●都内某所
電気カーペットが敷かれていたのは、犬小屋の前だった。
冬でも寒くないように……。
そんな気持ちで敷かれた電気カーペットは、雨の日に故障。
そのため、ワンコも困り顔。
一体、何処からツッコむべきか、そもそも何から指摘すればいいのか分からない程、困っている様子であった。
だが、それ以上に納得がいかなかったのは、電気カーペットであった。
何故……。
どうして……。
そんな言葉が頭の中をグルグルと駆け巡り、ひとつの結論に至った。
『そもそも、オレはワンコ用ではない!』と……。
そんな中、電気カーペットの前に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
『……力が欲しいか?』と小型の蜘蛛型ダモクレスが問いかけたのか、どうなのかは分からないが、とにかく機械的なヒールによって、電気カーペットは変化を遂げた。
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電気カーペットが、耳障りな機械音を響かせ、八つ当たり気味に犬小屋をぶっ壊し、民家の中に入っていった。
●セリカからの依頼
「四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)さんが危惧していた通り、都内某所に民家で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある民家。
この家の住民は随分と変わりモノらしく、近所でも有名らしい。
そのため、普通とは違う事をしているようだが、あまり深い意味はないようだ。
「ダモクレスと化したのは、電気カーペットです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは電気カーペットがロボットになったような姿をしており、ケルベロスを敵として認識しているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
ワンコにとって、電気カーペットは馴染みのないモノだった。
それまでは毛布にくるまっており、とてもヌクヌクだった。
それだけで幸せ、夢心地。
他には何もいらない。
何ひとつとして……。
だから電気カーペットは、必要なかった。
しかし、飼い主達は、そう思っていなかった。
家の中から延長コードを伸ばして繋ぎ合わせ、犬小屋の中まで続くソレは、ワンコにはとても奇妙に見えた。
この時点でツッコミどころが満載ではあるものの、ワンコに拒否権はなかった。
例え嫌だと思っても、『ワン!』しか言えない。
こちらが必死に訴えかけても、飼い主達に都合よく解釈されてしまうため、ワンコの意志は伝わらなかった。
だが、ワンコの予想に反して、電気カーペットはヌクヌク。
その上、冬の日には、大活躍ッ!
しかし、幸せな一時は、永遠には続かなかった。
延長コードを繋ぎ合わせたのがいけなかったのか、それとも別の要因があったのか分からないが、とにかくショート。
以前から微妙にビビッときていたため、甘噛みしていたのが原因かも知れないが、ハッキリとは分からない。
それでも、ワンコは思った。
そもそも、これは犬用ではない、と……。
「犬の為に電気カーペットを買ってあげるのは、愛犬家だったのかしら? まぁ、電気カーペットが壊れてしまったら、流石に犬も困るでしょうけど……」
そんな中、天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、仲間達を連れてダモクレスの存在が確認された民家にやってきた。
その民家は、見るからにサイケデリック。
極彩色の壁が、見るモノを禁断の世界に誘っているような感じであった。
どうやら、家主は芸術家を名乗っているようだが、近隣の住民でさえ作品を見た者はいないようである。
だが、家の外観を見ただけで、どんな芸術を得意としていたのか分かってしまう程、アレな感じの建物であった。
おそらく、家主の芸術は相手を選ぶ部類のモノ。
そのため、一般人には理解が難しいモノだった。
「それ以前に、電気カーペットを外に出すべきではないよね。しかも、延長コードを繋ぎ合わせて、犬小屋まで伸ばしているし……。こんな事をしたら、雨の日に故障するくらい分かりそうな気がするけど……」
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、呆れた様子で溜息を洩らした。
幸い、辺りに人影はない。
おそらく、この家の住民と関わりたくはないのだろう。
一家全員ヤバイ奴のレッテルでも張られているのか、まるで結界でも張られているかの如く勢いで、誰も近づこうとしなかった。
「確かに、電気カーペットをペット用に使う事って無いですよね。電気カーペットは汚れや水分に弱いですから、当然でしょうけど……」
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が、何処か遠くを見つめた。
事前に配られた資料を見る限り、この家の住民は揃いも揃って変わり者。
そう言った意味でも、マトモな考え方をしていないのかも知れない。
それを裏付けるような事が、資料には幾つも書かれていたため、普通に考えて結論を出す事自体、間違ったかも知れない。
「それに、犬は普通の毛布で十分よね。やっぱり電気カーペットは人間用だと思うわ」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、自分なりの考えを述べた。
実際にワンコは毛布で、満足。
まるで心の友の如く、大事にしていたが、あの日突然取り上げられた。
それはワンコにとって、ショックな出来事。
いくら悲しんでも、家主達に気持ちは伝わらなかった。
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した電気カーペットが、耳障りな機械音を響かせ、犬小屋をぶっ壊した。
それはワンコにとって、第二のショック!
