「──呵呵ッ、何とも気分をアげてくれる風じゃねーか」
豆粒のような人波を見下ろしながら、高層ビルの屋上で嗤う男がいた。
長い首巻きを吹き上げる風に揺らしながら、黒尽くめの衣で縁に立つ巨躯。手には鋭い鉄甲、腰に長い刀、懐にも凶器を忍ばせる罪人──エインヘリアル。
雲ひとつない蒼空を心地良さげに見上げて、そして再度、町並みを行き交う人々の姿へ視線を移して。
空を歩くようにビルからビルへ移りながら、頭巾から覗く瞳に愉しげな色を浮かべる。
「楽しめるだけの腕を持ったやつがいるかは、判らねーけどな。それでも、一方的に蹂躙すんのも悪くねえ」
空中散歩できるような高層建築郡に、吹きすさぶ風。こんな環境で腕を振るえるならそれだけで愉快なのだから、と。
段差を降りるかのように足場を蹴って、罪人は宙へ踊る。風を全身に浴びながら、直後には地面へと降り立っていた。
「すぐに静かになってくれんなよ」
人々が騒然とする、その頃には罪人は高速で走り抜け刃を振り回している。
血潮が飛び散って、命が次々に斃れゆく。その中で罪人は風のように跳び、跳ね、愉悦の声を上げて。我が世の春を謳歌するように、殺戮を続けていった。
「集まって頂きありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日出現が予知されたのはエインヘリアルです」
アスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
放置しておけば無論、人々が危機に晒される。
「そこで皆さんには、この敵の撃破をお願いしたいのです」
戦場は高層の建築が立ち並ぶ市街地だ。
碁盤の目状に道が敷かれていて、道を建物が挟んで立っているという景色が広がっている。
エインヘリアルはその建物の何処かの屋上に出現するようだ。
「一般の人々の避難は事前に行われますので……皆さんは道路上か、もしくは建物の上などに陣取っておくといいでしょう」
その上で上方に警戒をしておくと先手を取られずに済むかもしれませんと言った。
「この敵ですが……機敏な動きを活かした攻撃を得意とするようですね」
こちらが道にいても建物上にいても、狙えると判断すれば素早く仕掛けてくるだろう。建物の陰や高所など、死角に潜んで狙うこともしてくるようなので注意が必要だと言った。
「此方も複数の仲間を活かしての挟み撃ちや、建物を利用した戦いをすると良いかもしれません」
いずれにせよ、相応の実力を持った敵なので警戒を、と言った。
「それでも、皆さんならば勝利をつかめるはずですから。是非、頑張ってくださいね」
イマジネイターはそう声音に力を込めた。
参加者 | |
---|---|
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231) |
クレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631) |
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306) |
霧崎・天音(星の導きを・e18738) |
朱藤・環(全ゴリラの推し・e22414) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
香月・渚(群青聖女・e35380) |
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615) |
●蒼空
人の去った街は、静けさにビル風だけが吹き抜ける。
ただ、そこに確かに剣呑な気配も混じるから、香月・渚(群青聖女・e35380)は上方を仰いでいた。
大通りの一角から、建物の輪郭に切り取られた青空に異常は見えない。だがそのときは近いのだと確信にも似た気持ちを抱くから。
(「みんな、準備はいい?」)
と、言葉を合図で送れば、こくりと小さな頷きを返すのが彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)。少し離れた位置で警戒しながら、同じく違和を感じ取っていた。
「もうすぐのようですわね」
「そうですね。きっちりと迎え撃ちますよー」
ぎゅっと自身の拳を握るのは朱藤・環(全ゴリラの推し・e22414)。道を挟んで反対、死角を潰す位置に陣取りながら気合を入れている。
と、柔く垂れたその猫耳が、仄かに動いたのは確信を得たからか。こがねの瞳にビル上の空を映して──。
「屋上の方みたいですね」
「うん」
背中合わせの立ち位置。建物の影から注意を払っていた霧崎・天音(星の導きを・e18738)も天を見上げていた。
