どんなモノでも、真っ白キレイ!

作者:ゆうきつかさ

●茨城県某所
 超強力な洗濯機があった。
 これさえあれば、何でも真っ白。
 油汚れも、怖くない!
 醤油のシミも、血液の汚れも、すべて真っ白!
 ……と、そこまでは良かったものの、柄物を洗えば、高確率で色ムラ、色移り等をしてしまい、クレームの嵐だったようである。
 そのため、在庫の山を抱えてしまい、メーカー側が廃業したのと同時に、裏山に不法投棄されてしまったようだ。
 その場所に小型の蜘蛛型ダモクレスが現れ、洗濯機に機械的なヒールを掛けた。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した洗濯機が、耳障りな機械音を響かせ、裏山を滑り降りていくのであった。

●セリカからの依頼
「アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)さんが危惧していた通り、茨城県某所にある裏山で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、茨城県某所にある裏山。
 この場所に棄てられていた洗濯機が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、洗濯機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは複数の洗濯機が合体したロボットのような姿をしており、ケルベロスを敵として認識しているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ

●茨城県某所
 メーカー側が求めるのは、他社と比べ物にならない程の白さであった。
 どんなモノでも、真っ白キレイ!
 その言葉を合言葉にして、洗濯機の開発を続けてきたようである。
 だからと言って、最初から上手く行っていた訳では無い。
 ……むしろトラブル続出。
 どんなに頑張っても、汚れが残る。
 と言うか、汚い。マジ、汚い。
 いっそ、この汚れ、模様って事で、スルーしない?
 そんな会話が飛び交う中、開発者達の戦いは、朝も夜も関係なく続いたようである。
 その結果、完成したのが、ダモクレスと化す事となる洗濯機であった。
 もちろん、それは開発者側が意図した結果ではない。
 だが、一般家庭で使うには、何もかもが、白過ぎた。
 おそらく、開発者側は、そこまで考えていなかったのだろう。
 とにかく、白く、汚れさえ落ちればいいと思い込んでしまったために……。
「まさか私の危惧していたダモクレスが本当に現れるとは……まぁ、これも何かの縁でしょうし、私が直々に解決しに行きましょうか」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)は、事前に配られた資料を元にして、地図の印に付けられた場所にやってきた。
 その場所は洗濯機メーカーがあった工場の裏山。
 以前から、処分に困った廃棄品を裏山に捨てていたらしく、まるでゴミ出来た要塞のようになっていた。
 そのため、異様なニオイが立ち込めており、それが身体に纏わりついてくるような感じであった。
 ダモクレスが確認されたのは、裏山の中腹辺り。
 そこに行くまでの道のりは険しく、困難であった。
 大量のゴミが山のように積まれ、ケルベロス達の行く手を阻んでいた。
 それでも、覚悟を決めて、裏山の中腹を目指して、駆け上がるようにして登っていった。
「洗濯機で漂白できるとは、凄いものもあるのね。でも、生地が傷んでしまうのは問題ね」
 リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が、事前に配られた資料に目を通し、残念そうに溜息を洩らした。
 それだけ洗浄力が高かったのかも知れないが、色々な事が裏目に出てしまったようである。
 しかし、それも開発者が、頑張り過ぎたため。
 もちろん、洗浄力が高い事は、決して悪い事ではない。
 だが、何でもかんでも白くしてしまったのでは使い道が限られ、一般的とは言えなかった。
「う~ん、家庭用には売れそうにないけど、漂白専用洗濯機としてだったら生きる道があったのかなー? ホテルとか病院なら出番ありそうな気がするけど、そうでもないカンジ?」
 山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、自分なりに考えを述べた。
 今日は、最悪の事態を想定して、真っ白な服。
 これならば、例えダモクレスに襲われても、服に被害が出る事はない。
 幸い、ダモクレスと化した事で、洗濯機能が失われてしまっているが、それでも油断は禁物である。
「壊れて要らなくなった洗濯機は、水撒き用の雨水を貯めておくタンク代わりに、屋外に放置されてることもあったらしいね。確かに、理に適った用途ではあるけれど……やぶ蚊の巣窟になりそうだ」
 オズ・スティンソン(帰るべき場所・e86471)が、何処か遠くを見つめた。
 実際に、裏山はやぶ蚊の巣窟となっており、ケルベロス達を歓迎するようにして、ネットリと纏わりついてきた。
 それを振り払うようにして奥に進んでいくと、そこに洗濯機の山があった。
 それはまるで墓標……、洗濯機で築き上げられた墓標であった。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
 次の瞬間、ダモクレスと化した洗濯機が、まわりにあった洗濯機を取り込み、ロボットのような姿になった。
 それは大量のやぶ蚊をマントの如く身に纏い、禍々しい感じであった。
 だが、その姿は、ヒーローでもなければ、ダークヒーローでもない。
 まさに、怪物。
 洗濯機で出来た異形な怪物であった。

