奏でる音色は死の誘い!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化したビルに、電子アコーディオンが放置されていた。
 その電子アコーディオンは、とあるミージシャンが使用していたモノで、サイケデリックで毒々しいデザインが特徴だった。
 だが、すぐに飽きられてしまい、廃墟と化したビルに放置されたまま、人々の記憶からも忘れ去られてしまったようである。
 その悲しみと怒りと絶望から、電子アコーディオンが魂の叫びを上げたのか、この場所に蜘蛛の姿をした小型ダモクレスが現れた。
「アコォォォォォォォォォォォディオオオオオオオオオン!」
 次の瞬間、電子アコーディオンが機械的なヒールによってダモクレスと化し、廃墟と化したビルの壁を突き破って街で暴れまわるのであった。

●セリカからの依頼
「カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化したビルで、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティチェインを奪われてしまう事でしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが確認されたのは、都内某所にある廃墟と化したビル。
 このビルには以前まで芸能事務所が入っていたらしい。
「ダモクレスと化したのは、その電子アコーディオンです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、精神的に不安な気持ちになってしまう奇妙な曲を奏でながら、襲い掛かってくるようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
氷岬・美音(小さな幸せ・e35020)
日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)

■リプレイ

●都内某所
「まさか俺の予想していたダモクレスが本当に出てくるとはね」
 カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)は、仲間達と共に廃墟と化したビルにやってきた。
 この場所は以前まで芸能事務所が入っていたが、不況の波には打ち勝つことができず、廃業してしまったようである。
 そのためか、ビルの中は異様なほど静まり返っており、いかにも何か出そうな感じであった。
「今度はアコーディオンですか。ダモクレスにも色々と種類があるのですね」
 アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が、持参したライトで辺りを照らしながら、警戒した様子で階段を上っていった。
 そのたび、カツーンカツーンと不気味な足音が辺りに響き、嫌な予感が膨らみ、心臓がバクバクと高鳴った。
「ダモクレスになる前は、とても素敵な音色を奏でていたんだろうね。それが死を呼ぶメロディとなったからには、僕達も容赦しないけど……」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が複雑な気持ちになりながら、ライトで辺りを照らした。
 階段の壁には、幾つも落書きがされており、それが幾つも書き重ねられていた。
 そうする事で自分達の存在をアピールしているようだが、ケルベロス達にはまったく意味が分からなかった。
「アコーディオンって、コンサートとかでも聴いたことはあるけど、とても良い音色でしたよ。だから、このアコーディオンも、きっと……」
 氷岬・美音(小さな幸せ・e35020)が、何処か遠くを見つめた。
 事前に配られた資料を見る限り、ダモクレスと化した電子アコーディオンは、音色よりもデザインを重視していたようだが、有名なミュージシャンが使っていた事を考えると、決して悪いモノではないだろう。
「……私は使ったことが無いですけど、アコーディオンって扱うのは難しそうですよね」
 花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)がハンズフリーライトで辺りを照らし、半開きになっていたドアを開けた。
「アコォォォォォォォォォォォォディオオオオオオン!」
 次の瞬間、ダモクレスがケルベロス達を威嚇するようにして、耳障りな機械音を響かせた。
「……随分と美音達を歓迎してくれているようだね」
 日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)がダモクレスと対峙し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「アコォォォォォォォォォォォォォディィィィィィィオオオオオン!」
 その視線に気づいたダモクレスが、内に秘めた殺気を爆発させ、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「あたしは楽器をひけないけど、インテリアとして飾っておくなら……ありね!」
 それと同時に、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)がダモクレスの攻撃を避け、転がるようにして間合いを取った。
「素敵な音楽を奏でてくれるならいいけど、破壊を伴う音波を放つなら、迷惑極まりないから、さっさとダモクレスを倒しましょう」
 雪城・バニラ(氷絶華・e33425)が殺界形成を発動させ、ライトを照らしながら、ダモクレスを牽制した。
「……そうだね。このダモクレスは必ず俺達で倒してしまおう」
 そう言ってカシスがダモクレスと距離を取りつつ、仲間達に対して声を掛けるのであった。

