●都内某所
掘削に特化した電動杭打ち機があった。
両手に伝わる振動を極限まで抑え込み、手軽に扱える事を最優先にした事もあり、電動杭打ち機と言えばコレだと言われるほどの売り上げがあったらしい。
だが、新商品の登場によって、その天下は長くは続かず、人々の記憶からも忘れられていった。
そして、役目を終えたかのように、倉庫の奥底に追いやられた。
そんな中、現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、カサカサと音を立てながら、電動杭打ち機の中に入り込んだ。
それと同時に機械的なヒールによって、電動杭打ち機がみるみるうちに形を変え、ロボットの姿をしたダモクレスになった。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破り、辺りを掘削しながら、突き進んでいくのであった。
●セリカからの依頼
「宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832)さんが危惧していた通り、都内某所にある倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある倉庫。
この倉庫には他にも機械が置かれているものの、ダモクレスになったのは電動杭打ち機だけのようである。
「ダモクレスと化したのは、電動杭打ち機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは電動杭打ち機で出来たロボットのような姿をしており、邪魔をする者に対して容赦がないようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793) |
雪城・バニラ(氷絶華・e33425) |
宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
霧矢・朱音(医療機兵・e86105) |
●都内某所
その場所は電動杭打機にとって、墓場であった。
だが、所有者にとっては、ただ置いているだけだったのかも知れない。
それでも、使われなければ、意味はない。
必要とされなければ、存在する価値はない。
そんな気持ちが残留思念となって漂っているのか、倉庫のまわりは不気味な雰囲気が漂っていた。
「何だか不気味ネ。まるで墓場……。お化けデモ、出てきそうな雰囲気ヨ」
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)が、警戒した様子でキープアウトテープを貼った。
いまのところ、辺りに人の気配はないものの、念のため。
こういった不気味な雰囲気に引き寄せられ、フラフラとやってくる一般人が絶対にいないと言えない以上、ここで気を抜く訳にはいかなかった。
「まさか私の危惧していた事件が起こるとは……。これは何としてでも私が戦わないとね」
宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832)が、自分自身に気合を入れた。
その間も、倉庫からは不気味な雰囲気が漂っており、今にもケルベロス達を飲み込む勢いであった。
「それにしても、電動杭打ち機も色々と種類があるわよね。新商品の登場によって、古いものは破棄されるのも自然の流れだと思うわ」
霧矢・朱音(医療機兵・e86105)が、事前に配られた資料に目を通した。
資料には様々な電動杭打ち機が載っており、高性能で値段も御手頃であった。
そのため、ダモクレスと化した電動杭打ち機が、用済みになってしまったのも、無理が無いように思えてきた。
「……とは言え、新製品の開発によって旧作が忘れ去られるのは悲しい事よね」
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が複雑な気持ちになりながら、殺界形成を発動させた。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時に、ダモクレスと化した電動杭打ち機が倉庫の壁を突き破って、耳障りな機械音を響かせた。
「……って、いきなり過ぎでしょ! まだ心の準備も出来ていないのに! もう少し空気を読んでよ!」
その途端、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)がビクッと体を震わせ、涙目になりつつダモクレスを叱りつけた。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
しかし、ダモクレスにとっては、他人事。
そんな事は、どうでもいいと言わんばかりの勢いで、ケルベロス達に威嚇するようにして杭打ちをし始めた。
「エーイ、もうマタ寄生型ダモクレスデスカ! 効率が良くてイイワヨネ、寄生先には事欠かないシ大事にならなきゃ予知にもひっかからないシ! デウスエクスを作るには大量のグラビティチェインがいるってイウケド、こんな大きさナラそこまで消費も多くなさそう。エコロジー! ……どっかで根絶やしにシないとキリがナイゼ」
パトリシアがダモクレスを睨みつけ、不満げな表情を浮かべた。
いくらダモクレスを倒しても、次から次へと現れるため、色々な意味でキリがない。
それでも、最悪の事態を未然に防いでいる事は間違いないため、やっている事が無駄になる事はないだろう。
「クイウチィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせながら、ケルベロス達に突っ込んできた。
●ダモクレス
「そっちが、その気なら、真正面からぶつかってやるわ! あんたの力がどれくらいか、試してあげるわ!」
すぐさま、レイがヴァルキュリアブラストで光の翼を暴走させ、全身を『光の粒子』に変え、ダモクレスに突撃した。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それを迎え撃つようにして、ダモクレスがガッコンガッコンと音を響かせ、レイに真正面からぶつかった。
その拍子にダモクレスのパーツが弾け飛び、アスファルトの地面に転がった。
「デカくてカタけりゃイイってモンでもナイノヨ! 愛が無くちゃネ!」
それに合わせて、パトリシアがダモクレスの前に陣取り、そのまま足止めしようとした。
普通の人間であれば、そのまま弾き飛ばされ、宙を舞っているところであったが、パトリシアは違っていた。