●ダモクレス
「それじゃ、やろうか。ダモクレスが街に出る前に、ここで仕留めよう」
 すぐさま、オズがウイングキャットのトトに声を掛け、スターイリュージョンを発動させ、星座の形に並べた光から、象徴するオーラを飛ばして、ダモクレスを攻撃した。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが耳障りな機械音を響かせながら、超強力なビームを放ってきた。
 それは目を疑うほど真っ白で、すべてを白く塗り潰しそうな勢いで、辺りの木々を薙ぎ倒していった。
 そのビームは辺りの木々だけでなく、次々と廃棄家電を巻き込み、轟音と共に転がるようにして落ちていった。
「自然を巡る属性の力よ、仲間に加護を与えなさい!」
 その間にリサがエナジープロテクションを発動させ、属性エネルギーの盾を形成し、仲間達の守りを固めた。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!」
 しかし、ダモクレスは怯まない。
 それどころか、内に秘めた殺気を爆発させ、再びビームを放ってきた。
 そのビームはケルベロス達には当たらなかったものの、辺りの木々を薙ぎ倒し、再び廃棄家電を巻き込んで、大量の土煙を舞い上がらせた。
 それは、やぶ蚊にとって、ブチ切れ案件。
 『オイ、コラ、ウチのシマを荒らすんじゃねぇ!』と完全ブチ切れ、大暴れ!
 その怒りをぶつけるべく、ケルベロス達のまわりを飛び回った。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、ダモクレスがホース型のアームを振り回し、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
 だが、ケルベロス達はやぶ蚊の群れに囲まれ、それどころではない。
「……まるで鞭だね。それで僕らを躾けるつもりかい? だったら、試してみるといい。そんなモノで、僕らを大人しくさせる事が出来るのなら、ね」
 そんな中、オズがダモクレスに語り掛けながら、ポイズンテイルを仕掛け、大蛇の尾に毒のオーラを纏わせ、ダモクレスめがけて激しく打ち据えた。
 それは、やぶ蚊の群れも、例外ではなかった。
 次々と叩き落とされ、地面に落ちた。
 それに合わせて、トトが清浄の翼を使い、羽ばたく事で邪気を払った。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その事に腹を立てたダモクレスが、狂ったようにホース型のアームを振り回した。
 それは一振りで木々を薙ぎ倒す程の破壊力。
 ケルベロス達に対して、わずかに残っていたやぶ蚊の群れも、その一振りでこの世からサヨナラした。
 それでも、ダモクレスの暴走は止まらない。
 すべてを綺麗に、真っ白に、何もかも浄化する勢いで、ケルベロス達に迫ってきた。
「何だか物凄くヤル気になっているところで悪いんだけど、それって綺麗にしているんじゃなくて、何もかも消し去ろうとしているだけよね? そんな事をしたって、何の意味もないと思うけど……って、わわっ! 危ないから!」
 ことほが身の危険を感じて、その場から飛び退き、ダモクレスと距離を取った。
 しかし、ダモクレスはジリジリと距離を縮めてきた。
 それはまるで求愛、ドン引きレベル。
 ライドキャリバーの藍も本能的に身の危険を感じて、ダモクレスと距離を取った。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その間もダモクレスは、グイグイとケルベロス達に迫ってきた。
 その姿は、まるでケモノ。
 本能の赴くまま、恐れる事なく、ホース状のアームを振り回した。
 ケルベロスだけでなく、まわりにあるモノ、すべてを壊すため!
 ……そこにあるのは怒り……激しい怒りであった。
 それ故に、迷いはない。
 自分以外は、すべて敵ッ!
 故に、壊す、何もかも……!
「……何もかも消し去るつもりようですね。ならば、自分も消える覚悟があるという事ですか? それとも、自分だけは消えないつもりですか? どちらにしても、そのホースは邪魔ですね」
 その間にアクアがディスインテグレートを仕掛け、触れたもの全てを消滅させる不可視の虚無球体を放って、ホース状のアームを消滅させた。
「センタクキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、洗濯機型のミサイルを次々と飛ばしてきた。
 それは超重量級のミサイルで、地面に落下したのと同時に、大爆発を起こして、大量の破片を飛ばしてきた。
「……って、ちょっと! さっきから、何っ! 私に恨みでもある訳? ほら、藍ちゃんも泥だらけになったじゃない! と言うか、まったく話を聞いていないし!」
 ことほがゲンナリとした様子で、ダモクレスに文句を言いながら、ルーンディバイドを仕掛け、光り輝く呪力と共にダモクレスに斧を振り下ろした。
 それに合わせて、藍も御立腹な様子で、デットヒートドライブを繰り出し、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
 だが、ダモクレスは、完全スルー。
 全身が炎に包まれても、おかまいなしで、再びミサイルを放とうとした。
 おそらく、捨て身。
 半ばヤケ。
 自分の思い通りにならなければ、全て壊れてしまえ、と言った感じであった。
「この一撃で、叩き潰してあげます!」
 それと同時に、アクアがアイスエイジインパクトを仕掛け、生命の進化可能性を奪う事で凍結させる超重の一撃を放って、ダモクレスの機能を完全に停止させた。
「何とかダモクレスを倒す事が出来たようだけれど、何から何までボロボロね。ここまで酷いと修復するまで、かなり時間が掛かりそう。それでも、やらなければ始まらないモノね。みんな頑張って修復しましょうか」
 リサが深い溜息を漏らして、辺りを修復し始めた。
 ダモクレスが暴れ回ったせいで、辺りはボロボロ。
 沢山の木々が薙ぎ倒され、幾つもの廃棄家電から、真っ黒な煙が上がっていた。
 それでも、オズは諦める事なくヒールを使い、辺りのモノを修復するのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月15日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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