ボクの種で、魔草少女になってよ!

作者:塩田多弾砲

 ……どうして……、
 彼女は、そのままさまよい続けた。
「どうして……こうなるの。わたし、ただ……普通に仲良いままでいたい、だけなのに」
 弁慶山珠美は、廃神社の縁側で泣き崩れた。誰も傷つけたくないのに……周囲が悪いなんて、思いたくないのに……。
『ああ、君は何も悪くない』
「え?」
 気が付くと、近くには……小動物らしきものが。
『ボクの名はソウ。聖王女アンジェローゼ様のお使いさ。王女様は、世界の全ての人々が笑って暮らせる世界を作りたいとお考えなんだよ』
「……わ、わたしに、何の用?」
『ボクは、『魔草少女』になってくれる女の子を探しているんだ。ボクの種を受けとってくれたら……君は、魔法の草花の力を手にした、『魔草少女』になれる!』
 その小動物は、鈴の鳴るような声で、ちょこんと座り……『種』を差し出した。
 手を伸ばしかけた珠美だが、
「で、でも……」
『警戒してるのかい?』
 ソウと名乗ったそれは、首を傾げた。
『強制はしないよ。あくまでも君の自由意思だ。やってみて、嫌ならやめてもいい。ボクらが求めているのは、君のような純粋な少女の想いなんだ』
 穏やかな口調で、ソウは続ける。
『もし魔草少女になったら……君は、何でもできる! 世界の全ての人間、それに……全てのデウスエクスや、苦しんでいる人たちとも仲良くなれる。それに、君と同じくらいの年齢の魔草少女も、いっぱいいる。彼女たちも君とおなじように、世界中の人々を幸せに、仲良くしたいって考えているんだ』
「……そう、なの?」
『そうさ。……ああ、もちろん君たち魔草少女自身も、例外じゃないよ。君たちが幸せにならなければ、世界を幸せになんてできないからね。さあ……』
 平和な世界のために、魔草少女になってよ。
 ソウの言葉を聞き。珠美は『種』を受け取ると……、
「グリーンフレッシュ、リーフシャワー! 優しい葉っぱ、世界を包め!」
『種』から生じた緑の光と、無数の葉が、彼女を包み込んだ。光が珠美の服を弾き、無数の葉が彼女の裸体を包み込む。
 緑色の葉が、彼女の新たな服となった。ミニスカートはふわっと柔らか、ワンピースとブーツとグローブ、そして髪飾り、その全てが『葉っぱ』の意匠を有していた。
 その手には、枝を模した杖が。
『素晴らしいよ! 魔草少女タマミの誕生だ!』
 祝福するかのように、ソウが口走った。

「……ってな感じで、播種者ソウが現れたみたいッス」
 ダンテが、君たちに告げる。
「ユグドラシル・ウォーの後に、姿を消してたデウスエクスの連中が、動き出したようッス。で、今回は『攻性植物の聖王女アンジェローゼ』の手下のようッスね。やつら、配下を使って親衛隊の『魔草少女』を増やそうとしてるみたいッス」
 それで……と、彼は今回の事件の詳細を語り始めた。
「こないだ、レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)さんや皆さんが参加した、カメラが変化してダモクレスになったって事件あったッスよね? その倉庫の持ち主の娘さんが、今回目を付けられて、魔草少女にさせられたみたいッス」
 彼女……弁慶山珠美の父親は、あの倉庫の持ち主、大伽鉢。
 だが、母親は夫の行いを許容できず、一年ほど前に離婚。珠美もまた、父親を好いてはいなかったので、離婚は滞りなくすんだ。
 母方の姓を名乗るも、珠美は転校先の中学校、聖ウリエル女子大学付属女子中学校で、久留間紹子と取っ組み合いの喧嘩に。
 担任教師は、喧嘩両成敗だと、互いに謝罪させようとした。が、両者ともそれを受け入れず……珠美はその場から逃走してしまっていた。
 そして、播種者ソウに目を付けられたというわけだ。

