実はあれ、制服なんだぜ

作者:久澄零太

「世の中は今、学校に行けたり行けなかったりして大変だが、それはそれとして水着で登下校したっていいと思うんだ」
 ちょっと何言ってるか分からないかもしれないが、これは日本語ではなくビルシャナ語だから、何も間違ってない。その分読んでも訳わからないだろうから、後半だけ読んでくれればいいよ。
「一般的に制服と言われる学生服。体育などの活動的な場面で着用する体操服、そして水泳の授業でのみ登場するスクール水着……これらは全て、れっきとした学校指定の制服である」
 だからなんだ、とかツッコんじゃダメだよ、正気度が削れるから。
「ならば、ただでさえ暑い世の中、少しでも涼をとるために水着で過ごしても許される……それが、学舎というもの。そうだろう、同志達?」
 信者達を前に男女のスク水を吊した物干し竿を旗のように掲げて、鳥お化けは吠える。
「行こう、同志諸君。子どもたちを熱中症から守るのだ……」
『イェススクール! ゴースイムウェア!!』

「みんな変態だよ!!」
 盛大に叫んだ大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)がシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)に組みつき、服をはだけさせようとしているように見えるが、実際は。
「何故止めるのですか?我々番犬はいかなる姿で活動しようと許される権利があるはずです」
「それは服装の話でしょう!?会議室で脱がないでよ!」
 荒ぶるシフカを黙らせて、頭に「反省中」の看板を乗せた彼女を正座させてからユキが言う事には。
「水着こそが学生服であるべきであるってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの!」
 いつものアレか……って顔した番犬達は天を仰いだ。
「敵はみんなをカッチリした学生服姿にして蒸し焼きにしたり、逆にサイズが合ってないスク水にして動きにくくしたり、水着姿じゃないと恥ずかしくなる洗脳をしてくるよ!」
 なお、この台詞は多分読み飛ばしていい。出番ないから。不思議だよねー、どうしてそんな事になるんだか……。
「一応、不測の事態に備えてブリジットちゃんが同行するけど……」
 と、示したブリジット・レースライン(セントールの甲冑騎士・en0312)は。
「ほう、随分と動きやすそうだ。効率的だが、やはり問題なのだろうな……」
 微妙に説得面では役に立たなそうな様子である。
「あんまり関わりたくない相手かもしれないけど、しっかりお願いね?」
 上目遣いに見つめる白猫を前にして、番犬達は彼女の後ろでいつのまにかスーツ姿から胸元が開いたレオタードになっていたシフカについて、触れるべきか否か迷って言葉を飲むのだった。


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
ディッセンバー・クレイ(余生満喫中の戦闘執事・e66436)
ケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)

