オークは蘇りてプールを襲う

■リプレイ

●
「オーク、しかも厄介なのですか。被害出さないようにしないといけないですね」
　闇の降りた路上で自らに言い聞かせるような声が響いた。
　声の主は美しい娘である。フィルムスーツを身につけているため、均整のとれたしんたいの線が浮き出ている。
　竜種の彼女。名をレベッカ・ハイドン（鎧装竜騎兵・e03392）といった。
「奴らの底なしの欲望はつくづく始末に負えんな」
　カタリーナ・シュナイダー（断罪者の痕・e20661）が、その冷然とした美貌をゆがめ、吐き捨てた。
「だが死神の因子を取り込もうと所詮は只の醜い豚だ。片っ端から斬り刻んでバーベキューにしてやる」
　氷の語調でカタリーナはいった。その語気の強さに、さすがに訝しく思ったのか、黒猫のウェアライダーである円城・キアリ（傷だらけの仔猫・e09214）が眉をひそめた。
「何かあったの？」
　キアリが問うた。というのも、彼女には思うところがあったからだ。キアリにはデウスエクスのペットとしての過去があったのである。
「いいや」
　冷たくカタリーナは答えた。がーー。
　否定はしたものの、カタリーナとデウスエクスとの間には浅からぬ因縁があった。ドイツ軍士官学校の教官であった彼女は、訓練中に学生たちをデウスエクスの手により皆殺しにされてしまったのだ。
　その復讐のため、そしてなにより己を罰するため、カタリーナは戦い続けていた。
「そろそろだな」
　闇の彼方を見やり、少年めいた輝く瞳をもつ若者ーーロディ・マーシャル（ホットロッド・e09476）はぎりっと歯を噛んだ。
「死神にオークと胸くそ悪い敵のコラボって訳か。どっちにしろ奴らの思い通りにはさせるかよ！」
「そうね」
　神宮・翼（聖翼光震・e15906）が頷いた。鮮やかに開いた大輪の花を思わせる娘だ。甘い蜜が滴るような雰囲気があるのは、彼女がサキュバスであるからかもしれない。
「生きてる時の欲望を利用されて死神の道具にされるなんてね。可哀想だとは思うけど、やろうとしてることについては同情しないよ」
「だ、な。行くぜ、翼！」
　ロディが駆け出した。ともに駆けながら、ええ、と翼が答えた。
「あたし達で何としてでも止めないとね」
「わたしも『黒髪の女性』という条件は満たしているけど、流石に……ね」
　駆けていくロディたちを見やり、それからキアリはレベッカに視線を転じた。それからもう一人の少女に。
　その少女は、どこかレベッカに似ていた。同じ黒髪であり、ドラゴニアンである。さらにいえば美少女だ。空鳴・無月（宵星の蒼・e04245）であった。
「どうか大事無く」
　囮役を引き受けた二人の少女を気遣い、キアリはいった。

　同じ時、二人のケルベロスがプールの施設内にいた。風陽射・錆次郎（戦うロボメディックさん・e34376）とユッフィー・ヨルムンド（竜使いの魔女・e36633）の二人である。プールの監視員として潜入していたのだった。
「蘇ってまで破廉恥行為をしたいだなんて、デブの風上にも置けないよ」
　憤懣やるかたなしといった風情で錆次郎がいった。穏やかで、おっとりした雰囲気があるが、その眼光は意外に鋭い。
「解決後にプールデートにお付き合いくださいませ♪　プールで恋人みたいに甘えたいですの」
　ユッフィーがいった。

●
　ケルベロスたちが立ち去ってからすぐのことだ。闇の街路に異形が現れた。オークである。
　その時、オークの前に二人の女が立ちはだかった。いうまでもなく、レベッカと無月である。
「死神に使い潰されるオーク…。…まぁ、オークだし…。同情する余地は無いかな…」
　ぽつりと無月が呟いた。その声をオークは聞き咎めた。
「何だ……お前は？」
「ケルベロス」
　無月が答えた。
　その瞬間だ。レベッカがするりとスーツを脱ぎ捨てた。現れたのは、夜目にも鮮やかな水着姿である。マイクロビキニであるため、秘唇の一部がはみ出てしまっている。
「あなた、黒髪が好きなんだよね。わたしの黒髪とか、どうかな」
　無月がいった。闇の中にあってさえ、なお黒々とした髪が美しい。
「わたしたちが相手してあげるよ。好きにしていいから」
「ブヒ」
　いやらしく笑うと、触手を舞わせ、オークはレベッカを拘束した。無月は腕で引き寄せる。
「たっぷり可愛がってやるぜ」
　オークは舌なめずりした。