「んで、学校の方は、ケルベロスの天現寺麗奈って子が通ってるとこで、可能ならば彼女も手伝うようッス。彼女は一年生、この珠美って子は二年生なんで、今までは両者に直接の面識はなかったみたいッスが」
 そして、喧嘩の原因は……どうやら『交友問題』にあるらしい。
 喧嘩した相手の少女、久留間紹子は、珠美の親友になり、もっと親しくなりたい、恋人になりたいと告げ、その返答を求めて来た。
 が、珠美は今のままで十分と、それを受け入れなかった。『恋人? よくわからないけど、このまま普通に、友達でいいじゃない』と。
 それを聞いた紹子は、悲しげな表情を浮かべ、『ならせめて、好きか嫌いか、どっちなのかをはっきり答えてほしい』と問い詰めてきたため、
「大切な友達よ。そういう意味では好きよ。そんな、わけのわからない事を言われても……」
 正直に、そう返答した。すると紹子は、そんな煮え切らない態度をとるなら絶交すると言ってきた。
 正直に答えたのに、勝手に悪者にされたようで、怒りを覚えた珠美は……そこから喧嘩になってしまった。
「なもんだから、珠美って子は本当は誰も殺したくないし、仲良くしたいと考えてるッスね。けど……魔草少女になっちまったんで、まずは学校に向かい、久留間紹子に向かっていくはずッス」
 今回の事件は『魔草少女として完成させるため、関係者を殺害する事を実行させる』目的もある様子。この場合の関係者は、久留間紹子。
 なので、まずはケルベロスが駆けつけねばならない。そうすれば先にこちらを排除しに向かってくるので、一般人が殺される事はない。
 が、播種者ソウがいるかぎり、こちらからの声は届かない。常にこの小動物は、魔草少女の肩や頭に乗り、導いている。
 なので、戦法は『二つ』……一つは簡単。全力で攻撃し、この少女を殺害する事。
 死ぬと同時に播種者ソウは逃走を図るので、そのまま狙えばこちらも容易に撃破が可能。
「……まあ、流石に皆さん、そこまで冷酷に割り切れはしないッスよね。自分もそうッス。で、もう一つは……」
 ダンテが示唆したもう一つの方法は、播種者ソウだけを先に撃破し、少女と会話が可能になった状態で説得する、というもの。
 まずは狙撃や砲撃、奇襲などで襲い掛かり、播種者ソウのみを攻撃し撃破する。
 その後、戦闘を続行させつつ、『家出の原因となった状況を改善できる、問題を解決できる』事を説得し、納得させられれば……。
 魔草少女を撃破したのち、種を分離させて救出する事が可能になる。
「説得の内容は……この珠美って子が、久留間紹子との関係をどうしたいのかってのをアドバイスする事になるでしょうッスね」
 聞くところによると、珠美は『他者の感情、特に恋愛関係の感情にすごく鈍感』らしい。父親の影響なのか、恋愛とその先の行為に忌避感と抵抗感があり、無意識のうちにそれを避けているようにも見える……と、麗奈は告げていた。
 なので、はっきりと紹子が珠美の事を、恋人として好きだという事を知らせ、告白したのに好きとも嫌いとも返答しないのは、残酷な事だと知らせるべきだろう。いつまでも、無知な子供のままではいられないと。
 魔草少女としては、珠美は捕食、蔓触手、光花を用いる。
「まあ、こういうわけなんで。どうか皆さん、魔草少女になった珠美を助けるのは大変でしょうッスが、可能ならば助けて、そしてこんなのを作る播種者ソウを倒してくださいッス」
 これを放置すると、珠美は紹子を殺し、播種者ソウの企みに従い、平和と仲良しになるというところから、大量殺人も厭わなくなるだろう。そうなる前に手を打たねば。
 よろしくお願いしまッスと、ダンテが頭を下げた。


参加者
弓月・永凛(サキュバスのウィッチドクター・e26019)
バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)
ピュアニカ・ハーメリオン(淫蕩なる偶像の小淫魔・e86585)
九門・暦(潜む魔女・e86589)

