ハンディクリーナー復活! 服が絶体絶命!

作者:大丁

 家電量販店の倉庫には、引き取ったリサイクル品を放り込むための金属カゴが設置されていた。
 それらは、清掃や整備をしたところで活用できないもの。分解して有害物質を取り除いたら、結局はゴミとなって捨てられる商品たちだ。
 カゴの底のほうに、大きめの工具くらいの機械が埋もれている。
 ずんぐりした本体の一方の端には持ち手と電源スイッチ。その反対端には平べったい吸い込み口。
 ハンディクリーナーだ。
 今どきならば、充電スタンドを別途に備えたコードレスであろう。古い型のこれには、コンセントプラグをぶら下げた線が直接生えており、まわりの廃棄家電にぐるぐると絡まってしまっていた。
 この底辺に、虫を思わせるコギトエルゴスムがたどり着く。
「スイ~ッ!」
 ダモクレスとして復活した家電は奇声をあげ、金属カゴもご同輩も、倉庫内に吹っ飛ばして立ちあがった。

 ヘリポートには、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)をはじめ、ケルベロスたちが集合していた。銀子は、出入口をちらちら見ながら、事情を話し出す。
「廃棄家電ダモクレスの調査から、冬美さんに予知をお願いできたので、討伐のために集まってもらったのよ。すぐ出発するはずなのよね……」
 と、言ったあたりで、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)のレインコート姿が見えた。
「ごめんねぇ。みんなに見せようと思って探してたのぉ」
 掲げた右手には、手に持つタイプの、コードのついた機械が握られていた。
「そ、それは……!」
 銀子ともどもケルベロスたちは驚き、ついでその銀子に視線を移した。冬美はかまわず説明する。
「戦場は倉庫内だよ。敵の出現直後に到着できるから、その場で倒してもらえば、一般人に被害は出ない。ハンディクリーナーがダモクレス化したんだけど、形も大きさも元のまま、このコード部分で……」
 垂らしたコードと、床に触れるコンセント。
「ぴんっ、て自立して跳ねまわる。本体は2mの高さになって、そこからなんでも吸い込む攻撃で、武器や防具を使えなくするから気を付けてねぇ」
 本体をぶんぶんと振り回した。
「それじゃ、行くよ。レッツゴ……」
 顔を真っ赤にした銀子が耳打ちする。
「冬美さん、その見本、実物と違う。私が普段使ってるものかと、みんな勘違いしてるわ!」


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
除・神月(猛拳・e16846)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
ルティア・ノート(剣幻・e28501)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)

■リプレイ

●突入間近
 叢雲・蓮(無常迅速・e00144)は、倉庫の入口から鉄扉をわずかに開けて、室内の様子を伺う。
 予知のとおり、ひしゃげた金網の中央に、機械が浮いていた。
「何だか冬美姉が持ってた見本と違う感じがするけれど……」
 蓮はマインドウィスパー・デバイスを用いて、後続の仲間と思考会話する。マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)の返事は肯定的なものの、驚きは含まれない。
「ああ。見本と違う。あれはクリーナー」
「つまり小型の掃除機でしょうか。ダモクレス化で形が変わったのですかね?」
 ヘリポートでの説明と異なっていても、ルティア・ノート(剣幻・e28501)の考えは妥当だ。
 逃げ道を塞ぐべく、裏口で配置についたドレスアーマーの傍らには、ジャケットとショートパンツ、それもかなり丈の短い姿で、除・神月(猛拳・e16846)が、ガニ股気味にしゃがんでいる。
「ちょっと古ぃタイプだよナー」
「乾電池使ったり、車のシガーソケットから電源取るタイプもありましたっけ」
 巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)の言葉に、向かい合っていた獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が露骨にギクッとなった。
 家電量販店に近い位置からの潜入で、忍者服を装備している。
 と、いっても、胸元の開いたレオタードに、網タイツだが。
 バイトのファミレス制服を着たままの菫は、顔をあげて眼鏡の奥からまじまじと見つめた。
「ハンディクリーナーの話ですよ?」
「そういえば軽田さんの見本の道具、どこで見付けたやつなのですかね……」
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の音声が飛ぶと、銀子の声は震える。
「さ、さあ。私の使ってるものじゃないから」
「形は変わっても、冬美の持ってくる廃棄家電依頼だと、服を破く性質に変わりがないのが謎ですね」
 ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)の指摘に銀子は、いっしょに戦った二眼レフカメラロボを思い返した。あの時は、真理も蓮もいた。神月が、ガハハと笑う。もちろん、思考通信で。
「どーせなら見本どおりのままの方があたし好みだったんだけド、文句は言ってらんねーカ!」
「最近のはパワフルで、液体を吸い取ることもできるとか。色々こぼれても安心ですね」
 話題に乗ったふうで、菫に面前と言われて銀子は。
「やっぱりみんな、勘違いしてるわ!」
「お掃除の話ですよ?」
 菫は、金属製のお盆を小脇にかかえ、時間だとばかりに、突入口のほうへ、向き直る。
「え? ああ、そう……」
 銀子は、掌で頬を押さえた。熱い。
「まさか、戦闘前から恥ずかしいことになるなんて」
 これは、本当の独り言。振り切るように、拳に握って打ち付けると、気合を入れなおした。
 倉庫入口の鉄扉がバンと音をたて、それを合図にケルベロスたちは方々から躍り出る。
 蓮は、刀の柄に手をかける。
「見本の道具は気にしちゃダメそうなので気にしないコトにして、やっつけるのだよ~!!」
 居合に抜いて、喰霊刀で怒號雷撃。
 刀身から雷をはなち、浮いていた機械、ハンディクリーナーロボに当てる。

