さくっと倒してバーベキューしようか

作者:芦原クロ

 とある広い公園で、散歩用のカートから出た園児たちが、遊び回っている。
 真夏の太陽がじりじりと照らす、暑い中でも、園児たちは元気に遊んでいた。
 熱中症を警戒し、園児たちを日陰で見守る女性たちは、園の先生だ。
「おはな!」
「かわいいねっ」
 沢山の黄色い花が咲いているのを見つけた複数の園児が、はしゃいでいる。
 夏に花を咲かせる、オトギリソウ。
 小さな花は星のようで愛らしく、発見した園児たちを夢中にさせた。
 喜ぶ園児たちは、花粉のようなものが漂って来たことに、気付かない。
 1本のオトギリソウが、動き出して巨大化し、呆然とする園児たち。
 気づいた女性たちが、慌てて園児たちを守ろうと走り出すが、間に合わない。
 異形は幼い命をあっさり刈り取り、公園内に居た者はすべからく屍となる。
 もっと人を殺めたい衝動でも有るのか、異形は一般人を探そうと、公園内を這って回り、遭遇した者を次々と殺めていった。

「リンネ・リゼットさんの推理のお陰で、攻性植物の発生が予知出来た。早速だが、討伐を頼みたい」
「現場に急ぎましょう。放っておけば、多くの命が失われてしまいます」
 霧山・シロウ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0315)が頼み、集まったメンバーの緊張感を高める、リンネ・リゼット(呪言の刃・e39529)。

 この敵に、配下は居ない。
 一般人の避難誘導については、警察などが迅速に対処してくれる。
 ケルベロスたちが現場に到着する頃には、避難は完了しているので、現場に到着後、現れる攻性植物を迎撃すれば良い。

「公園内にはバーベキュー施設が有る。テラスハウス式のレンタルスペースも有るんで、キッチンを使ったり、冷房がついた部屋で涼んだり、テラスでバーベキューをしたり、色々出来るな」
 既に予約はしてある、と。
 バーベキューについては、道具も食材も施設に揃っているから、手ぶらで大丈夫、と伝える。
「死者を出さない為に確実に撃破して、その後はバーベキューを楽しんでみたらどうだろうか」


参加者
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
リンネ・リゼット(呪言の刃・e39529)
笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)
リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)

■リプレイ


「避難誘導は既に終わったみたいですわね」
 無人と化した現場は、静まり返っていた。
 静寂を破ったのは、カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)。
 どの花が攻性植物となるのか、注意深く花々を見ている姿は、頼もしい。
「ですね。私たちは、攻性植物の相手に専念しましょう」
 兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)は、きょろきょろと周りを見回している。
(「私の推理が少しでもお役に立てて幸いですね。被害が出る前に、攻性植物を倒しましょう」)
 油断せずに思案する、リンネ・リゼット(呪言の刃・e39529)。
「こっちはサーヴァント含め人数も多いから、敵を取り囲む様に布陣して戦えるね」
 笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)はサーヴァントたちを見て、微かに笑む。
「敵を取り逃がさない様に気を付けますね」
「そうね、あとは敵からのダメージにも注意が必要ね」
 綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)の言葉を耳にし、リサ・フローディア(メリュジーヌのブラックウィザード・e86488)が注意することを付け足す。
「オトギリソウって可愛い蕾してるのね!」
 佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)がもっと近くで見よう、と。
 近づいた瞬間、1本のオトギリソウが動き出した。
 巨大化したオトギリソウを見上げ、呆然とする、レイ。
「だおらっしゃあああい!」
 現場に急行する為、藍に騎乗していた山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、地面を這うツルをいくつか轢きまくった。
 ギギ……っと鳴き、痛がっているのか、体をよじる異形。
 はっと我に返ったレイは、急いで敵から距離を取る。
「驚かせようったって、そーはいかないんだから!」
 内心、驚いていたレイだったが、それは口にはせず。
 敵に対してビシッと指を差し、強気に言い放った。


