●都内某所
廃墟と化した民家に、家庭用プラネタリウムがあった。
それは購入してから、ずっと押し入れの中で眠っていたモノ。
理由は簡単。
使うのが、面倒だったから……。
元々、この家庭用プラネタリウムは、忘年会のビンゴで手に入れたモノ。
興味も無ければ、欲しかった訳ではない。
そのため、放置。
この家に来た時から、押し入れの中に放置である。
それは民家が廃墟と化した後も、変わらなかった。
その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れ、家庭用プラネタリウムに機械的なヒールを掛けた。
「カテイヨウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した家庭用プラネタリウムが耳障りな機械音を響かせ、民家の壁を突き破り、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「六星・蛍火(武装研究者・e36015)さんが危惧していた通り、廃墟と化した民家で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、廃墟と化した民家の押し入れ。
ここにあった家庭用プラネタリウムが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、家庭用プラネタリウムです。家庭用プラネタリウムはダモクレスと化した事で、ロボットのような姿をしています。今のところ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われてしまうでしょう」
セリカが真剣な表情を浮かべ、ケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
六星・蛍火(武装研究者・e36015) |
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471) |
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488) |
●都内某所
本来ならば、天井に美しい星々を映し出すのが、家庭用プラネタリウムの仕事であった。
だが、箱の中に入ったままでは何も出来ない。
一度も開封される事なく、梱包されたまま。
まるで牢獄、自由はない。
しかも、それは家庭用プラネタリウムの意志ではない。
持ち主が必要としなかったから……。
もっとハッキリ言ってしまえば、興味を持たなかったから……。
……それが現実。
悲しい事だが、避けられない現実であった。
それ故に、願った。
自分が活躍できる機会を与えてくれ、と……。
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に出現するとはね。少し驚いたけれど……。まぁ、これも宿命かも知れないわね」
六星・蛍火(武装研究者・e36015)はセリカから配られた資料を参考にして、仲間達と共にダモクレスの存在が確認された民家にやってきた。
その民家が廃墟と化してから、しばらく経っており、大量の植物が壁を這うようにして伸びていた。
蛍火はハンズフリーライトを照らしながら、廃墟と化した民家に足を踏み入れた。
その場所は、しばらく誰も出入りしていなかったのか、ケルベロス達を迎え入れるようにして、大量の埃が舞い上がった。
「これって、すっごい都会の人向けアイテムだよねー。私が今住んでるとこ、めっちゃ田舎だから、夜になったら外出て空見上げらすぐだけど……。それとも、真っ暗だと眠れない人向けのアイテムだったのかな? それにプラネタリウムって解説があってこそだと思うから、逆に星図だけ見ても……って感じだったのかもねー」
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が口元を押さえながら、何やら察した様子で言葉を発した。
どちらにしても、家庭用プラネタリウムの所有者にとっては、不要なモノ。
押し入れの中にしまわれ、存在すらも忘れられたモノだった。
その程度のモノだったため、家庭用プラネタリウムの所有者は、手に入れた事も、家にあった事も忘れていたようである。
それ故に、家庭用プラネタリウムの怒りも、ケタ外れ。
そう言った意味で、ダモクレスと化してしまったのも、無理はない。
「家庭でプラネタリウムを眺めるのって、とても楽しそうなのに……。放置されるなんて、本当に勿体ないわね」
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、残念そうに溜息を漏らした。
もしかすると、家庭用プラネタリウムの所有者は、その素晴らしさを知らず、興味すら持たなかったのかも知れない。
その結果が、これなのだから、実に悲しい結果である。
だからと言って、このまま何もせず、街を混乱に陥れる訳にはいかなかった。
「家の中で綺麗な光景が見られるのは、素敵なものだとは思うけど、やっぱり興味ない人にとっては、邪魔な物でしかないのかな?」
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、何処か遠くを見つめた。
おそらく、家庭用プラネタリウムの所有者が、家庭用プラネタリウムに興味を持つ事さえ出来れば、状況を一変させる事が出来ただろう。
しかし、現実は残酷。
まったく興味を持とうとしなかった。
それが、いかに素晴らしく、感動的なモノであっても、家庭用プラネタリウムの所有者が興味を持たないのだから、価値を理解する事が出来なかった。
「素敵なアイテムだとは思うけれど、部屋を真っ暗にする時って、就寝時ぐらいしかないよね。だから逆に使う機会が無かったのかな? 就寝時はグッスリだから、天井の星を見る余裕もないとか……」
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、何やら考え事をし始めた。
だが、考えても、答えは出ない。
幾つもの可能性を導き出す事が出来たものの、それが答えであると断言する事は出来なかった。
それはあくまで予想であって、答えではない。
その気持ちを知るのは、家庭用プラネタリウムの所有者のみ。
その本人がいないのだから、ここで答えが出る訳がない。
「プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した家庭用プラネタリウムが、耳障りな機械音を響かせ、押し入れを突き破って飛び出した。
それはダモクレスにとって、新たな誕生。
ダモクレスはロボットのような姿をしており、一気に廊下を駆け抜け、ケルベロス達に迫ってきた。
●ダモクレス
「こんな状況でも星を見せてくれるとは……。なかなかサービス精神が旺盛な気もするけれど……。のんびり眺めている余裕はなさそうだね。ほら、トト。わかったら、仕事だよ。興味があるのは、いい事かも知れないけれどね」
オズが天井に映し出された星座を一瞬だけ見た後、ウイングキャットのトトに声を掛けた。
トトは、しばらく天井の星座に見とれていたが、オズの声に気づいて、ダモクレスと距離を取った。
その間も、天井に煌めく星々がキラキラと輝き、トトを誘っていたものの、再び興味を示す事はなかった。
「さぁ、行くわよ月影。頼りにしているわね」
そんな中、蛍火がボクスドラゴンの月影に声を掛け、サイコフォースを発動させ、精神を極限まで集中させる事で、ダモクレスを爆破した。
その拍子にダモクレスの装甲が宙を舞い、天井にザクッと突き刺さった。
それはダモクレスにとって、ショックな出来事。
キラキラと輝く満天の星々が、その破片によって穢された。
「プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その事にショックを受けたダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、流れ星にも似たビームを放ってきた。
それはキラキラと輝き、とても美しく、思わず見とれてしまう程だった。
しかし、実際には危険なビーム。
少しかすっただけでも、身体の一部を持っていかれそうになる程、強力なビームであった。
「自然を巡る属性の力よ、仲間の盾となりなさい」
すぐさま、リサが自らの身を守るため、自然属性のエネルギーで盾を形成した。
次の瞬間、ダモクレスの放ったビームが、自然属性で出来たエネルギーの盾に当たり、その反動でリサが仰け反るようにして後退した。
「プラネタリウェェェェェェェェェェェム!」
そこに追い打ちを掛けるようにして、ダモクレスが星型のアームを振り回し、一気に距離を縮めてきた。
「わわ、藍ちゃん! この状況はマズイよ、最悪だよ! でも、頑張らなきゃ! だから逃げようとしないで! 私を前に押したって、意味がないからね!」
ことほが身の危険を感じつつ、ライドキャリバーの藍に声を掛けた。
だが、藍は逃げ腰。
まるで越後屋チックなノリで『つまらないモノですが、お納めください』と言っているような感じになっていた。
「プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
しかし、ダモクレスにとっては、些細な事。
『みんな殺す! ブチ殺す!』の精神で、微塵も迷いが無かった。
その気持ちを表すようにして、触れたモノすべてをブチ殺し、自らの力と恐ろしさをケルベロス達に対して見せつけた。
「本当に芸がないわね、真正面から突っ込んでくるなんて……。ても、いいわ。この方が狙いやすいし……」
悠姫がダモクレスに狙いを定め、ガジェットを拳銃形態に変形させ、魔導石化弾を発射した。
次の瞬間、魔導石化弾がダモクレスの右腕に命中し、その場所から急激に石化していった。
「プ、プ、プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
それでも、ダモクレスは諦めておらず、耳障りな機械音を響かせ、家庭用プラネタリウム型のミサイルを飛ばしてきた。
「ほ、ほら、だから言ったでしょ! 私を差し出したって、何も変わらないって! これが、その証拠! ほら、酷い事になっているでしょ! ……って、言っている場合じゃなかった! 早く避けなきゃ!」
ことほが危機感を覚え、藍と一緒にミサイルを避けた。
その途端、ミサイルが次々と爆発を起こし、天井や壁、床などを破壊していった。
そのため、辺りは瓦礫の山。
まわりの景色が見えるほど、壊れて、壊れて、壊れまくっていた。
「みんな怪我はない? すぐに癒してあげるから、少し待っていてね」
すぐさま、リサがゴーストヒールを発動させ、大地に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、ことほ達を癒やしていった。
「随分と硬い身体をしているようだけど、これでかち割ってあげるわ!」
それに合わせて、悠姫がスカルブレイカーを発動させ、高々と跳び上がって、ルーンアックスを振り下ろした。
その拍子にダモクレスの装甲が弾け飛び、無防備なコア部分があらわになった。
「プ、プ、プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
それはダモクレスにとって、屈辱的な事。
途端に怒りが爆発し、再びミサイルがぶっ放された。
それは先程よりも強力で、狙いは正確。
しかも、爆発したのと同時に、大量の破片が鋭い刃となって、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「弱点を見抜いたわ。これでも食らいなさい」
それと同時に、蛍火が破鎧衝を繰り出し、高速演算でダモクレスのコア部分を見抜き、痛烈な一撃で破壊した。
「プラネタリウムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その一撃を喰らったダモクレスが、耳障りな機械音を響かせながら、身体のあちこちを爆発させ、真っ黒な煙を上げて崩れ落ちた。
それっきりダモクレスは動かなくなった。
「廃墟は一応軽く片づけておこうか。このまま放っておくと、また別のダモクレスを生み出しそうだしね」
そう言ってオズがヒールを使って、壊れた部分を修復し始めた。
その足元にはダモクレスだった家庭用プラネタリウムが転がっており、カラカラと悲しく音を響かせた。
それが何の音なのか分からなかったが、オズはヒールを使って家庭用プラネタリウムを修復した。
その事を喜んでいるのか、家庭用プラネタリウムが、とても喜んでいるように見えた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2020年9月21日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|