■リプレイ

●怖くない、もう何も
『まずは最初の問題……キミを悩ませる彼女に、遙かな眠りの旅を捧げてあげよう』
『……紹子を、旅立たせるのね?』
『そうだよ。まずは、ボクの指示通りに……おや?』
 ソウの目前に、紹子が、そしてその前に立ちはだかる天現寺・麗奈(地球人の妖剣士・en0313)の姿があった。
 ここは、聖ウリエル女子大学付属女子中学校。そこの、校庭から入る事が出来る中庭。
 ウリ女付属中の制服を着ている麗奈を見て、ただの通りすがりと思った魔草少女タマミだったが……、
『あの子は、敵だ! 呪われた刀を持って、後ろには悪霊が憑いている! 彼女も旅立たせる必要がありそうだ』
 ソウの言葉を聞いて、タマミは自身の杖を構えた。
『まかせて、ソウ。仲良くなるのを邪魔する悪い子は、みんな……旅立たせてあげる!』

「……どうやら、来たようね」
 九門・暦(潜む魔女・e86589)は……闇纏いで隠れていた場所から、魔草少女を見据える。
 セーラー服を着用した、小柄な少女。彼女は眼鏡を拭き、それをかけ直した。
 そして暦とともに、他のケルベロス達もまた、その姿を現した。
「お姉様!」
「麗奈ちゃん、紹子さんを安全な所に!」ほぼ全裸の美女、弓月・永凛(サキュバスのウィッチドクター・e26019)。
「ううっ、こんな状況じゃなきゃ、写真でも撮りたいけど……、周囲の状況は、調べておいた通りみたいだね」ピンク髪のぽっちゃりケルベロス、風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)。
 二人のスナイパーの前には、
「あの子が、弁慶山珠美さん? 可愛いわね」超巨乳サキュバスのメディック、レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)。
 そして、中衛のジャマーは、
「うんっ、かわいーねー♪ ぴゅあもまほうしょうじょはすきだけどー……ま『そう』しょうじょはちょっとねー」ランドセルとベビードール姿の幼女、ピュアニカ・ハーメリオン(淫蕩なる偶像の小淫魔・e86585)。
 前衛に立つは、
「……あなたに、誰かを殺させなどしない」
 白髪赤眼の、ヴァルキュリアの美女。バラフィール・アルシク(闇を照らす光の翼・e32965)に、ウイングキャットのカッツェ。
「ええ。弁慶山さんの手は、決して汚させない」
 バラフィールの脇に、暦が並び立った。
 6名のケルベロスを一瞥したタマミは、
 そのまま跳躍し……、
『フレッシュリーフ、フラーッシュ!』
 彼女らの頭上越しに、手の杖に咲かせた花から、破壊光線を放つ! それは、麗奈と、紹子へと迫るが。
「じゃまーの、『へりおんでばいす』! しょーこおねーちゃんとれいなおねーちゃん! にげてーっ!」
 ピュアニカの叫びとともに、光が放たれ、『靴型』のヘリオンデバイスが装着された。
「ヘリオンデバイス! レスキュードローン!」
 レイファもまた、レスキュードローンのデバイスが実体化。それが光線をふせぐ盾に。
「ピュアニカさん、レイファさん! ありがとうございます! 久留間さん、こっちに!」
 紹子とドローンに乗った麗奈は。そのまま遠くへと向かっていった。
『邪魔、しないでよ!』
 蔓触手を放ち、ドローンを攻撃するタマミだが、届かない。八つ当たり気味に、ケルベロスらへと触手を振り下ろす。
 触手とその先端が、校舎の壁にぶち当たり、大きな穴を穿った。
『そうだ! そのまま攻撃し続けるんだ! あいつらも旅立たせてやるんだ!』
 タマミの肩にしがみつき、ソウはそんな事を。
 暦は、その下半身を蛇型のそれに……メリュジューヌである本性そのものに変化させた。
「……久留間さんを、庇う必要は無くなったけど……魔草少女は、かなりやっかいですね」
 呻くように、暦は呟いた。

●奇跡も、魔法も、なければ起こす
 現場から離れた、校舎の影にて。
「一体、何が……?」
「弁慶山珠美さんが、取りつかれたんです。私か、私の仲間が来るまで、ここにいて下さい」
 そう言うと、麗奈は、
「珠美さんは、必ず助けます。どうか……私たちを信じて下さい!」
 バラフィールから託された言葉を、紹子へと語りつつ……戦場へと戻って行った。

