ナンパは三文の徳

作者:星垣えん

●得しかないらしい
 波の音が静やかに響く、夜の浜辺。
 猛烈な日差しで熱せられていた空気も幾分か冷えて、散歩するにはちょうど良い具合である。深夜でなければ何人か人の姿も見えたことだろう。
 けれど、今はいない。
 夜の海の時間は、優雅に穏やかに、過ぎていた。
 ――片隅で炊き出し所みてーなテントを設営し、こそこそ動いている男たち以外は。
「さぁ、人で賑わう時間まで待機するぞ!」
「おぉーー!!」
「そして女の子がやってきたら片っ端から声をかけるぞ!」
「おぉーー!!」
 音頭を取るブーメランパンツの人――否、鳥の人が威勢よく男たちに指示を出す。ちなみにどいつもこいつも漏れなくブーメランである。惜しげもなく。
「いいか諸君、海といったらナンパだ。女の子に声をかけないなんて海のマナーに反するというものなのだよ。きっと向こうもナンパ待ちなんだ。恐れることはないんだ」
「さすがです教祖!」
「で、でもやっぱりナンパって勇気が要りますよね……だいたい断られそうだし」
「きみは心配性だな。しかし私に言わせればナンパってメリットしかないぞ!」
「本当ですか!?」
 信じられない、とグッと身を寄せてくる信者。
 彼の両肩に手を置いて、鳥さんは微笑んだ。
「まず第一にコミュ力が養われる。見知らぬ人に話しかけるんだから当然だ」
「確かに……」
「第二に、メンタルが鍛えられる。断られるのはつらいが、その分きみの精神は強くなっている。罵詈雑言とかむしろご褒美だ」
「確かに……!」
「第三に、超低確率とはいえリターンがすごい!!」
「確かに!!!」
「ほうら、すごいだろうメリット。ナンパしたくなっただろう」
「ええ! もう今からうずうずしてきました!」
 鳥さんに唆されるまま、信者の目がきらきらと輝きだした。不安のなくなった彼に他の信者たちも寄ってきて「がんばろう!」とか「良い夢みようぜ!」とか励ましてゆく。
 そうして彼らは、期待を抱きながら夜明けを待つ。
 テントの下で正座待機しながら、ひたすら夜明けを待つのでした。

●ヘリポートにて
 ナンパ集団、現る。
 その予知を終始、無表情で伝えたザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は、クールなマスク顔を猟犬たちに向けた。
「というわけなのでな。ひとつ頼む」
 王子は淡々と説明を続ける。
 鳥と信者は深夜の浜辺でひと並びになり、正座して陽が昇るのを待っている。鳥さんの掲げる『海ならナンパしろ!』という教義に則り、海に来る女子をとにかくひたすらナンパしようという心算なのである。
「放っておいては、きっと迷惑になってしまいますね……」
 王子の横に立っていた肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)が、不安げに目を伏せる。今回の動きを調査した者としてちょっと責任とか感じてるのかもしんない。
 王子は彼に頷いて同意を示すと、猟犬たちに向き直った。
「そうなる前にビルシャナを倒してくれ。一緒にいる信者たちは……まぁナンパをするデメリットを強調してやれば目を覚ますだろう。断られるのは普通に悲しいとか、度を越せば警察を呼ばれたりするかもしれん、とかな」
「きっと良いことばかりではありませんよね」
 うんうん、と王子の話に首を動かす鬼灯。
 信者たちがナンパに邁進しようとしているのは、ナンパをすることのメリットしか頭にないからである。ならば「いやいや……」とナンパによる損失を語ってやれば、きっと考え直すはずだ。深夜の砂浜で正座待機とかしないはずだ。
 説明を終えたザイフリート王子は、顎で自身のヘリオンを示した。
「それではケルベロスたちよ。準備ができたら乗ってくれ」
「明日の海の平穏を、守りましょう」
 ぐっと両手を拳にする鬼灯。
 かくして、猟犬たちは夜風の涼しい海辺に向かうことになるのだった。