「わたくしたちはケルベロスです、落ち着いて避難してください！」
　プールを使用している女性たちにむかってユッフィーが叫んだ。女性たちは何事かと戸惑っているようだ。
「オークが出たの」
　翼が事態を説明した。すると、さすがに女性たちは慌てだした。中にはへなへなと尻餅をつく女性もいる。
「裏口へ」
　錆次郎が指し示した。あらかじめ彼は避難経路を確認していたのだ。
「裏にもケルベロスがいるから、彼らの指示に従って！」
　翼が叫ぶと、女性たちは水着姿のまま逃げ出した。尻餅をついたまま動けぬ女性はキアリが抱えて駆け出す。
　裏にはロディとカタリーナが待っていた。
「ここは任せてあっちの方に避難してくれ！」
　告げると、ロディは裏口から飛び出してきた女性たちにバスタオルを手渡した。
「急ぐんだ！」
　カタリーナが急かせた。囮になっている二人のケルベロスたちのことが気にかかる。もう仲間を犠牲にしたくはなかった。

●
　無月の眼前にオークは肉棒をさらけ出した。黒光りする巨大な肉棒を。
「舐めな。やらねえと他の人間どもにやらせるぜ」
　オークが命じた。無月の顔色が変わる。囮になった以上なぶられることは覚悟していたが、自ら奉仕するのは抵抗があった。
「でも、やらないと。人々を守るために」
　無月はオークの肉棒に顔を近づけた。生臭い臭いが鼻についたが、我慢して舌をのばす。
　ツルツルした亀頭のなめ心地。いやらしい味が無月の口腔内に広がった。
「次はいれるんだ」
　いって、オークは無月のフィルムスーツの股関部分を引き裂いた。黒い恥毛に縁取られた秘唇と肛門が露わとなる。
「……わかった」
　羞恥に唇を噛み、無月は自ら秘肉を指で開いた。怒張したオークの肉棒に尻を押しつける。すでに濡れていたのか、なんの抵抗もなくオークの肉棒が無月を貫いた。
「あっ、ああっ……ふあっ！」
　凄まじい快感が無月の全身を走り抜けた。普段は無表情である無月の顔が気持ちよさにゆがむ。たまらず無月は尻をオークの股間に打ちつけた。
「くっ……んっ……あああっ！　だ、だめぇ……」
　無月は喘いだ。嫌なのに、恥ずかしいのに、尻をとめられない。まるで牝犬のようだと無月は思った。
　オークも我慢できなくなったのだろう。無月の尻肉を鷲掴みにすると、今度は己の方から腰を打ちつけた。
「ら、らめぇ……そ、そんなに激しくされたらぁん。ああん、いくぅ。オークにいかされちゃう！　はあん！」
　背中を反り返らせ、無月は果てた。直後、彼女の子宮に白濁液がぶちまけられた。
「ブヒヒ。良かったぜ。後でゆっくり殺してやる」
　無月の膣から肉棒をずるりと引き抜くと、オークは無月をボロ雑巾のように投げ捨てた。そして、今度は触手で拘束していたレベッカを引き寄せた。
「次はお前だ」
　オークがレベッカの水着をずらせた。白桃のような乳房がプルンとはじけでる。秘肉は完全に露わとなり、開いた陰唇から愛液が太股に垂れた。
「ブヒヒ」
　オークが肉棒をレベッカの女陰におしつけた。
「ああん。私、人妻なのにオークに犯されてしまうのですね。あ！」
　オークの肉棒が膣をこすりながら、押し入ってきた。電流のような快感がレベッカを貫く。
「犯されて気持ちいいのか？」
「ああん。そんなことありません！」
「気持ちいいんだろ。旦那とどっちがいい？」
「いやあ。し、知りません！」
　レベッカは懸命に首を横に振った。
「なら、こうだ」
　オークが動きをとめた。レベッカは切なそうに顔をゆがめると、
「いや……やめちゃいやですぅ。い、いいますからぁ」
「なら、いいな。どっちがいいんだ？」
「あなたですぅ！　夫よりあなたの方がいいです。だからもっと……もっと欲しい。ちょうだい～……」
　レベッカはオークにしがみついた。堕ちた瞬間である。気持ちよさに何もかんがえられなくなっていた。
「ブヒヒ。たまらねえ。膣内に射精すぜ！」
「きてぇ！　膣に！　妊娠中させて。あなたの赤ちゃん、産みますからぁ！」
　ねだるようにレベッカは膣を締めた。
　刹那である。オークが放出した白濁液がレベッカの子宮を叩いた。