●廃棄家電
 雷撃と奇襲は効いたようだ。
 のけぞったような挙動に見えたのは、電源コードを支えにして本体が立っていたからである。
 ミスラは、ブラックスライムに命じる。
「『CODE≪Gleipnir≫』、丸呑みにせよ」
「『天沼矛(コード・アマノヌボコ)』、天地創造の力の一端、見せてあげましょう」
 ルティアは、煉獄の魔剣に宿した権能で、空間をかき混ぜた。
 黒き液体と渦空間は、電源コードの先端、コンセントプラグを捕える。留め置く間に、真理とマルレーネ、神月は次々と攻撃グラビティを浴びせた。
 銀子の忍者服、その網タイツが筋肉の増加に膨らむ。
「『術紋・獅子心重撃(ジュモン・レオンハートインパクト)』! 獅子の力をこの身に宿し……以下略、さあ、ぶっ飛べっ!!』
 肉弾のラッシュにハンディクリーナーが、パンチングマシンのようにしなっている。
 トラウマボールを菫が投げつけたところで、戒めから脱し、コードをしならせて跳躍した。
「自立して跳ねるように元気な機械ですか。粋がよさそうですね」
 見上げた菫の、小脇のお盆がバタバタとはためきだした。
「菫姉! 気を付けるのだよ! 盗られちゃう……」
 蓮も飛び上がって割り込もうとしたが。
「……え。服も吸われちゃうのだよ!?」
 ダモクレス化した吸引力に、自分のものと、ファミレス制服が持っていかれる。チラと振り返れば、菫の上半身はお盆に隠されているだけだった。
「エプロンと黒ストは残る不思議。おっと、男の子の接続端子が起動しそう」
 気流に上下していたものの、根本が据わってきた。今度はそれを隠すのに、お盆はかざされる。
 床にはまだ家電のくずが散らばっていた。
 真理のライドキャリバー、プライド・ワンが真っ赤にライトを灯し、残骸を跳ね飛ばしながら、スピンする。
 斜めになった車体を、直立するコードにぶつけて、ハンディクリーナーのジャンプからの着地を崩した。
 エアシューズの加速で真理がコンセントプラグを踏んづけるような蹴りをいれる。
 その後方から、マルレーネが攻撃態勢に入った。
 しかし、彼女が見たのは、エアシューズで駆け抜けた真理の背中から吸い込みをかける、ダモクレスの本体だった。
 疾走にガチャガチャいわせていた各部の火器が剥ぎ取られる。
 そして、右足のシューズが、これも武器なので引っ張られた。
 片足だけがひき戻され、前後に開脚する。
「おのれ、デウスエクス、真理を脱がすなど許さない」
 『焼霧嵐舞陣(アシッドストーム・ピンク)』を吹きかける。
「あああ、裂けちゃうのです」
 真理の股布がビリビリと音をたてると、遮るように、シャワーが浴びせられた。『降魔「天地殲滅龍」・天地覆滅の雨(テンチセンメツリュウ・テンチフクメツノアメ)』だ。
 神月は、天井付近に雨雲を呼び出した掌を握ると、グッと親指を立てる。
「今回はメディックだからヨ。任せときな」
 それは、いいのだが、自分のジャケットとショートパンツは無く、下着は破けて雨のなか、全裸で立っていた。
 マルレーネも、僅かばかりに身を覆っていたものを奪われる。
 敵から距離をとりながら嵐を吹かせ、そのまま対角に回り込む。背に背を重ねた。真理は、彼女を愛称で呼ぶ。
「マリー、助けにきてくれたのですね」
「真理を脱がしていいのは、私だけ」
 雨の成分は、少々の媚薬が混じったローションであって、背中どうしをツルツル合わせた、真理と『マリー』は、指をゴソゴソと、互いの尻たぶから秘部へと、差し入れる。
「ひゃん、マリーがいれば、脱がされても戦えるのです」
「ア、あのクリーナーに責任をとらせる。万死に値すると」

