライブハウスは、理想の場所であった。
 常に誰かが必要としてくれる。
 それだけで、幸せ。
 他には何もいらない。
 そう思えてしまう程、文句がなかった。
 だが、それも長くは続かなかった。
 ライブハウスが閉鎖に追い込まれ、誰も近づかなくなってしまったせいで……。
「このライブハウスも、不況に見舞われていなければ、さぞかし賑わっていた事でしょうね。まぁ、ダモクレスが現れたからには倒すしか無いけど……」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)は複雑な気持ちになりながら、事前に配られた資料を参考にしつつ、仲間達と共にダモクレスの存在が確認されたライブハウスにやってきた。
 このライブハウスは、廃墟と化してから、しばらく経っているらしく、まるで心霊スポットの如く、不気味な雰囲気が漂っていた。
 それでも、ライブハウスが営業している頃は、朝から晩まで連日の如く賑わっていた。
 それだけ料金が格安で、利用しやすい場所であったが、そのぶん近隣住民とのトラブルが耐えなかったようである。
 その上、違法駐車が後を絶たなかったため、警察の取り締まりも厳しかった。
 それが災いしたのか、次第に売り上げが下がっていき、不況の煽りも喰らって、閉鎖に追い込まれてしまったようだ。
「ところで、シンセサイザーってどうやって使うのかしら? 上手く使えば良い音楽を作れそうなのに、ダモクレスになるとは勿体ないわね」
 そんな中、リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、不思議そうに首を傾げた。
 事前に配られた資料を見る限り、シンセサイザーの使い方については、何も書かれていない。
 おそらく、その事を説明をする必要性が感じられなかったため、省かれてしまったのだろう。
 もしくは、分かった事が前提で、資料が作られている可能性が高かった。
 どちらにしても、資料だけでは、シンセサイザーがどのようなモノか分からず、頭の上にハテナマークが増える結果となった。
「私は使い方良く分からないけど、素敵な音楽を作れそうな物だったみたいね」
 霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が、自分なりの考えを述べた。
 それは単なる想像でしかなかったが、資料を読む限り、間違ってはいないはず。
 それでも、捨てられてしまったのだから、何か理由があるかも知れない。
 残念ながら、資料にはその事が書かれていなかったため、予想をする事しか出来ないが、例え理由を知る事が出来たとしても、いまさらシンセサイザーを救う術はない。
 ダモクレスになってしまっている事が分かっている以上、破壊する事しか選択肢が残されていなかった。
 それがある意味で救いかも知れないが、その事をシンセサイザーが望んでいるようには思えなかった。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化したシンセサイザーが耳障りな機械音と共に、ドシンドシンと足音を響かせ、ケルベロス達の前に姿を現した。
 その姿は、まるで巨人。
 胴体部分にシンセサイザーだった名残があるものの、あまりの大きさに見上げてしまうほどだった。
「私も音楽にはそれほど詳しくないですけど、これほどの高性能そうなシンセサイザーなら、良い音楽が出来そうですね」
 綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)が、反射的にダモクレスを見上げた。
 ダモクレスと同化しているシンセサイザーは、見るからに高価なモノ。
 そう言った意味でも、何の理由もなく、捨てられるとは思えない。
 そのため、シンセサイザー自体に、何か不都合があったのではないかと言う考えが芽生えるのであった。

●ダモクレス
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 ダモクレスがケルベロス達を威嚇するようにして、耳障りな機械音を響かせながら、独特な音色と共にビームを放ってきた。
 その音色は、かなりノリノリ。
 思わず身体が反応してしまい、ダンスを踊ってしまいそうになる程、ノリが良かった。
「……何だか心がゾワゾワする音色ね」
 その途端、悠姫が危機感を覚え、独特な音色から逃れるようにして、ギリギリのところでビームを避けた。
 その音色は、まるで磁石の如くケルベロス達を、ビームに誘導しているような感じであった。
 そのため、ビームに引き寄せられるようにして、身体が動いてしまうため、全身に痛みが走るほど、強引に身体を動かす必要があった。
「確かに、妙な気持ちになる音色ね。なるべく聞かない方がいいような気もするけど、どうせならこうした方がいいかも」
 すぐさま、リサがエナジープロテクションを使い、ダモクレスが放ったビームを受け止めた。
 その反動でリサの身体が宙を舞い、落下したのと同時に、ダンボールの山を吹っ飛ばした。
 そのおかげで大事には至らなかったものの、大量の埃が舞い上がり、カビのニオイが漂った。
「随分と調子に乗っているようだけど、そうやって私達を甘組みていると、そのうち痛い目を見るわよ。それが今かも知れないけど……」
 朱音がダモクレスに軽く皮肉を言いながら、一気に間合いを詰め、スターゲイザーを炸裂させた。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、バランスを崩すようにして膝を曲げた。
 しかし、戦意は全く衰えておらず、逆に増幅しているようだった。
「さぁ、行きますよ、ネオン。頼りにしていますからね!」
 その隙をつくようにして、玲奈がボクスドラゴンのネオンに声を掛け、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 その気持ちに応えるようにして、ネオンが属性インストールを発動させ、自らの属性を注入した。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 それと同時に、ダモクレスがシンセサイザー型のアームを振り回し、ケルベロス達に迫っていった。
 それは、ケタ外れに大きな駄々っ子。
 危険で巨大な駄々っ子に見えた。
 だが、破壊力は、ケタ外れ。
 駄々っ子では片づける事が出来ない程、危険な破壊力を秘めた攻撃だった。
「ちょっと、これは厄介ね。だからと言って、放っておく訳にもいかないのだけど……」
 その攻撃から逃れるようにして、リサが間合いを取りつつ、鎮めの風を発動させた。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 しかし、ダモクレスは暴走状態ッ!