毛布を奪われた時以上のショックであった。
『えっ? あれ? 何で家がないの? 壊れたの? まさか、この残骸がコレ?』と言わんばかりにパニックモード。
そのため、マユゲをハチにさせるような表情を浮かべたまま、ケルベロス達を二度見であった。
●ダモクレス
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超極太のビームを放ってきた。
そのビームは、超ヌクヌク。
しかも、適度に暖かかったため、肌寒さを感じる外では、有難く思えてしまう程のビームであった。
傍にいたワンコも、あまりの暖かさに、ホンワカ気分。
先程の事など忘れて、ウットリした様子で、幸せそうな表情を浮かべていた。
「随分と気持ちよさそうなビームだけど、さすがに放っておく訳にはいかないか。戦いの巻き添えを喰らって、命を落としても困るしね」
すぐさま、司がワンコを抱きかかえ、ダモクレスの攻撃範囲から離れた。
その間、ワンコは、ずっと困り顔。
どうしていいのか分からず、きゅーんであった。
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
だが、ダモクレスの狙いは、ケルベロスのみ。
その事を証明するようにして、ダモクレスが再びビームを放ってきた。
しかも、その攻撃は、先程よりも強力ッ!
超ヌクヌクではあるが、あと少しで超アツアツのレベルであった。
それは絶妙なバランス。
ある意味、匠の技。
そのこだわりにどんな意味があるのか分からないが、とにかく真似できない加減であった。
「さすがに、この攻撃を喰らったら、火傷しそうね。……自然の属性の力よ、仲間に加護の力を与え給え!」
その攻撃に気づいたリサがエナジープロテクションを発動させ、自然属性のエネルギーで盾を形成した。
間一髪でビームを防ぐ事が出来たものの、弾け飛んだエネルギーが、まるで花火のように見えた。
そのため、ワンコもウットリ。
キラキラと輝く光を見て、再びウットリであった。
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ヌクヌクのアームを伸ばしていた。
そのアームは怒りのせいで、アツアツ寸前ッ!
必ず殺すという強い意志を感じるため、ビームよりも危険なモノに感じられた。
「まるで焼けた棒だね。気のせいか、電気カーペットの要素が無いような気もするけど……。そんな事を言っている場合じゃないか」
司が何かを悟った様子で、薔薇の剣戟を繰り出し、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「デンキィィィィィィィィィィィイカァァァァァァァァアペットォォォォ!」
その影響で、ダモクレスがパニックに陥った様子で、ブロック塀や、アスファルトの地面を破壊した。
おそらく、ダモクレスには、そのどれもがケルベロスに見えているのだろう。
しかし、幻惑されている影響で、ケルベロスには当たらない。
それどころか、ワンコの方が、大ピンチ。
ワンコが逃げる場所に、ダモクレスが攻撃を仕掛けてくるため、『え? なんで!? どうして、こんな事になっているの!? ヘ、ヘルプ! 誰かヘルプ!』と言った感じでパニックモード。
この世の最後と言わんばかりに、瞳に涙を浮かべていた。
「……大丈夫! 絶対に守りますから……。安心してください」
すぐさま、悠姫がワンコを守るようにして陣取り、プラズムキャノンを発射した。
それと同時に、圧縮したエクトプラズムで出来た大きな霊弾が放たれ、ダモクレスの装甲を吹っ飛ばした。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスは全く怯んでおらず、コア部分を剥き出しにしながら、ヌクヌクのアームを振り下ろした。
その拍子にアスファルトの地面が砕け、大量の破片が飛び散った。
「……その腕は邪魔ですね」
紅葉がキリリとした表情を浮かべ、月光斬を繰り出し、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスの左腕を斬り落とした。
「デンキカーペットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、電気カーペット型のミサイルを飛ばしてきた。
それは風に乗って電気カーペット型のミサイルが左右に揺れ、アスファルトの地面に落下した。
その途端、電気カーペット型のミサイルが弾け飛び、大量の破片がケルベロス達の身体にザクザクと突き刺さった。
「大地に眠る死霊達よ、仲間を癒してあげて!」
すぐさま、リサがゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達を癒やしていった。
そのおかげで大事には至らなかったものの、次も大丈夫であると言う保証はなかった。
「デンキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それを目の当たりにしたダモクレスが危機感を覚え、再びミサイルを放とうとした。
「もう二度とミサイルを撃たせる訳にはいきません……!」
即座に紅葉が尋常ならざる美貌の呪いを放ち、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「デ、デ……デンキィィィィ……ィィ……ィィィィ……」
その影響でダモクレスは動く事が出来なくなり、悔しそうにボディを震わせた。
だが、発射しようとしていたミサイルは、爆発寸前。
その事に危機感を覚えたダモクレスが、必死になってミサイルを発射しようとした。
「まだ動くつもりなの? だったら、石に変えてあげるわ」
その間に、悠姫がガジェットを拳銃形態に変形させ、ダモクレスに魔導石化弾を撃ち込んだ。
「カーペットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それと同時にダモクレスのボディが石化し、ミサイルの発射口が中途半端な形で石化した。
その影響でミサイルが中途半端に発射され、無防備なコア部分を巻き込むようにして爆発した。
そして、ケルベロス達はダモクレスによって、破壊された部分をヒールで修復し、ワンコに別れを告げて、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月25日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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