オークは蘇りてスパを襲う

■リプレイ

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「さて、死神の因子を埋め込まれたオークが相手ですか…少し厄介になりそうですね」
　ふっ、と。その赤髪の青年はため息を零した。うんざりした顔は端正で、美青年といっていい。ウェアライダーである彼の名はラインハルト・リッチモンド（紅の餓狼・e00956）といった。
「うん？」
　ラインハルトは目を眇めた。闇のために姿はよくわからないが、異様な気配が近づいてくる。
「来ましたか」
　目に刃の光をためると、ラインハルトは背を返した。

「オークは死神に操られている筈なのに、女性を犯すどころか選り好みまでするとは…。オークの本能というか煩悩は凄まじいな」
　ある種の感慨を込めて日柳・蒼眞（無謀刀士・e00793）は呟いた。その銀瞳には怖気すら滲んでいる。
　場所はスパの内部。従業員控え室に蒼眞はいた。
「ああ忌まわしい」
　蒼眞の思いは知らず、ただその男は怒っていた。
　少年めいた顔。が、声は三十過ぎの男のものであった。名をコクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）という。彼は機器の整備士としてスパに入り込んでいた。
「まあ、この感情は色々楽しい思いをするオークに対する怒りだがな」
「煩悩豚、死してなお、繁殖欲を失わずかぁ」
　風陽射・錆次郎（戦うロボメディックさん・e34376）が呆れたように声をもらした。彼は業者として入り込んでいる。
　まあ、小太りの彼の容貌を見れば疑う者はいないだろう。ただ、彼の目のみ異様であった。眼光が鋭いのである。

　他のケルベロスたちは客としてスパの中にいた。空鳴・無月（宵星の蒼・e04245）、狩魔・夜魅（シャドウエルフの螺旋忍者・e07934）、マロン・ビネガー（六花流転・e17169）、小柳・瑠奈（暴龍・e31095）の四人である。
「大人好きの、オーク…？」
　無表情ゆえに人形めいた美貌の娘が首を傾げた。無月である。
「らしいぜ」
　こたえたのは夜魅であった。小麦色の肉体をビキニの水着で包んでいる。
「ん…まぁ、オークにも好みって、あるよね…でも、人を殺させは、しない…」
「早く眠らせるのも優しさです？」
　白髪碧瞳の可憐な少女がいった。身につけているのはやはり水着であるのだが、こちらは可愛らしいものだ。その清純の姿からは、少女がデウスエクスの人体実験用奴隷であったことなど窺えない。
「奴らに優しさなんて必要ないさ、仔猫ちゃん」
　瑠奈が、その凛然とした美しい顔に笑みを浮かべ、少女ーーマロンを見やった。
「奴らは下劣な豚さ。そんな奴らに可愛い仔猫ちゃんが毒牙に掛かる可能性、放置してはおけないよね」
「仔猫……ちゃん？」
「あぁ、仔猫ちゃん。可愛い女性は須らく仔猫ちゃんだよ？」
　マロンの白磁の頬に紅が散った。瑠奈の口ぶりは、まるで女性に興味があるかのようであるからだ。
　瑠奈は意味深にニヤリと笑った。
「ん？　私の守備範囲？　それは仔犬君か仔猫ちゃんか…ふふ。ナイショだけれども、確かめたい人は…なんてね？　それにしても大人…二十歳以上…ふむ」
　瑠奈は己の肉体を見下ろし、それから無月と夜魅を見やった。
「成人組に胸の大きさとかなら負けていない気はするけれども…アレかな。やっぱり二十歳を超えると色気のオーラに違いが…」
「うーん」
　困惑したようにマロンは首を傾げた。こと肉体においては瑠奈の方が凄いといえる。が、大人の魅力となるとどうであろうか。
　すると瑠奈が苦笑した。
「ふふ。冗談さ」
　その時だ。叫ぶ声が響いた。ラインハルトのものだ。
「きましたよ！」
「きたか！」
　蒼眞とコクマ、錆次郎が浴室内に飛び込んできた。
　入れ違うように無月と夜魅、そしてマロンが飛び出した。マロンは囮ではないが、立ち入り禁止テープをはるつもりである。
「あ、そうだ。男性陣」
　瑠奈が蒼眞たちに声をかけた。
「仔猫ちゃん達が身体を覆えるモノは用意しておいてよ？　綺麗な肌を衆目に晒すのは忍びないからね」
「わかったよ」
　錆次郎が背を返した。

