強襲屍隷兵製造拠点~ジュモーの歪な影

作者:のずみりん

 その光景はあまりにも冒涜的だった。
 天然記念物にも指定された豊かな植物群の地下に築かれた巨大施設は、人体という部品の倉庫であり、それをくみ上げる製造施設でもある。
『第307次工程を開始』
 機械の腕が水槽から運び出すパーツは、システマチックに組み上げられ、薄緑の溶液に満ちたカプセルに沈めらていく。
 無数の腕と凶器を繋ぎ無造作に突き立てられた人体。
 欠損した竜人めいた上半身を同じような下半身へ雑に詰め込んだ半竜人。
 虎と牛と猿と猛禽、あらゆる獣の最強を無計画により合わせた怪人。
 それは背徳の生産工場だった。
「おぉ……ぉ……」
「うー……うー」
 そして生み出された背徳は神造デウスエクスとして産声を上げ、零れ落ちる。
『第306次工程を出荷。歩留まり率……』
 カプセルを割り出でた姿が、倒れた込んだ床が動き出す。それは担架のように屍隷兵と化した死体を運び、役割を終えたカプセルを片付けていく。
 破片を別の機械が掃除すれば、次の工程のカプセルが設置される。
『システム、記録終了』
 その淡々と続くループに、人道は、命は、ただ部品の一つに過ぎなかった。

「捜索チームの尽力でジュモーの足取りが……いや、足取りの手がかりが発見された」
 リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は一度言い直しつつ、集まったケルベロスたちへ東北地方の地図を指し示した。
「暴食機構グラトニウムの行動範囲からダモクレス……ジュモー・エレクトリシアンの足取りを探索していたティーシャやシフカが割り出してくれたなかに当たりが一つ見つかった」
 ここだ、と指し示すのは宮城県沖、周囲3kmほどのひょうたん型の無人島。
「宮城県、八景島……神奈川のではない、こちらは『やけいじま』と読むそうだが、ここの地下に大規模な屍隷兵の生産施設が見つかった」
 マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が突き止めたという調査映像に映し出されるのは拠点の一部、生命を辱める保存施設であり、生産施設。
「……おそらくこれもまだ序の口だろう。この生産施設は無人でジュモーや攻性植物は確認できなかったが、製造されている屍隷兵はユグドラシル・ウォーで見かけた個体だった。つまり……敵は近い」
 おそらくは拠点の奥か、地下か、ジュモーの本拠地がある可能性は高い。
 リリエは映像を止め、ケルベロスたちに呼びかけた。
「この生産施設を破壊し捜索すれば、ジュモーの足取りもきっと掴めるはずだ。頼むぞ、ケルベロス」

 八景島は本土から2kmほど離れた無人島であり、今回は奇襲のために本土から隠密に上陸する事となる。
「マークが発見した出入口は島の中央、ちょうど瓢箪の『くびれ』の部分だ。ただ秘密基地のセオリー通り、他にも複数の入り口があると考えた方がいいだろう。制圧、情報収集のためにも早めに抑えた方がいいだろうな」
 生産施設は無人のオートメーション施設であり、生産された屍隷兵以外の護衛戦力はないが、おそらくは襲撃を受けた時の備えはあるはずだとリリエは警告する。
「屍隷兵に手こずっていると情報を『処分』される恐れもある。生産された屍隷兵は多くが休眠状態で保存されているようだし、動き出す前に一掃すれば探索もしやすくなるはずだ」
 無人と言えど敵中。何が起こるかわからない以上、迅速な行動を心掛ける必要があるだろう。

「施設の破壊と十分な情報が集まったら、無理はせず一度島から脱出してくれ。この作戦でジュモーの拠点を割り出せれば、次こそは長い因縁に終止符を打つ時だ」
 リリエは指し示した指をにぎり、拳と変えてつぶやいた。


参加者
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)
神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)
キルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
ナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)