 全身が殺気に覆われており、ケルベロス達に対する敵意が、シャレにならない程、膨らんでいた。
 その感情をケルベロス達に向け、ブンブンとアームを振り回しながら、まわりにあるモノを壊しつつ、大量の破片を飛ばして、ケルベロス達に迫っていった。
「……まずは動きを封じる必要がありそうね」
 悠姫が傷ついた身体を庇いながら、プラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで作った大きな霊弾を、ダモクレスにブチ当てた。
「氷の属性よ、その力を開放しなさい!」
 それに合わせて、玲奈がボルトストライクを仕掛け、ダモクレスを殴りつけ、氷属性の爆発で追い打ちをかけた。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 だが、ダモクレスはまったく怯んでおらず、ハリネズミの如く氷を生やしながら、ケルベロス達に殴りかかった。
「まだ諦めていないなんて、随分としつこいのね。でも、これ以上、先には進ませないわ!」
 それを迎え撃つようにして、朱音もボルトストライクを仕掛け、ダモクレスの装甲を吹っ飛ばした。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その事にショックを受けたダモクレスが、ケルベロス達を狙うようにして、シンセサイザー型のミサイルを飛ばしてきた。
 それはひとつひとつが巨大で、超重量級。
 そのため、落下と共に床にズシンとめり込み、次々と爆発して、大量の破片を飛ばしてきた。
「……本当に諦めが悪いのね。だったら、この弾丸で、石化させてあげるわ」
 その破片を避けるようにして、悠姫が物陰に身を隠し、ガジェットを拳銃形態に変形させ、魔導石化弾を発射した。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、苦しそうに足をバタバタさせた。
 だが、ミサイルの発射口が石化してしまったせいで、まったく反撃する事が出来ず、イライラが蓄積されているようだった。
「これで終わったと思ったら大間違いですわ。これから、この呪詛で、その身が蝕まれていくのですから……」
 そこに追い打ちをかけるようにして、玲奈が凶太刀を繰り出し、ダモクレスのボディを刺し貫き、刃から伝わる呪詛で魂を汚染した。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、ダモクレスが独特な音色を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
 しかし、それはケルベロスには当たらず、天井を壊して大量の破片を雨の如く降らせて言った。
「貴方の急所を、見抜いたわよ!」
 それと同時に、朱音が月光斬を仕掛け、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスのコア部分を切り裂いた。
「シンセサイザァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 ダモクレスが断末魔にも似た機械音を響かせ、倒れ込むようにして完全に機能を停止させた。
「今回も無事に倒す事が出来たわね。みんな怪我はない。もしも怪我をしていたら、遠慮なく言ってね。誰も怪我をしていないなら、この場所を修復しましょうか」
 そう言ってリサが仲間達の無事を確認しつつ、ゆっくりと辺りを見回した。
 ダモクレスが暴れ回ったせいで、辺りはボロボロ。
 ステージと思しき場所も崩れて、床に大きな穴が開いていた。
 それでも、ヒールを使えば、すべて修復する事が出来そうな感じであった。
 そして、ケルベロス達は辺りに散らばり、ヒールを使って壊れたモノを修復し始めるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月6日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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