電動ドリルは、漢のロマン！

■リプレイ

●都内某所
「……まさか、俺が危惧していたダモクレスが、本当に現れるとはな」
　カシス・フィオライト（龍の息吹・e21716）は仲間達と共に、都内某所の閑静な住宅街にやってきた。
　辺りには何の事情も知らない一般人が、のほほん気分で歩き回っていた。
　その一角にポツネンと建っていたのが、問題の倉庫であった。
　倉庫からは禍々しい気配が漂っており、まわりをドス黒く染めていきそうな勢いだった。
「それにしても、電動ドリルって、カッコ良いわね。それが放置されているなんて、勿体わね、本当に……」
　霧矢・朱音（医療機兵・e86105）が、事前に配られた資料に目を通した。
　問題の電動ドリルは武骨で、ありとあらゆる無駄が省かれていたものの、そのぶん性能的にはケタ外れに高かったようである。
　そのため、違いの判る職人達にとって、無くてはならないモノだった。
　だが、電動ドリルの所有者は、まったく違った考えを持っており、『地味で、重くて、華がない』という理由で、倉庫にしまい込んでしまったようである。
　しかも、皮肉な事に新しく購入したのは、軽くてオシャレな電動ドリル。
　それこそ、今まで持っていた電動ドリルとは、対極にあるモノだった。
「僕はどちらかというと、大きい物よりもコンパクトな物の方が好きかな。やっぱり使い勝手が良さそうだし……」
　そんな中、四季城・司（怜悧なる微笑み・e85764）がキープアウトテープを貼りつつ、自分なりの考えを述べた。
　実際に、仕事以外で使うのであれば、コンパクトで使い勝手のいい電動ドリルを選ぶのが普通の事。
　それ故に、所有者にとってはオーバースペックであった電動ドリルが、倉庫にしまわれてしまったのも無理はない。
「ドォォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィィル！」
　次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破ってケルベロス達の前に現れた。
　ダモクレスは、まるでロボットのような姿をしており、ケルベロス達を威嚇するようにして、全身のドリルをフル回転させていた。
「何だか、ちょっと重そうですね。……とは言え、私達にとって脅威である事は間違いありませんが……」
　花見里・綾奈（閃光の魔法剣士・e29677）が、警戒した様子で間合いを取った。
「ドォォォォォォォォォォォォォリィィィィィィィィィィル！」
　そんな空気を察したダモクレスが、自らの力を誇示するようにして、辺りのブロック塀を壊し回っていた。
「これは俺が実際に解決してあげないといけないかな」
　そう言ってカシスが何やら察した様子で、ダモクレスの前に陣取るのであった。