●倉庫の戦い
 ケルベロスに取り囲まれたダモクレスは、彼らを排除しないかぎり、倉庫からすらも出られないと判ったようだ。
 一人ずつの武器を狙ったのでは、続く攻撃には対処しきれない。電気コードを支えにグルグルと回って吸い込みはじめる。
「スイーッ!」
 銀子の忍者服と、ミスラの上着が飛んできた。
 当然、本人たちは、下着姿になっている。銀子の網タイツの繊維がボロボロと荒れた。胸元がバリバリと千切れるとともにバストが露わになり、吸い込み口へと流れたタイツは、ひっかかりもせず、ズーゾゾゾと入る。
 ミスラが下に着てきたレオタードは、股間をすっかり浮きだたせた『愛用』のデザインだが、なお引っ張られて食い込み、ついた白いシミを抜かれてから破かれる。
 裂け目は上半身まで達して、豊満なふくらみがまろび出た。
「銀子姉、ミスラ姉!」
 裸の蓮が、刀の柄がわを伸ばしたが間に合わず、2人はその身体ごと吸い寄せられて、ノズルに股を接触された。ずぞぞぞ。
「うあぁ!? ナカから吸われて……あぁんっ!!」
「あん、ふうあ」
 じゅるじゅるじゅる……。
 なぜか、液体を吸い込むような音をたてる。
 クリーナーの高さは2mで、両足は床につかず、2人とも、バタバタと宙をかいた。
 機械内にこそ、吸い込まれはしなかったが、引き寄せられ、2人のデカイ胸は、互い違いになるように密着する。
「こうなったら、悪鬼羅刹紋よ」
「破壊力アップといこう」
 零式忍者、銀子の胸に、獅子の紋へ足すような模様が浮かぶ。ミスラには、漢字の『正』が縦書きされ、末尾は『一』になっていた。
「ああ、しゅごい!! ……掃除機プレイ、しゃいこう……!!」
 絶頂を迎えると、『一』に1本足して、『丁』になる。
 蓮は、刀を再び鞘に戻し、両脇に差しなおすと、『喰霊殲神剣』で二本とも抜刀、居合に斬った。
 『×』字になって、ハンディクリーナーの紙パック部カバーが傷つく。
 刀を腰の後ろまで振り抜いた蓮は、そのままの勢いで、年上女性ふたりの間に、スッポリ突入する。
 四つの乳房に挟まれて、幼い顔を飛び出させた。
「は、離そうとしたのです、お姉ちゃん」
「抜き身のモノがあたってるわよ」
「いいわあ。脱出しゅるよお」
 3にんは、ひとかたまりになって、床に転がる。
 そこにまた、ローションの雨が降るのだった。
「よっしゃ、もう一発くれーハ、参戦してやんヨ!」
 神月は、斉天截拳撃で殴りにいって、ノズルと交錯する。
「おごごオ!? やベー、これ、やベーゼ!?」
「スイスイーッ!」
 吸い込み口におっぱいをやるように、突端を吸われている。
 左右いっぺんには入らなくて、かたっぽずつズラすような、なぶりかたになっていた。
「もはや、狙ってくるのは、武器でも防具でもないのですよ」
 真理は『破剣衝(ハケンショウ)』。解析により、敵の武器を破壊する格闘戦を仕掛けた。
 全裸で、左フックからの右ハイキック。
 股間は背後から、マルレーネが指で隠している。ノズルの首部分をひしゃげさせて、神月の乳首を解放させた。
 右手を反すと、こちらの指はマルレーネの割れ目に埋まっている。
「クリーナーならば、まき散らしたゴミでも吸え」
 拾った棒状のもので、トラウマボールを押し込む。
 鉄塊剣に地獄を纏わせ、ルティアが立つ。
「これで、トドメです」
 ドレスアーマーがりりしい。
 地に足を踏ん張り、上へ逃れるハンディクリーナーの本体を、ブレイズクラッシュが捉える。
 廃棄家電のボディは大きくへこみ、コードは電線が剝き出しになった。
 ダモクレスはまだゆらゆらと、抵抗するように浮く。
「く、しとめそこないましたか」
 ストッキングだけにされた菫は、それでもファミレス技を駆使し、まだ家電の残骸が散る床を、雑巾がけした。
 その加速を使って、次々とぞうきんを放つ、『雑巾手裏剣』である。
 クリーナーと雑巾。清掃道具対決は、雑巾を吸い込みつくそうとして詰まらせた、掃除機の負けであった。
「やりましたー」
 敵の被害を確認しつつも、床に手をつき腰を高く掲げた姿勢だった菫は、ルティアのドレスアーマーの下に来ていて、その長いスカートの中を見る。
「あ、だめです」
 ぱんつはいてないのだ。
「そういう装備なのです……」
 ついに爆発するハンディクリーナー。
 そういえば、ダモクレスになる前は、ゴミを詰まらせて故障したんだっけな。と、家電の心にトラウマが蘇っている気がした。
 見る影もなく、加熱したモーターが煙をあげて、落下する。