●ダモクレス
「アコキォォォォォォォォォォォォディオオオオオオオン!」
 ダモクレスが精神的に不安な気持ちになる奇妙な曲を奏でながら、ケルベロス達に対して音符型のビームを放ってきた。
「さぁ、行きますよ、夢幻。……サポートは、任せます……!」
 すぐさま、綾奈がウイングキャットの夢幻に声を掛け、音符型のビームを避けていった。
 その呼びかけに応えるようにして、夢幻の注意を引いた。
「水よ、光よ、煌く万華鏡の様に皆に届け……!」
 それに合わせて、アクアがシャボン玉万華鏡(シャボンダママンゲキョウ)を発動させ、魔力を込めたシャボン玉を無数に創造し、光を乱反射させる事で仲間に癒しの輝きを与え、超感覚を覚醒させた。
「美音を守る属性の盾よ、加護の力を与えて下さい!」
 続いて、美音がエナジープロテクションを発動させ、『属性』のエネルギーで盾を形成し、仲間の守りを強化した。
「エクトプラズムの霊弾を、食らえー!」
 魅麗がプラズムキャノンを発動させ、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作って、ダモクレスを攻撃した。
「アコォォォォォォディオオオオオオオオオン!」
 その事に気づいたダモクレスが、素早い身のこなしで、大きな霊弾を避けた。
「……素早いダモクレスね。少しジッとして居なさい!」
 バニラがイラッとした様子で、轟竜砲でハンマーを『砲撃形態』に変形させ、竜砲弾でダモクレスの破片を弾き飛ばした。
「アコォォォォォォォォォォォォォディオオオオオオオオオオオオオン!」
 だが、ダモクレスは怯まない。
 再びビームを放つため、エネルギーのチャージを始めていた。
「バスターライフルって、あたしにはちょっと大きいけど……射撃はお手の物よっ!」
 それと同時に、レイがバスターライフルを構え、ダモクレスの発射口をぶち抜いた。
「アコォォォォォォォォディオオオオオオオン!」
 そのため、ダモクレスはビームを放つ事が出来ず、ケモノにも似た機械音を響かせた。
「この重い拳を、受けてみなさい!」
 そこに追い打ちをかけるようにして、魅麗がダモクレスの逃げ道を塞ぎ、獣撃拳で獣化した手足に重力を集中スルト、高速かつ重量のある一撃を叩き込んだ。
「その身体、燃やし尽くしてあげるよ」
 それに合わせて、カシスがグラインドファイアを仕掛け、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りを炸裂させた。
「アォォォォォォォォォォォォォォォオディオォォォォォォォォォォォォォン!」
 次の瞬間、ダモクレスの身体が炎に包まれ、その苦しみから逃れるようにして、音符型のアームを振り回しながら、辺りの壁を破壊し回った。
 その間、辺りに響くのは、精神的に不安な気持ちになる奇妙な曲。
 それが原因でみんな戦いのテンポが、狂い始めているようだった。
「悲しかったり、怒ってるから、そんな曲なの? だったら、あたしのイラストでゴキゲンにしてあげるんだからっ♪」
 レイが何やら察した様子でペイントラッシュを仕掛け、激しく塗料を飛ばし、ダモクレスをPOPに仕上げた。
「アコォォォォォォォォォォォォォォディィィィィィオオオオオオン!」
 その途端、先程まで鳴り響いていた音色で、とても陽気で楽しげな曲に変化した。
「……いくら陽気な音色であっても放っておく訳にはいかないね」
 その隙をつくようにして、カシスがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りで、ダモクレスの機動力を奪った。
「アコォォォォォォォォォォディィィィィィィィィォォォォン!」
 それでも、ダモクレスは怯まない。
 とても陽気で楽しげな曲を響かせながら、楽しそうに音符型のアームを振り回した。
「エンジェリックメタルよ、私に、力を……!」
 それを迎え撃つようにして、綾奈が戦術超鋼拳を繰り出し、全身を覆うオウガメタルを『鋼の鬼』と化し、ダモクレスの装甲を拳で砕いた。
「とにかく、あのアームを壊してしまいましょう!」
 それに合わせて、アクアがダモクレスの取り囲み、ハンマーを『砲撃形態』に変形させ、竜砲弾で攻撃した。
「コールド・サイクロンよ、敵を凍えさせなさい!」
 続いてバニラがクリスタライズシュートを仕掛け、射出した氷結輪でダモクレスを切り裂き、強烈な冷気で凍てつかせた。
「華麗なる薔薇の舞を、その身に刻み込むと良いよ」
 それと同時に、司が薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
 続いて、仲間達がダモクレスに攻撃を繰り出し、次々と音符型のアームを破壊した。
「今のうちに治療をしておきましょう」
 その間に、美音がウィッチオペレーションを発動させ、魔術切開とショック打撃を伴う強引な緊急手術で仲間を癒した。
「アコォォォォォディオオオオオオオオン!」
 次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、音符型のミサイルを飛ばしてきた。
 音符型のミサイルは爆発と共にビルの壁を破壊しながら、陽気で楽しげな曲を響かせた。
「……この攻撃は避けられませんよ」
 すぐさま、綾奈が雷刃突を繰り出し、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「オーラの弾丸よ、敵に喰らいつきなさい!」
 それに合わせて、バニラが気咬弾を仕掛け、オーラの弾丸をダモクレスに食らいつかせた。
「私のスライムよ、敵を貫き、汚染しなさい」
 続いて、アクアがケイオスランサーを仕掛け、鋭い槍の如く伸ばしたブラックスライムでダモクレスを貫き、破損した部分を汚染した。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ!」
 それと同時に、カシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を発動させ、罪を浄化するエナジー状の光の剣を無数に創造し、ダモクレスを串刺しにして破壊した。
「アコ・オ……ディオ……ン」
 そして、ダモクレスは崩れ落ちた。
 力尽き、ガラクタの山と化し……。
「な、何とか倒す事が出来ましたね」
 その途端、美音が崩れ落ちるようにして、その場にペタンと座り込んだ。
 戦いの末に、ダモクレスを倒す事が出来たものの、ビルはボロボロ。
 今にも崩れ落ちてきそうなほど、全体的に損傷が酷かった。
「廃ビルとはいえ戦闘の跡があったらマズイかな」
 そんな空気を察した魅麗が、ヒールを使って破損した部分を修復した。
「皆、怪我は無いかな?」
 その間に、司が仲間達に駆け寄り、怪我をしていないか確かめた。
 既にダモクレスだったモノは、動かない。
 もう二度と、音色を響かせる事もない。
「怪我はなかったけど、このアコーディオンは貰っていくわね。こんな格好いいデザインなんだから、捨てちゃうなんて勿体ないわ」
 そう言ってレイが壊れた電子アコーディオンにヒールをかけ、大切そうに持ち帰るのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年7月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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