(「弟切草ですか、夏らしくて可愛い花ですけど……それが攻性植物になったからには倒さないといけませんわね」)
 機動力を奪う飛び蹴りを、敵に叩き込む、カトレア。
 一般人の避難所へ敵が向かわないよう、常に注意しつつ、メンバーに声を掛けて敵を取り囲む、リンネ。
「さぁ、行きますよ氷雪。共に頑張りましょう」
 氷雪が翼を羽ばたかせ、味方に耐性を付与している隙に、リンネは影の弾丸を作る。
「黒の弾丸よ、敵を汚染してしまいなさい!」
 声を上げ、敵を侵食する弾丸を撃ち込む、リンネ。
「ネオン、行きましょう。頼りにしていますからね」
 信頼のこもった声をネオンに掛け、玲奈は敵を見据える。
「氷の属性よ、盾となり仲間を護る力を与えなさい!」
 回復やサポートに専念するネオンを確認してから、エネルギーを用いて盾を形成した玲奈は、リンネの護りを強化。
「竜砲弾よ、敵の動きを止めなさい!」
 紅葉が手にしていたハンマーが変形し、砲撃形態となる。
 撃ち込まれた砲弾が、敵のツルを吹き飛ばす。
「んー、星みたいで可愛いじゃん。これだけ巨大化してなければの話だけどねっ」
 巨大化した敵は、どう見ても可愛いとは呼べない異形だ。
 藍が炎を纏って敵に突撃している隙に、は詠唱を始める。
「スナイパーごと攻撃強化するよー!」
 ことほは癒しの力を桜の樹に変換させ、エクトプラズムの桜吹雪が、後衛陣に治癒と強化をほどこす。
「敵にはBSをどんどん付与しながら戦うわ。……この電気信号で、痺れてしまうと良いわよ」
 リサが高速で流れる電気信号を、敵に放つ。
 まばゆい雷光が敵に降り注ぎ、その巨躯を痺れさせる。
「あはは♪ 貴方を真っ赤に染め上げてあげるよ!」
 武器を持った氷花が、くるくると踊り出す。
 舞うようにしてステップを踏みながら、敵を切り裂いてゆく、氷花。
「仲間に手出しはさせないわよ、まずはあんたの攻撃を封じてやるんだからっ!」
 マインドリングから、輝く剣を具現化する、レイ。
「光の剣ってあたしらしくないけど、重くはなさそーだし……。サムライ魂で頑張るわ!」
 レイは軽々と剣を振るい、斬撃を浴びせる。
 苦痛に叫びながら、敵は反撃に出るが、想定内だ。
 メンバー同士、声を掛け合い、負傷した者を即座に治癒する。
「仲間はなるべく庇うようにしてねー。壊れたら、後で直すから、ね?」
 藍に対し、容赦ない言葉を笑顔で発する、ことほ。
 選択肢の無い状況に置かれた藍は、無我夢中で敵を攻撃する事となった。