「そろそろ敵の攻撃も収まってくれるといいんだけど……そうは行かなそうだね……」
情勢は変われど争いは絶えない。
今目の前にやってくる戦いも、同じく逃れ得ぬものだから。
ふわりと紅の髪を棚引かせ──天音は仰いだままに、脚に力を込める。
「あの影……間違いない」
地上よりも僅かにだけ空に近い、ビルの上。
同高度の屋上が周囲に幾つも並ぶ、その一つで──肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)は蒼空から舞い降りてくる黒い巨躯を見つけていた。
着地するするのはおそらく──遠くない建物の上。
「エインヘリアルです」
「皆に知らせますね」
と、傍の宙を翔びながら応えるのは瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)。
敵影の死角を取るよう、回り込んで飛翔しながら──合図と共にメッセージアプリに発見の旨を伝える。
その頃には、ビルの屋上にその巨躯──罪人エインヘリアルが着地していたが。
「……? 外れか」
頭巾から覗く目で見回すその罪人は、違和感に呟いた。屋上にも地上にも、思った獲物がいなかったからだろう。
その一瞬が、大きな隙。
はらり、はらり──不意に、吹き上げる蒼風に交じって薄紅の花弁が踊った。
それは隣の屋上、その給水塔の陰から姿を見せたクレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)が舞わせる魔力の花吹雪。
その香りと煌めきが番犬達の意識を研ぎ澄ませ、狙いを鋭敏にする。
「さあ、これで」
「──ああ」
それを機に、微かに低いビルから跳び上がるのがハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)。
風に乗るよう、一息に巨躯の足元にたどり着き。伸ばした手から領域を展開、その内部より輝きを帯びた刀を抜き出して。
「交戦開始」
靡く髪を元来の白色へと変貌させながら一刀。蒼空ごと叩き切るよう、鋭利な横一閃を見舞ってみせた。
罪人が僅かによろめけば、ハルは皆へ言ってみせるように。
「こんな男を野に放てば多くの犠牲が出る。ここで決着をつけるぞ」
「──了解です」
と、そこで鬼灯が横合いから肉迫。理性を保ったままに暴走状態の力を引き出して──。
「見せてあげますよ」
本当の僕の怖さを、と。
煌々と明滅させるのは炎、水、雷、毒、酸、石、氷、刃、その特性を揺らめかす八匹の大蛇のオーラ。
『鬼哭啾啾・夜刀神』──その耀を纏った鬼灯は食らいつくよう、灼き、凍らせ、蝕み切り裂いて。八重の衝撃で巨躯の心ごと抉る。
罪人が惑う、その一瞬の間隙にクレーエはビハインドへ呼びかけた。
「桜」
こくりと肯く桜が細枝を絡ませ巨体の脚を引きつける。同時に、翼を輝かせて傾ぐ罪人へ迫ったのが右院。
「これで、落とさせてもらいます……!」
刃を突き刺しながら、躊躇わず組み付いて。強烈な慣性のままに己と罪人を空中へ投げ出させた。
「さぁ、行くよドラちゃん。頼りにしているからね」
墜ち始めた罪人の姿を、空に捉えて渚は翼を広げる。鳴き声で応えた匣竜も共に羽ばたき空へ飛び立っていた。
「みんなも!」
「はいっ、行きますよー!」
環も力強く頷きながら──手を翳す。
すると空中へ飛翔するのはステルス能力を持つ小型無人機。特殊隠密部隊『ライ』──複数機で円陣を作りながら高電圧障壁を展開すると、上方から加速して。
「今ですっ!」
罪人の躰にだけ障壁が当たるよう急降下。弾ける閃光と共に直下へ衝撃を齎して、巨体を下方へ加速させた。
罪人は宙で体勢を立て直そうと藻掻く、だが右院がそれを許さない。その間に渚が雷光色のオウガメタルから粒子を振り撒いて。
「お願い!」
「──うん」
それを受けた天音が靴装の出力を増大。拡がった翼部分から炎を噴出させると、己自身からも焔を翼のごとく閃かせて跳躍。
火の粉の軌跡を描きながら一瞬で肉迫し一撃。廻転蹴撃を打ち込み罪人だけを斜め下へ吹き飛ばす。
それを見上げる紫は明滅する言霊へ呼びかけた。
「万物の言霊よ、私の声に応え、神秘の力を与え給え!」
声に応じ、淡く耀く『妖幻の言霊』は──紫に宿って魔を討つ力を与える。
その聖なる輝きを紫電の宝刀に携えて、紫は跳びながら流麗な斬撃。ラベンダーを薫らす剣閃で、罪人の躰を打ち落とした。
●剣戟
薄く立ち昇る粉塵の中で、罪人はゆらりと立ち上がる。
「とんだ不覚だ……だが、上物の獲物だ」
血の雫で地を汚しながら、それでもその声音は愉快げだった。
「これなら存分に愉しめそうだぜ」
