地獄の暗殺バーベキュー

作者:雷紋寺音弥

●番外の魔女
 何処とも知れぬ、海辺の岩陰。その中心に佇むのは、両手を獣に変えた奇妙な女。
 番外の魔女・サーベラス。奇しくも地球を守る番犬達と同じ名を持つドリームイーターは、その両手の頭から滴り落ちる涎から、多数のモザイクキノコを生み出していた。
「さて、数はこんなもので十分かな? まだ数は少ないけど、これから増やせば問題ないし、まあいいか」
 もっとも、そうなる前に気付かれてしまっては元も子もないが、そこはしっかり考えてある。要は、個体数を増やすため人間を人知れず殺し、そのグラビティ・チェインを奪ってしまえば良いのだ。そうして、数を増やした上で、更に人間を暗殺して数を増やせば、もう怖い物など何もない。
 手始めに、まずはこの海辺に集まった人間達に、自らを調理させて抹殺せよ。創造主より命を受けたモザイクのキノコ達は、そのまま風に揺られるようにして、人々の声がする方へと消えて行った。

●哀れなるパリピ達
 海辺の砂浜に漂う美味そうな匂い。夏休みを利用して訪れた、大学のサークルグループだろうか。
「おい、そっちの肉、焼けたか?」
「ああ、もう大丈夫だ。肉も野菜も、今日は食い放題だぜ!」
 どうやら、浜辺に集まってバーベキューをしているようだ。かなり大規模なサークルのようで、30人規模の学生が一同に会している。
「……ん? なんか、キノコが増えてるような気がするけど、気のせいか?」
「んなこと、俺に聞くなって! まあ、食えるもんが増えたなら、それってラッキーじゃね?」
 もっとも、頭の方はあまり良くないようで、細かいことは気にしない者が多かった。OBや4年生達の中には既に酒で酔っ払っている者もおり、見慣れぬキノコが鉄板の上で焼けていても、誰も気になどしないのだ。
 そうしている間にも、ピンク色の不気味なキノコからは、毒々しい汁が溢れ出ていた。そして……その汁がたっぷりと染み込んだ肉や野菜を食べた者達は、一様に激しい腹痛を訴えながら、そのまま帰らぬ人となってしまった。

●キノコハザード?
「召集に応じてくれ、感謝する。一部がモザイク化した攻性植物が市街地で繁殖し、多くの被害が出る事件が予知された」
 大至急、現場に向かって攻性植物を退治して欲しい。敵はそこまで戦闘力の高い相手ではないが、人間を毒殺して得たドリームエナジーを利用して繁殖する為、人を殺し続ける限り増殖し続けるという恐ろしい力を持っている。
 そう言ってケルベロス達に説明するクロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)の表情は、いつになく深刻だった。退治するとはいっても、単にデウスエクスと戦って倒せば良いという話ではなく、少しばかり状況が面倒なのだ。
「モザイク化した攻性植物は、ピンク色をしたキノコの姿をしているぜ。こいつらが、浜辺で遊んでいる大学生グループのバーベキューに紛れ込んで、毒を撒き散らそうとしているようだ」
 キノコ達は全身から猛毒の汁を出し、それが染み込んだ肉や野菜を食べた者は、激しい嘔吐や痙攣、発熱などの症状を起こした上で死亡する。おまけに、キノコ達は巧みに食材の中に紛れ込んでおり、更には大学生グループも規模が大きいため、攻性植物だけを見つけ出すことが難しい。
「敵の容姿は、お前達なら直ぐに見て気がつくだろう。だが、この大学生達は、いわゆる『パリピサークル』の連中でな……。細かいことは気にしないし、OBの中には酒に酔っているやつもいるようで、変なキノコが食材に混ざっていても気が付かない」
 彼らの頭はかなり残念なので、バーベキューを止めさせようとしたところで、そう簡単に言うことを聞いてくれるとは思えない。最悪、絡まれて足止めされる可能性もあるので、何らかの工夫を以てバーベキューを食べるのを踏み止まらせたり、あるいは別のことに意識を逸らしたりした上で、その間に攻性植物を見つけて潰して行く他にない。
「ああ、そうだ。事前に彼らのバーベキューを中止させると、攻性植物は住宅街に紛れ込んで、無差別に被害を出すからな。そうなると、増殖した分も含めて、追跡は難しくなる。なんとしても、この浜辺で見つけ出し、全滅させる必要があるんだ」
 この事件の裏には、ドリームイーターの残党がいるのは間違いない。事件を解決して行けば、いずれは黒幕に辿りつけるかもしれないので、まずは目の前の惨劇を防ぐことが大切だ。
 そう言って、クロートはケルベロス達に改めて依頼した。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
除・神月(猛拳・e16846)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
 

