夜のライダーよ、どこへゆく?

作者:大丁

 星空が見たくなって、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は、海辺まで走らせてきた。
 ハンドルを引いて砂浜まで乗り入れ、天を振り仰ぐ。
 しばし、ぼーっと眺めていたので、サクサクという裸足のたてる音に気が付いたのは、相手が随分と近くなってからだった。
 パーカーを着た少女が、いる。
 生肩はだけてみると、なかはホルターネックのビキニ姿。腰回りや足元にはアジア系の装飾品。
「ケルベロスさん♪」
「っ! あなたは、何者です?!」
 真理のセンサーが反応する。彼女の身体には、ダモクレスの技術が使われていると。
「ワタシ、甘音・ぎあ。イイこと教えてあげる♪」
 舌には特殊な紋様が刻まれていて、語りかけられると、抵抗できなくなった。
「服を脱いで」
 命令の言葉に重なって、経文を読み上げるような響きが、螺旋状に伝わってくる。
「はい、です……」
 砂地へ、下着までも放りだした。
「そのままの格好で、街を駆けまわろう」
「は……い……」
 シートに座り、スロットルを開けようとする手を、真理は必死にとどめる。
「く、ううう!」
 抵抗すれば、身体にダメージが入る仕組みだったのだ。

 夜のヘリポートに、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)の白いレインコートがなびく。
 緊急で招集されたケルベロスたちが、事情を聴いていた。
「機理原・真理ちゃんが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けると予知されたんだけどぉ」
 本人との連絡がつかないという。依頼はつまり、真理の救援と、デウスエクスの撃破だ。
「敵は『甘音・ぎあ』と名乗ってる。ビルシャナと螺旋忍軍、ダモクレスの技術が混じっていて判然としないものの、使ってくるグラビティは、『誘惑扇動』。相手に命令を与えて自傷させたり、従わない場合は苦痛にみまわれる、そんな相手よお」
 現場は、砂浜の海岸で、周囲に一般人はいない。
「ぎあは、なぜだか真理ちゃんを恥ずかしい目にあわせたいみたい。急いで、急いで!」


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)

■リプレイ

●夜の砂浜
 排気音が、ブンブンと暗い海にこだまする。
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)はすっかり全裸になり、夜の砂浜で、愛車のライドキャリバー、プライド・ワンに跨っていた。
 スロットルを留めおく手が震えている。
「ほら。イイことでしょう?」
 デウスエクス、『甘音・ぎあ(Vacation Ver)』が、また一歩踏み出そうとしたとき、星空に、明るく輝くものが現われる。シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が、降下しながら、変身してきたのだ。
「魔法少……って、どういう状況っすか? これ」
 ミニスカの、ロリータドレス風の魔法少女衣装は、ポーズも忘れて困惑した。
 敵とて、シルフィリアスの派手な登場には、あっけにとられ、ついで見上げる。
 次々とケルベロスが集結してきた。
 ビキニアーマーの女騎士、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は、レイピアを振るって、対峙する。
「甘音・ぎあと言ったな! 私に見覚えはないか?」
 ホルターネックのビキニは寸前で退いた。
「肌を見せたい人なら好きよ。大歓迎だけどね♪」
 もっと、脱いでと言わんばかりに、微笑んだように思えた。注意が他所にむいている隙に、白焔・永代(今は気儘な自由人・e29586)は、プライド・ワンの上から降ってくる。
「ひょー。イイ格好だねん。おっと、失礼。真理ちゃん、バイクで走りださなくていいんだよん」
 裸の肩に手をかける。と、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は地上を、堤防越えてきた。婦警の制服姿だ。
「みなさん、よく来てくれたのですよ」
「何度も一緒に戦った仲間がピンチとあれば、駆けつけない訳にいかないわ」
 銀子も、反対の肩に手をかけた。勤務明けなので、制服なんである。
 『誘惑扇動』は、ただ命令するだけだ。ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)は、祈りの言葉で、仲間に耐性を付けさせる。
「受肉した私が誓う。『憐れみの賛歌(キリエ・エレイソン)』♪」
 甘音・ぎあの口元がパクパクと動いたが、何を言ったか、聞こえない。レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)は、ふふんと鼻をならした。
「銃声だったらどうかしら? 敵である以上、容赦はしませんよ!」
 2丁のリボルバー銃で連射する。予備弾を詰めたジャケットがふわりと浮き上がると、スリングショット水着風のボンテージがのぞいた。
 トリガーにかかる指に迷いはない。しかし、敵の外形がレイファには可愛い女の子としか映らず、少々気が引ける。
 その、ぎあは、砂地を横に蹴って避けた。
 彼女のパーカーもひるがえり、弾丸は背中の布に内側から穴をあける。だが、牽制にはなったようだ。ミスラも両手に陰と陽、二振りの喰霊刀を抜く。真理の救出は、とライドキャリバーの方を見た。
「くぅ、あああ」
 全裸でシートに跨ったまま、悲鳴が上がった。永代(えいたい)と銀子は、掴んでいた真理の肩から、パッと手を離す。
「こりゃまいったねん。無理に降ろそうとすると」
「本当に苦しそうだわ」
 四苦八苦している様子に、ミスラは苦渋の選択を口にする。
「当人には悪いが、扇動どおりの行動をとって貰わないとな」
 作戦の変更を告げた。
「真理は、離脱させよう。私たちが、短期決戦に持ち込めばいい」
 喰霊殲神剣が、左右交互にホルターネックを喰らわんとする。ミスラの最大火力だ。除・神月(猛拳・e16846)も降魔真拳を、敵のわき腹に、柔らかな肌へとめり込ませた。
「だったラ、威力強めでぶっ倒してやんヨ。鳥野郎と違っテ、真理の頭ン中を芯から洗脳はできねーんだロ?」
 V字のヒモ水着から、バストをこぼしかけで次の一打。しかし、降魔真拳の『追式(ツイシキ)』は空振り。ぎあは、例の紋様のついた舌をペロっと出して、飛び上がる。
 レイファの頭を越えた。
「え、私をほったらかして、どこに行くんです?」
 首をめぐらせ、ビキニパンツを追えば、真理の背後、ライドキャリバーのタンデムシートにスタッと乗った。扇動への抵抗をやめ、スロットルが開かれたのは、そのタイミングだった。永代と銀子もいましめを解いたところ。
 砂地を蹴って、一輪は走り出し、テールランプの光だけがあっと言う間に、堤防を昇っていった。
「やべー、追うゼ!」
 神月(しぇんゆぇ)のジェットパックから仲間のデバイスへと伸びていた牽引ビームが、威力を強める。

