再臨! 魔法少女うぃすたりあ☆しるふぃ改!

作者:星垣えん

●安心の偽物っぷり
 むしむしと暑い、真夏の草原。
 そこにひろげたレジャーシートに仰向けに寝転がって、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)は腹立たしいほど快晴な空を見上げていた。
「どうしてなんすかね……」
 何やら思案げな顔をして、傍らのポテチ袋に手を突っこむシルフィリアス。横に設置したポータブル扇風機の風で紫髪を揺らして少女は最近の出来事を思い返す。
 だいたい、近所の人に怒られた記憶だ。
 路上にゴミをポイ捨てするな――。
 壁に落書きをするな――。
 道行く女学生を辻斬りよろしくスカートめくりするな――。
 すべて身に覚えのない罪だった。なのにどう否定しても近所の人たちは「嘘をつくな」の一点張りで、長々と説教しては「ケルベロスだからって不作法が許されると思うなよ」とか言い捨ててゆくのである。
「納得いかないっす。あちしが怒られる筋合いはないはずっす!」
 ばりばりとポテチをやけ食いするシルフィリアス。(なお、当人が覚えてないだけでシルフィリアスさんは日常的にそれぐらいの小さな悪事を働いてます)
 が、ここで彼女はハッとなった。
 思い出したのだ。2年ぐらい前に同じような事件があったことを。
 いわれなき罪状で近所の人にしこたま怒られていた時期があったことを。
「あのときはあちしの偽物が悪さしてたっすね……もしかして今回もそれなんじゃないっすか……?」
「ふっ、ご明察っす!!」
「誰っすか!?」
 突如として背後から放たれた声に、ぴょんと跳ね起きるシルフィリアス。
 すると――いた。
 紫色の長いウェーブヘアに、大きなリボン。つぶらな瞳でロリータファッションを着こなす、まるでシルフィリアスそっくりの姿をした女が立っていたのだ。
 ……着ぐるみだけど。
 3頭身ぐらいの、着ぐるみだけど。
「全然似てないっす!!?」
「負け惜しみはやめるっす。あちしはあんたを完璧にコピーしてるっすよ」
「いやどこからどう見ても別物っすよ!?」
「そんなはずないっす。近所の人があちしでなくあんたを怒ってる時点で、あんたの言い分は通らないっすよ!」
「引っ越したほうがいい気がしてきたっす!」
 わーわーと問答でやりあう本物と偽物。
 しかし正対する二人は『本物と偽物』って表現するのが憚られるほど似ていない。人間と着ぐるみですもの。一目瞭然だもの。これを間違える近所の人たちは何者なのか。
 二人はしばらく激しい舌戦をくりひろげた。
 そして数分後。
「というわけであんたを殺してあちしが本物になろうと思うっす」
「できたらすごいっすよ。むしろ挑戦してみてほしくなってきたっす」
「頑張るっす」
 レジャーシートに並んで座って、一緒にポテチをぽりぽりしていた。夏の日差しの下で言い合うのが疲れたのだろう。扇風機で涼んでる姿はどう見てもベストフレンド。
 それから数分経って残り少なくなったポテチを巡る喧嘩が始まるまで、その微笑ましい光景は続いていたという。

●偽物が多すぎる件
「……」
 猟犬たちがヘリポートに着いたとき、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はすでにヘリオンの操縦席に座っていた。
 そして窓越しにスケッチブックを見せてきた。
『シルフィリアス』
『にせもの』
 紙面にはそう書かれている。そのふたつの単語だけ書かれている。
 一部のケルベロスであればこの時点ですべてを察したことだろう。しかしわからない人たちがいるかもしれないので念のために王子の心中を代弁しよう。
『シルフィリアスが自身の偽物たるデウスエクスに襲撃され、それなりの窮地に陥る未来が予知された。居留守をしているのか当人とは連絡がつかない。だがすぐ現地に向かえば襲撃される頃には間に合うので、もし行くつもりなら現地には運ぶ』
 だいたいそんな感じです。
 猟犬たちが「いやまぁ助けに行きますけど……」と表情で伝えると、王子はまたも窓越しにスケッチブックを見せてきた。
 そこには小学生が描いたみてーなシルフィリアスの絵がある。
 そして矢印マークと合わせて『きぐるみ』と書かれている。
 あーなるほど、と何となく理解する猟犬たちである。
 一同の様子を見た王子は拳から親指を突きたて、操縦席の後方にあるヘリオンの荷室のほうを示す。乗れということなのだろう。猟犬たちは粛々と乗りこんだ。
 そこでようやく、王子の声が聞こえた。
「では行くぞ。ちなみに今回の偽物はポテチジャンキー機能なるものが搭載されていて、シルフィリアスと同じぐらいポテチ狂いになっている。ポテチに食いつくか食いつかないかで見分けることはできないようだ」
 一切振り向かないままそう言って、ヘリオンの回転翼を回しはじめる王子。
 機体が浮き上がるのを感じながら、猟犬たちは静かに思った。