■リプレイ

●真夏のライブ
 バーベキューの会場に紛れ込んだ、キノコの姿をした攻性植物。人混みを避け、こいつを探し出して倒すのは、なかなかどうして骨が折れる。
 敵の武器は、猛毒だ。少しでも間違えれば、周りにいる者達が即死させられ兼ねない程に強力な。
 そして、なによりも人が殺されれば、それだけ敵の数が増えてしまう。そんなことになれば周囲は瞬く間にパニックになり……後は、ねずみ算式に増殖された挙句、市中に紛れ込まれて取り返しのつかないことになるだろう。
 そうなる前に、なんとしても敵の目論見を阻止せねば。そのためには、まずバーベキューを楽しんでいるパリピ学生達を、こちらに引き付ける必要がある。
「イェイ! ロックなボクのゲリラライブ、スタートデスよー! 食べる前にボクの歌を聞けえええデース!」
 まず、先陣を切ったのは、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)だった。人目を引く水着姿で現れて、ギターでロックな音楽を奏でれば、それに気が付かない者はいない。
「ん? おい、なんだ?」
「ゲリラライブってやつか? なんか面白そーじゃん!」
 ノリの良いパリピどもが、早速シィカの周りに集まってくる。そのドサクサに紛れ、シィカは救助用のドローンを飛ばし、キノコを探す策に出た。
(「さて、ここはボクが引き付けマス……。その間に、キノコを探してくださいデス」)
 時間稼ぎは任せておけ。パリピ達に囲まれながら、シィカはこっそりと他の仲間達へ目配せした。

●マリンで勝負!
 シィカの音楽にパリピ達の半数近くが引き付けられている頃。
 除・神月(猛拳・e16846)はクーラーボックスの中に高級酒をたっぷりと用意し、肉焼きの準備をしている学生達へと近づいていった。
「オッ! なんか、面白そうなことしてるナ! あたしも混ぜてくれねーカ?」
 突然、そんなことを言われれば、戸惑ってしまうのが普通だろう。しかし、パリピの連中はノリが良く、神月が露出度の高い水着を着ていたこともあってか、簡単に鼻の下を伸ばして頷いた。
「マジで? お姉さんみたいな人が、俺達と一緒に飲んでくれるって!!」
「ヒュ~ッ! マジでヤバタンじゃね、これ! それにしても、お姉さん、スタイルいいっすよね!!」
 ともすれば、何かのお楽しみが待っているのではないかと勘違いした男連中が、一斉に黄色い声を上げて神月の周りに集まって来た。もっとも、それを遠巻きに見ている女子達は、あまり良い顔はしていなかったが。
「なんだよ、お前達。女の前で、他の女に鼻の下伸ばしてたら、カッコつかねぇゼ?」
 どうせなら、この機会にカッコイイところを見せて、女どもを虜にしてやれ。もし、本当にカッコよくキメられたら、酒に付き合ってやっても構わない。
 そんなことを言われれば、黙ってはいられないのが男の性。完全に、やる気を出した男達に向かって、神月はクーラーボックスの中身を見せると改めて勝負を持ちかけた。
「それじゃ、この酒を賭けて勝負しねーカ? 男はスポーツ、女は応援って感じでナ!」
「おお、いいねぇ……って、なんだこりゃ!? なんか、すっげー高そうな酒じゃん!」
 そこに並んでいたのは、高級キャバクラやホストクラブ等でしか頼めない超高級酒。当然、学生の身分では、名前は知っていても飲んだことなどないだろう。
 これは、絶対に負けるわけにはいかない。美女と酒を目の前にして、男達の頭からは完全に、バーベキューのことは消えていた。
「よっしゃ! それじゃ、あっちの方に見える岩まで泳いで、ユーターンして戻ってくるってのでいいカ? 先にゴールしたやつから、好きな酒を選んで飲めるってことにしようゼ!」
 当然、高級酒をゲットしたら、それを女達にふるまってやれば、男としての株も上がるはず。そんな神月の言葉に、男達は次々にシャツを抜いで、浜辺にずらりと並び立ち。
「「「ヒャッハァァァァッ! 高級酒は俺様のもんだぜぇぇぇっ!!」」」
 神月と共に、沖の方に見える小さな岩を目掛け、一斉に泳ぎ出した。