■リプレイ


「前のお仕事では新作水着のモデルありがとね~宣伝効果バッチリで私の報酬も大幅アップで食費ゲット!社長も大喜びで、これ二人に御礼だって」
「がるる……!」
 エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)は所属するブランドの提携グループから送られた商品券を差し出すが、ブリジットはユキを盾にして威嚇モード。
「前回の件で警戒してるみたい……」
「そっかー……でも大丈夫!スク水に代わる夏の装いを推すのに『Vene Havfrue』新作サマードレスだから!じゃ、またお着換え、お願いね~お仕事だからね人命救助のためだからね是非もないよね」
「断固拒否する!!」
 ブリジットが後退しながら鋭い眼光を向けて。
「人命救助の要素が欠片もないだろう!?」
「あるよ?二人の写真は私のお腹を救助……もとい、信者の説得材料になるんだよ?」
 既に食欲に沈み切っているエヴァリーナだが、その傍らで。
「梅雨明けましたけど、今年は冷夏っぽくなりそうですね。まあ、それは兎も角ユキさんにお土産持ってきましたよ」
「本当!?ありがとー!」
 期待にそわそわするユキに対して、白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)が取り出したのは。
「あれから二年……そろそろサイズが合わない頃かと……」
「なんでスク水なの!?」
「ユキさんなら、やはり白かな、と……」
「色の問題じゃなくてね!?」
 二年前にもこんなことあったな……。
「ところでユキちゃん、私、大事な情報をまだ聞いてないんだけど?今回の鳥さんが持ってる美味しいモノかお仕事上がりにいいお店は?」
「今回はそういうのないんだけど……ブリジットちゃん!?」
「うっ……殺せぇ……」
 人派の姿にされたブリジットはシャンパンゴールドのサマードレスに、普段の略式兜を模したバレッタで髪をまとめていた。足元はホワイトサンダルでアクティヴに。手には大型のブラウントートバッグ提げて裾の広がる服とバランスを整え、モノクロスクエアのイヤリングでアクセント。
「ねぇ、美味しい、ご飯は?」
 おっとユキがエヴァリーナに捕まった!
「そっちメインにされたら困るから隠してるんでしょう!?」
「いい加減にしなさい……」
「モギュッ!?」
 アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)がエヴァリーナの口に真っ赤なクッキーをねじ込んだ瞬間、即KO!アルベルトが水を飲ませて介抱するが、もうだめかもしれない。
「我が義妹ながら恥ずかしいわ……うちの子の食欲も、事件も変態も、時を選ばないわね。万が一にもご来賓の目に入らない様に早々に消毒しなければ」
 アウレリアに続き番犬達が下りていく中、ユキがスマホをちょいちょい。
「あ、たい焼き屋さんがあるって」
「オヤツ!!」
「本当に現金なんだから……」
 途端に復帰したエヴァリーナを見送った直後、ユキは後ろから襲われ……。


「子どもたちを熱中症から守るのだ……」
「スクール水着で登校っすか。と言うことはっすよ。当然男はパンツ一丁っすよね。ほらみんな早く脱いで脱いで」
 鳥さんの説教に対して、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が両手を振ると、信者が痴漢を見る目を向けた。
「人にスクール水を着せて、自分はスクール水着着て街中を歩くのは嫌だなんて言わないっすよね。制服は冠婚葬祭にも使うっすから結婚式も葬式もパンツ一丁で出席っすね」
「うわ、変態……」
「いやいやおかしいっすよね?学校制服は礼節においても、きちんとした礼服の一種として扱われているっす。かしこまった場面で着ててもおかしくないっすよね?」
 迫りくるシルフィリアスに、鳥さんはすごく穏やかな顔。
「お嬢ちゃん、TPOって知ってる?」
「学生生活の全てを水着で過ごさせようとするお前がそれを言うんすか?」
 食い違う二人の意見。どこでずれたかってーと、まず『成人男性が学ランで葬式に出てる』状況を考えてほしい。礼服は高価だが、『そこ、ケチる?』と空気読めない奴の烙印を押されるはず。鳥さん的には、大人が子どもの制服を着るのは論外って話になってしまうのだ。
「単純に露出が増えれば涼しいというのは甘い認識ですね」
 突然の声に鳥さんが振り返ると、フェンスの上にディッセンバー・クレイ(余生満喫中の戦闘執事・e66436)。
「いつの間に、私の背後を……?」
「執事とは、気配を遮断し主人の傍らに控え、ご用命の際にのみ姿を見せるものですから」
 都合のいい使い魔みたいだが、その辺はさておいて。
「コスプレを例に考えてみましょう。サブカルに熱意を燃やす皆様は、キャラクターの再現に全力を尽くします。暑さ寒さへの我慢は、冬でもミニスカートをはき続ける女学生の如し。おしゃれとは、忍耐なのでございます」
 辛くても、外見の良さを優先するってやつだね。
「しかし、それで熱中症に倒れたり、風邪をひいては元も子もありません。そこで素材や創意工夫にこだわるのです。水着の生地は耐水性はあっても涼感は低く、吸汗性はイマイチですし、露出が多いと日焼けによるダメージの危険もあります。ニットやリネン、あるいは最新鋭のクールビズ生地を使えば、普通のシャツでも充分に涼しさを感じる事ができますよ」
 ディッセンバーはおもむろに執事服の上着を脱ぎ、その内側をひらり。
「私がこの格好で平気なのも、そういった工夫の賜物なのです。これを作った義弟が言うには「環境耐性が二十くらいある」そうで……どういう意味ですかね?」
 行為判定に二十五パーセントのボーナスが乗るんじゃないかな……訳が分からない人は並行世界を覗いてみよう。真っ赤な弟さんが工房持ってるかもしれないから。
「というかですね、あなたは羽毛があるから暑いのでは?ちょっと刈りましょうか」
「そうっすよね、毛皮なんて着てないで早く脱いで脱いで」
 ディッセンバーの影から湾曲した双剣が飛び出したかと思えば、柄が連結して鋏になる。蠢くシルフィリアスの髪が椅子を編むが、座ったら絡めとられる系のトラップでしかない。これに対して、鳥さんは……。
「いや、私が羽毛を脱ぐとか、君たちが頭髪の脱毛するのと同じなんだが?先に丸坊主にでもなるのかね?」
 真顔で返された。しかし、ここで引くほど、この部隊のメンツに常識なんてものはない。
「あの、私はきちんとマナーを押さえているのですが……」
 ディッセンバー、あの太陽機に乗った時点でお前もクレイジー枠だ。
「学校の制服可愛いっすよね。常に水着で制服を見る機会がなくなるのは損失っす」
 くるくるふわり、その場で回ってセーラー服をアピールするシルフィリアス。スカートの端をつまみ、ほんの少しだけたくし上げて一礼。
「同様に、制服を着られなくなるのは学生にとっても損失っす」
 彼女の意図を察し、ディッセンバーが鋏をショキショキ。
「水着を強要するというのなら、あなたもまたサマーカットを強要されてしかるべきなのです」
「私は選択肢を用意しただけで強要はしてな……」
「お客様一名ご来店っすー」
「本日はビキニカットでよろしいですか?よろしいですね?」
 紫の髪と銀色の鋏が鳥さんを襲う!!