 偽物として頑張るところ、そこじゃねえよっ…………。


参加者
日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)
アストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)
武蔵野・大和(大魔神・e50884)

■リプレイ

●バランスを考えよう
 仲間の危機を救うべく草原に駆けつけた猟犬たち!
 しかしそこには恐るべき光景が!
「ラストポテチはあちしのものっすー!」
「鬼畜っす! 鬼畜の所業っすーー!」
 敗北していた。
 圧倒的敗北を喫したシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)は、夏の日差しの下で綺麗な簀巻きになっていた。
「もう少し持ちこたえてくれても……」
「みんな助けに来てくれてありがとうっす!」
 呆れ果てるルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)に気づいた簀巻きが顔を上げる。
 だがルーチェは手を差し伸べない。
 辺りにカラのポテチ袋やペットボトルが散乱しているんで。
「……もしかして仲良くおやつタイムしてませんでした?」
「してないっすよ」(本物)
「ポテチは主食だからおやつじゃないっす」(偽物)
「してるじゃないですか!」
 けろっと言いやがる二人に早速ツッコむルーチェ。
 だがここで彼女は気づいた。
 助けに来てくれてありがとうと言った本物が 異形化した髪を全方位に向けていることに。
 隣の偽物よりむしろ仲間たちへ最大級の警戒を向けていることに。
「どうしてそんなに警戒してるんですか!?」
「後ろを見てみるっす!」
「後ろって――」
 シルフィリアスに促されるまま振り返るルーチェ。
 そこでは――。
「わー。二人共そっくりだし、間違って本物を攻撃したりしないか心配だなー」
 日柳・蒼眞(無謀刀士・e00793)が棒読みで斬霊刀を振り回していた。
 不穏、だった。
「まさに瓜二つですね……どうすれば見破れるんでしょうか」
「さすがに回も重ねてくると、見分けるのも難しくなっているよね」
 リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)とアストラ・デュアプリズム(グッドナイト・e05909)も本物と偽物を見比べて難しい顔をしている。
「いったい、どちらが本物のしるふぃりあすさんなんでしょうか?!」
 行きの道中で「どちらが本物か見極めてやろうじゃありませんか!」とか息巻いてたミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)はどうしてこうなった。
「あの、皆さん……!?」
「前のヤツは結構区別がついたんですけどねぇ。今回難易度高くないですか?」
 心配になったルーチェが声をかけるも、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は目を細めて首を傾げるばかり。
「……うーん、王子や皆さんも苦労されているんですね」
 武蔵野・大和(大魔神・e50884)なんてもう、報告書の束(シルフィリアス偽物事件集)を読んで目を回している。
「皆さん!? しっかりして下さい! ちゃんと見て下さーい!?」
 全力で悩みはじめる仲間たちへぶんぶんと手を振るルーチェ。
 果たして彼女は皆が繰り出すボケを捌ききることができるのか!

