●都内某所
『スイッチオンで、灼熱地獄が、極寒世界!』
そんな謳い文句を売りにしたエアコンがあった。
そのため、どんな暑い部屋であっても、ヒンヤリ。
文字通り、部屋が極寒世界に早変わりであったが、他のエアコンと比べて、燃費が悪かった。
それはションボリ、残念レベル。
『こんなに電気代がかかるんだったら、扇風機の方がマシだ!』と言えるレベルであった。
それが原因で買い替えと共に速攻で破棄され、ゴミの山に放置される事となった。
だが、小型の蜘蛛型ダモクレスだけは、エアコンを見捨てなかった。
まるでエアコンから漂う残留思念に引き寄せられるようにして、小型の蜘蛛型ダモクレスがエアコンに機械的なヒールをかけた。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
次の瞬間、ダモクレスと化したエアコンが、耳障りな機械音を響かせ、まわりのゴミを撒き散らしながら、グラビティチェインを求めて、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)さんが危惧していた通り、都内某所にあるゴミ捨て場で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にあるゴミ捨て場。
この場所には沢山のエアコンが捨てられており、その中のひとつがダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、エアコンです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスはエアコンがロボットと化したような姿をしており、冷え冷えの光線を放ちながら、襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677) |
雪城・バニラ(氷絶華・e33425) |
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488) |
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764) |
●都内某所
「温暖化が進んでいる昨今だから、エアコンは必需品になりつつあるけど、エアコンが効き過ぎるのも、体に悪影響を与えるとは聞いたことあるね」
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)は仲間達と共に、ダモクレスが確認されたゴミ捨て場にやってきた。
ゴミ捨て場にはエアコン以外にも、扇風機や、冷蔵庫なども捨てられており、そこに溜まった水の中に大量のボウフラが湧いていた。
そのまわりを大量のハエが飛び回っており、異様なニオイがケルベロス達に纏わりつくようにして、ネットリと漂っていた。
「……エアコンが良く効くのは、良い事だと思いますけど、寒すぎるのも問題、ですね」
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、自分なりの考えを述べた。
一応、温度調節をする事が出来たものの、ハイパワーを売りにしていたせいか、設定した温度よりも寒く感じる事が多かったらしい。
しかも、無駄に電気代が掛かってしまうため、メリットよりも、デメリットの方が多いと判断されてしまったようである。
「私は寒くても大歓迎だけど、やっぱりそれだと電気代が掛かるのね。最近は省エネが推奨されてもいるし、仕方がない事だったのかも知れないわね」
そんな中、雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が、殺界形成を発動させた。
だが、問題のエアコンが発売されたのは、日本がバブル景気に浮かれていた頃。
そのため、省エネである事よりも、ハイパワーである事が優先されていたようだ。
それに加えて、音も煩かったため、色々な意味で一般には受けなかったようである。
そのあ上、問題のエアコンは冷房機能しか作動しなくなったため、ゴミとして捨てられた可能性が高かった。
おそらく、元々の売りが冷房機能だけだったため、暖房機能はオマケに近く、そのぶん壊れやすかったようである。
「……何事もほどほどが一番だよね」
シルフィア・フレイ(黒き閃光・e85488)が、しみじみとした様子で答えを返した。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
次の瞬間、ダモクレスと化したエアコンが耳障りな機械音を響かせ、まわりにあったゴミを弾き飛ばした。
ダモクレスはエアコンがロボットになったような姿をしており、まわりが凍り付くほど冷たい風を発しながら、ケルベロスの前に陣取った。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
そして、ダモクレスはケルベロス達を威嚇するようにして、冷え冷えのビームを放つのだった。
●ダモクレス
「さぁ、行きますよ、夢幻。サポートは、任せます……!」
すぐさま、綾奈がウイングキャットの夢幻に声を掛け、冷え冷えのビームを避けるようにして左右に分かれた。
間一髪でビームを避けた綾奈は、次の攻撃を警戒して、ブロック塀の後ろに隠れた。
その間に、夢幻が勢いよく羽を広げ、仲間達の所まで飛んでいった。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
しかし、ダモクレスは諦めていなかった。
まるで親の仇であるかの如く扱いで、冷え冷えのビームを発射しながら、綾奈の後を追いかけてきた。
「こ、これは……マズイですね」
その事に危機感を覚えた綾奈が、ブロック塀から遠ざかっていった。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
だが、ダモクレスはまったく気にしておらず、ブロック塀を破壊して、冷え冷えのビームを放ちながら、綾奈の後を追いかけてきた。
そのため、辺りにあったモノが凍りつき、極寒世界に変貌した。
それはエアコンと呼ぶには、危険すぎるシロモノ。
おそらく、ダモクレスと化した事で、色々な性能が限界突破し、あり得ない冷気を発するようになっているのだろう。
通常では考えられない程の冷気が発せられているため、冷やすというよりも凍らせようとしている感じになっていた。
「仲間を護る氷の属性よ、盾となれ!」
これにはバニラも身の危険を感じたため、即座にエナジープロテクションを発動させた。
