ジュースミキサーの叫び!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した店舗にあったのは、ジュースミキサーであった。
 その場所は以前まで選りすぐりのフルーツを使ったジュース専門店であったが、近所にタピオカ専門店が出来た事で廃業に追い込まれてしまったようである。
 そのタピオカ専門店もブームが去った事で廃墟と化しているのだが、小型のダモクレスが現れたのは、ジュース専門店の方だった。
 おそらく、それだけジュースミキサーの想いが強かったのだろう。
 次の瞬間、小型の蜘蛛型ダモクレスが、ジュースミキサーに機械的なヒールを掛けた。
「ジュースゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥミキサァァァァァァァァ!」
 それと同時にジュースミキサーが、金属のダモクレスと化し、耳障りな機械音を響かせるのであった。

●セリカからの依頼
「日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)さんが危惧していた通り、都内某所にある廃墟で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟。
 この廃墟は以前までジュース専門店であったが、経営不振に陥って廃業してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、ジュースミキサーです。ジュースミキサーはダモクレスと化した事により、人型ロボットのような姿をしているようです」
 セリカが真剣な表情を浮かべ、ケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●都内某所
 ジュース専門店は、フルーツにこだわっていた。
 新鮮かつ、無農薬。
 健康にも気を使った一級品のみを使っていた。
 そのため、普通のジュースと比べて、かなり割高。
 それでも、納得の味であった。
 その証拠に、ジュース専門店は連日のように超満員。
 外まで行列が出来る程、客が並んでいたようである。
 だが、それも長くは続かなかった。
 タピオカ専門店の出店によって、ジュース専門店の人気は、地に落ちた。
 それは一時的なモノであったが、ジュース専門店に大打撃を与えるには、十分であった。
「まさか私が危惧していたダモクレスが、本当に現れるのは驚いたねー。こういう事って、本当にあるんだね。でも、まだ暴れていないようだから、今のうちに片付けてしまおうか」
 日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)がしみじみとした表情を浮かべ、仲間達と共にダモクレスの存在が確認されたジュース専門店にやってきた。
 ジュース専門店は既に廃墟と化しており、窓が割れ、壁にはスプレーで落書きがされていた。
 その影響もあって、何やら近寄り難い雰囲気が漂っており、ほんのりとカビのニオイが漂っていた。
「タピオカとジュースの対抗か。私はジュースの方が好きだから、このダモクレスにはジュース作りを続けて欲しかったわ」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、何処か遠くを見つめた。
 事前に配られた資料を見る限り、ジュース専門店を廃業に追い込んだタピオカ専門店も、ブームが去って次々と廃業に追い込まれたようである。
 そのため、辺りには幾つも空き店舗があり、まるでゴーストタウンのようになっていた。
 おそらく、タピオカ専門店の経営者達は、この人気が一時的なモノではなく、永遠に続くものだと思い込んでいたのだろう。
 かつて、白いたい焼き専門店の経営者達が、夢見たのと同じように……。
「タピオカが最近ブームになっていますけど、私はフルーツミックスジュースも好きですね。どちらが好きか、とか選べないです」
 綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)が自分なりの考えを述べつつ、暗がりをライトで照らしながら、廃墟と化したジュース専門店に足を踏み入れた。
 その途端、大量の埃がぶわっと舞い上がり、ケルベロス達の身体に纏わりついてきた。
 そこを掻き分けるようにして中を進んでいくと、一台のジュースミキサーが視界に入った。
 それは何の変哲もないジュースミキサーであったが、他に同じようなモノは見当たらない。
 その事から考えて、問題のジュースミキサーである可能性が高かったものの、一見するとダモクレスには関係が無いように見えた。
「ジュース専門店も、タピオカ専門店も、共倒れしてしまったのは悲しいわね。わたしは、どちらかと言えばジュースの方が好きだけど……」
 天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、ジュースミキサーに視線を送った。
「ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュ……」
 次の瞬間、ジュースミキサーが、耳障りな機械音と共に、激しく揺れ始めた。
 それと同時に、ジュースミキサーの形が、みるみるうちに変わっていった。
「ジュースミキサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 そして、咆哮にも似た機械音と共に、ジュースミキサーがダモクレスと化した。
 その姿はまるで、人型ロボット。
 ケルベロスに対して、激しい敵意を抱いており、今にも飛び掛かってきそうな勢いで耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達の前に降り立った。

●ダモクレス
「さぁ、行きますよ、ネオン。頼りにしていますからね」
 すぐさま、玲奈がボクスドラゴンのネオンに声を掛け、仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスのまわりを囲むようにして陣形を組んだ。
 それに合わせて、ネオンが属性インストールを発動させ、自らの属性を注入した。
「ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その事に気づいたダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達を威嚇するようにして、ビーム状のジュースを放ってきた。
 そのビームは様々なドリンクが混ざっており、まるで虹のような色になっていた。
「随分と美味しそうなニオイがするのね。だからと言って、飲みたいとは思わないけれど……。毒が入っていないという保証もないしね。今回は遠慮しておくわ」