■リプレイ

●八景島レイドアタック
 小八景島の方角より低空をケルベロスは飛んだ。
「ま、オレは最強の忍者だから大丈夫だけどな」
「今のところ反応はないわね……そろそろよ。着陸準備」
 未だ不気味に沈黙した小島は神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)の螺旋隠れと低空飛行に切り替えた『ジェットパック・デバイス』のおかげだろうか。
 その首筋でなびくマフラーに風速を確認し、マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)が牽引ビームを切り離すなか、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)は降着体制に移った。
「やっとこの時がきたか。R/D-1、索敵情報リンク」
『システム、記録情報を送信』
 偵察情報を元に地表すれすれで『メインブースター』を制動。天然記念物の暖地性植物群落を避けながら、くびれた島の中央に黒鋼の巨体が着地する。
「そうか、貴様も因縁を追ってきたか」
「まぁな。ダモクレスの屍隷兵製造拠点……延々と探し続けてきた相手だ」
 飛びぬけて巨大なレプリカントのマークと、飛びぬけて小柄なドワーフのナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)。対照的な二人は共通の目的に向けて並び立った。
 求める敵はこの下にいる。
「では急ぐとしようか。他の探索チームも探索を開始している」
 ダモクレスの展開した空間迷彩を看破して拠点へと踏み込む中、キルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)が展開する『マインドウィスパー・デバイス』から次々と送られてくる情報。
 五班に分かれたケルベロスたちだが、拠点内部は予想以上の広大さだった。
「この規模……島のほぼ全域が生産拠点と化しているわ」
「生態系への影響が心配ですね。早々に処理してまいりましょう」
 アリアドネの糸を伸ばすマキナに頷き、眼鏡状に展開した二振りの『ジャイロフラフープ・オルトロス』から、テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)は捕えた敵影に眉をひそめる。
 南北に1km弱の宮城県八景島は『ゴッドサイト・デバイス』の有効半径にほぼすっぽりと収まっている。
 逆に言えばその程度の狭さにも関わらず、この敵数は。
「生産拠点は複数層、それも極めて広大に建造されていると推測されます」
「この数が動き出すとまずい。地上が抑えられているうちに叩くぞ」
 ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)の分析に、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)が頷く。
 不気味に沈黙した地下の光点を目指し、ケルベロスたちは歩を速めた。