「味方の命中率が安定するまでは、プレッシャーと武器封じを付与していくわよ~! 覚悟しなさい!」
 レイが強気に言い切り、敵にダメージを加えてゆく。
「避難してるみんなの不安を煽らないように、さっさと片付けるよー」
 回復の必要が無い時は、メディックのことほも、攻撃に参加している。
「BBQも待ってるわよ♪ さっさと片付けて、BBQで美味しいものたっくさん食べながら花を愛でる……風雅なあたし」
 仲間たちを鼓舞し、うっとりと想像したシチュエーションに酔っている、レイ。
(「バーベキュー、楽しみですね。そのためには、まずは人々を襲う邪魔な攻性植物を倒しましょう」)
(「わーい、バーベキュー、楽しみだなー!」)
 玲奈と氷花が、バーベキューに想いを馳せるも、攻撃の手は緩めない。
(「小さくて可愛い花は私も好きですけど。これも美味しくバーベキューを楽しむ為です、ここで倒されて下さいね」)
(「バーベキューか、私は今までバーベキューをしたことが無かったから、とても楽しみだわ」)
 紅葉とリサも、楽しみにしている様子で、瞳が生き生きとしている。
「炎よ、高く昇れー!」
「美しき太刀筋を、その身に受けてみなさい」
 氷花が炎を纏った蹴撃で、カトレアは緩やかに弧を描く斬撃で、それぞれ敵に大きなダメージを与える。
「虚無球体よ、敵を飲み込み、その身を消滅させなさい」
 リサは触れたものを消滅させる、不可視の球体を放ち、敵の右半身をごっそりと削った。
 衰退してゆく敵を逃さず、確実に仕留めようと、奮起するメンバー。
「一気に攻撃して倒していきましょう。――卓越した技術の一撃で、氷漬けにしてあげます!」
 紅葉が一撃を叩き込み、敵を吹き飛ばす。
「貴方に、呪いを分けてあげるわ」
 逆側に回り込んでいたリサが、花々に被害がゆかぬようにと、美貌の呪いで敵を動けなくさせる。
「ここは押せ押せで!」
 藍と共に攻撃に入り、花の上に敵が倒れないよう、下側から上手く攻撃を仕掛けることほ。
「貴方のトラウマを、映してあげます!」
 治癒は氷雪に任せて、リンネは敵のトラウマをナイフの刀身に映し、具現化させる。
「後少し、頑張りましょうね。バーベキューが待っていますからね」
(「思いっきりバーベキューを楽しめる様に、早く攻性植物は倒してしまおう」)
 玲奈の声掛けに、ぴくりと反応する、氷花。
 レイは空高く舞い上がり、懐からデリンジャーを取り出す。
「どこが頭か腕か足かわかんないけど、とにかく攻撃ぃ!」
 デリンジャーを思いっきりぶん投げて、敵にダメージを追加する、レイ。
「雪さえも退く凍気で、凍結させてあげるよ!」
「その傷口を、更に広げてあげますわ!」
 凍気を纏った杭を突き刺し、敵を凍結させる、氷花。
 凍りついた敵を、空の霊力を帯びた武器で斬り、傷痕を広げるカトレア。
 高威力の攻撃を畳みかけられ、敵は耐えきれず完全に消滅した。