●ダモクレス
「ドォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィィイルゥゥゥゥゥ！」
　次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達に対して、螺旋状のビームを放ってきた。
　そのビームはブロック塀を抉って、大量の破片を撒き散らしながら、ケルベロス達に迫っていきた。
「さぁ、夢幻。一緒に、行きますよ……！」
　すぐさま、綾奈がウイングキャットの夢幻と連携を取りつつ、ダモクレスのビームを避けた。
　しかし、ダモクレスの放ったビームは、強力ッ！
　そのままブロック塀を破壊すると、大量の破片を飛ばして、ケルベロス達の身体を傷つけた。
　それでも、ケルベロス達が怯む事はない。
　傷ついた身体を庇うようにして間合いを取りつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺っていた。
「ドォォォォォォォォリィィィィィィイルゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　だが、ダモクレスも容赦がない。
　自らの力を示すようにして、再び螺旋状のビームを放ってきた。
　それはまるで竜巻の如くグルグルとまわり、辺りにあったモノを容赦なく破壊していった。
「まずは、その機動力を奪ってあげるよ」
　それを迎え撃つようにして、司がスターゲイザーを繰り出し、ダモクレスの装甲を剥ぎ取った。
「ドォォォォォォリィィィィィィィィィィィィルゥゥゥゥゥゥ！」
　それでも、ダモクレスは怯む事なく、ドリルをフル回転させ、まわりにあったモノを、手当たり次第に壊していった。
「……身体を護る属性の力よ、盾となれ」
　その事に気づいたカシスが、エナジープロテクションを発動させ、『属性』のエネルギーで盾を形成した。
　そのおかげもあってか、間一髪でビームの直撃を防ぐ事が出来た。
「ドォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィイイルゥゥゥゥゥウ！」
　だが、ダモクレスは諦めていなかった。
　自らの怒りを爆発するようにして、再び螺旋状のビームを放ち、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
　そこに迷いはなく、ケルベロス達を倒そうとする強い意志が感じられた。
「さっきから芸がないわね。それで私達を倒すつもり？　それだったら、ハッキリ言って調子に乗り過ぎよ」
　その間に、朱音がダモクレスの死角に回り込み、グラウンドブレイカーを発動させ、グランドロンの強靭な腕力で、ダモクレスめがけて振り下ろした。
「ド、ドリィィィ……ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……！」
　その影響でダモクレスのボディが醜くヘコみ、ドス黒いオイルにも似た何かがプシュッと勢いよく噴き出した。
「ド、ド、ド、トリィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイル！」
　それと同時に、ダモクレスが電動ドリル型のアームを伸ばし、ケルベロス達に向かって襲い掛かってきた。
　その勢いは凄まじくダモクレスのパーツが弾け飛び、辺りに転がるほどだった。
　それでも、ダモクレスに躊躇いはなく、捨て身の覚悟でケルベロス達に突っ込んでいるような感じであった。
「さすがに、これは……。でも、負けないよ」
　カシスがダモクレスの攻撃を避けつつ、ウィッチオペレーションを発動させ、魔術切開とショック打撃を伴う強引な緊急手術で、傷ついた仲間の治療をしていった。
「ドォォォォォォォォォォォォリィィィィィィィィィィイル！」
　その事に腹を立てたダモクレスが、アームのドリルをフル回転させ、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
　しかも、視界に入るモノは、すべて破壊対象ッ！
　壊して、壊して、壊しまくって、瓦礫の山を築き上げた。
　だが、ダモクレスの勢いは止まらない。
「ドォォォォォォォォォォォォォォォォォオリィィィィィイルゥゥゥゥゥゥ！」
　それどころか、ケルベロス達の命を奪うべく、耳障りな機械音を響かせ、一気に距離を縮めてきた。
「いくら強力な攻撃であっても、当たらなければ意味がないよ？　それとも、そんな攻撃で、僕らの身体に風穴を開けるつもりじゃないよね？　悪いけど止まって見えるよ、残念ながら……」
　司が軽く皮肉を言いながら、薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「ドォォォォォォォォリィィィィィィィィィィィィイイル……」
　その影響でダモクレスはケルベロス達ではなく、司が作り出した幻を攻撃し始めた。
「このナイフをご覧なさい。貴方のトラウマを起こしてあげるわよ」
　それに合わせて、朱音が惨劇の鏡像を発動させ、ナイフの刀身にダモクレスが忘れたいと思っているトラウマを映し、それを具現化させた。
「……！」
　それはダモクレスが、電動ドリルだった頃の所有者。
　しかも、軽くてオシャレな電動ドリルを持って、ドヤ顔を浮かべた所有者だった。
「ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　そのため、ダモクレスに回胃はなかった。
　途端に、激しい怒りを爆発させ、何かに取り憑かれた様子で、具現化されたトラウマを執拗に攻撃した。
　しかし、具現化されたトラウマが、破壊される事はない。
　それに加えて、ダモクレスが攻撃しているのは、司が作り出した幻であった。
　その事実に気づかぬまま、ケルベロス達に背を向け、狂ったようにドリルアームを振り回した。
　だが、すべて幻。
　どんなに攻撃しても、ダモクレスの前から消える事はない。
「ドォォォォォォォォォォォォリィィィィィィィイイイル！」
　それでも、ダモクレスはまったく気にしておらず、トドメとばかりにドリル型のミサイルをぶっ放した。
　ダモクレスから放たれたドリル型のミサイルは、次々と地面に突き刺さり、大爆発を起こして、大量の土煙を上げた。
「いまのうちに倒してしまいましょう……！」
　その隙をつくようにして、綾奈が夢幻と連携を取りつつ、スカルブレイカーを仕掛け、高々と跳び上がって、ルーンアックスを振り下ろした。
「ドォォォォォォォォリィィィィィィィィイルゥゥゥゥゥ！」
　それと同時に、ダモクレスの装甲が弾け飛び、身体のあちこちから煙が上がった。
「そろそろ終わりにしようか。もちろん、覚悟は出来ているね？」
　その間に、司が紫蓮の呪縛（シレンノジュバク）を仕掛け、華麗にレイピアを振りかざし、衝撃波を飛ばす事でダモクレスの動きを封じ込めた。
「例え、出来ていなかったとしても……関係ありませんけどね」
　それに合わせて、綾奈が雷刃突を繰り出し、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、最後の力を振り絞り、ドリル型のミサイルを飛ばそうとした。
「虚無球体よ、敵を飲み込み、その身を消滅させよ」
　すぐさま、朱音がディスインテグレートを発動させ、触れたもの全てを消滅させる不可視の『虚無球体』を放って、ダモクレスをこの世から消滅させた。
「……終わったかな。後片付けはきちんとしておかないとね」
　その事を確認した後、カシスがヒールを使って、辺りを修復し始めた。
　ダモクレスが暴れ回ったせいで、辺りは廃墟のようになっていたものの、ヒールを使った事で、すべて元通りになった。
「最近は僕もあまり工具は使わなくなったけど……。せっかくだから、こまめに手入れをしようかな」
　そんな中、司が何やら考え事をしながら、ダモクレスが確認された倉庫を眺めるのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年7月14日 難度：普通 参加：4人 結果：成功！
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