●うごめくものと、足りぬもの
「キィッ?」
 格納庫のドアに手をかけた『オーバースペック』型屍隷兵の腕が飛んだ。
「おっと、ちぎれちまった……しっかり縫ってもらえれば良かったのにな」
 突き立てた『指天殺』の指を抜きながら、柧魅は戦闘態勢に移行する屍隷兵を蹴り飛ばした。
「今のうちに、休眠中の中を!」
「『竜頭』と『ケダモノ』もくるぞ、気をつけろ!」
 屍隷兵の残る腕工具腕が振り回すチェーンソーを如意棒に受け、マキナは突入するテレサたちを背に扉を守る。
 さらにキルロイの声と銃声とともに姿を現す新たな異形。調査作業を切り上げたマークのシステムが戦闘態勢に移行する。
「願わくば救済たらんことを……SYSTEM COMBAT MODE」
「救済を、か」
 マークたち突入するレプリカントを一瞥し、キルロイはその祈りにわずかに目を細めた。
 ダモクレスと、其に歪め作られしもの……思うところも多くある。だが、その複雑な湧き上がる思いは慣れないが、慣れたものだ。
「OPEN FIRE」
 マークの腕部『M158』ガトリングガンが駆動音をうならせ、保護ケースを打ち抜いていく。保護液がほどよく抜けたところで叩き込まれるナパームミサイルは瞬く間に格納庫を屍隷兵の火葬場に変えた。
「……安心しろ、奴の首級は必ずお前さんらの墓前に添えてやる」
 熱気を背負い、キルロイは迎え来る屍隷兵に立ちはだかる。
 その共生するオウガメタルが放つライジングダークの輝きは、彼の内を内よりのものか。絶望の輝きに後続の屍隷兵たちが足を止めた瞬間、ケダモノ……『フラッグシップ』型屍隷兵の歪な頭が凍り砕け散った。
「同感だ。奴らを滅するまで……迅速にいく」
 なおも暴れるフラッグシップに『バスターライフルMark9』を向けたまま、ティーシャは、『殲虐の九人姉妹』の末妹はハイエンドの放つ暴風をかわして駆ける。
「格納庫は?」
「『ハイエンド』タイプだったな。もう片付いてる」
 キルロイの問いにティーシャが答えると同時、扉の向こうからの熱。
 デットヒートドライブで飛び出すライドキャリバー『テレーゼ』と、それに捕まるテレサとピコ。二人がかり、遅燃性のナパームミサイルで念入りに火葬された屍隷兵たちは匂いすらもう残っていない。
「熱っ……癒しは要るか?」
「閉鎖環境で放熱が追いつきませんでしたが……問題ありません」
 ともすれば輝きすら見える髪の熱量に身を引くナターシャに、ピコは離れてくださいと警告すると掌を引き出す。突き出されるオーバースペックのドリルアームを、掴む。
「疑似螺旋力ジェネレーター、強制排熱を行います」
「!?」
 驚くのも一瞬、屍隷兵の身が炎と燃える。
「うわえげつねぇ……」
「ですが効率的ではあります」
 柧魅も思わずうめく地獄絵図。その燃焼は疑似螺旋力ジェネレーター、輻射熱によるピコの体内熱の全てを螺旋経由で転嫁された『螺旋排熱掌』のもたらした結果。
 マキナの紅蓮大車輪が残る屍隷兵を殴り倒す頃には、オーバースペックも格納庫内の屍隷兵と同じ灰と昇天していた。
「この階層はこれで最後だったか? ……相変わらず惨い真似をしやがる」
 残像剣が解体したハイエンドに短く黙祷したキルロイの確認に、テレサがうなずき、柧魅はやれやれと肩をすくめた。
「完全制圧できるのかね、まだ先は長そうだぜ」
「だが進まねばならん。この階層にも奴の気配はなかった」
 ナターシャの決意と足音が、どんどんと地下を叩く。表層部では製造施設、地下では格納庫を数多く破壊してきた一行だが、未だ全貌を見せぬものもいる。
「グラトニウム……」
「まだ下方にも反応がある。徹底的に追うぞ」
 アリアドネの糸をまくマキナに頷き、ティーシャは『ゴッドサイト・デバイス』が地下に示し続ける敵反応を指示した。

●『アイツ』はどこだ?
 そろそろ数えるのもうんざりする、十何体目かのオーバースペックの肉体が気咬弾に食らいつかれ、倒れ伏していく。
「ここは……地下倉庫の電気室? 何か調べがつくといいのだけど」
「R/D-1、どうだ」
『システム、解析を開始。エクスガンナーシステムをバイパス、接続試行……』
 マキナに呼ばれ、マークと内蔵された『R/D-1』戦術システムが部屋の制御コンソールを分析していく。
 レプリカントたちが更なる深層への道を探すなか、柧魅は見張る部屋の外をぐるりと見渡した。
「なんか……ちょっと雰囲気変わってきてるか?」
 無意識に『朱灯』の筋を指でなぞり、柧魅は感じたその違和感を分析する。
「神門殿も感じたか」
「おぅ、これが最強の忍者センスって……そうか」
「そうだ!」
 共感を示すナターシャと柧魅、二人の気づきの不意の声が重なり響く。そうだ、ここには。
「植物だ、この階層から急に減ってるぜ」
「うむ。屍隷兵もあの多腕型だけで他の攻性植物合成型はいなくなった。まるで家主が変わったようにな」
 家主、というナターシャの表現は言いえて妙だった。これまでケルベロスたちは、この施設をジュモー・エレクトリシアンの管理する施設と見て、彼女を追うために探索を進めてきた。
 だがそうではない……いやジュモーの管理施設であったとして、同時に彼女一人の者でなかったとしたら。
「テレサ、敵の配置は!? 手が空いたら調べてくれ!」
「承りました。ジャイロフラフープ、デバイスモード……これは」
 テレサはルーペのように、二基一対の『ジャイロフラフープ・オルトロス』の中空を周囲へ向ける。
 焦点を合わせるように回転させ、目を凝らしたとき。
「反応ありました。天井の高さから推測して一、二階層下……巡回の屍隷兵とも、格納庫で休眠中のとも異なる動きをするものが二つ、三つ」
「グラトニウムか、あるいは……」
「行けばわかる。そろそろ解析も終わるだろう」
 思案をめぐらすナターシャに、やんわりとティーシャは言うと武装を調整する。
 次か、その次か。長い探索もそろそろ終わりが近そうだ。