 咄嗟にリサがエナジープロテクションを発動させ、自然属性のエネルギーの盾を形成し、ダモクレスのビームを防いだ。
 その拍子に、ダモクレスの放ったビームが辺りに飛び散り、七色のシャワーがケルベロス達に降り注いだ。
 それは普通であれば、恵みの雨。
 もしくは、それに等しいモノであったが、まったく有難みを感じる事が出来なかった。
 むしろ、何か妙なモノが混ざっていないか、警戒してしまう程のモノだった。
「ひょっとして、これってタダのジュース? でも、油断は禁物。エクトプラズムよ、敵の動きを止めちゃって!」
 その隙をつくようにして、魅麗がプラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作って、ダモクレスにブチ当てた。
「ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その途端、ダモクレスがイラついた様子で、辺りにビームを放ってきた。
 それはケルベロス達を狙っているというより、単なる八つ当たり。
 その影響で大量のジュースが店内に撒き散らされ、床までビチャビチャになった。
「さすがに、これ以上暴れられても困るわね。いい加減に大人しくしないと、石化させてしまうわよ!」
 その間に、悠姫がガジェットを拳銃形態に変形させ、足元を警戒しながら、ダモクレスを狙って魔導石化弾を発射した。
「ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ」
 その一撃を喰らったダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、石化したボディを庇うようにしながら、ミキサー状のアームを振り回した。
 それはグルグルと激しく回転しており、まるでビームのエネルギーをチャージしているような感じであった。
「またビームを撃つつもりなの? だったら、ここで阻止しないと……!」
 リサが警戒心をあらわにしながら、ゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達を癒やしていった。
「それなら、ビームを撃たれる前に、動きを鈍らせておく必要がありそうですね」
 続いて、玲奈が凶太刀を繰り出し、ダモクレスを刺し貫くと、刃から伝わる呪詛で魂を汚染した。
「ジュ、ジュ、ジュ、ジュ、ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが激しく体を震わせ、苦しそうにしながら、色取り取りのジュースを撒き散らした。
「ミキサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 しかし、ダモクレスは諦めておらず、未だにビームを放つつもりでいるらしく、ケルベロス達を狙うようにして、発射口が向けられていた。
「もうビームを撃たせる訳にはいかないの。だから壊すわ、いますぐに……!」
 次の瞬間、悠姫が一気に距離を縮め、スカルブレイカーを発動させ、高々と跳び上がって、ルーンアックスを振り下ろした。
「ミ、ミ、ミ、ミキサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その拍子にビームの発射口が破壊され、大量のジュースが噴水の如く噴き出した。
「ジュ、ジュ、ジュウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 だが、ダモクレスは、諦めない。
 大量のジュースを撒き散らしながら、狂ったようにアームを振り回し、再びケルベロス達に迫ってきた。
「ジュ、ジュ、ジュ……スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
 そのたび、大量のジュースが飛び散り、辺りに独特なニオイが漂った。
「狼の血よ、私に強大な力を貸してね!」
 それに合わせて、魅麗が獣撃拳を仕掛け、獣化した手足に重力を集中し、高速かつ重量のある一撃で、ダモクレスの装甲を破壊した。
「ミキサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 その途端、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ジュースミキサー型のミサイルを飛ばしてきた。
 そのミサイルは床に落下したのと同時に勢いよく弾け飛び、大量の破片と共に色取り取りのジュースを撒き散らした。
 それは、まるで床をキャンバス代わりにしているような感じで、奇妙な絵を描いているような感じであった。
「そちらが爆発なら、こちらは遠隔爆破です……!」
 それに対抗するようにして、玲奈がサイコフォースを発動させ、精神を極限まで集中させる事で、ダモクレスの装甲を爆破した。
 その下から現れたのは、無防備なコア部分であった。
 それは不気味な形をしており、まるで心臓の如く、不気味な光を放っていた。
「ジュウウウウウウウウウウウウウウウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!」
 しかし、ダモクレスは怯まない。
 耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に狙いを定め、再びミサイルを放とうとした。
「……って、まだ諦めていないの? 本当にしつこいなー。大人しく倒されてくれればいいのに……。だったら、これで爆発してしまえー!」
 続いて、魅麗がボルトストライクを仕掛け、自らの拳でダモクレスを殴りつけ、無防備なコア部分ごと爆破した。
「ドリンクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その途端、ダモクリスが耳障りな機械音を響かせ、激しく痙攣した後、完全に機能を停止させた。
「廃墟になっちゃったけど、一応ヒールはしておいた方がいいかしらね?」
 リサがホッとした様子で、辺りを修復し始めた。
 それと同時に、ダモクレスによって破壊されたモノが、徐々に修復されていった。
「折角だから、帰りにフルーツジュースでも飲んで帰ろうかな」
 そう言って悠姫が辺りを修復しながら、脳裏にフルーツジュースを思い浮かべるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月1日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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