狩るか、刈られるか!

作者:ゆうきつかさ

●栃木県某所
 超強力な電動草刈り機があった。
 これさえあれば、何でも刈れる!
 そんな謳い文句で売り出していたのだが、あまりにも切れ味が鋭かったため、怪我人が続出ッ!
 『これって草刈り機って言うより、武器じゃねえか?』と言われてしまう程、危険なシロモノだったようである。
 そのため、返品が相次ぎ、製造中止に追い込まれてしまったようだ。
 しかし、すべての電動草刈り機が返品された訳では無い。
 来るべき日に備え、納屋の奥に眠っている電動草刈り機があった。
 その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れ、電動草刈り機に機械的なヒールを掛けた。
「クサカリィィィィィィィィィィィィィィィ」
 次の瞬間、ダモクレスと化した電動草刈り機が、耳障りな機械音を響かせ、納屋の壁を突き破るのであった。

●セリカからの依頼
「雪城・バニラ(氷絶華・e33425)さんが危惧していた通り、栃木県某所にある裏山で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、栃木県某所にある納屋。
 この場所にあった電動草刈り機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、電動草刈り機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは電動草刈り機がロボットになったような姿をしており、ケルベロスを敵として認識しているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)

■リプレイ

●栃木県某所
 ダモクレスと化した電動草刈り機にとって、重要なのは切れ味だった。
 とにかく、切れ味、最優先ッ!
 何でもかんでも切れれば、最高ッ!
 切れなければ、すべてゴミ。
 他社に負けるな、ライバル会社など刈り取ってしまえ!
 そんな気持ちを元にして、開発が進められた事もあり、電動草刈り機は人を殺す程の切れ味を持っていた。
 しかし、それは電動草刈り機としては、不要な切れ味。
 あまりにも切れ味が鋭いため、危険そのものであった。
 そのため、草を刈るだけでは、済まない者もいたようである。
 もちろん、それは本来の使い方ではない。
 それでも、別の使い方をする者もいた。
 それで怪我をする者もいれば、人を殺す者もいた。
 だが、製造中止にするには、それだけの理由で十分。
 ただでさえ、返品が相次いでいたのだから、無理に製造する必要はない。
 逆に、製造を中止にする理由が出来た事で、ホッとした気持ちになった開発者もいるとか、いないとか。
 理由は何であれ、電動草刈り機が世の中に出回る事は無くなった。
 例え、それが電動草刈り機になった望まぬ未来であったとしても……。
「今度の敵は、草刈り機なのね。草刈り機も、切れ味が凄すぎると、凶器にもなりうるから、放っておく訳にはいかないわ。ここで倒しておきましょうか」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)は仲間達と共に、栃木県某所にある納屋にやってきた。
 その場所は畑の傍にあり、土地の所有者がケルベロス達の存在に気づいて、怪訝そうな表情を浮かべていた。
 おそらく、土地の所有者には、ケルベロス達が敵に見えたのだろう。
 ……倒すべき敵。
 自分の命を狙う敵が現れた、と……。
 それは単なる被害妄想であったものの、ケルベロスが現れた事によって現実のモノになった。
 そのため、『とうとう、コレを使う時が来たか』と思ったのか、ケルベロス達から逃げるようにして、納屋まで全速力で走っていった。
 即座にバニラが殺界形成を発動させ、土地の所有者をUターンさせて納屋から遠ざけた。
 一応、事前に連絡はしてあったはず。
 それなのに、土地の所有者が警戒してしまったのは、先程の連絡を詐欺か何かと勘違いをして、不信感を抱いてしまったのかも知れない。
 それが原因で、土地の所有者が物凄い形相を浮かべて走り去っていったものの、今は説明している暇などなかった。
「名前こそ草刈り機だけど、草刈り鎌と本質は変わらないからね。安全性を高めたものだから日用品になりえるのであって、ハサミや包丁と変わらない、立派な武器だ。……しかし、そんなに威力がすごいならケルベロス用の武器として別ベクトルで開発できなかったのかな……」
 オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、事前に配られた資料に目を通した。
 その資料を読む限り、電動草刈り機は、見るからに殺傷兵器ッ!
 危険そのもの、触るな危険ッ!
 何の事情も知らなければ、草を刈るための道具ではなく、武器として認識するような感じのデザインであった。
 そのため、道具としてではなく、武器として利用する者がいたとしても、決しておかしくないようなモノだった。
「クサカリキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した電動草刈り機が、耳障りな機械音を響かせ、納屋の壁を突き破った。
 ダモクレスは電動草刈り機で出来たロボットのような姿をしており、禍々しい雰囲気を漂わせ、ケルベロス達に対して、凄まじい殺気を放っていた。
 それはケルベロス達だけでなく、一般人達に対しても、同じ感情を抱いているような印象を受けた。
「電動草刈り機だった時も、見た目が凶悪だったけれど、ダモクレスと化した事で余計に禍々しくなったわね。見るからに切れ味が鋭くて危険そうだけれど、人に危害を加えようものなら放ってはおけないわ」
 霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が、警戒心をあらわにした。
 その間もダモクレスは電動草刈り機型のアームをフル稼働させ、今にもケルベロス達に襲い掛かってきそうな雰囲気であった。
「確かに、人を怪我させる草刈り機は、処分するしかないですね」
 そう言って綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)がダモクレスの攻撃を警戒しつつ、少しずつ間合いを取るのであった。