リオ・デ・ジャネイロ仕込みのタフネスさで、ダモクレスの身体を押さえ込み、勢いをつけて放り投げた。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時に、ダモクレスが関節を妙な方向に曲げ、殺気立った様子で強引に起き上がった。
「随分と人間に対して恨みを持っているようだけど、単なる八つ当たりじゃない。そもそも、初対面(?)だから……」
バニラが呆れた様子で、ダモクレスにツッコミを入れた。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスにとっては、些細な事。
同じ人間、同じ形をしたモノ、それだけで十分と言わんばかりに特攻を仕掛けてきた。
それが単なる八つ当たりである事も自覚せず、目の前の敵を倒す事に全力を注いでいるようだった。
「まずはその動きを、封じてあげるわ!」
かなめがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを、ダモクレスの機動力を奪った。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それでも、ダモクレスの勢いは衰える事なく、後先考えず捨て身の覚悟で、ビームを撃ってきた。
「仲間を護る属性の力よ、盾となれ!」
その事に気づいた朱音がエナジープロテクションを発動させ、『属性』のエネルギーで盾を形成し、ダモクレスのビームを防いだ。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、電動杭打ち機型のアームで、ケルベロス達に殴りかかってきた。
「それは単なる残像ヨ」
次の瞬間、パトリシアが分身の術を発動させ、分身の術を纏う事で、ダモクレスの攻撃を避けた。
「このナイフに、貴方のトラウマを映してあげるわ」
それに合わせて、朱音が惨劇の鏡像を発動させ、ナイフの刀身にダモクレスのトラウマを映し出した。
それは最新型の電動杭打ち機。
ダモクレスになった電動杭打ち機が、捨てられる原因となったモノ。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
それ故に、ダモクレスに、迷いはなかった。
即座にトラウマめがけて、八つ当たり。
まるで親の仇であるかの如く勢いで、殴って殴って殴りまくった。
しかし、それは幻。
朱音によって作り出されたモノ。
そのため、いくら攻撃しても、消し去る事は出来なかった。
「癒しの花弁よ、仲間を助けてあげてね」
その間に、バニラがフローレスフラワーズを発動させ、戦場を美しく舞い踊って、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
それは、まるで幻想世界。
一般人であれば、心を奪われる光景であったが、ダモクレスだけは違っていた。
「敵には回復手段がないノデ、耐えきれば勝てマス」
パトリシアが仲間達に声を掛けながら、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
その分、ケルベロス側は人数に余裕がないため、一瞬の油断が命取り。
最悪の場合は包囲網を突破されてしまうため、一瞬でも気を抜く事が出来なかった。
「だったら、華麗なる薔薇の舞を、見せてあげるわ」
かなめが薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「これはオマケ♪」
続いてレイがスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
「ク、ク、クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、電動杭打ち機型のミサイルを飛ばしてきた。
ダモクレスが発射したミサイルは、アスファルトの地面に落下すると、次々と爆音を響かせ、大量の破片を飛ばしてきた。
「星型のオーラって、綺麗だと思わないかな?」
それに合わせて、朱音が逃げ道を塞ぐようにしながら、フォーチュンスターを発動させ、理力を籠めた星型のオーラで、ダモクレスに蹴りを入れた。
「いい加減に大人しくしナイと痛い目、見るヨ!」
パトリシアがイラついた様子で、デッドウェイトアンカー・FB(デッドウェイトアンカーファナティックブラッド)を仕掛け、 太腿を高く振り上げて勢いよく地面を踏みしめ、その衝撃と重みでダモクレスを大地に縛りつけた。
「ドローンの群れよ、仲間を警護せよ!」
その間に、バニラがヒールドローンを発動させ、自らのグラビティで小型治療無人機(ドローン)の群れを操った。
ドローンの群れはダモクレスの攻撃を防ぐようにして、仲間達のまわりを飛び回った。
「さぁ、その傷口をさらに広げてあげる!」
それと同時に、かなめが絶空斬を繰り出し、空の霊力を帯びた武器で、ダモクレスの装甲を正確に斬り広げた。
「これでトドメ! いくわよー、トルネード投法!!」
次の瞬間、レイがスーパー神風デリンジャーアタック!(イザノトキノゴシンジュツ)を発動させ、空高く舞い上がり、懐から取り出したデリンジャーをぶん投げた。
それはクルクルと回転しながら、かなめが広げた装甲の隙間に落下し、その場所にあったコア部分を破壊した。
「クイウチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
その途端、ダモクレスが断末魔にも似た耳障りな機械音を響かせ、大爆発を起こしてガラクタの山と化した。
「……シカシ倉庫内の壊れた機械は賠償シナイトダメかもネ……。仕様外の動作をするようになったら大変ダモノ」
そんな中、パトリシアがゲンナリとした様子で、深い溜息をついた。
ダモクレスとの戦いで、倉庫にあったモノは、ボロボロ。
普通の方法では修復不可能なレベルで、壊れてしまっていた。
「大丈夫。ヒールをかければ、元通り。それにしても、これって危なくないのかしら? ちょっと興味あるけど、あたしはパスね。でも、このまま破棄するのも勿体ないから、何処かで使われるべきだと思うけど……」
そう言ってレイが複雑な気持ちになりつつ、ヒールで辺りを修復するのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年7月20日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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