●
　闇の路上に無月と夜魅が飛び出した。その眼前、オークが立ちはだかっている。
「待って…」
　無月が声を発した。
「一般人に、手は出させない…」
「一般人？　なんだ、お前たちは？」
　オークが怪訝そうに問うた。するとニンマリ笑って夜魅がこたえた。
「ケルベロスだ」
「そう。…かわりに、わたしたちのことを、好きにしていい、から」
「ほう」
　ニタリと笑うと、オークは触手を舞わせた。
「ああっ！」
　水着を引き裂かれ、夜魅の口から哀しげな声がもれた。現れた肉体は十代の瑞々しさはないものの、開いた花の華やかさがある。
「や、やめ……ああっ！」
　むき出されたたわわな乳房の先端、敏感な蕾を、オークの舌がくりくり転がした。
「あああっ！」
　乳首にはしる快感に、夜魅はびくりと身体を震わせた。するとオークは夜魅の足を無理やり開いた。
　夜魅の秘肉はまさに大人のそれであった。びらびらの秘唇は使い込まれていて充血し、期待するかのようにしとどに濡れている。恥毛は綺麗に手入れされていた。
　オークは猛り立った肉棒を押しつけた。
「や、やめろ……ああっ！」
　夜魅の抵抗もむなしく、オークは膣を肉棒で貫いた。先端が夜魅の子宮を叩く。
「ああん。……奥……とどっ、届くっ！？」
　夜魅がオークにしがみついた。演技ではない。強烈な快感のための無意識的行動だ。
「ブヒヒ。気持ちいいのか？」
「き、気持ち良くなんて。ひゃあっ！」
　夜魅の肉体がびくびく反応した。オークが肉棒を乱暴に抜き差ししたからだ。オークの一突きごとに夜魅の理性が失われていく。
「だめだ、こんなの。気持ち良すぎて、何も考え……ああん！」
　もっと深く突いてもらうため、夜魅はオークの腰に足をからめた。自ら口づけする。妖魔とキスしたくてたまらなくなっていた。
「ああ、いい。もっと突いてくれよ！」
「こうか？」
　オークが尻の動きを速めた。膣内をこすられる凄まじい快感に夜魅の頭の中が真っ白になる。ヌチョヌチョといやらしい音が響いた。
「射精すぞ！」
　オークはさらに動きを速めた。はあん、と喘ぎながら夜魅がオークの背に腕を回す。
「ああ、良いぜ。くれよ、奥に。妊娠してもいいからよ！」
　瞬間、オークが射精した。ぶちまけられた白濁液が夜魅の子宮をたたく。ギュッとオークを抱きしめながら、夜魅は絶頂を迎えた。

　ケルベロスコートを翻し、蒼眞が叫んだ。
「オークが現れた。逃げるんだ」
「僕らはケルベロスです、皆さん落ち着いて避難してください」
　ラインハルトもまた叫ぶ。きゃあ、と女性たちは悲鳴をあげた。恐怖に惑乱している。
「落ち着くんだ！」
　瑠奈が声を張り上げた。この場合、恐いのは女性たちが恐慌に陥ることだ。まずは落ち着かせなくてはならなかった。
　はっとして女性たちが瑠奈を見た。瑠奈は魅惑的な笑みを浮かべると、
「何も心配はいらない」
「そうです」
　立ち入り禁止テープをはりおえたマロンが頷いた。
「ここにはすでに数人のケルベロスが待機しています。だから落ち着いて避難してください」
「こっちだよ」
　冷静さを取り戻した女性たちを、裏口の入り口に佇んだ錆次郎が呼んだ。その手には幾着ものバスローブがあった。
「ありがとうございます」
　女性たちがバスローブを受け取り、裏口にむかってかける。
「あっ」
　恐怖に足をとられ、一人の女性ががよろけた。さっとのばされた腕が女性を抱きとめる。コクマであった。
「落ち着いて避難するのだ。大丈夫！　奴は我らが始末する」
　コクマは優しく笑いかけた。