●アブない、ヌルヌル相撲!?
 シィカや神月の機転によって、パリピの殆どはバーベキューの会場から引き離された。
 これで、残るは後僅か。なんとかして、残りも引き付けようとするルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)だったが……慣れない水着姿で男の前に立つのは、さすがに恥ずかしさの方が際立ってしまった。
「おい、あっちの女、見てみろよ!」
「うっひょぉ! もしかしなくても、マイクロビキニってやつ!? マジで実在したんだ!」
 調子に乗ったパリピどもが、ナンパ目的でルーシィドの方へ近づいて来た。だが、それとて数人でしかなく、全員を引き付けられたわけではない。
 こうなったら、もう後はダンスでも披露するしかないか。こんな格好で踊って、万が一危ないポロリでもあったら大変だが……それでも、背に腹は代えられない! そう、彼女が覚悟を決めた時だった。
「水着で楽しいイベント……浜辺でお相撲大会が楽しいらしい?」
 白スク水を着たリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が、徐にブルーシートを広げると、その上にローションをブチまけ始めたのである。
「ねぇ、お兄さん達。この、ぬるぬるしたのを塗って、お相撲やると楽しいらしいよ?」
 なんと、まさかの浜辺でローション相撲の御誘いである。普通なら怪しむところだが、パリピどもは頭が弱い連中ばかりだったので、特に疑うことなくリリエッタの方へと近づいていった。
「へ~、それじゃ、俺達も楽しませてもらっちゃおうかなぁ?」
「おいおい、さすがに未成年相手は拙いんじゃねぇの?」
 口では色々と言っているが、どいつもこいつも、ニヤニヤしながらイケないことを想像している模様。真面目ぶっていた男も、最後は「まあ、相撲して触っちゃうのは事故だよな」とか言って、リリエッタにイケない悪戯をする気、満々だ!
(「……ハッ! このままでは、水着でぬるぬるのリリちゃんが野獣の手に!」)
 ルーシィドにとって、これは見過ごすことのできない事態であった。
「いけません、それならいっそわたくしが!」
 慌てて乱入し、代わりに水着のローション相撲を開始する。が、思った以上に滑ってしまい、なかなか相手を掴めない。
「ひゃぁっ! こ、これ、滑って掴めませ……きゃぁっ!」
「ん……なかなか、難しいね。でも、水着を掴んだら脱げちゃうし……」
 互いに滑っては転び、滑っては転びで、なかなか相手をブルーシートの土俵から押し出せない。水着を掴むのは相手を裸にしてしまう可能性があるので、それも駄目だ。
 結局、揉み合いに揉み合った結果、二人は絡み合ったまま倒れ、そのまま動けなくなってしまった。
「ご、ごめんね、今、退くから……あっ!!」
「ひゃん! す、滑って上手く立てませんわ!」
 ローションまみれの女性が二人、シートの上で絡み合っている光景。こんなものを見せつけられて、我慢できるパリピ達ではない。
「ヒャッハァァァッ! もう、俺は我慢できねーぜ!」
「イェ~イ! 俺達も混ぜてもらっていいよな! な!」
 周りで見ていたパリピどもが、一斉にローションの海へダイブしようと襲い掛かって来た。が、彼らが飛び込もうとした瞬間、後ろからたくさんの腕が伸びて、パリピどもを引っ張った。
「こら! いい加減にしろっての!!」
「こんな場所で鼻の下伸ばしてないで、さっさと肉を焼く準備してよね!!」
 どうやら、腹を空かせた女子達が、我慢できずに男達を連れ戻しに来たらしい。ついでに、未成年者に危ない悪戯をしようとしたことがバレて、浜辺で説教を食らっている。
「ふぅ……なんとか、気は逸らせたかな?」
「そうですわね。さあ、今の内に……」
 身体に纏わりついたローションを払いつつ、リリエッタとルーシィドが立ち上がる。そして、ルーシィドがゴーグルのようなデバイスを装着したことで……それを通して見た彼女の視界には、攻性植物の化けたキノコの位置が、しっかりと映し出されていた。