●見分けるためですよ、ええ
 数分後。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ・オルタナティヴ参上っす!」
「オ、オルタナティヴ!?」
 草原には、なぜかシルフィリアス(着ぐるみ)が増えていた。
「蒼眞さんっすよね?」
「誰のことっすかね」
 見上げてくる本物(簀巻き)をスルーするオルタナティヴもとい蒼眞。
「あちしこそが真のシルフィリアスっすよ。それを証明してみせるっす」
 後ろに回していた手を突き出す蒼眞。
 その手には――ポテチ。
「「そ、それは!」」
「偽物だと正直に白状するならあげるっす」
 袋をがさがさ振る蒼眞。偽物のポテチジャンキー機能を逆用した完璧な策である、と彼は着ぐるみの下でほくそ笑んだ。
 ――が、事は思い通りにはならなかった。
「あちしが偽物っす」
「いやいやあちしが偽物っすよ」
「お前たち……」
 二人揃って偽物とか言ってきやがったからである。ポテチ欲しさに躊躇なく偽物の汚名を被る本物の姿に蒼眞さんは一言もないです。
 コーラ飲みながら見学していたアストラが、ぷはーと息をついた。
「まだ誰が本物かわからないね」
「寸胴でも草でも鳥でも骨でもボンキュボンのナイスバディでもありませんからね……」
 蒼眞に群がる二匹を見て眉を寄せるミリム。アストラの足元から見上げていたボックスナイト(ミミック)は深いため息を吐く。
「しかしどうにか見破らないといけません。というわけでポテチを追加してみましょう」
 シルフィズの前に大量のポテチをぶちまけるリューイン。
「「ポテチっすー!」」
 すぐさま群がる本物と偽物。その勢いたるや凄まじく、アミクス(ビハインド)が追加のポテチを投入しても瞬く間になくなってゆく。
 ミリムは、はっと目を見開いた。
「いま思ったんですけど、もしかしたらポテチを素直に受け取って食べ尽くした方が本物のしるふぃりあすさんでは?」
「確かにそうかもしれないね」
 持参したポテチを両手に抱え、リューインに加勢するミリムとアストラ。
「うすしお味もありますよ! 瀬戸内海味とオホーツク海味にフランスの岩塩味とか!」
「シルフィさん、これもあげるね」
「二人ともありがとうっすー」
「持つべきものは友っすよね」
 勧められるまま素直に受け取り、揃って礼まで言うシルフィズ。
 ミリムは天を仰いだ。
「くっ、これでは……」
 依然として見分けがつかない、と顔を険しくするミリム。
 だが。
「でも素直に『ありがとう』て言うなら偽物でもなんでもいいかもしれない……」
「ミリムさん、諦めないで下さい!?」
 微笑すら浮かべるミリムをゆさゆさするルーチェ。
 それを横目にアストラはボックスナイトの口に手を突っこみ、キンキンに冷えたコーラを取り出した。
「ボクも最近知ったけれど本物はコーラが好きじゃないんだよね。だから喜んで受け取ったほうが偽物だよ」
「そうだったんですか! でしたら私も協力しますね」
 夏場には最高のブツを持って、シルフィズに近づくアストラ&ミリム。
 しかし、である。
「「コーラっすー!」」
 案の定、どっちも飛びついてきた。
 シルフィズは秒でコーラを喉に流しこみ、再びばりっとポテチ袋を開く。
 だが、そのポテチを食べた瞬間。
「~~~っ!?」
「し、舌が焼けるっすー!?」
 悶絶して転げまわるシルフィズ。
 涙さえ流してジタバタする二人の姿に、アストラはにこりと笑った。
「夏に最適のハバネロポテチだよ。病みつきになる味だよね」
「なんで激辛を持ってきてるんすか!?」
「人間が食べる物じゃないっすよ!?」
「おかしいなぁ。本物のシルフィさんは大好きなはずなのに……」
「「どこ情報っすか!」」
 平然とぶっこんでくるアストラにユニゾンで抗議してくるシルフィズ。
 腕組みして様子を窺っていたシフカが、眉をひそめる。
「コーラも激辛もダメ……ますます見分けるのが難しいですね」
「はい……って見ればわかりますけどね?」
 いい加減ノリツッコミを覚えはじめるルーチェ。
「というかあちしこそが真のシルフィリアスっす。オルタナティヴっす」
「蒼眞さんは静かにしてて下さい」
「じゃあ私もひとつ試してみますか」
 あくまで第三勢力を貫く着ぐるみを端に押しやるルーチェ。その間にシフカは本物と偽物の前に出ていって、スーツの上着を脱ぎ捨てた。
 そして当然のようにシャツも脱ぎ捨てた。
「シフカさん!? 何をやって――」
 オルタナティヴを押し転がしてきたルーチェが慌てて戻ってくるが、彼女の手は上着とシャツを拾ったところで止まる。
 シフカさんが爆乳だったからである。
 はらりと上着を落とすルーチェ。
「え、何ですかこれ」
「もいだほうがいいと思うっすよ」
「あちしもそう思うっす」
「……まあ予想通りの反応ですね」
 その瞳に殺意を燃やすシルフィリアスたちを見て、上着を拾い上げるシフカ。
「次は僕がやってみていいですか? いい考えがあるんです!」
 明るい顔をひょっこりと覗かせたのは、大和だ。
 オウガは鼻歌混じりでシルフィズに近づくと、白い手袋をスッと外した。
 そして、本物の顔面を掴んだ。
「僕の心の『太陽』よ。今こそ、もっと輝け!」
「ぎゃああーー!! っすーー!!」
 顔面を掴む手が光熱を放ち、シルフィリアスがバタバタと暴れる。そのさまを見て大和は確信を持った瞳で叫んだ。
「わかりました! こっちが偽物です!」
「いやそっちが本物ですよー!?」
 本物を焼きつづける大和を制止するルーチェ。
 グラビティの効果で見分けようってのが大和さんの考えだったんだけどね、そもそも大和自身が真贋を識別できてないから無理だったぜ。