「闘いに楽しさを求めるなら、似たような思考の持ち主とだけやってくれればいいのに」
もー、と。腰に手を当てながら、環は小さく頬を膨らます。
「勝手な都合で巻き込まないでほしいものですよー」
「戦ってれば、自然と楽しくなるさ」
罪人は笑いと共に応えながら──後退して真横に跳び、建物の陰に姿を消した。微かな足音だけを残して、後は位置を探るのも容易でないほどに。
紫は抜け目なく周囲をぐるりと見回しながらも声を零す。
「どこから攻撃が来るか分からない、中々手ごわそうな相手ですわね」
「……」
幾分低い場へ移ったクレーエもまた、仲間と死角を潰し合いながら心は同じだった。
陰に身を潜め、機を吟味して獲物を狙い、奇襲する……それはどこか大型の猫型猛獣のようだと思いながら。
或いはその見た目どおりに──。
「まるで忍びだな」
ハルもは呟きながら視線を奔らせる。
素早く陰から陰へ、移動する敵の気配を確かに近くに感じる。だから右院もハルに並び立ちながら、刃を握り気を緩ませない。
「それにしても機敏……っていうと俺やハルさんと大体同じですね。まぁ俺は器用貧乏で、同タイプと戦うときは相手の苦手を探して搦め手で立ち回るんですが……」
隣の芝生は青く見えるんですよねぇ、と呟きながらも──ふと挑戦的に視線を流してみせる。
「どちらが捕らえられるか、勝負してみましょうか」
言うと同時、ビルの間へ翔け出す。
臆病な内心は、早くも背伸びした自分の発言に後悔し始めていたけれど──ハルはそれに応ずるように逆側から疾駆していた。
「どちらにしろ、まずは動きを封じなくては話にならんからな」
言葉が暗がりに反響する頃には、ハルはもうビルの裏手。飛び降りながら、丁度右院と挟み撃つ形で罪人を発見している。
瞬間、連撃。罪人が避けるよりも疾く、ハルが疾風の如き剣撃で傷を刻みつけた。
罪人は別の場へ飛び移ろうとするが──無数の花弁が舞い上がり視界を染めて阻害する。クレーエの傍らで、桜が生み出したもの。
「桜、ありがとう」
走るクレーエが言うと、花の残り香を香らせながら桜は小さく頷く。
直後にはクレーエ自身が降下。流星の如く光を纏い、痛烈な打力で罪人を大通りへ叩き落とした。
「やってくれるじゃねーか!」
罪人は起き上がりざまに苦無を撒くが──防御態勢を取った右院が地上へ。衝撃の多くを受け止めてみせる。
「少々お待ちを。すぐに治療を行います」
同時、鬼灯が漆黒色の鎖を波打たせていた。
ひゅるり、素早く振るわれたそれは濃密な魔力で円を描いて守護の魔術を成す。その耀く光が眩く温かく、傷を祓うと共に身を守る加護を与えていた。
「もう少しです」
「それじゃあ、任せてね。ドラちゃんも!」
と、渚が言えばドラちゃんが癒やしの雷光で治癒。渚も起爆スイッチに指をかけて。
「さあ、援護するよ」
閃光の如き爆発を起こすと、七彩に耀く鮮やかな煙で前衛を万全に保ちながら、その力までもを引き上げた。
「これで強力な一撃をお願いするね」
「分かりましたっ!」
それに頷き駆け抜けてゆくのが環。
罪人がはっとして下がれば、更に速度を上げて距離を詰め──巨体がビルの壁へ飛べば、自身も猫の如く三角飛びで追いついて。
敵が素早さを活かす分、少々対抗心も抱きつつ。
「逃しませんよ!」
環は宙でくるんと翻って踵落とし。下方への衝撃で罪人を再び地へ落とした。
呻きながらも起き上がる罪人、だがそこへ紫が迫る。
「隙は作りませんわ」
清楚に言ってみせながら、動きは疾く、仕草は優美に。奔らす剣撃までもが光を浴びて美しく煌めいて。
「華麗なる斬撃の弧を、ご覧あれ」
刹那一刀、巨躯の脚を斬り裂き血潮を散らせた。
「はっ、まるで自由が無え。本当に使い手だらけじゃねーか」
罪人は苦渋を交えながら、変わらず喜色を滲ませる。
充実を得ているような声音。だから天音は焔を噴いてその眼前へ突き進んでいた。敵の内奥を真っ直ぐ見つめるように。
「どうして、罪人となったの」
「好きに戦ってたら閉じ込められただけさ」
罪人は些事だというように嗤っていた。
「戦えなかった分、今は最高だ。お前らも楽しいだろ。そのために戦ってんだろ?」
「私は──他の人を守るために戦う……」
勇ましく、真っ直ぐに。
濁った目を見返す、澄んだ天音の瞳。そこには確かに心が宿っている。
だから、と。
「囚人相手には、絶対に負けない」
瞬間、獄炎を滾らせながら隣に残霊を喚び出していた。
残霊の渦巻かせた鮮烈な氷気が焔と束ねられると、風を纏う球体の波動となる。『氷炎・天地太極波』──放たれた衝撃の連鎖が、爆発的な威力で巨躯を貫いた。
宙へ煽られる罪人。その一瞬に鬼灯は漆黒のオウガメタルを揺らめかせて魔力を纏う粒子を飛散させていた。