●いざ、キノコ退治!
 ルーシィドからの連絡を受け、最後に動いたのはイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)だった。
 相棒のミミック、相箱のザラキを連れ、給水所から引っ張ってきたホースで食材に水をぶっかける。これで、とりあえずバーベキューの進行を遅らせることはできると思ったのだが……運悪く、車から降りて来たパリピ学生の仲間と、鉢合わせることになってしまった。
「お~い、酒と食材の追加、買って来た……って、ぁぁぁぁっ!!」
「げっ! マジかよ、これ!? 全部びしょ濡れじゃねーか!!」
 使い物にならなくなった食材やバーベキューセットを見て、ガックリと項垂れるパリピ達。当然、その絶望はやがて怒りとなり、元凶であるイッパイアッテナへと向けられるわけで。
「おい、オッサン! あんたがやったのか、これ?」
「テメェ……どうなるか、わかってんだろうな、オイ!」
 食材にいきなり水をかけられれば、ブチ切れたくもなるというもの。もっとも、イッパイアッテナは売られた喧嘩を買うことなく、笑顔で新しい肉をクーラーボックスから取り出した。
「あーっ!? すまない、肉は補償するから許してくれ」
「補償だぁ? 俺達は、30人以上いるんだぜ? オッサンの金で、奢れるはずが……って、なんだよ、この肉!!」
 因縁をつけようとしたパリピ達だったが、そこに並べられた肉を見て思わず唖然。何を隠そう、それは高級料理店で出されるようなA5ランクの霜降り肉だったのだから。
「おわっ! なんだこれ!? その辺のスーパーで売ってるのより、マジで美味そうじゃん!!」
「すげー霜降りだぜ! こんな肉、見たことねぇ!!」
 肉のランクは分かるようで、パリピ学生達は勝手に盛り上がっていた。そんな彼らを横目に、イッパイアッテナは濡れた野菜や肉を一カ所に集めると……グラビティを使って、一気に焼き払った。
「#$%R&+*!?」
 意味不明な奇声を上げて、焼き払われて行くキノコ達。特大サイズの火球の前には、反撃するだけの余裕もなかったようだ。
「これで安全になりましたね。さて、後は……」
 ふと、周りの様子を見回せば、勝負を終えた神月が、海から上がっているところだった。
「ハハハ! この勝負、あたしの勝ちだナ!」
 豪快に笑いながら海から上がった神月の腕には、二人のパリピが抱えられていた。どうやら、泳力に自信がないにも関わらず飛び込んで、途中で溺れたアホがいたらしい。そして、そんな彼らを抱えてもなお、堂々の一番乗りでゴールした神月の頼もしさよ。
「ぁん? ははぁん……あいつが例のキノコってやつだナ!」
 そんな中、火葬を逃れたキノコを見つけた神月は、それを掴むと思い切り噛みついた。こんなもの、食べて大丈夫なのかと思われるが……これも、彼女の立派なグラビティ。齧られたキノコは全身を痙攣させながら、跡形もなく消滅してしまい。
「おっ! なんか、美味そうなキノコ食ってるじゃん! 俺にも食わせ……って、なんだこりゃぁっ!?」
「あー、それはだめデス! 食べたら死にマス」
 誤ってキノコを食べようとした学生を、シィカがドローンで引っぺがす。その上で、大きく息を吸い込むと、軽くギターを鳴らして盛大に叫んだ。
「それではケルベロスライブ、スタートデース! ロックンロール!!」
 瞬間、彼女の口から歌声と共に放たれる強烈な火炎。生き残りのキノコは、これで駄目になった食材と共に大半が燃えてしまい、もう殆ど残ってはいない。
「◆$%#&●*!」
「#%+&$○▼!!」
 残るキノコ達は、どうやら逃げることにしたようだ。一斉に猛毒を撒き散らしながら、それぞれ砂浜に散らばって行くが、それを逃すケルベロス達ではない。
「にがしませんわ!」
 すかさず、ルーシィドが絵具を散布すれば、それを浴びたキノコ達が瞬く間に溶け、消えて行く。残るキノコは、後1本。物影に隠れ、なんとかやり過ごして逃げようとしているが……それに狙いを定める、鋭い視線が。
「ん、逃がさない……。これで足を止めるよ! フリージング・バレット!」
 最後は、リリエッタの放った氷結の弾丸が、キノコを射抜いて氷の棺へと閉じ込める。かくして、潜伏していた攻性植物は全て発見され、その大半が満足に戦うことさえ許されないまま消滅して行った。