●判別なんていらなかったんや
 1分後。
 シルフィズは膝を抱えて、黙々とパンを齧っていた。
「ひどい目に遭ったっす……」
「まだ顔がひりひりするっす……」
「すみませんでした……そのポテチパンは好きなだけ食べてくださいね!」
 パンの入ったバスケットを抱えた大和が、二人にぺこぺこと頭を下げる。
 あれから確認と称して偽物の顔面も焼いた大和さんは、お詫びの『ポテチパン』を提供していました。
「案外いけるっすね」
「辛子マヨも程よい感じっす」
「気に入ってもらえてよかったです」
「いやだから何で仲良く食べてるんですか!」
 美味しくパンを食べる二人に満足感すら覚える大和。そして学生の買い食い風景みたいな状況に抗ってゆくルーチェ。
「ルーチェさん。ここは私に任せて下さい」
「リューインさん……」
 リューインがルーチェの肩をぽん。
 そのまま彼女入れ替わりで前に出て――。
「ポテチもたくさん残ってますよ。どんどん食べてください」
「「やったっすー!!」」
「あれっ!? リューインさん!?」
 シルフィズへの餌づけを再開した。無限のポテチ在庫で本物と偽物を誘引するリューインにルーチェは大いに戸惑った。ツッコミ休憩できると思ったのに。
「何してるんですかリューインさん!」
「食べすぎて腹が膨れて爆裂しなければ偽物、爆裂すれば本物です! ダモクレスならば腹は爆裂しないはずです!」
「シルフィちゃんも爆裂しませんよ!?」
 拳を握ってドヤァしてくるツインテに常識をぶつけるルーチェ。
 真面目なルーチェちゃんは急いでポテチを回収した。
「ポテチは没収です!」
「あーっ!」
「返せっすー!」
 腰に縋りついて猛抗議してくるシルフィズ。
 そんな二人の背後に、蒼眞(着ぐるみ)はもふもふと可愛い足音で近づいた。
 二杯の青汁を携えて。
「ポテチばっかり食べるのは健康に良くないっすよ。もっと野菜も食べるっす。どうしても嫌ならせめてコーラを止めてこの青汁を飲むっすよ」
「あちしらからコーラまで奪うつもりっすか!」
「外道っす! 悪魔っす!」
「な、何て言い草っすか!!」
 断固として拒否してくるシルフィズを叱るオルタナティヴ。着ぐるみ二体と地球人があーだこーだと言いあってるさまをルーチェは温かく見守るしかなかった。
「何なんでしょう、この状況……」
「三つ巴の戦いだね。ますます本物がわからないよ」
「アストラさんはその方針を貫くんですね……」
 ハバネロポテチ食ってるアストラにもうツッコめないルーチェ。
 シフカは三人になったシルフィズに近づき、しゃがみこんだ。
「髪の毛さん、髪の毛さん」
「?」
 ひそひそと話しかけられた(本物の)髪の毛がくるっと振り向く。ちなみに他の二体の髪の毛は動かないのでこの時点でモロバレである。
 だが今日のシフカさんは、ポンコツ!
「前に協力してシルフィリアスさんに食べさせようとしたものって何でしたっけ?」
「――!」
 ぱくぱくと口を開ける髪の毛。
 しかし無音。当然だけど無音。
「これでは誰が本物か……」
「いやもうわかったも同然ですよね!?」
 ガチで懊悩してかぶりを振るシフカに誠心誠意の説明をするルーチェ。
 その平和なやり取りの横を通り過ぎてミリムは『暴斧Beowulf』を両手で握りこんだ。
「ミリムさん……?」
「わかりました。わかりましたよ」
 ルーチェの訝しげな視線に背を向けたまま答えるミリム。
 彼女はゆっくり斧を振りかぶった。
「こういう時はだいたい本物が偽物のガワを被らされていて、偽物が本物のガワを被っているトリックがあるはずなんですよ!」
「その理論は前にもどこかで聞いたようなー!?」
「ルーチェさん、その危ない人を止めてくれっすー!?」
 うおおお、と斧でぱっくりやろうとするミリムに後ろから飛びつくルーチェ! そしてそれを見上げながらポテチを食ってコーラを飲むシルフィリアス!
 果たしてここからちゃんと偽物を倒すことができるのか!

