●都内某所
公園の散歩コースに、万歩計が転がっていた。
これが落し物なのか、棄てられた物なのか、その場を行き交う者達には分からない。
ただ、ひとつ言える事は、万歩計自身は、棄てられたと思っているという事だった。
それは万歩計にとって、屈辱的な事だった。
何も悪い事をしていないのに……。
むしろ、イイ事しかしていないのに……。
キチンと仕事をしていたのに、この仕打ちッ!
それ故に、許せなかった。
万歩計の持ち主を……。
万歩計の存在に気づきながら、通り過ぎていった者達を……。
その思いが小型の蜘蛛型ダモクレスを呼び寄せた。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、機械的なヒールを使い、万歩計を変化させた。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
そして、ダモクレスと化した万歩計が、耳障りな機械音を響かせ、散歩コースを行き交う人々を襲って、グラビティ・チェインを奪うのだった。
●セリカからの依頼
「四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)さんが危惧していた通り、都内某所にある公園の散歩コースでダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある公園の散歩コース。
ここにあった万歩計が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、万歩計です。万歩計はダモクレスと化した事で、ロボットのような姿をしています。今のところ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われてしまうでしょう」
セリカが真剣な表情を浮かべ、ケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163) |
不動峰・くくる(零の極地・e58420) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
霧矢・朱音(医療機兵・e86105) |
●都内某所
「今回、倒すべき敵は、万歩計生まれのダモクレスでござるか? ダモクレスは、のべつ幕無しに、なんにでも取りつくものでござるなぁ。忘れ去られたのか、うち捨てられたのかは分からぬが、無辜の人々に被害を出すわけにもいかぬでござるから、ここで片付けるだけでござる!」
不動峰・くくる(零の極地・e58420)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された公園にやってきた。
その公園は、みんなにとっての散歩コース。
普段は散歩や、ジョギング、犬の散歩などで、人が賑わっているものの、ダモクレスが現れるという事で、一般市民の避難が始まっていた。
みんな最初は、よく分からない様子であったものの、ダモクレスが現れる事を知って、素直にケルベロス達の指示に従った。
「……万歩計か。これがあれば色々と健康管理などに便利なんだよね。それにしても、捨てられた万歩計は、何か欠陥があったのだろうか? まぁ、今となっては知る由もないけど……」
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、何処か遠くを見つめた。
事前に配られた資料を見る限り、万歩計がここにある理由は分からない。
それが捨てられたモノなのか、落としたモノなのか、まったく分からない。
それでも、ひとつ言える事は、万歩計自身が捨てられたと思っている事だった。
それは単なる思い込みかも知れない。
そもそも、万歩計に意志などないかも知れない。
理由は何であれ、万歩計がダモクレスと化すキッカケになった事は間違いなかった。
「とりあえず、万歩計は散歩する時に、時々付けていたりしますね。自分がどれだけ運動したのか、数値に現れるから便利ですよ」
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)が、自分なりの考えを述べた。
実際に、この散歩コースを利用していた者達の大半が万歩計やスマホアプリを利用しており、健康管理に気を付けていたようだ。
そう言った意味でも、万歩計には自分が捨てられた理由が、分からなかったのだろう。
その事を考えるだけでハラワタが煮えくり返り、怒りを抑える事が出来なくなってしまったのかも知れない。
「私は特に付けて歩いているわけでは無いけど、運動不足の方々にとってはありがたい物でしょうね」
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が、何やら察した様子で答えを返した。
ダモクレスと化した万歩計があるのは、散歩コースの途中。
その場所で、何かが光った。
ちょうど茂みが死角になっている場所で……。
それは普通であれば、あり得ない程、眩い光。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した万歩計が、耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達の前に現れた。
ダモクレスは金属で出来たロボットのような姿をしており、ケルベロス達に対して激しい敵意を抱いていた。
そのため、空気がピリピリとしており、まるで刃物のように鋭く感じられた。
「まさか、あんな場所に落ちていたなんて……。もしかして、失くした事に気づいて探したけど、ちっちゃい物だったから見つける事が出来なかったんじゃあ……。もしそうだったら、可愛そうだと思うけど、こうなった以上は物理的に供養するしかないよね!」
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、覚悟を決めた様子でダモクレスの前に陣取った。
最近、好きなアイドルのコラボデザイン万歩計を買ったため、こう言う事が無いようにしたいという気持ちが強まった。
そうならないようにするためには、家から持ち出さない事が一番……なのだが、それでは万歩計を買った意味がない。
それが原因で夜も眠る事が出来ず、昼寝をしてしまう程、悩んでいるようだ。
そのため、気持ちは複雑。
まるで自分の万歩計の未来を見ているような気持ちになっていた。
●ダモクレス
「マンポケィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