●地の底に居た者
「何だ貴様ら!?」
「何だここは!?」
 拠点の最深層で木霊した声は、奇しくも身構えたティーシャと端を同じくしたものだった。
「ここが拠点中枢で間違いありません。ですが、これは……」
『ピグマリオン』サブノートの地形データを確認したピコも戸惑いを隠せない。
 最奥に待っていたのは、この明らかに異なる技術の『研究施設』と、それを挟んで対峙する、フード姿の魔術師然とした指揮官型ダモクレス。
「おい、攻性植物どこいった!」
「攻性植物……? ハッ!」
 指さし詰問する柧魅をそのダモクレスは鼻で笑った。
 『研究施設』は無数の魔法陣と得体の知れない儀式の痕跡。
「攻性植物? ふン、あんな生臭い連中がなんだというのだ! ジュモーめ、『攻性植物の技術を取り込んだ迷彩は完璧だ』などとぬかして御覧のあり様ではないか」
「ジュモーとは別の指揮系統のダモクレス……? しかし、これは」
 テレサが首を傾げた奇妙な実験設備は一目見ても攻性植物のものでない。
 実験設備に走る光は魔術師型ダモクレスの装甲を走る青緑。それは液晶ディスプレイのような作りになっているのだろうか?
 床を、壁を、ルーン文字や得体のしれぬ魔術紋様は明滅し、対峙する双方をイルミネーションのように照らし染め、ジュモーとは違うと殊更に主張を続けていた。
 更に魔術文様の一部が、異空間へと続く扉へと変化していくと……。
「この拠点まで突き止められたのならば、ジュモーの命運はもはや風前の灯。ダモクレスを裏切った背信者だとしても、奴の研究成果には価値があり泳がせていたが、もはやそれも無用。お前達が、ジュモーの真の拠点を突き止める前に、奴の全ての研究成果は、この『機界魔導士ゲンドゥル』が根こそぎ奪いとり滅ぼして見せるとも。では、さらばだ」
「SYSTEM WAKE UP!」
 ジュモーを裏切り者と呼んだゲンドゥルが、振り上げた杖の円盤が紋様を描くより早く、マークの『XMAF-17A/9』が火を噴いた。だがわずか、届かない。
「テレサ!」
「モード『斬環の末妹』!」
 影より飛び出した甲冑の機械騎士がフォートレスキャノンに大盾を構え踏み出す間隙へ、二人のレプリカントはアームドフォートを緊急合体させる。
 このダモクレスを手放しにさせるのは、まずい!
「「切り裂け!! デウスエクリプス!!」」
「死ぃいいいねえええええ!」
 ティーシャの『アームドフォートMARK9改』より、巨大な質量弾と化して叩きつけられる『ジャイロフラフープ・オルトロス』。
 分厚い大盾を容易く両断してなお食い込むなかへ、さらに飛び込むキルロイの『皆殺しの行軍』がバスターライフルより伸びた劫火の銃剣を突き立て、押し倒し、内部から焼きたてていく。
「な、なんだこやつらは!? ロブル・カロリヌムがっ」
「地底皇国が末裔、ナターシャ・ツェデルバウム! 貴様もドワーフのシャベルのもとに削り取られるがいい!」
 万全の戦闘態勢での総攻撃に押され後ずさるゲンドゥルめがけ、ナターシャの『地底皇国流岩盤掘削技術』が突き出される。
 杖とシャベルが激突し、散る火花。飛ぶ破片が床に、壁に爆ぜて火花を散らす。
「ぬぅっ!」
「ナターシャ、横にっ! CCP A.I.M……!」
 だが鍔迫り合いは長引かない。マキナの声と同時、体ごと割ってくるアームブレードが身を狙い、軍服をウィズローブごと切り裂いていく。