●量産化計画
 十分後。
「ふぅ、大変だった」
「何とか倒せましたね」
 アストラとリューインは、ひと仕事終えた顔で額を拭っていた。
 その足元には無惨な姿になった着ぐるみが転がっている。
 ダモクレスさんは、普通に死んでいた。
「これで一件落着ですね」
「そうですね。シルフィさんも無事なことですし」
「何事もなくて本当によかったね」
 振り回しまくった斧を仕舞うミリムと、うんうん頷きあう二人。
 平和だ。
 平穏無事な決着だ。
 三人はせっせと帰り支度を続ける。
 すぐ後ろから聞こえてくる呻き声をスルーしながら。
「ギ、ギブっす……!」
「もーシルフィちゃん、しんぱいしたんですよー」
 シルフィリアスさんが、笑顔のルーチェにハグされていた。
 力が強すぎて骨が軋むけど、ハグだ。
「誤解っす! ルーチェキャノンはあいつを倒すために必要で……」
「やだなー、根に持ってるわけじゃないですよー」
「ぐふーっ!」
 シルフィリアスをミシミシと抱きしめるルーチェ。
 説明しよう! ルーチェキャノンとは魔法で吹っ飛ばすことでルーチェを砲弾にするという連携技のことである! 威力がアップするとはシルフィリアスの談!
「一瞬の隙を突かれて鉄砲玉にされたことなんて全然気にしてませんよー」
「すごい気にしてるっす!? 誰か……蒼眞さん助けてくれっすー!」
 辺りを見回し、目についた蒼眞に助けを求めるシルフィリアス。
 だが青空を見上げる蒼眞は振り向かない。
「見事に絆の力で偽物を見破り、倒すことができたな……」
「なにグッドエンドの雰囲気出してるっすかー!?」
「ところでシルフィリアスさん、ポテチばかり食べるのは良くないです。だからこの野菜ジュースをどうぞ」
「ちょ、また野菜っすかーー!!」
「シルフィさん、余ったポテチパン食べませんか? わざわざ横須賀の色んなパン屋から情報収集して作ったので、ぜひ全部食べてほしいんです!」
「今はそれどころじゃないっすー!?」
 迫りくるシフカの野菜ジュース、大和のポテチパン。ルーチェにハグされてるシルフィリアスに逃げ道はなかった。
 とかやってる一方。
「さて、じゃあこの偽物の着ぐるみも持って帰りましょう」
「この着ぐるみがあれば量産化も夢じゃないかな?」
 偽物が遺した着ぐるみを抱きかかえ、楽しげに話しこむリューインとアストラ。
 量産化された着ぐるみが店頭(?)に並ぶ日も、近そうですね。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。