参加者
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
秦野・清嗣(白金之翼・e41590)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)

■リプレイ


「まだかなぁ、女の子」
「夏の夜ってこんなに長かったですっけ?」
 テントの下に並び、朝日を待つ男たち。
 鼻息荒く正座しているブーメランパンツ集団は、明らかにラインを超えていた。
「こ、怖いです……!」
「マゾ……かな……」
 肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)が肩を震わせ、頭に毛玉(響銅)を乗っけた秦野・清嗣(白金之翼・e41590)が信者らを遠い目で見つめる。
 そんな二人はちなみに水着姿だ。
 鬼灯はトランクス水着にラッシュパーカーを合わせちゃってるし、清嗣も透けた上物を羽織って締まった腹筋を披露している。
 もちろん、それは二人に限らぬ話。
「ルーの水着、似合ってるね」
「リリちゃんもとってもお似合いですわ!」
 水着を見せあっているのはリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)とルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)の仲良しコンビ。
 くるっと回るリリエッタはオフショルダーのサマードレス風、それに拍手するルーシィドは黒いモノキニにパーカーを羽織っている。あまりにも夏。
 その夏感が目を引いたのだろうか。
「あそこに水着の女の子が!」
「きっとナンパ待ちだぜ!」
 テント下の男たちがざわついていた。誰が声をかけるかと相談を始める彼らを見て、七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)は小首を傾げる。
「ナンパされたいなら日中に来ると思うんですけどね。人がいますし」
「そう思うのです」
 こくんと首を振るマロン・ビネガー(六花流転・e17169)。彼女をちらと一瞥した綴は「ですよね」と言ってまた信者らに視線を戻した。
「ナンパが出会いに繋がることもないとは言わないですけど、確率は限りなくゼロに等しいですよね。そこに入れこむのは危険な気がします」
「いいなと思って声をかけたら、こわーいお兄さんや旦那さんとかが出てきた……とか言う事態もあり得ますからね」
 綴の後ろにやってきたベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)が物騒なシーンを空想して目を細めると、マロンがまたも首を縦に振る。
「美味しい話には裏があるのが常なのです。だからモンブランをご馳走されても決してついていきません!」
「「モンブラン」」
 くわっと強めに言ったマロンに、声をそろえる綴とベルローズ。よくわからんけどとりあえずモンブランが大好きなんだなということだけは理解した二人です。
 なんて、ふざけていたらである。
「おとなしく聞いていれば……ナンパをディスることは許さんぞ!」
「「「あっ」」」
 いつの間にか鳥さん率いるブーメランチームが、三人のすぐ近くまで移動していた。
「ナンパのない海など海にあらず! そうだろう諸君!」
「うおーー! そのとおりっすー!」
 鳥さんに煽られるまま、信者たちが雄叫びをあげる。
 ナンパが成就したあとの幸福を夢見る彼らは、夜の砂浜で叫びつづけた。
 だが彼らは知らなかった。
 これからその夢が、粉々に砕かれるということを。
「……フッ」
「な、なんだその『フッ』は!?」
 嘲笑じみた声に振り返る信者たち。
 後ろには、紫煙をくゆらせる玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が立っていた。その目は横から順々に信者たちを見やり、最後の一人を見終えると彼は煙草を片付けた。
「――お前らに問いたい。ブーメランパンツ野郎のナンパを歓迎する女が、世界に何人くらいいると思う?」
「……はっ!?」
 信者たちの視線が、一斉に下半身に落ちました。