「全く……良い大人が何をしようと言うの。ちょっと貴方達、そこに座りなさい」
「うるせぇ黙ってろ!」
 信者はカットされている鳥さんを何とかしようと、それどころではな……ズガァン!!
「三度目はないわよ。いいから、座りなさい」
『あ、はい』
 発砲して黙らせたアウレリアが信者を正座させるが、改めて現場の説明をしよう。実はここ、閉鎖中の学校の屋上なのである。ディッセンバーは落下防止のフェンスに立っていたのだが、問題はその足元である。
「いいこと?子ども達の熱中症対策と言うならば旧態依然として未だに空調管理が行き届いていない教室の問題。通勤時間ともろ被りで人密度の高すぎる公共交通機関での通学問題。考えなければならない事は山程あるというのに貴方達は本当に何をやっているの?今の貴方達の主張と姿を冷静に省みて御覧なさい。その姿をご家族に見せる事は出来る?ご両親が泣くのではなくて?貴方達にも学生時代はあったでしょうが、当時の貴方達が今の姿を見たらあんな大人にだけはなりたくないと思うのではなくて?……ちょっと聞いているのかしら?」
「脚が……脚がぁ!?」
 炎天下にさらされた白いコンクリートは鉄板並みの熱を持ち、反射する太陽光と熱すら信者を襲う。さらに、蓄積された熱は地表数十センチまで上って、正座した信者を蒸し焼きにするのだ。
「根本的な問題から目をそらして水着になればいいだなんて、あまりにも安直だとは思わないかしら?」
 アウレリアが話を続けようとすると、信者……と、一緒に並んで正座していたアルベルトが挙手。
「何よ、今大事な話を……あら」
 信者が数名、熱中症で倒れた。
「まったく軟弱ね、子どもたちは……」
 アルベルトがおててぶんぶん、一旦嫁を黙らせて、気絶した信者を大慌てで室内へ運ぶのだった。
「涼しい服装、とあらばくのいち衣装と思ったのですが……」
 無事生存した信者を前に、明日香はやたら布地が少ない和服を構えるが、じー。
「男性しかいない……しかも汗臭い……」
 露骨に顔をしかめると、一枚の写真を取り出して。
「皆さんスク水はお好きですか?」
 まさかの、白スク水のユキ……これを撮ってから降下してたのか。無理やり着せられてへたり込んでいたところに、とっさに顔を隠そうとして目元だけ隠された写真という危ないショットで。
『スク水!』
 信者が釣れた。
「白もよいものでしょう?というわけで、はい」
 明日香は信者に褌を投げつけた!
「男は褌でも履いていなさい!」
『何故!?』
「それで涼しいでしょ?こちらには全裸になる人も……あ、今回は着てました……男の全裸は勘弁ですよ?」
 カビを見る目で見下す明日香の傍ら、遠い目をするのがシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)。
「スク水って、意外と不便ですよね……」
 胸元に切込みを入れて、むりやり胸を納めたシフカだが、何故スク水なのか。
「誰かから「説得は服を着る方向でお願いします」と言われた気がしまして、全裸にはならなかったんですよ。えぇ、『全裸には』」
 会議室で着てたレオタード水着と変わらないんだが?
「布地面積は普通より少ないですし、汗も乾きやすいんですが、通気性はあまり良くなかったですね。熱がこもりやすく、熱中症の危険があります。本末転倒もいいところじゃないですか。それに布地面積が少ないという利点は、虫に刺されるリスクを高めることに繋がります」
 まさかのスク水逆効果説が浮上!これには信者さんもアイス屋さんに寄って体を冷ましてからゴーホーム。シフカが腕を組み胸を持ち上げると、カパァ……水着に施したスリットから覗く、二つの膨らみによる門が開くと、熱が噴出。
「後、女性の中には体型がわかりやすい服装を好まない層もいます。そういう人達からは不評でしょうね」
「鳥の次は巨乳を刈ってやるっすー!!」
 シルフィリアスご乱心!紫の髪がシフカを狙う!
「胸の谷間を開いて放熱とか、見せつけてるんすか!?」
「おや、見せつけてほしいんですか?お望みとあらば仕方ありません……」
 水着の肩ひもを滑らせようとするシフカだが、右手をディッセンバーが、左手をアウレリアが掴む。
「淑女がそんな簡単に肌を晒すものではありませんよ」
「Rマークがつくようなことは避けて頂戴」
「く、皆さんまで私の普段『姿』を否定するのですか……!」
 そこで普段『着』じゃないあたり、お察しである。