●
「ブヒヒ」
　オークはもう一度無月を犯していた。がーー。
　衝撃がオークを襲った。大型トラックにはねとばされたように吹き飛ぶ。
「そこまでだ」
　蹴りを放ち終え、地に降り立ったカタリーナがいった。避難を終え、駆けつけてきたのである。
　その瞬間、錆次郎の掌中からのびた植物が金色の光を放った。すると息が絶え絶えであったレベッカと無月が静かになった。癒されたのである。
「ブヒ。やってくれたな！」
　オークの触手が鞭のようにしなった。打たれたカタリーナが後退する。打たれた箇所が刃で切られたように裂けていた。
　するとユッフィーが身体を高速回転させ、突撃した。ボクスドラゴンのボクちゃんもブレスを吹きつける。
「やってくれた、だと。それはこっちの台詞だ！」
　二人の囮役を庇うように立ちはだかり、ロディが怒鳴った。その燃える瞳が痛ましそうに無月たちにむけられる。
「許さん。いくぞ、翼！」
「わかってる！」
　翼は大きく肯首した。
「あたしのビートで、ハートもカラダもシビレさせてあげる！」
　翼は歌い始めた。そして、舞う。それは魔性のショーだ。
　かつてデウスエクスの楽器として調律された彼女の歌と踊りには人の心を魅了する絶対的な力があった。いわば魔王の力である。
　その力を、今、翼は正義のためにふるう。そして、ロディはその力にのり、馳せた。
　衝撃波すら撒き散らす疾駆。一瞬で距離をつめると、流星の如き蹴りをロディはオークに浴びせた。
「ブヒ！」
　たまらずオークが身を仰け反らせた。懐が開く。その懐にキアリは飛び込んだ。
「螺旋掌！」
　キアリの手がオークに触れた。
　一瞬後のことだ。オークの身が爆裂した。触れた瞬間、キアリが螺旋をオークの体内に流し込んだのである。螺旋はオークの体内を駆け巡り、破壊エネルギーを解放したのだった。
「くそが！」
　血肉を撒き散らしながら、オークは触手を舞わせた。さすがに全てはかわしきれない。キアリの身に触手が巻きついた。
「くびり殺してくれる！」
　オークが触手に力を込めた。ミキリ ッとキアリの肋骨に亀裂が走る。
　刹那だ。触手が切断された。オルトロスーーアロンが神器で切り裂いたのである。