●車道
 夜とは言っても、街に向かう幹線道路には、まだ行き来のある時間だった。同じ車線の車も、対向車も、何事かと速度を落とすので、ノロノロ運転となり、時速30キロでも追跡は可能ではある。
 エメラルドと永代は、裸女と水着の跨る一輪車に並進して飛んだ。
 見れば、プライド・ワンの運転座席からは、男性のアレを模した棒が起き上がっており、真理は股を埋めて、喘ぎながらマシンを操っている。ぎあは、後ろからハンドルに手を伸ばすと、強弱をコントロールしているようだ。永代は妙な感心をした。
「真理ちゃんは、スゴイもの隠してたのねん。それを美人が操るとか、どんなプレイ?」
「永代殿。問題は、甘音・ぎあが、なぜそんな秘密まで知っていたのか、だ」
 エメラルドの脳裏に浮かぶのは、かつて倒した同じ名前と容姿の螺旋忍軍の存在。永代も、事情には明るくないが、気にはなる。
「ダモクレスがデータを元にして作り直したり、強化改造したりとか、そういう? ま、美人なのは美人だから、目の保養だ!!」
 真理は、棒に喘ぎながらも無表情を崩さない。だが、唇からは淫靡な言葉が漏れていた。
「どうして、中央レバーのことを……ああ、もっと強めて、です。赤ちゃんのお部屋苛めて、ですよ……!」
「さてねー。あら、ちょっとメンドクサイの来た」
 不自然な渋滞に、パトカーが出動してきたのだ。
「そこのオートバイ、止まりなさい。その、バイク? え、裸で、コラ」
 銀子はしめたと思った。警察なんだから協力してもらおう。パトカーの屋根にちょっと乗せてもらい、他の車両にこそ、停車指示を出そうとする。
「私は、ケルベロスで婦警よ」
 ライドキャリバーの前をいくワゴン車も、横に車線を変えようとしたところ。
「そうはいかないから。みーんな、服を脱いでヤッてちょうだい。運転は続けてね♪」
 ぎあの、読経混じりの誘導が響く。
 警官たちは制服を脱ぎだした。銀子も本物を破くわけにいかず渋々脱ぎ、車内に放っていく。
「腹立たしい。小ばかにしたような命令に、私が従うなんて……」
 回転する赤色灯に照らしだされた股間からは、キラキラと液があふれ、ひとり弄って慰める。
 ぎあは、ケタケタと笑った。
「ワタシは、ヤッてと言っただけー♪」
 銀子が耳まで真っ赤なのは、照明のせいだけではない。自分の本性で臨んでいるなんて、そんな訳がないと、否定すればするほど。
「永代殿、どうすれば……」
 ビキニアーマーの留め金に手をやりつつ、エメラルドは何かを開放したくなっていた。命令というより、誘われているのだ。
「ここは抵抗しないほうがいいよねん。チャンスを待って」
 やおら、服を脱ぎ。
「相手は俺がしてあげるから」
 ふたたび、車線を直したワゴンの屋根を借りて、永代はエメラルドを寝かせると、こんな時でもイキリたったモノを挿入する。優しくだ。
「ひゃん、ああ、コレは、いい……!」
 その実、催眠に従って味方を辱めているふりをして、中に注ぎ込んでいるのは、気力溜めであった。
 こうなると、レイファと神月も、組になるよりない。ジェットパックで飛びながら、ふたりは、お互いの肩紐を掴みあった。
 スリングショットなので、股に直結している。
「だ、ダメです。うう、苦痛すら、良くて」
「レイファ、がんばレ。言葉に逆らうとダメージ食らうみてーだからナー」
 妙に棒読みしたところで、神月は、速度差をわざとつくる。水着は食いこみ、濡れるどころかレイファの股間からはジョロジョロと漏れ、パトカーのフロントガラスにかかった。
 警官をはじめ、周囲のドライバーは一般人なのだから、誘惑扇動にはひとたまりもない。運転も続けなければならず、ちゃんとワイパーを動かす。
「くう、賛歌の耐性が現れたのが、私自身だけとは……」
 ひとり、着衣のミスラは、牽引ビームのグラつきを立て直して、プライド・ワンに追いつき、斬りかかっていた。ぎあは、中央レバーの振動を緩めては、弄んでいる。
 命令に従うように提言したのはミスラであり、その結果、真理はもう快楽に負けてしまって、みずから腰を振っているように思われた。
 羞恥の場面をこれ以上、見ていられない。
 シルフィリアスは、車道から高さをとっている。しかし、脱ぐことに抵抗しないと、変身解除が始まってしまう。
 全身を纏う、ロリータドレスな魔法少女衣装はリボンに変わり、身体の周りをフワフワと漂いだした。
「ほっ。乙女の肌は安くないんすよ!」
 さいわい、デフォルトの変身では、クレームの来ない程度にぼかした全裸姿となり、リボンや髪によって、デリケートなところは隠されている。
 その髪の動きが、敵の攻撃を弾き、杖からの一撃を与えるのが、必殺のファイナル魔法なのだが。
「こんな、変身途中の不完全さで、撃てるっすか?」
 なんとかして祈ると、マジカルロッドの先端に、魔力の光が集まってくる。
「いくっすよ! グリューエン、シュトラール!!」
 真上からの攻撃に、バカ笑いしていたぎあは、脳天を直撃される。
「あはは。ケルベロスさんも、人間さんも、恥ずかしいカッコ……うぎゃあ!」
「プライド・ワン、今です!」
 ここ一番で、スロットルを開けた。
 真理のマシンは永代たちの乘ったワゴンをかすめてすっとび、車輪がアスファルトに与える摩擦で、デットヒートドライブ。幹線道路に炎のスジをつくる。
「あぎゃぎゃアチアチ」
 車輪の炎は、タンデムシートにまで吹き上がり、ぎあを焼いた。
「お返しなのですよ!」
 真理は、シートの前後を入れ替わり、ぎあを運転席側に、無理矢理座らせる。
「破鎧衝の演算で、あなたの弱点は判明していたのです」
 すなわち、股間の棒が、今度は甘音・ぎあに深く埋められた。
 バイブレーションコントロールをマックスにすると、歓喜と絶頂の声を上げるままに、ぎあは盛大に果てる。
「あ、あ、あひゃんん、恥ずかし、イイっ!」
 命も共に。その声には、もはや扇動する力は無く。