●パリピバーベキュー
 戦いが終わった砂浜では、パリピ達に混ざってケルベロス達も、バーベキューを楽しんでいた。
「さあ、どんどん食べてください。肉は、まだまだありますよ」
「うっひょ~! こんなもん食ったら、明日から俺、インスタント食品なんか食えないぜ!!」
 イッパイアッテナから焼いた肉を差し出され、それを食べる学生達が涙を流して喜んでいる。どうやら、かなり不摂生でいい加減な生活をしている連中だったらしく、彼らの主食はインスタント食品やコンビニ弁当が大半だったようだ。
「ハハハ! オラ、どうしタ? もう飲めねーのカ?」
「か、勘弁して下さいよぉ……。お姉さん、強過ぎますってぇ……」
 その一方で、神月に絡まれて高級酒を飲まされたパリピ達は、こぞってダウン。まあ、高級な酒は度数が高い物も多いので、こうなってしまうのも仕方がないが。
「うわぁ……先輩達、大丈夫っすかね」
「ありゃ、二日酔いじゃ済まねぇよ……。俺達は、まだ酒が飲めねーし、コーラで楽しもうぜ……」
 酒を飲める年齢ではない後輩達が、酔い潰れた先輩達の醜態に、冷やかな視線を送っていた。そんな彼らの傍らでは、リリエッタとルーシィドが普通の水着に着替えて海を満喫していた。
「ふぅ……やっぱり、水着は可愛らしいデザインのが一番ですわね」
「ん……でも、さっきの水着も可愛かったよ」
 お世辞ではなく、本音で告げるリリエッタだったが、さすがにあそこまで露出度が高い水着は、人前ではそうそう容易く着ることはできない。
 ローション相撲のことを思い出し、恥ずかしそうに俯くルーシィド。あ、そういえば、あのローションって、どこに置いておいたっけ?
「おや? これはなんデスカ? もしかして、日焼け止め……るぶわっ!?」
 気が付いた時には、遅かった。片付け忘れていたローションの容器をシィカが盛大に握り、溢れ出たローションを頭から浴びてベトベトになってしまった。
「うぅ……ぬるぬるして、気持ち悪いデス……」
 最後の最後で、なんとしょーもないオチだろうか。なんともイケない姿になったシィカは、その身体についたローションを流すべく、慌てて海へ飛び込んだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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