 陣内さんは、辛口だった。
「まずお前らはスタート時点からチョイスを間違っている。女にウケたければ流行くらいチェックしておけ、ド阿呆」
「ブーメランパンツではダメだと!?」
「当たり前だ」
 ショックを受ける信者へさらりと言いやる評論家の陣内氏。
 さらに彼は信者たちのだらしない腹を指差した。
「仮に『ブーメラン! セクシー!』と喜んで飛びつく女がいるとしよう。だがブーメランで選ばれるのは顔と体とぞうさんの立派な男だ。パンツの上に乗ったチャーミングな贅肉が目立つ男じゃない」
「はううっ!?」
 自身の腹を押さえる信者たち。わずかなタッチで波打つ腹に一笑した陣内は、横にいる鳥さんに拍手した。
「あいつらの欠点を野晒しにしたまま連れ歩くとは策士だな。女が合コンに『自分よりもやや下の女の子』を連れてくるのと同じ手口だ」
「俺たちを引き立て役に……!?」
「え? いや違う違う」
「そうだぞ君たち。そんなわけがないじゃないか」
 巧みな陣内の誘導によって鳥さんを疑う信者たちに、清嗣が横から割って入ってきてかぶりを振る。
「冷静に彼を見るんだ。引き立て役とか以前の問題じゃないか」
「オモテ、デロ」
「まあまあ」
 清嗣に迫ろうとして陣内に止められる鳥。そのまま鳥と陣内が「ハナセ」と「まあまあ」を言い合ってるのを尻目に清嗣は信者たちに囁いた。
「彼といるだけでナンパは成功率ゼロだぞ。寄ってく前に逃げられるし通報されるかもしれない。動画に撮られて変態登場とか拡散される可能性もある」
「ば、馬鹿な!」
「そそ、そんなことがあるわけが……」
「あるんですよね」
 清嗣の話を信じまいとする信者へ、綴がきっぱりと言いきる。
「ナンパは良い事だらけだと思っているようですけど、決してそんなことはありません。少なくとも相手側に不快感を与えてしまいます。そうなれば清嗣さんの言ったようなことも起こりえるのです」
「不快感を……」
「で、でも教祖は女の子もナンパを待ってるって……」
「それは彼がそう思っているだけです」
「ええ、七隈の仰るとおりですわ」
 綴が信者の縋るような視線をはねつけ、ルーシィドが彼女に同調する。
「知らない殿方に声を掛けられる。それって結構怖いことなんです」
「誘われるだけで……!?」
「はい」
 信者と目を合わせたまま頷くルーシィド。
「想像してください。自分が知らない男の人達に囲まれて、知らない場所へ一緒に行こうと誘われるところを」
「地獄以外の何物でもないですな」
「俺の貞操オワタ」
「そこまでは想像しなくても構いません……」
 自分の尻に手を伸ばす男たち。ルーシィドはこほんと咳払いをしてそれをやめさせ、気を取り直して話しはじめる。
「誘われることが辛い方もいるんです。遊びに誘うだけでも相手を傷つけることがあるんです。ですからナンパは相手を思いやり、常識の範囲でなさるべきですわ」
「迷惑行為はめっ、だよ」
「リリちゃん……!」
 ルーシィドの説得を聞いていたリリエッタが、すぐ横で愛らしい叱責を繰り出す。それに一番ダメージをくらっていたのはルーシィドさんだったが、信者たちも堪えていた。
「確かに迷惑かもしれないな……」
「今のままナンパに勤しめば、積もり積もってナンパ師として悪評が広がってしまいます。結果的にはどんな女性からも相手されなくなりますよ」
「君ら皆それなりにいい男なんだ。ここで未来のすべてをふいにしてしまう気か? あれと一緒に行動するぐらいならおじさんと一緒にナンパしてみないか?」
 肩を落とす信者たちの両サイドから、綴と清嗣が優しく諭す。納得した何人かはそれで砂浜を去っていき、その背中に鬼灯は手を振った。
「あんなに落ち込んで……悪いことをしてしまったでしょうか?」
「そもそも一定以上のイケメンでないとナンパは成功しないのです。だから止めてあげるのが優しさなのですー」
「ははは辛辣」
 鬼灯へのマロンの厳しい返答を聞いた残存信者たちが、泣きながら笑う。
「いえ、人は外見より内面だと思うのですよ。ただ内面がイケメンな人は安易にナンパに走らないとも思うのです」
「やめろォォ!!」
 涙の速度が三倍ぐらいになる信者たち。
「どうせ俺たちなんて……」
「皆さん、気を落とさないで下さい。きっと良いお相手が見つかります」
「そうですね。たとえばあの人はどうです?」
「あの人?」
 鬼灯に頭を撫でられていた男たちが、マロンの指差すほうを見る。
 海だ。暗い海の少し沖に行ったところに、一人の女が立っていた。
「こっち、こっちです」
 黒い長袖のセーラー服を着た女が、何やら手招きをしている。
 なんかもう怪しさがすごい。けど男たちが訝しむことはなかった。
「あれは……都市伝説に聞く『逆ナン』!?」
 舞い上がっておりました。
 誘われるまま彼らは女に駆け寄った。しかし女は沖のほうへ離れてゆく。
「……あれ?」
「消え……た……?」
 そして少し視線が切れた隙に、忽然と女が消えていた。
 どこだ、と辺りを見回す男たち。
 その刹那、彼らの目の前で大きな水飛沫が立ち昇った!
「一緒に……いきましょう」
「ふああああああ!!?」
「ゆ、ゆゆ、幽霊ーーー!!」
 手を伸ばす女から、全力で逃げ出す男たち。
 ばしゃばしゃと逃走する彼らを見て、濡れた黒髪から水を滴らせる女幽霊――幽霊に扮してみたベルローズは満足そうに微笑んだ。
「これでナンパしようだなんて思わないはず」
 一仕事終えたベルローズが砂浜に戻ろうと、水の中で一歩を踏み出す。
 そして、つまずく。
「あっ……私、泳げな――」
「ベルローズさん!? い、いま助けに行きます!」
 盛大にコケてばたばたと水飛沫をあげるベルローズ。心配して注視してた鬼灯がすぐさま助けてあげたから無事だったけど、全身ずぶ濡れだったのでしばらく隅っこでガタガタしてる羽目になりました。