 さて、残りはケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)とマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)。見た目真面目ちゃんポイ人馬と、常識人枠の好青年。こっから先は安心……。
「スク水……を超えるような、トラディショナルでありながらアバンギャルドな一着をチョイスすればいいんでしょうか?だとしたら、紙おむつ一択ですね」
 できねぇ!?この人馬何言ってるの?暑さに当てられて熱暴走しちゃってるの!?
「ほら、高分子吸収材とかって聞くと、ケミカルで最先端ぽくってカッコいいじゃないですか!それに、赤ちゃんが穿いても大丈夫なくらいお肌にやさしい。つまり、穿き心地は折り紙付き!この国の技術はおそろしいですね」
 おいバカやめろ、日本をなめ腐ってると思われるぞ!?
「日本の技術ならば鳥さんだって改心できる。そう信じてるからこその選択です」
 大型の夏用紙おむつを取り出したケイトが見たものは……。
「うわぁ」
「せめて、笑ってはくれないか?」
 胸と腰だけ羽毛を残して、ビキニスタイルでチキンスキンを晒す鳥オバケだった。
「残されたのはトップとボトム、最後の砦が二つ……一つでも欠けたら大惨事ですね、と言いうわけで紙おむつ履きましょう」
「君は何を言っているのかね!?」
 ケイトは紙おむつを構えると飛び掛かり、前足で蹴り倒して曰く。
「世のため人のため、そして健全の為におむつを履いてもらわなければなりません。そう、全てはいつか子ども達がこの依頼の記録を見ても問題ないよう、教育的観点から健全であるために……!」
「紙おむつを強要する時点で健全の欠片もないぞ!?」
 ……やべぇな、鳥オバケより番犬のほうが変態だった。マサムネは大丈夫だよな?……何故目を逸らす?
「ごめん、会議室でみんなの熱に当てられちゃって……」
 番犬外套を脱いだマサムネは、メイド服だった。
「俺だって最初はまともになるはずだったんだよ!「確かに学校関係は大変だけど、それにしても思想がすっ飛び過ぎてるんじゃないかな?暑さ対策に水着なんて無粋だよぉ!やっと梅雨明けしたのに水着生地なんて蒸れたりしない?」って、もっといい服装があるってやるはずだったんだよ!!」
 頭を抱えたマサムネの脳裏に蘇る、会議室の一幕。痴女、スク水、胸囲の格差社会……。
「女性陣がおっぱいおっぱい言うから、雄っぱいしないといけない気がして……!」
 大体シフカとシルフィリアスのせい。そんな気がする。
「いや、私のサイズだと、本当にスク水は苦しくて……」
「苦しむくらいならもがせろっすー!!」
 御覧、醜い争いだろう?あれが持つ者と持たざる者の溝なんだ……。
「女の子怖い……」
 さてマサムネ、ビビってるとこ悪いんだが、お前のターンなんだ。
「あ、そっか……」
 スカートを揺らし、説得に向かうマサムネだが。
「上を失ってこそ、下のありがたみが分かるのですね分かります」
 ケイトに上をバリカンされ、全裸に紙おむつスタイルの鳥さんがマサムネを見つめていた。
「何あれ!?」
 お前がビビってる隙に、鳥さんの状況が悪化したのさ。さっさと終わらせてやろうと、マサムネは深呼吸。
「これはコットン製の生地だ」
 喉仏を下げ肺を降下、トーンを落とすという無駄にイケボを出す技術の無駄遣い……。
「萌えキュンブームがすっかり過去のものとなった今、某電気街で生き残ってるのはクラシカルなヴィクトリアンメイド服くらいとも聞くよ。半分英国人な俺がそれを着ることによって魅力アップゥ~!」
 なぜファルセット!?鳥さんも目が点だぞ!?
「そして今!童話に登場しそうなスタイルの君!!」
 ピッ、マサムネの指先が鳥さんを指し。
「ハーフな俺と、西洋風な君。二人でメイド服を着ることでこの服のすばらしさが伝わるはず……でも!」
 ツルペタ(シルフィリアス)の前に立ちはだかるシフカの渓谷を示して。
「あれを超えるインパクトなくして納得してくれるはずがない。だからこそお見せしよう。今、必殺の!」
 マサムネは両肘を引いて肩を張り、肺に思いっきり空気を吸った。そして彼の口から紡がれた囁くような、しかし響き渡る叫び、それは……!
「雄っぱい……!」
 パァン!メイド服の胸元が弾け飛び、美しき胸筋が白日の下にさらされて、舞い上がった胸元のリボンは鳥さんの顔に、パサッ。
「……もうやだ、帰る」
 半泣きで踵を返した鳥さんの肩を、ディッセンバーがぽん。
「お帰りの場合は宇宙にお帰りくださいませ、ご主人様?」