そのビームは数字の形をしており、何かをカウントしているようだった。
それが何なのか分からないが、少しずつ数が大きくなっていた。
「さぁ、行きますよ、ネオン。頼りにしていますね」
その攻撃に気づいた玲奈が、ボクスドラゴンのネオンに声を掛け、二手に分かれるようにして左右に跳んだ。
そのおかげで大事には至らなかったものの、公園の噴水が壊れ、傍にあった木々が倒れていった。
「マンポケィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
だが、ダモクレスは攻撃の手を緩めず、再び超強力なビームを放ってきた。
そのビームは先程よりも数字が大きくなっていたものの、何をカウントしているのか分からなかった。
「お主の相手はこちらでござる!」
すぐさま、くくるがレゾナンスグリードを仕掛け、ブラックスライムを捕食モードに変形させ、ダモクレスが放ったビームを丸呑みした。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
それを目の当たりにしたダモクレスが、激しくショックを受けた様子で、数字型のアームを振り回し、ケルベロス達に迫ってきた。
そこにあったのは、怒り。
……激しい怒り。
それはケルベロスに対する怒りであり、人々に対する怒りでもあった。
「光の城壁よ、皆を護ってあげてね」
すぐさま、朱音がライトバスティオンで光の城壁を出現させ、ダモクレスの攻撃を防いだ。
まさに間一髪。
あと数秒遅れていれば、最悪の事態に陥っていた。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスの勢いは止まらない。
それどころか、光の城壁を壊す勢いで、朱音にジリジリと迫っていった。
「ねぇ、藍ちゃんアレを見て! ほら、ダモクレスのシャイロセンサーの部分! ほら、不安定になってカタカタ言っているでしょ? 一緒に、あの部分を狙おう。何だかカウントも増えているし! 色々な意味で怖いから!」
そんな中、ことほがライドキャリバーに藍に声を掛け、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
次の瞬間、ことほが桜の樹の下(ブラックボックス・チェリー)で、大地に宿る癒しの力を桜の樹に変換させ、エクトプラズムの桜吹雪で癒しを与え、花舞いと共に武装を強化した。
それに合わせて、藍がデットヒートドライブを繰り出し、炎を纏って突撃する事で、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その熱さから逃れるようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、狂ったように数字型のアームを振り回した。
それは単なる八つ当たり。
見方によっては、駄々っ子パンチ。
恐れを知らない大きな駄々っ子が、そこにいた。
「そんな攻撃、僕の剣技の前じゃ、止まって見えるよ。それとも、僕らを挑発しているのかい? やれるものなら、やってみなって感じでさ」
それを迎え撃つようにして、司が紫蓮の呪縛(シレンノジュバク)を仕掛け、手に持っているレイピアを華麗に振りかざし、衝撃波を飛ばす事でダモクレスのアームを吹っ飛ばした。
その途端、数字型のアームが地面に落下し、コロコロと転がっていった。
その間も何やらカウントしていたが、だからと言って爆発する訳ではないようだ。
それと同時に、くくるが左腕『震天』・凍結手裏剣(サワンシンテン・アブソリュート・ゼロ・シュリケン)を仕掛け、左腕『震天』の氷結粉砕機構を単独稼働させ、巨大な氷の手裏剣を形成し、ダモクレスめがけて投擲した。
くくるから放たれた氷の手裏剣は、ダモクレスのボディを切り裂き、深々と突き刺さって熱を奪って凍結させた。
「マ、マ、マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスがケモノにも似た機械音を響かせ、半ばヤケになりつつ、数字型のミサイルを飛ばしてきた。
そのミサイルは次々と地面に落下し、大爆発を起こして、大量の破片を飛ばしてきた。
それが鋭い刃となってケルベロス達の身体に突き刺さり、肉をえぐって大量の血を流させた。
「大自然の力よ、仲間を癒す力を分け与えよ」
すぐさま、朱音が大自然の護りを発動させ、大自然を霊的に接続する事で、仲間達の傷を癒していった。
それでも、完治させる事は出来ず、ところどころ傷が残っていた。
「マ、マ、マンポケェェェェェェェェェェェェェェェイ!」
その事を嘲笑うようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、数字型のミサイルを飛ばそうとした。
「そう何度も同じ手は通じませんよ! この熱で、オーバーヒートを引き起こしなさい!」
その事に気づいた玲奈が、グラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「マンポケィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時に、ダモクレスのミサイルが誘爆し、大爆発を起こして、真っ黒な煙を上げた。
「これで終わりにしよう。もう逃げ道はないし、逃げられない。……それが現実だからね」
その間に司が真っ暗な煙の中を駆け抜け、一気に間合いを詰めると、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟を繰り出し、ダモクレスを幻惑して、コア部分を破壊した。
「マンポケイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、崩れ落ちるようにして完全に機能を停止させた。
「みんな無事? 大丈夫? 怪我していたら、遠慮なく言ってね。すぐに治療をするから!」
ことほが仲間達の無事を確認しつつ、ヒールを使って看板や路面表示を修復した。
ダモクレスによって破壊されたモノは多く、骨に折れる作業であったが、仲間達も協力してくれた。
「ふぅ~……、仕事上がりの一服は身に染みるでござる」
そんな中、くくるがホッとした様子で、何処からかキセルを取り出し、煙を吹かせて一服するのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年9月17日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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