「……くっ、外れた!」
 錆次郎が、リボルバーで『SURE SHOT(イチゲキヒットウ)』を放つも、ソウはそれをかわしてしまった。
「…………」
 スナイパーである永凛もまた、妖精弓を手に狙いを付けるが……やはり、当たらない。
『グリーンアターック!』
 そしてタマミからは、緑の触手の攻撃、杖からの光線の攻撃が放たれる。
「……雷よ、絡めとれ!」
 バラフィールの放った『雷光の身体拘束(ライトニングリストライン)』が、雷が網のように広がり……タマミを麻痺させた。
 しかし、タマミが麻痺したのはわずか数秒。すぐに回復すると、蔦を伸ばし……、
『緑に変わりて、制裁です!』
 バラフィールに巻き付け、投げ飛ばした。
「くうっ!」
 レイファが何とか受け止めるが、このままではらちが明かない。焦る永凛だが、
「お姉様!」
 麗奈の声に、希望を見出した。
「……麗奈ちゃん、あなたの『魂うつし』……感じ取ったわ!」
 そして、隣の錆次郎に、そしてケルベロスらに頷いてみせる。
「……もう一度!」
 錆次郎の『SURE SHOT』が放たれた。
 それはソウに迫り……、
『はっ、莫迦なやつだね。当たらないよ』
 再び、かわされた。
 が、
「……莫迦? 錆次郎さんの攻撃は囮よ」
 かわした先、タマミの背中にしがみつき、彼女を盾にしていたソウは、
『……え?』
 永凛の気咬弾が、ホーミングし、自分に直撃したのを知った。
 タマミから弾かれたソウは、そのまま地面を転がり、校舎の壁に当たってその動きを止めた。
 それでも、逃走を試みるが。
「カッツェ!」
 バラフィールのウイングキャットが、その小癪な小動物へと襲い掛かる。猫の爪のひっかきが、ソウに引導を渡した。
『……! ソウ!』
 そして、タマミは……ソウを失い、あっけに取られていた。
「いいわ。麗奈ちゃん、紹子さんを連れてきて」
「はい!」
 永凛の指示に従い、紹子の元へ向かう麗奈。
 進み出たケルベロス達は、
『……よくも、ソウを! 許さない!』
 タマミと、魔草少女と相対した。
(「ここからが、説得の時間、ですね」)
 暦は、改めて気を引き締める。
 彼女を殺さずに撃破し、説得する。ただ倒すより難しい。
(「けれども、話し合いを諦めはしない」)
 バラフィールもまた、暦とともに並び立った。
 張り詰めた空気がそのままに、タマミと、ケルベロスとの第二ラウンドが始まっていた。