●
　いった後の蕩けた顔で痙攣する夜魅を触手で拘束したまま、オークは無月を引き寄せた。
「好きにしていいといったな」
　オークが問うと、わすわかに嫌悪の色を顔に滲ませ、無月はこくりと頷いた。
「なら、こいつをしゃぶりな」
　ニタリと笑うと、オークはぬらぬらした肉棒を突きつけた。すごい臭気を放っている。精液と小便、夜魅の愛液の混ざった臭いだ。
　肉棒に手をそえると、恐る恐る無月は蕾のような唇を近づけた。舌をのばし、えらのはった亀頭を舐める。
「ああん。……いやらしい味」
　無月は亀頭を舐めまわした。裏筋にも舌をチロチロと這わせる。
「ここ……気持ち良い？」
「ああ。今度はあそこに挿入れな」
　命じると、オークは横になった。無月がまたがる。
「ああ……自分から挿入するなんて……恥ずかしい」
　羞恥と屈辱に、さすがに顔をゆがめ、それでも無月はフィルムスーツの股間部分を破り、露出させた秘肉にオークの肉棒をあてがった。そして、腰を落とす。
「ああ！」
　無月の顔が大きくゆがんだ。膣をこすりあげた肉棒が奥まで届いたからだ。凄まじい快感が下半身から全身に伝わっていた。
　ニンマリ笑ってオークは無月を見上げると、
「良いように動いてみな」
「……は、はい」
　無月が白い桃のような尻をくねらせた。肉棒が気持ちいいところをえぐる。
「ああん……こ、こう？」
「そうだ。おとなしそうな顔して、上手いじゃねえか。気持ちいいか？」
「あん……気持ち良くなんて……ない」
　無月は否定した。が、尻の動きがとまらない。
「ああ、駄目なのに……お尻とまらないよぉ……ああん」
　無月は尻の動きを速めた。もっと欲しくてたまらなくなっている。
「らめ……らめぇ……もっと……らめぇ……」
「ブヒヒ。射精すぞ」
「はあっ……奥に飲ませて……」
　無月がねだった。そして、恋人同士のような濃厚な口づけを交わす。
　刹那オークが射精。全身を走り抜ける快感に背中を弓なりに反らせ、無月は果てた。
　その瞬間だ。銀光が疾った。
　咄嗟にオークは無月をはねのけ、転がる。ぽとりと切断された触手が地に落ちた。
「こればかりは、何度見ても心が痛みますね」
　喰霊刀で薙ぎ払った姿勢のまま、ラインハルトが痛ましそうに無月と夜魅を見つめた。
「ブヒィ。何だ、お前らは？」
「お前が弄んだ二人の仲間だ」
　オークの問いに、蒼眞がこたえた。その瞬間である。オークは触手を唸らせた。鞭のようにしなったそれが蒼眞を地に叩き伏せる。
「やるじゃないか、豚の分際で」
　水着に包まれた乳房を揺らしながら瑠奈が肉薄した。紫電をからみつかせた、まさに神速の刺突を繰り出す。
　常人の目には稲妻が疾ったとしか見えなかったろう。貫かれたオークから黒血がしぶく。
　その時、荘厳に響く声が発せられた。マロンだ。
　魔法の詠唱とともに彼女の体内の魔導回路で増幅された魔法が発動。マロンの眼前で展開、真紅に輝きながら回転する魔法円の中心から噴出した光がオークを撃った。
　咄嗟にオークは触手でガードした。その触手が、次の瞬間石となる。
「くそっ」
　自ら触手を断ち切り、オークは触手をしならせた。
　その眼前、立ちはだかる影がある。蒼眞だ。
「もう二人犠牲にしたんだ。これ以上、誰も傷つけさせはしないぜ」
　蒼眞の刃が空の霊力を迸らせ、疾った。光の乱舞がオークの触手を薙ぎ払う。が、すべての触手を斬り捨てることは不可能だ。
　刹那、轟く、銃声が。
　いつの間にか手にしたか。錆次郎の手にはN-35組み立て式リボルバーマグナム『痛銃　マリリン』が握られていた。コンマ一秒とかからぬ超速撃ちである。ちぎれ飛んだ触手が、今更ながら地にぽとりと落ちる。
「忌々しいオークめ。わしの怒りを受けてみろ！」
　怒りよりも嘆き。血涙を零しながら、コクマは突撃した。身を独楽の回転させ、加速度を上乗せした一撃をぶち込む。
　咄嗟にオークさ触手でガードした。が、その触手ごとコクマは鉄塊のごとき巨剣ーースルードゲルミルで叩き切る。がーー。
　顔面を断ち切られたオークがニヤリと笑った。まだ残っていた触手の一本がコクマの首に巻きついている。
　ビキリッ。
　異様な音がして、コクマの首がへし折れた。

