●都内某所
まるでウォータースライダーのような流しそうめん機が売りのそうめん専門店があった。
バブル景気で浮かれていた頃は、大人気であったものの、景気の悪化と共に客足が遠のき、今では廃墟と化しているようだ。
それから流しそうめん機は放置されていたものの、この場所に訪れた不良達がボールを流したり、カップラーメンの残りを流したりしたため、その半分がゴミの山に埋もれていた。
そんな中、流しそうめん機の前に現れたのは、小型の蜘蛛型ダモクレスであった。
小型の蜘蛛型ダモクレスは、流しそうめん機の中に入り込むと、機械的なヒールによって、その形を変化させた。
「ナ・ガ・シ・ソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
次の瞬間、ダモクレスと化した流しそうめん機が、耳障りな機械音を響かせ、街に繰り出すのであった。
●セリカからの依頼
「リィン・ペリドット(奇跡の歌声・e76867)さんが危惧していた通り、都内某所の廃墟で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟。
この場所には、日本最大級と噂される流しそうめん機が設置されていたものの、廃業と共に放置されたままになっていたようである。
「ダモクレスと化したのは、流しそうめん機です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは戦車のような姿をしており、流しそうめんを射出して、攻撃したりしてくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716) |
雪城・バニラ(氷絶華・e33425) |
七宝・琉音(黒魔術の唄・e46059) |
リィン・ペリドット(奇跡の歌声・e76867) |
●都内某所
「まさか、私の危惧していたダモクレスが、本当に現れるとは……。どこかで被害を出す前に倒しておく必要がありますね」
リィン・ペリドット(奇跡の歌声・e76867)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された流しそうめん専門店にやってきた。
流しそうめん専門店のコンセプトが、子供から大人まで楽しむ事が出来る遊園地的なモノだった事もあり、店の外観はド派手な造りをしており、観覧車風の風車がカラカラと音を立てていた。
また店の屋根には流しそうめんを擬人化したシュールな人形達が並んでいたものの、時代の流れと共に劣化してしまい、可愛らしさよりも、不気味さが強調されていた。
そのため、近隣住民からは、お化け屋敷と揶揄されており、あまり人が近寄らない場所になっていた。
それでも、念には念を入れてキープアウトテープで、人払いをする事にした。
そのおかげもあって、辺りに人の気配はなく、誰かが現れる事もない。
ただ、風車の音だけが、カラカラ、カラカラと響いていた。
「……とは言え、こういう暑い季節には冷たいそうめんが食べたいよけどね。ダモクレスになったからには、倒してしまうしかないけど……」
七宝・琉音(黒魔術の唄・e46059)が複雑な気持ちになりつつ、ハンズフリーライトで室内を照らした。
室内にはウォータースライダーのような流しそうめん機が設置されており、何者かによってミニカーや、サッカーボールなどが流されていた。
そのせいで、こんもりとゴミの山が出来ており、鼻につく異臭に群がるようにして、沢山のハエが飛び回っていた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
次の瞬間、流しそうめん機が耳障りな機械音と共に、みるみるうちに形を変え、戦車のような姿になった。
それは流しそうめんと言うのはゴツく、禍々しかった。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、流しそうめん専門店の壁を破壊しながら、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
その姿は、まるでイノシシのようでもあったが、クマのような巨大であった。
「これじゃ、どんなに美味しいそうめんも台無しね。せっかく流しそうめんを愉しもうと思っていたのに……」
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が不満そうにしながら、ダモクレスの攻撃を避けた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
しかし、ダモクレスは完全にケルベロス達を敵視しており、親の仇の如く勢いでも、再びケルベロス達に襲い掛かってきた。
「流しそうめんは夏の風物詩でもあるけど、ダモクレスと化した物なら、被害が出る前に倒してしまわないとね」
そう言ってカシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が、覚悟を決めた様子でダモクレスに攻撃を避けるのであった。
●ダモクレス
「それにしても……予想以上に大きいですね。これ以上、被害が出る前に破壊してしまわないと……」
リィンが色々な意味で危機感を覚えつつ、ダモクレスの行く手を阻んだ。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
だが、ダモクレスは止まらない。
キャタピラの代わりに伸びた無数の細長い足を蠢かせ、カサカサと音を立てて迫ってきた。
その間も、そうめんが勢いよく流れていき、一番下のザルに落ちた。
ダモクレスは、それをポンと回収すると、再び上から流していった。
その行為に何の意味があるのか分からないが、流れ作業の如くポンポンと上げていた。
それがダモクレスの原動力になっているのか、何となく勢いを増しているような感じであった。
「……ここで倒すしかないようだね。少し可哀そうな気もするけど、ダモクレスと化した以上、放っておく訳にもいかないから……。それに、こんな事、流しそうめん機が望んでいる訳がないし……」
その間にカシスがダモクレスの注意を引きつつ、仲間達が攻撃を仕掛ける時間を稼いだ。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その挑発に乗ったダモクレスがアスファルトの地面を削りながら、ジリジリとカシスに迫っていった。