●
　錆次郎の全身から銀光が噴き、仲間を癒やした。続いてユッフィーがオーラを蹴り放つ。
「やってくれたな！」
　オークが吠えた。そして触手を唸らせた。
　反射的に跳び退ったのはユッフィーである。が、しなった触手の方が速い。打たれたユッフィーが地に転がる。
「はなれろ！」
　ロディが高速演算出見抜いたオークの弱点を攻撃した。が、その一撃はオークによって阻まれた。
「無駄だ、番犬」
「そうかな」
　ロディがニヤリとした。刹那、オークの身に栗鼠が弾丸のように突き刺さった。翼が放ったファミリアである。
「くそっ」
　電光の速さでオークが振り向いた。その眼前、カタリーナの姿がある。腕には巨大なガトリングガンが抱えられていた。
「これは貴様たちに殺された部下の分だ」
　ガトリングガンが火を噴いた。雷鳴にも似た射撃音とともに吐き出された無数の弾丸が呪的防護ごとオークの肉体を削りとっていく。
「こっちよ！」
　キアリが誘った。仲間に負担をかけぬようにするためである。
「女。お前も犯してやる！」
　キアリの思惑通り、オークが襲いかかった。キアリに触手を叩きつける。
　その一撃を、キアリは光る盾で受けた。が、受けきれるものではない。盾が砕け、威力の弱まった触手がキアリを打つ。
　と、アロンがどす黒い霧ーー地獄の瘴気を浴びせかけた。たまらずオークが跳び退る。
　そろそろか。オークの負傷の程度をみてとり、ユッフィーは判断した。
「ふたりの愛が燃えるとき！　これが竜と花嫁の…スラッシュバーンですわッ！」
　ユッフィーが叫けび、ヨルムンド王国に伝わる秘術により相棒のボクスドラゴンと一時的に融合。鎧竜人ボルクスに変身して突撃を仕掛けた。
　続いたのは錆次郎である。自衛隊で鍛えた彼の戦術眼も攻勢に転じろと命じている。
「痛銃達、僕と踊って！　あと、ついでに体についた肉も」
　N-35組み立て式リボルバーマグナムーー『痛銃マリリン』を手に、錆次郎は踊るようにして、撃った。右の禍々しき銃ーー悪魔っ娘銃から放たれる特殊弾丸がオークを穿ち、左の清浄なる銃ーー天使っ娘銃から撃ち出された弾丸は仲間を癒す。その鯖次郎の舞い踊る様は悪夢的な美しさがあった。
「いくぞ、翼」
　ロディがいった。すると彼の頬に柔らかい感触。蕾のような唇をはなすと、悪戯っぽく翼は微笑った。
「終わったら、今度はこっちでね」
　翼が唇に指をあてた。ロディは頷くと、
「合わせろ、翼！」
　馳せた。翼が後を追う。
　迎え撃つオークは触手を舞わせた。怒涛のような乱舞である。
　対するロディはリボルバー銃にグラビティ・チェインで形成された刃を纏わせた。繰り出す乱刃はなお迅い。
「見切れるか、電光石火！」
　ロディの刃が空に亀裂を刻んだ時、触手の半数ほどが切断されて地に落ちた。
　刹那、触手の間隙を縫うように翼が跳んだ。空を煌めく脚で灼きつつオークに蹴撃を浴びせる。
「ブヒ！」
　地を削りながらオークが後退した。が、触手は別の意思あるもののように動き、翼をとらえて地に叩きつけた。
「ブヒーー」
　笑おうとして、オークは凍りついた。眼前にキアリが現出したからだ。
「勢いを付け、スピードを乗せ、破壊力を補助する感じで……うんっ」
　キアリが脚を跳ね上げた。鉈の勢いを秘めた蹴りがオークの股間に炸裂する。何かが潰れる不気味な男が響いた。
「ぎゃあ！」
　獣のような絶叫をオークは放った。死に勝る激痛に苦悶する。
「どうだ、苦しいか？」
　カタリーナが問うた。その赤瞳がオークを射抜く。
　なんと無様な存在だ。このようなもののために彼らは未来を踏みにじられたのか。
「こいつが欲望の代償というものだ。自らが食われる覚悟なくして、捕食者を名乗るな」
　精神の凝縮完了。カタリーナの瞳が赤光を放った時、オークは爆裂し、果てた。

●
　戦いは終わった。レベッカと無月は翼が介抱し、連れ帰った。辺りの修復を終えたロディも一緒だ。
　残ったのは鯖次郎とユッフィーであった。水着をもっていない二人は裸でプールに身を沈めた。
「こ、恋人同士だから…たっぷり、一緒にいようね…僕がリア充になるなんて、夢のようだよ、本当に、ね」
　鯖次郎とユッフィーの長い夜が始まった。

作者：紫村雪乃	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年7月30日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。