●
　二人が同時に動いた。
　一人はマロンである。
「コクマさんをはなしなさい！」
　叫びざま、マロンは跳んだ。足先を煌めかせて飛ぶその姿が流星のようであるなら、足に秘めた威力もまた流星のようであった。
　全破壊力をマロンは足に込め、オークにぶち込んだ。あまりに重い蹴りにオークが吹き飛ぶ。
　その時、鯖次郎はオーラを放っていた。それは真の自由のオーラであり、対象者を時間の呪縛から解き放つものであった。本来の治癒時間を短縮して再現、コクマの首が再生される。
　そのコクマの傍らを蒼眞が駆け抜けた。蒼い疾風と化した蒼眞の口からもれたのは大きな舌打ちの音である。
　今回はディフェンダーとして誰も倒れさせない事を優先していた。それなのにーー。
「何をやっているんだ、俺は」
　己を叱咤し、その慚愧の念をさらなる力として変え、蒼眞は爆発的な推進力をもってオークに迫った。
「あと少しと見た。後は頼む！」
　蒼眞は迅雷の刺突を放った。身を起こしたオークもまた触手を舞わせる。
　鉄鞭のように触手が蒼眞を打ち、彼の肉と骨を裂いた。が、蒼眞はとまらない。血まみれになって放った一撃がオーク右肩から先をえぐり取る。オークが絶叫を発した。
「ぎゃあ！」
「痛そうだね。けれど君に乱暴された仔猫ちゃんたちの心の傷の痛みはもっと大きい」
　その瑠奈の声はオークの背後から響いた。いつの間にか彼女は死角に回り込んでいたのである。
　ぎろりとオークが振り向いた時、瑠奈は身を旋回させた。幾筋もの光流が疾り、オークの左腕が斬りとばされる。
「さあ、とどめを」
「わかっておるわ。遅れるな、リッチモンド！」
　コクマが叫んだ。その手のスルードゲルミルに蒼氷のごとき水晶の刃を纏わせ、さらに巨大化する。
「わかっていますよ」
　こたえ、ラインハルトはするすると歩を進めた。その独特の歩法は、接近そのものを敵に認識させぬに恐るべきものである。
「我が怒りを込めた一撃で死神因子ごと粉砕してくれるわーー！」
　コクマが横薙ぎした。唸りをあげたその一閃はビルすら粉砕する威力をもつ。
　横一文字に断たれたオークの身体がどうと倒れた。いや、三つに分断されたオークの身体が。三つめはオークの首であった。
「もう一度、死を味わっていただきますが…死者は土の中で眠っているのがお似合いです」
　囁いたラインハルトの腰。オークの首をはねた刃が澄んだ音をたてて納められた。

●
「皆さん、無事ですか？」
　ラインハルトが仲間を見回す。
「私たちは大丈夫だよ。けれど」
　瑠奈が無月と夜魅を見やった。二人は惨憺たる有り様だか、すでに錆次郎が治療を開始している。
　マロンは施設の修復を始めた。時間があればスパを楽しんでみたいな、と思いながら。
「やっぱり酷い事になってるなあ」
　治療しながら錆次郎は慨嘆した。
「にしても、死神も、厄介な奴を甦らしたよね。こう、襲わせてグラビティ・チェインを蓄えるこの手のオークは恰好の的なんだろうかなぁ…」
　錆次郎は目をあげた。そして星に祈るように呟いた。
「触手豚の蹂躙が、これで最後なら、いいなぁ」

作者：紫村雪乃	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年9月1日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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