 すかさず放った『CCP A.I.M』の癒しがなければ危ないところだ。
「お前さんもか、死にぞこないやがって!」
 キルロイの憎悪と驚愕の声。
 驚くべきことにロブル・カロリヌムと呼ばれた生体甲冑は未だ健在だった。
 並のダモクレスなら二度ほどは破壊できる猛攻撃を食らい、腹には銃剣を突き立てたまま、よろめきながらもまだ指名を全うせんと盾となる。
「っく、だがよくぞやった! ケルベロス、基地もろとも吹き飛ぶがいい!」
「なんだと!?」
「これは……自爆装置が起動しています……!」
 その身を盾とするロブル・カロリヌムに捨て吐かれた冷酷な言葉。
 柧魅の声に続き、魔空回廊に飛び込むゲンドゥルの周囲を守る爆発にピコの解析結果が脱出を促してくる。
「エルクードさん、地上へっ」
「今伝える! あとは俺たちだが……」
 ピコに答えつつ、銃剣を引き抜いたキルロイが『マインドウィスパー・デバイス』で退避を叫ぶのと同時に再び爆発。
 崩壊は予想以上に早く、ここは地の奥底。
 救援は期待できず、脱出できねば命はない。
「マーク、ナターシャ、ここは俺がやる。退路を頼む」
「一人でか?」
「オレは最強の忍者だからな?」
 崩れてくる施設に埋まりかけた昇降装置の確保には『アームドアーム・デバイス』がいる。
 覚悟を決め、柧魅は腕を覆う『朱初月』から鉤爪を閃かせた。
「複合式忍殺術・黒雷閃華」
 五指の動きに合わせ、御足菜・蓮(e33882)の残例が咲かせる蓮華の花の如き緋緋色の粒子。輝きが『神門忍者装束』に反射し、生体甲冑へと雷に奔る。張り巡らせた朱い鋼の糸をたどる黒雷は『複合式忍殺術・黒雷閃華』の名の如く。
「DEVICE FULL POWER……!」
「削り抜くっ!」
 援護しながら仲間たちはかけた。崩れ落ちたシリンダーをマークの『アームドアーム・デバイス』重作業巨腕が持ち上げ、ナターシャのスコップが歪んだ昇降機のドアを打ち抜きあける。
 テレサとテレーゼが制御装置に接続。安全装置を解除し、強引に起動。
「援護するわ、柧魅!」
「助かる、ぜっ!」
 殿を務めた柧魅がマキナの声に身を投げた瞬間、追撃の身を乗り出したロブル・カロリヌムが炎の線に吹っ飛んだ。
「READY ALL WEAPON,ON FIRE!」
 通路をデバイスで持ち上げたままのマークが、戦闘モードの火力全てを『FULL FIRE』に叩き込んだのだ。
 そして最後の仲間たちがしがみつくように滑り込むと同時、出力を脚部『LU100-BARBAROI』クローラーに移行。支えを失い崩れるがれきより早く、身を昇降装置へと飛び込ませる。
 がれきに飲まれたロブル・カロリヌムを尻目に上昇を始める昇降機。短くも長い時間がすぎ、ケルベロスたちは地上部へとほおりだされた。
「爆風、くるぞ!」
「緊急離陸します!」
 間一髪。
 ティーシャが叫び、昇降機を炎が焼くなか、マキナは『ジェットパック・デバイス』を飛翔させる。
 牽引ビームに引かれ飛び立つケルベロスたちが見た島は、まるで拠点という火山の噴火であった。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年10月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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