●ダモクレス
「クサカリィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、超強力なビームを放ってきた。
 そのビームは鎌の如く鋭く、まわりにあるモノを刈りながら、ケルベロス達に迫ってきた。
 その切れ味は、抜群ッ!
 ダモクレスの行く手を阻んでいたモノをすべて切り裂き、向かうところ敵なしと言った感じであった。
 しかも、どんなに切っても、切れ味は変わらない。
 それ自体は凄い事だが、ケルベロスにとっては、迷惑な話であった。
「……光の城壁よ。仲間を護る盾となりなさい!」
 すぐさま、朱音がライトバスティオンを発動させ、敵の攻撃を防ぐ光の城壁を出現させた。
 それと同時にダモクレスの放ったビームが、光の城壁に弾かれ、近くにあった木々を薙ぎ倒した。
 その途端、大量の鳥が鳴き声を響かせ、一斉に木々から飛び立った。
「さぁ、行きますよ、ネオン。サポートは任せましたからね!」
 それに合わせて、玲奈がボクスドラゴンのネオンと連携を取りつつ、グラインドファイアを繰り出した。
 その間に、ネオンが属性インストールを使い、自らの属性を玲奈に注入した。
「クサ、クサ、クサカリィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 一方、ダモクレスは紅蓮の炎に包まれながら、耳障りな機械音を響かせ、電動草刈り機型のアームを背中から伸ばし、狂ったように振り回した。
 それはまわりにあるモノを次々と切り裂き、再びケルベロス達に迫ってきた。
「真正面から突っ込んでくるなんて芸がないね。それとも、自分の力を過信しているのかな? それ鎌さえあれば、何でも刈れるって……。でも、その考えは間違っているよ」
 オズがハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾でダモクレスのアームを破壊した。
 それに合わせて、ウイングキャットのトトが清浄な翼を使い、羽ばたきで邪気を祓った。
「クサカリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 だが、ダモクレスは怯まない。
 その意志を示すようにして、耳障りな機械音を響かせ、狂ったように電動草刈り機型のアームを振り回した。
 それは先程よりも鋭く、凶悪で、破壊力が増していた。
 しかし、まわりに切るモノはない。
 すべて切り落としてしまったため、何もない。
 そのため、最高加速。
 先程と比べて加速が増しているため、威力も倍増ッ!
 命中すればケルベロス達の首が飛んでもおかしくない程の破壊力ッ!
「本当に芸がないわね。一度失敗したのに、諦めようとしないなんて……。でも、いいわ。覚悟が出来ているのであれば……。闇に飲まれて、侵食されてしまいなさい」
 それを迎え撃つようにして、バニラがダモクレスに黒影弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、ダモクレスの身体が侵食され、何本かのアームが錆落ちた。
「クサカリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それでも、ダモクレスは怯む事なく、電動草刈り機型のミサイルを飛ばしてきた。
 ダモクレスから放たれた電動草刈り機型のミサイルは、触れたモノを刈り取り、地面を抉るようにしてめりこむと、大爆発を起こして大量の破片を飛ばしてきた。
 それが刃物の雨となって、ケルベロス達に降り注いだ。
 その刃がケルベロス達の皮膚を切り裂き、大量の血が一瞬にして地面を赤く染めた。
「これは大自然からの恵み……癒しの力よ、仲間を助けてあげて」
 すぐさま、朱音が大自然の護りを発動させ、大自然を霊的に接続する事で、仲間達の傷を癒していった。
「クサカリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 それと同時にダモクレスが殺気立った様子で、再び電動草刈り機型のミサイルをぶっ放した。
 ダモクレスから放たれた電動草刈り機型のミサイルは、ケルベロス達の逃げ道を塞ぐようにして、次々と落下していった。
 それは爆発と共に鋭い刃となって、再びケルベロス達の身体を切り裂いた。
「よほど爆発させる事が好きなようですね。……でしたら、自分でも喰らってみたら、どうですか? そうすれば、自分がどれほど酷い事をしていたのか、理解する事が出来るはずですよ」
 玲奈が傷ついた身体を庇いながら、ボルトストライクを仕掛け、自らの拳で殴りつけ、氷の爆発でダモクレスを吹っ飛ばした。
「あなたの弱点を見抜いたわ、この一撃をお見舞いしてあげる!」
 それに合わせて、バニラが破鎧衝を仕掛け、高速演算でダモクレスの構造的弱点を見抜き、痛烈な一撃で頑丈な装甲を破壊した。
 それは普通では、有り得ない事。
 通常の攻撃ではヒビひとつ入らなかった頑丈な装甲が音を立てて砕け散り、無防備なコア部分が悲鳴を上げるようにして弾け飛んだ。
「クサ……カリィ……」
 その一撃を喰らったダモクレスが崩れ落ち、完全に機能を停止させた。
 それはダモクレスにとって、望まぬ最後。
 まだ刈りたいモノが……。
 せめてケルベロス達の首だけでも……。
 そんな気持ちが伝わってきそうなほど、ダモクレスの殺気は消えていなかった。
 だが、ダモクレスは動かない。
 完全にコア部分を破壊されてしまったため、アーム一本動かす事が出来なかった。
「納屋が壊れてしまったから、ヒールで修復しておかないとね。これがキッカケになって、もっと安全な商品を買いなおせると良いけれど……」
 そんな事を考えながら、オズがヒールを使って、納屋を修復し始めた。
 状況的に考えて、土地の所有者の警戒心は消えていない。
 そのため、ダモクレスと化した電動草刈り機と同じモノか、似たようなモノを買う可能性が高かった。
 それでも、オズは信じたかった。
 土地の所有者が考えを改め、殺傷力よりも、安全性を優先する事を……。
 それは単なる希望でしかない。
 実際には、どうなるかは分からないものの、オズは祈るような表情を浮かべながら、ヒールを使って納屋を修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月16日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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