●頼らない? 頼ってくれたら嬉しいなって
 麗奈が、再び紹子とともに戦場に戻ると。
 魔草少女とケルベロスとの戦いが、終わりに近づいていた。
「さあ……いい子で大人しくしてたら、楽にしてあげますよ……」
「……え? な、何を……」
 暦の『魅惑の魔眼(ミワクノマガン)』が炸裂し、魅了されたかのように無防備になったタマミに対し、
「はっ!」バラフィールの戦術超鋼拳が放たれ、魔草少女の葉の服を切り裂いた。
「……大丈夫、珠美さん自体のダメージ、そんなに入ってないよ」
 錆次郎の言う通り、タマミ自身はそれほど傷を負ってはいない。
「……くうっ!」
 負傷よりも、精神的な疲労の方が強まり、タマミは……膝をついた。
 そんな彼女に、
「……珠美さん、一つだけ、確実に言えることがあります」
 バラフィールが、説得し始めた。
「貴女達は生きて、言葉で伝えあうことができる。でも、人を殺める事は、その手段を自ら無くす行為です」
『だから何よ! 仲良くできない相手を、あの世に旅立たせる事のどこが悪いの!』
「良くはありません。考えて、話して、そして……」
『わかりあう』ことを、『理解し合う』ことを、諦めないで!
 その言葉を、自身の想いとともにぶつけたバラフィールは、
『…………』
 珠美が、動きを止め、沈黙するのを見た。
『……私に、どうしろってのよ』
 戸惑う珠美に対し、
「……少なくとも、久留間さんと恋愛関係を築けないと思うなら、その事を正直に伝えるべきでは? そのうえで、恋愛関係が無理なら、友人として仲良くできないか。その事を話してみてはいかがでしょう」
 次は、暦が。
『……恋愛? 私と? まさか、紹子が? 嘘! そんな事、あるわけが……』
 珠美のその言葉には、明らかに『認めたくない』という、逃避と否定とがあった。
「あー、僕からもちょっといいかな」
 錆次郎が、そんな珠美に質問を投げかけた。
「僕は男だから、女の子同士の恋愛については、何か言える立場じゃないけど……少なくともこういう事は、魔法の力で解決するコトじゃなく、人の心で解決する問題だと思うよ。それに……」
 一呼吸、区切ると、
「……そろそろ、子供から、大人になるために。色んな事を知らなきゃ、だめだよ」
「!」
『大人に』、その単語を聞くと、
 珠美は激昂した。
『……大人になんか、なりたくない! あんな、いやらしい大人になんか……紹子に、いやらしい事をしろって!? ふざけないでよ!』
 不信の叫びとともに、珠美が蔓を伸ばし、ケルベロスに叩き付ける。
 それを、レイファが受け止めた。
「……女性からの責めなら、喜んで受けますよ」
 さすがに無傷では済まず、膝をつく。彼女の肌に、痛々しい傷が刻まれた。
『な、なんで……』
「なぜ? これが貴女の苦しい気持ちならば、受け止めてみせます!」
 レイファの言葉に、心動かされたように立ちすくむ珠美。
『……なんなのよ、わけわかんない。そんな事言われたって、私、何もわかんない……』
 ぶつぶつと呟く珠美に、永凛が、
「……ひょっとしたら、珠美さん。あなた……『大人になる事』『恋する事』を、『不潔』で『悪い事』と思ってませんか?」
 優しく、そう問いかけた。
『……だって、前の父さんが……紹子にも、そんな事、させたくない、し……』
 言いたくなかった事を言うかのように、返答する珠美。
 それを聞き、永凛は、
(「なるほど。だいたいわかったわ」)
 その原因を悟った。
 珠美は前の父親の影響で、『性的な行為そのものが不潔』『そんなのはいや。きれいなままでいたい、子供のままでいい』『だから、恋愛自体も不潔』と、無意識のうちにそう考えてしまっていたのだと。
 だから、恋人という深い仲になろうとしたら、避けてしまっていたのだと。
「……紹子さんの想いを受け止めるか否かは、いずれ決めなければならないでしょうね。でも、いきなりそれを決めるのは酷。……まずは、友達から始めては? 紹子さんも、それで……いいわね?」
 永凛の声に、俯いていた珠美は顔を上げた。そこには、
「……珠美」
 麗奈に連れられた、紹子の姿があった。

●最初に出会った道しるべ
「……ごめん。私、珠美の事、考えてなかった。自分の事ばかりで」
『あ、あの……』
「あなたが嫌だったら、私……友達のままでいいよ。わ、私……あなたの事、好きなの。恋人になりたかったけど……」
 恥ずかしげに、顔をそむける紹子。
「珠美に、迷惑かけちゃった。ごめん、ね」
『しょ、紹子……』
 手を伸ばし、声をかけようとする珠美だが、
 どう声をかけたものか、わからないとばかりに言葉が途切れた。
「珠美さん。紹子さんは貴女を本気で愛しています」
 レイファの言葉が、珠美を揺り動かす。
「……だから、中途半端なままではまた繰り返される事になるかもしれません。今の正直な気持ちでいいんです! 彼女と恋人になれるかどうか、それだけでも答えてあげて下さい!」
 促したレイファの言葉が終わらぬうちに、
『わ、私も……』
 珠美の口から、
『私も! 紹子の事が好き! 恋人になりたい! け、けど……』
 声がほとばしった。
『けど! いやらしいコトして、紹子を汚したくない!』
 その言葉を聞き、
「……そーれ! すっぽんぽんになっちゃえー♪」
 ピュアニカのグラビティ、『ぴゅあが脱がせてあげる♪』が炸裂した。
「え? きゃあっ!」
 ソウが与えた緑の服が、強引に脱がされた。……その下にまとっている、下着も含め。
 珠美は一糸まとわぬ、生まれたままの姿にされ……胸と下とを手で隠しつつ、しゃがみ込む。
 それとともに、『種』も分離。葉の服は茶色くしなびて、枯れてしまった。
「『いやらしいこと』ってなーに? ぴゅあ、わかんないなー」
 奪い取った下着をしまいこみ、ピュアニカが問う。
「え? そ、それは……裸になって……色々する事よ!」
「裸は、いやらしいのー?」
「そ、そうよ!」
「あら、なら私もいやらしいわけね」
 永凛が、自身の裸体を見せつける。
「じゃあ、具体的にどういやらしいのか、説明してみて」と、レイファも加わった。
 サキュバス二人とシャドウエルフ一人。彼女たちのその様子を見た錆次郎が、
「……どうやら、解決したと思って大丈夫のようだね」
 言葉をもらす。暦とバラフィールは、それに頷く事で同意した。