風に乗って皆へ溶けゆくそれは、魂に働きかけるよう意志も狙いも鋭敏にしてゆく。
「これで、攻撃を」
「判った」
応えるハルは既に巨躯の上方。
縦に、横に、斜めに。剣撃を踊らせ、斬線を滑らせて。舞うように、それでいて鋭く膚を捌いていた。
「どうした、調子を落としているじゃないか」
「く……!」
罪人は言葉も返せず地へ降りる、けれど鈍った動きで逃れられるはずもなく。
「手加減は、しませんよ!」
罪人が見上げる、そこに跳躍から落下する環の姿。
その手に握る槌は“鬼憑”。相棒から貰った、その一振りで──ありったけの力を込めて一撃。氷の欠片を散らせながら巨躯を打ち据えた。
●風
血溜まりの中に手をついて、罪人は掠れた息を繰り返す。
「まさかここまでとはよ……」
呟きには、己の死を予期する暗さが垣間見えた。それでも、愉悦も消さぬまま──即座に自己治癒しながら間合いを取ってゆく。
「どこまでも俊敏で──最後まで、厄介な相手だね」
渚は言いながらも、じっと見据えて。
「でも、ボクたちは負けないよ」
「ええ。頼もしい仲間たちと一緒なら──怖くないですわ」
心同じく、紫はとん、と地を蹴って。頭上から一気に距離を詰めながら駆動剣を高々と掲げて。
「その加護を、うち砕いてあげますわよ」
靭やかな着地と共に縦一閃、罪人の得た力に亀裂を入れた。
「あと一撃、お願いしますわ」
「任せて」
と、飛び退く紫と入れ替わりに零距離に入るのがクレーエ。
きらりと燦めく獅子意匠の星剣に、夜空色の力を纏いながら。振り抜く斬閃で巨躯の腹部を斬り裂いて、その加護を消滅させてゆく。
「まだ、だっ……!」
罪人は血を伝わせながらも、護りを捨て番犬達の中枢まで踏み込んできた。
だが振るわれる鉄甲の一打を──防ぐように光が耀く。
それはクレーエが行使する魔術障壁。顕現するのに己の身を削らねばならないが──確かに拳を弾くように押し返していた。
「これで、大丈夫……!」
「待ってて」
と、直後には渚が治癒の魔法矢を放ちクレーエの生命力を保つ。
罪人は連撃を狙っていたが、既に鬼灯がその懐へ。苛烈な打突を撃ち込むことで、肋を圧し折ってみせた。
「このまま、畳み掛けてください」
「うん」
短く返した天音は、両腕にパイルバンカーを抱えて。ふらつく巨体へ容赦なく、杭を放って両肩を貫く。
そこへ環も、右院とハルと視線を交わしながら奔った。
「一気に行きますっ!」
言葉と共に、流動するスライムを槍の如く形作り一撃。
罪人の腹部を穿つと──宙へ翔け上がった右院が間を置かず、耀く魔力の塊を撃ち出し巨体を後方へ飛ばす。
そこへ領域より具現化した無数の刃を差し向けるのが、ハル。
「仕上げと行こう」
声音は静風の色のまま。
飛翔した刀剣が一斉に貫いた後、その刃ごとハルの二刀が巨体を両断する。
「さよならだ」
『終の剣・久遠の刹那』。残酷なまでの威力を誇るその剣撃が、罪人の命を霧散させて永遠の終わりを齎した。
戦いの終わった道に吹く風は、不思議と爽やかだ。
頬を撫ぜる夏の温度を感じながら、右院は武器を収めて息をついていた。
「終わりましたね」
「そうだな」
頷くハルの髪も、墨をさしたように艷やかな黒に戻っている。
見回せば周囲は静寂で、敵の残滓も残っていない。それが確認できれば、紫は皆へと視線を巡らせていた。
「皆様、お怪我はありませんでしょうか?」
それには皆が健常な返事をしてみせる。
「無事、みたいですね……」
良かった、と。戦時より幾分優しい吐息を零すように。鬼灯は小さく呟いていた。
皆に怪我も残っていなければ、直すべきは景観だと。クレーエは桜と共に瓦礫の方へ歩み出す。
「それじゃあ、荒れたところだけちゃんとしていこうか」
「私も手伝いますねー」
と、環も細かな破片を拾ったりヒールをかけたり。皆と共に作業を進め、戦いの跡も窺えぬほどに美しい街並みを取り戻していた。
人通りも戻ってくれば、天音は空いたお腹を軽くさすって。
「お店も、あるみたいだし……みんなで一緒に何か食べていかない……?」
「いいですねー。もちろん行きますっ!」
環が瞳をきらきらさせれば、渚もドラちゃんがひと鳴きするのに微笑む。
「ドラちゃんも賛成みたいだし、ボクもいこうかな?」
「決まり、だね……」
そうして天音が歩み出すと、皆もまたそれぞれに場から離れて。夏風と、平和な日常の景色だけがそこに残っていた。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年8月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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