「同志がだいぶ減ったな……しかし諸君は気骨あるナンパ師! ともにナンパをしていこうな!」
「ええ!」
「やったりますよ、ナンパ!」
 信者が半数以下になっても威勢が良い鳥。
 それをじっと眺めていたリリエッタは、隣のルーシィドの目を見る。
「ナンパしたがってるけど、リリなんかで話しかけてくるのかな?」
「大丈夫ですわリリちゃん!」
「じゃあ、行ってみるね」
 ルーシィドに送り出されたリリエッタが、てくてくと鳥と信者の前へと歩いてゆく。
 ふらり現れた清楚なお嬢様(に見える)に、ブーメランパンツたちはすぐに接触した。
「遊びに来たなら俺たちとどうかな?」
「ほうら、あっちに良い感じのテントが」
「リリ、そんなの興味ないよ」
 ぷいっとそっぽを向くリリエッタ。塩対応に信者たちの心が少し削れる。
 ナンパのデメリットを知らしめる――ということでリリエッタはあえてナンパを誘ったのである。
「そう言わずにさー」
「ちょっとでいいから、ね?」
「ちょっともダメだよ」
「いやいやー」
 リリエッタに冷たくあしらわれるも粘る信者たち。その終わりなき応酬を見ていたルーシィドは「あの!」と割って入った。
「リリちゃんはこの後わたくしと一緒に遊びに行く用事がありますから、ご遠慮くださいませんか?」
「えー」
「じゃあ二人とも俺らと遊ばない?」
「いえ、ですから用事が……」
「いいじゃん。大丈夫だって」
 クソ粘りを見せる信者。徐々に押されるルーシィド。
 このままでは――と、思われたときだった。
 耳をつんざくほどの騒音が『ビィィーーッ!』と鳴り響いた! 驚いた信者が音のほうを見ると、そこには防犯ベルを掲げたリリエッタの姿!
「そんな恰好で話しかけてくるなんて変態の痴漢以外考えられないよ。警察を呼んで逮捕してもらうね」
「ちょ、やめろォォォ!?」
「違うから! 痴漢じゃないから!」
「言い訳は警察署ですればいいよ」
「やめてぇぇーー!!?」
 リリエッタに平伏する信者たち。
 警察の圧に怯えはじめる彼らの背中を、鬼灯はさすさすした。
「こういうこともありますから、ナンパは危ないですよ」
「危ない……」
「はい。今回みたいに警察に通報とまではいかないとしても、たとえばビンタをされちゃったりだとか、ひどく嫌われてしまうだとか」
 親身になってお話する鬼灯。
「僕も男ですから気持ちは分かりますが、下心は女の子に見透かされてしまいます。そうなっては成功は遠いかと思います」
「なるほど……」
 鬼灯に諭されるまま、いつしか正座になっている男たち。彼らがすっかりおとなしくなったところでマロンは教鞭(どっから持ってきた)でべしっと砂を叩いた。
「誰かと仲良くしようと勇気を持つのは良い事です。けれど初心者がブーメランパンツでのナンパは必敗しか見えません。皆さんは合コンや同窓会に参加する時にパンツ一丁で行きますか?」
 教鞭ふりふりしながら、信者らの前を往復するマロン。
「場所選びは悪くないです。海には出会いを求める女の子もいます。手始めにまず清潔感のある服を着て、少人数で組んで女子グループにアプローチしましょう。アイスや飲み物を奢るとか、写真撮影を手伝うとか」
「は、はぁ……」
「いっそ海の家のバイトから始めるのも手です。観察眼を養えますし、懐も潤って心に余裕も出来ますし。最終結果は良くなるかも知れませんよ」
「なるほどぉ」
「では先生。海以外ならどこがオススメですか?」
「海以外だと――」
「いや待て諸君。ナンパ道なら俺が」
「いま大事なところだから黙って!」
「ぶべっ!?」
 しゃしゃり出てきた鳥をはっ倒してマロンの話に身を乗り出す信者たち。もはや彼らの耳に鳥の教えは響いてこない。熱心にマロンの教えを傾聴するさまはまるで講義だ。実はマロンさんが恋愛経験なしとか知れたら暴動不可避だと思う。
 あ、ちなみに鳥さんの駆除はそれからサクッと済んだようです。