●再び星空
「すまなかったな。まさか、ドライブに出かけることになるとは」
 ミスラは謝罪した。真理は、とんでもない、と首を振る。
「おかげで助かったのです。みなさんも、ありがとうございました、なのですよ」
 改めて、いっしょに星空を鑑賞しようと誘う。
 一般人は、自動車事故などは起こしておらず、脱いだ服を着てもらうだけで済んだ。きちんとした身なりに戻った警官と、銀子がいれば間違いはない。
「容疑者はダモクレスで、ケルベロスに処分されたため、調書は作られず、と。どうやって蘇ったのかくらいは聞いてみたかったな」
「結局、よくわからない敵でしたっす」
 シルフィリアスは、変身をどっち方向にしようか半端になって、とりあえず、魔法少女になっておいた。
「ウィスタリア☆シルフィ参上っす♪」
 可愛く決めポーズ。
 エンジンを止めて、波音が聞こえてくると、仲間たちは再び星空の下にいた。
「やー、ひどい目にあったナー」
 神月の棒読みセリフは続いている。
「といっても、ヤリたりないヤツらもいるけどヨ」
 傍らで隠れてちちくり合っているのは、エメラルドと永代。
 レイファは、興奮した体を冷やすため、海に入っていたのだが、そのシルエットは、ガニ股気味で、波にまぎれてまた粗相したようだ。
 そのうち、指でも始めてしまうだろう。神月は、また相手をしにいく前に言った。
「でも、真理。この星が綺麗なのは、本当だゼ」
 情のこもった声に、真理は無表情を、ちょっとだけ崩す。
「はい、です……」
 真に自由へと解放された笑みだった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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