●私の、最高の恋人
 その後、暦とバラフィールは、周囲の破損個所をヒールし、先に帰投。
 錆次郎も、珠美のメディカルチェックを行い、異常はないことを確認し、そのまま帰投した。
 その他のメンバーたち。すなわち、麗奈を連れた永凛、レイファ、ピュアニカは……、
 紹子と、裸にコート一枚姿の珠美とともに、校舎内の一室に居た。
「ここは、『ぴゅあにかがまんぞくするまで出られないおへや』だよー?」
 と、珠美を誘うピュアニカ。
「ま、満足って……はあっ……」
 その催淫作用は、思ったより効果がある様子。
「み、見せちゃうんですか、見せちゃうんですね……あんっ! あ、ああっ!」
「ええ、見せちゃうのよ……ちゅっ」
 その部屋では、永凛が。服を脱がせた麗奈を後ろから抱きしめつつ、愛撫する様子を見せつけていた。麗奈の両胸と下腹部に手を伸ばし、永凛は、
「ほら、胸の先、コロコロしてる……おへその下も、もうこんなに、潤ってるわね……」
「はあっ、あ、ああっ……あんっ!」
 指先で摘まみ、弾き、指でなぞり、水音を響かせ……麗奈を喘がせていた。
 その後ろの壁には、麗奈の裸の写真が投影されている。
「……や、やだ……」
「すごく……えっち……」
 その様子は、珠美と紹子を赤面させていた。それでなくとも、ピュアニカからのサキュバスミストとラブフェロモンが、この部屋には充満している。経験もなく、耐性もない彼女たちが、発情しないわけがない。
「え? あっ! や、やだ……」
 ピュアニカは、珠美のコートを脱がすと、その身体に……淫紋を描き始めた。
「んふふー♪ これも、いやらしいコト、なのかなー?」
「わ、わかんない……ああっ!」
 淫紋を書き終えたら、紹子の前に立たせ、二人で愛し合わせよう。そう考えていたピュアニカだったが、
「珠美……もう、我慢できない」
 紹子が珠美を押し倒し、唇を奪った。
「あらあら♪」永凛に見つめられながら、
「しょ、紹子。だめぇ……こんな、悪いこと……あっ」愛撫を受ける珠美だが、まだ抵抗感がある様子。
「ふふっ、珠美さん……」永凛が近づくと、
「これは、悪い事じゃないわ。身体も、心も、一つになれる……とても素敵な事、よ」
 珠美の耳元で囁いた。
「そうですよ。とても、素敵な事です。実際に体験した、私が保証しますよ」
 麗奈が請け合い、永凛に抱き着いて……肌と肌をと触れ合わせる。
「それをこれから、私たちで教えてあげますね」
 そう言ったレイファが、その柔らかく大きな両胸で、珠美の身体を包み込むように愛撫を開始。
「ぴゅあも、おてつだいしまーす♪」
 そしてピュアニカは、珠美の肌へと舌を滑らせ、
 紹子とともに、珠美の身体へ舌先から、快感を送り込み始めた。
「珠美……珠美っ……!」
 永凛に麗奈、レイファ、ピュアニカ。そして紹子。
 皆の肌が、手が、指が、舌が触れただけで、珠美の肌に快感が走る。
「き、気持ち、いい……ああああっ!」
 抵抗した珠美だが、その抵抗感は徐々に消え去っていった。

 それから、数時間後。
 快感と絶頂を、数え切れないほど繰り返し体験した珠美と紹子。
 彼女らが部屋を出られたのは、真夜中過ぎだった。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月12日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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