●鳥さんは執事がお掃除しました
「それで、今日は何を食べに行くんすか?」
「エヴァが先に行ってるって連絡くれたけれど……」
 戦闘後、アウレリアの先導で番犬達が向かった先は。
「あ、みんなこっちー」
 仕事を放りだし、速攻で店に行ったエヴァリーナがお好み焼き味のたい焼きを頬張っていたのは街角の小さなお店。
「たい焼きですか……」
 ソースと紅生姜の甘酸っぱい香りにシフカ(スーツの姿)がメニューを見ると。
「アイスたい焼きもあるんですね」
「あちしはパフェたい焼きでいいっすよ」
 シルフィリアスはさりげなく一番高いやつ……。
「皆様、お茶の準備ができましたよ」
 店の前でテーブルとパラソルを広げたディッセンバーが冷たい紅茶を淹れると、明日香が一口含みつつ、一言。
「私はチョコアイスたい焼きでお願います」
「ベビーたい焼き……」
 ケイト、お前は何故そこをじっと見つめてるんだ?
「ミートなパイで胸がいっぱいですから、一口サイズのベビーたい焼きでいいかな、と」
 だめだ意味深にしか聞こえねぇ……。
「あぁ、まだ顔が熱い……」
 黒歴史を刻んだ可能性があるマサムネは、アイスたい焼きで涼をとるのだった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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