それと同時に、『属性』のエネルギーで盾を形成し、仲間の守りを強化した。
そのおかげで、周囲が極寒世界になっても、ケルベロス達の行動に支障が出る事はなかった。
しかし、それは現時点での話。
これ以上、冷え冷えのビームが放たれるような事があれば、行動に支障が出てもおかしくない。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
その希望を打ち砕くようにして、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、再び冷え冷えのビームを放ってきた。
しかも、その攻撃は先程よりも、強力。
思わず震え上がってしまう程の冷気が、ケルベロス達の身体を包み込んだ。
「これ以上、そのビームを撃たせる訳にはいかないわ! ……と言うか、寒いし!」
シルフィアが寒さで身体を震わせながら、ダモクレスの死角に回り込み、スターゲイザーを炸裂させた。
その影響で細長い針を幾つも突き刺されたような寒さを感じているものの、気合と根性で押し切った。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
その事に腹を立てたダモクレスが、半ばヤケになりつつ、再びビームを放とうとした。
だが、思うようにビームを発射する事が出来ないのか、随分と手間取っているようだった。
「螺旋の力よ、敵を凍えさせてしまえ!」
それと同時に、司が螺旋氷縛波を発動させ、ダモクレスに氷結の螺旋を放って、ビームの発射口を凍りつかせた。
「エア……コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
その事に気づかぬまま、ダモクレスが冷え冷えのビームを発射した。
「エアァァァァァァァァァァァァァァァ……!」
次の瞬間、暴発したビームが発射口を破壊し、大量の破片が雨の如く降り注いだ。
それはダモクレスにとって、予想外の出来事。
思わぬダメージにたじろぎ、戸惑っている様子であった。
「癒しの花びらよ、仲間の傷を癒しなさい」
その間に、バニラがフローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊り、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオン!」
しかし、ダモクレスは諦めておらず、体内に収納してあったエアコン型のアームを、にゅるにゅると伸ばしてきた。
そのアームは小型でありながら、見た目に反して爆音を響かせ、冷え冷えの風を送って、まわりにあったモノを次々と凍らせた。
その影響で、今が夏である事を忘れてしまうほどの寒く、指を動かす事さえ困難な状況に陥った。
だが、まったく身体が動かない訳では無い。
思うように身体を動かす事が出来なくなってはいるものの、全く動かない訳では無かった。
そのため、気力を振り絞るようにして全身に力を込め、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「パズルに眠る竜よ、その魔力を開放せよ!」
それに合わせて、シルフィアがドラゴンサンダーを仕掛け、パズルから竜を象った稲妻を放ち、ダモクレスのボディを貫いた。
その途端、ダモクレスのコア部分を護っていた装甲が、弾け飛ぶようにして宙を舞い、金属音を響かせながら、アスファルトの地面に転がった。
「いくらアームを増やしたところで、まったく意味がなかったようだね」
司が軽く皮肉を言いながら、薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟を繰り出した。
「エアコォォォォォォォォォォォン!」
その影響でダモクレスが幻惑され、八つ当たり気味に、まわりのモノを壊し始めた。
それは駄々っ子の如く、手当たり次第であったが、別にふざけている訳では無く、幻惑されている影響で、ケルベロス達が何処にいるのか、わからないような感じであった。
「この状況で、神速の突きを、見切れますか……!?」
その隙をつくようにして、綾奈が雷刃突を仕掛け、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出し、ダモクレスのアームを容赦なく破壊した。
「エアコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」
それはダモクレスにとって、ショックな出来事であったのか、完全にブチ切れた様子で、耳障りな機械音を響かせ、エアコン型のミサイルを飛ばしてきた。
エアコン型のミサイルは、アスファルトの地面に落下すると、大爆発を起こして、辺りを冷え冷えにした。
しかし、そこにケルベロス達は、いない。
全く見当違いの場所を攻撃して、勝ち誇っているようだった。
「一体、どこを攻撃しているんですか? 幻惑されているせいで、私達が何処にいるのか、わかっていないようですね。それなら、この一撃で、全てを砕いてあげます……!」
それと同時に、綾奈が戦術超鋼拳を仕掛け、全身を覆うオウガメタルを『鋼の鬼』と化し、自らの拳でダモクレスの装甲を破壊した。
「エア……コ……ン……」
その一撃を喰らったダモクレスが、オイルにも似た体液を垂れ流し、完全に機能を低下させて崩れ落ちた。
「戦場がゴミ捨て場なだけあって、かなり汚れちゃったね」
司がホッとした様子で、深い溜息を漏らした。
ダモクレスと戦っている時は、全く気にならなかったが、全身ゴミだらけになってしまったせいか、物凄く臭かった。
それは、まるで腐臭のオーラ。
そのため、真っ先にシャワーが脳裏に浮かぶほど、ブルーな気持ちになった。
「ゴミ捨て場が戦場になったら、やっぱり服も汚れるわねぇ」
バニラが何かを悟った様子で、やれやれと首を振った。
覚悟をしていたつもりだが、臭いモノは臭い。
だが、ダモクレスと戦うためには、必要だった事。
汚れる事を気にしていたら、ダモクレスに包囲網を突破され、取り返しのつかない事態になっていただろう。
「ゴミ捨て場での戦いだったから、せめて綺麗にしておかないとね」
そう言ってシルフィアが仲間達に駆け寄り、クリーニングで仲間達を綺麗にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年7月24日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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