おそらく、それは自らの身を守るため。
自分をゴミのように扱った人間達に復讐して、グラビティチェインを奪う気のようだった。
もちろん、ダモクレスの気持ちは分からない。
しかし、そう思えてしまう程、ダモクレスは禍々しかった。
「さぁ、黒影……一緒に向かうわよ!」
それを迎え撃つようにして、琉音がボクスドラゴンの黒影に声を掛け、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
それに合わせて、黒影が属性インストールを使い、仲間達を援護した。
「まずは、その機動力を奪ってあげるわよ」
続いてバニラが轟竜砲を仕掛け、ハンマーを『砲撃形態』に変形させ、竜砲弾でダモクレスに装甲をヘコませた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その影響で、そうめんがうまく流れず、ダモクレスが悲しげな機械音を響かせた。
この様子では流れ作業の如く、繰り返していた事が出来なくなり、ストレスが爆発したのだろう。
まるで駄々っ子の如く、耳障りな機械音を上げていた。
「やるなら、今だよ……!」
その間にカシスがエナジープロテクションを発動させ、『属性』のエネルギーで盾を形成した。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
次の瞬間、ダモクレスが地面を蹴りつけ、ケルベロス達に突っ込んできた。
そこには迷いもなく、後先も考えていなかった。
ただケルベロスを倒す事だけに全力を注ぎ、玉砕覚悟で特攻を仕掛けているような感じであった。
「ここから先には行かせませんよ!」
その行く手を阻むようにして、リィンがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダモクレスの動きを止めた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
だが、ダモクレスは諦めておらず、近距離からビームを放ってきた。
それはビーム状に伸びた大量のそうめんであったが、超高速で撃ち出す事によって、ブロック塀ですら粉々にするほどの破壊力を秘めていた。
「だから、何っ!? そんなモノ、すべて喰らいつくしてあげるわ」
それを迎え撃つようにして、バニラが気咬弾を撃ち込み、オーラの弾丸でダモクレスが放ったビームを喰らいつくした。
その姿は、まさにゴチソウサマ。
すべてを残す事なく平らげ、オーラの弾丸も満足げに消えた。
「ナ、ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
しかし、ダモクレスは納得しておらず、『オレのそうめんをオーラに喰わせるんじゃねぇ!』と言わんばかりの勢いで、箸の形をしたアームを伸ばしてきた。
それはまるでダモクレスが『今まで食われる側だったが、これからは食う側だ!』と訴えているかのように凶悪だった。
「……私の声よ。あなたに届きなさい。あなたの心を蝕んであげます!」
それに対抗するようにして、リィンが心を刻む歌声(ココロヲキザムウタゴエ)を発動させ、悲しい歌声をダモクレスに与える事で、精神を侵食し、心を切り刻んだ。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その途端、ダモクレスが悶え苦しみ、箸の形を使って、そうめんを投げてきた。
それは、ある意味、八つ当たり。
食べ物を粗末にする最悪の行為。
だが、ダモクレスは気にしていなかった。
むしろ、心の重みと身体の重みを取り除いた事で、身軽になっているようだった。
「ならば、この霊力の網に、そうめんごと囚われてしまいなさい!」
すぐさま、琉音が縛霊撃を仕掛け、殴りつけると同時に網状の霊力を放射し、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その事に腹を立てたダモクレスが、箸状のアームを滅茶苦茶に振り回した。
そうする事で、霊力の網を破壊し、ケルベロス達に勝負を挑むつもりでいるようだった。
「そのまま、凍てついてしまいなさい」
その事に気づいたバニラがクリスタライズシュートを放ち、ダモクレスのボディを凍りつかせた。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、そうめん型のミサイルを次々と飛ばしてきた。
そうめん型のミサイルはアスファルトの地面にベチャッと落ちると、大爆発を起こして大量の汁を飛ばしてきた。
その汁は弾丸の如く鋭く、破壊力が抜群であった。
「これ以上、抵抗するのであれば、焼きそうめんにしますよ!」
その攻撃を避けながら、リィンがダモクレスに警告しつつ、グラインドファイアを発動させ、ローラーダッシュの摩擦を利用して、炎を纏った激しい蹴りを放った。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その一撃を喰らったダモクレスが、全身炎に包まれ、耳障りな機械音を響かせた。
しかも、そうめんがアツアツ。
真っ赤の炎に包まれながら、アツアツのそんめんがダモクレスの上を流れていた。
「虚無球体よ、敵を飲み込み、その身を消滅させよ!」
次の瞬間、琉音がディスインテグレートを発動させ、触れたもの全てを消滅させる不可視の『虚無球体』を放った。
「ナガシソウメェェェェェェェェェェェェェェン!」
その一撃を喰らったダモクレスが断末魔を響かせ、必死に足掻いて虚無球体から抜け出そうとしながら、ガクブルと痙攣して動かなくなった。
「……終わったね。随分と酷い事になっちゃったけど……」
カシスがホッとした様子で、辺りを見回した。
しかし、辺りは、そうめんだらけ。
何処を見ても、そうめん、そうめん、そうめんだった。
それでも、ヒールを使えば、修復可能。
それだけが救いであるかのように思えた。
そんな中、カシスの視界に入ってきたのは、近所の中華料理店が入口に貼られた『冷やし中華始めました!』という言葉であった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年7月8日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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