「周囲をヒールで修復してから、皆でバーベキューを楽しみましょう」
「バーベキューですね、お腹が空きました」
 戦闘終了後、リンネが声を掛けると、玲奈が素直に空腹を伝える。
 それを微笑ましく受け取りながら、ヒール作業や後片づけを行なう、メンバー。
 終わった頃には、一般人やスタッフも戻っていた。
 スタッフに案内されたテラスハウスは、女子会にピッタリと言って良いほどに、おしゃれで清潔感が漂う。
 テラスには機材が揃い、肉や魚介類などは冷蔵庫に入っている。
「テラスハウス式とは豪華ですね」
 紅葉は物珍しそうに、あっちこっち見て回っていた。
「いやー、冷房効いたとこでも休めるとか最高じゃん」
 暑さを忘れるほど、ひんやりと心地よい部屋で、大の字になって寝そべってみる、ことほ。
「えーっと、火おこし? 炎ならなんでもいーのかしら? そしたら誰かにグラビティで……」
「ちょっと待った、レイちゃん!」
 レイの声がテラスから聞こえて来ると、ことほは急いで起き上がり、止めに入る。
「キッチンも有る様なので、野菜を切っておきますね。肉の筋切りもします」
 料理が好きな玲奈は、手慣れた様子で下ごしらえを始めた。
「私は野菜をメインに焼いていきましょう。こちらはもう焼いていいものですか?」
 玲奈が切り終えた野菜を示し、尋ねるリンネ。
 火が通りやすい輪切りや短冊切りにした野菜を、リンネがテラスで焼き始める。
「BBQはいいけど……お肉焼くのは男子の仕事よね~。女子ばっかでBBQって難易度たかそう。肉、炭化したりしないわよね……」
「グラビティで焼こうとした、レイちゃんがそれを言うの……?」
 レイの言葉に、ことほは、衝撃を受けた表情で、あわあわと焦る。
 網の上で、いい具合に焼けてゆく、食材。
 食欲がそそられる香りが、鼻先を掠めてゆく。
「バーベキュー、とてもいい香りがするわ」
 リサは期待に胸を躍らせながら、食材が焼けるのを待つ。
 下ごしらえが済んだ肉や追加の野菜、魚介類などを玲奈が運んで来た。
「適度に休みつつ外でお肉と野菜焼いたりして夏をエンジョイしよう! いっぱい画像撮ってSNSにも上げるよー」
「この玉ねぎや、ジャガイモは焼けた様です」
 ことほが動画を撮り始め、リンネがトングを使って、焦げないよう急いで皿に移す。
「ばーべーっきゅ、ばーべーっきゅ! お肉もお野菜もたっくさん食べるわよ~」
 レイが早速、熱々の野菜を食べ、玉ねぎの甘みやジャガイモの食感を味わう。
 玲奈は肉が入ったプレートを、カトレアに差し出した。
 受け取ったカトレアが、意気揚々と肉を焼き始める。
「お腹が空きましたので、沢山お肉を食べたいですね」
「だよね、バーベキューなら、やっぱり肉が欲しいな」
 紅葉に賛成しながら、食材を焼いてゆく、氷花。
 カルビにサーロインにロース、豚ロースやトントロ、ウィンナーや鶏のモモ肉。
 玲奈の下ごしらえのお陰で、焼いても肉が丸まらず、こうばしい香りと共に焼けてゆく。
「バーベキュー思いっきり楽しみましょう。お肉、焼けましたでしょうか?」
 紅葉が少しそわそわしながら、焼き上がるのを待っている。
「バーベキューと言えば肉ですわね、いい焼き加減になりました」
「この焼き加減なら、もう大丈夫かな?」
 カトレアと氷花が焼いていた肉が、皿に盛りつけられ、箸を進めるメンバー。
「んー、とってもジューシーな肉で美味しいですわ♪」
 柔らかい肉質に脂がのっていて、噛めば噛むほど、クセの無い肉汁が口の中いっぱいに広がる。
 上品に食べながら、感想を言葉にする、カトレア。
「……とっても美味しいです!」
「わー、とっても美味しいよ!」
 紅葉と氷花も大満足の様子で、美味しそうに食べ進めている。
「海産物とかも、良さそうですね。海老にイカに、ホタテ、どれも美味しそうです」
「私は、魚介類とか好きだから、それを沢山食べてみたいわ」
 玲奈は用意されていた魚介類を焼き始めると、リサが興味津々に見ている。
「魚ならホイル焼きが美味しいですよ」
「鮭のホイル焼きとか、食べてみたいわ」
 リサの要望に、玲奈は準備をし、バターと一緒に鮭をホイルでくるみ、火を通す。
 出来上がったホイル焼きは、バターの香りが食欲をそそり、魚本来の味や香りがたっぷりと詰まっている。
「ありがとうね、とても美味しいわ」
 嬉しそうにリサは玲奈に対して礼を告げ、美味しいホイル焼きを味わっている。
「パンケーキとかも焼いちゃえ☆ ベーコン焼いて乗せよー」
 変わったものを焼き始める、ことほ。
 焼いたマシュマロをクラッカーで挟んだものや、リンゴを半分にしてホイル焼きにし、バニラアイスを添えた焼きリンゴなども、メンバーの知恵や工夫で作られてゆく。
 まるで女子会のような、和気あいあいとした時間を、暫し楽しむのだった。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。