●謎解き
 ゴミ溜めパックの中から、ボロボロのファミレス服も出てきた。
「ヒールかければ、着れますかねえ。バイトのシフトに戻らなきゃいけませんし」
 菫は、いっしょに絡まっていた蓮の服も拾い上げた。男の子は、銀子に頭を撫でられているところだ。
 スカートの乱れを直しつつ、ルティアはまだ、思案顔でいる。
「ダモクレス化の謎は残ったままです」
 朽ちたノズルを、ブーツでこずく。
「借りてきては、あるんだけどね」
 銀子は見本を取り出した。
 先端部分は、穴になっていない。ラバーのような柔らかい材質で、曲面的に覆われている。
「銀子さんのそれ、普段はどういう風に使ってるんでしゅか?」
 まだ、目をトロトロさせたミスラが、聞いてきた。
「だーかーらー。私のじゃないし、冬美さんが慌てて別の機械を持って来ちゃったんだってば。ま、まあ、使い方なら知ってるんだけど」
 スイッチを入れると、ブィーンとラバー部分が振動する。
「あーン? あたし好みのやツ、あるんじゃねーノ。……マッサージャー」
 神月が、ガニ股気味にしゃがんで、ホレホレと要求するので、銀子は先端をあてるデモンストレーションを行った。
「あひイ、おほオォ!」
 あがった声に、ルティアは口を押さえて目を丸くする。
「な、謎は解けました。正義も守られましたし、私は念のため、周辺を見回ってきましょう」
 穏やかな中にも、いつもより早口でまくし立てると、出入り口の扉をバタンと閉めていく。
 倉庫内には、他にも網カゴが積み重なっており、その陰で真理とマルレーネは、つながっていた。
 トラウマボールを押し込む時に使った、棒状の道具は、ヒールをかけたら両方差し込めるバンドだったのである。
「マリー、ああ、マリーといっしょで、幸せなのですよ……」
「真理の裸は、私だけのもの。うう」
 戦っていても戦っていなくても、イチャイチャする二人であった。
「使い方は判ったのだよ。それで、その道具とボクと、どっちがいいんだい?」
 蓮がふくれている。
 というか、蓮のモノがふくれあがっている。
 菫は眼鏡をかけ直した。
「男の子の接続端子がビンビンに。常時接続になったらいけません」
 お盆を探したが、もうシフトのことは忘れていた。神月が、ガハハと声に出して笑う。
「1本じゃー足りねート、思ってたとこだゼ」
 提案では、銀子にミスラ、菫も合わせて、4人で2本。
「あああっ」
「しゅご、しゅごイイ……」
「ビンビン、ほんとビンビン!」
「おぐ、おごオ」
 倉庫に残り、2人で1本を使い回すのであった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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