「明日は朝からビーチだったっけ。そういやバタバタしていて水着を用意するの忘れてたな……」
 穏やかな海を見上げながら。
 陣内は、沖縄にいる恋人と電話を交わしていた。沖縄にある彼の実家で一緒に夏休みを過ごしているのだ。何とも仲睦まじいことである。
「なに? 水着用意してくれてた? さすが、気の利く女。ありが――ブーメランはダメ、絶対! 元あった場所に返してきなさい!」
 うん、仲睦まじい。でなきゃブーメランパンツとか用意できねえ。
 電話口での熾烈な攻防を聞きながら、綴は星空を見上げた。
「さてと。せっかく星が綺麗ですし、少し観ていきましょうかね」
「うん、それもいいよね~。俺は男の子たちと遊んでいくよ~」
 綴に同感するものの、遠くで待っている元信者たちを指す清嗣。
「いつの間に仲良くなっていたのですか」
「ふふふ、まあそのあたりは年の功というかね。色々と話を聞いてあげるんだ~。それで良い子がいたら夜まで……ね」
 嬉しそうに笑う清嗣。もちろん綴は深くは訊かずにおきましたよ。

 他方。
 波打ち際には、並んで散歩する鬼灯とベルローズの姿があった。
「それにしても、ベルローズさんと会うのは久しぶりですね……お仕事ですけど今日は会えてよかったです」
「ええ、お久しぶり……それとパーカーありがとう」
 羽織ったパーカーを摘まむベルローズに、いえいえと笑う鬼灯。
「転んだときはびっくりしました。怪我のないようにして下さいね」
「そうね、気を付けるわ」
 波の音を聴きながら。
 たわいない会話は、続いていった。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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