●都内某所
「ボクは常々思うんだ。小学生なら何をしても許されるって! だって、そうでしょ? 例え、どんなに悪い事をしても、ボク達には魔法の言葉があるからね。何をやっても、『子供のした事ですから』って言えば、大丈夫!」
ビルシャナが廃墟と化した工場に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
信者達は揃いも揃って小学生。
みんなビルシャナによって洗脳されているため、目をグルグルさせながら、熱心に話を聞いているようだった。
そんな彼らであっても、疑問に思う事があった。
あのビルシャナ……小学生にしては、老けてる気がする、と……。
●セリカからの依頼
「若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある工場。
信者達は小学生だけで、ビルシャナによって洗脳されている影響で、悪い事をしても許されると思い込んでいるらしい。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
信者達はみんなビルシャナが小学生ではなく、小学生の恰好をしたオッサンだと勘ぐっているものの、その事を誰も指摘をしないため、口にはする事が出来ないようである。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889) |
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506) |
平坂・穣子(ウェアライダーの巫術士・e25580) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
●都内某所
「また、おかしな事を言っているビルシャナが現れたようね。小学生だったら、何でも許されるって……。ふざけんじゃないわよ! たった一年の差で魔法の言葉の効力がなくなるなんて納得いかなぃんだからっ!」
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)は仲間達と共に、ビルシャナが確認された工場にやってきた。
ビルシャナが拠点にしている工場は、不況の煽りを受けて廃業してしまったらしく、少し前まで不良達の溜まり場になっていた。
その場所をビルシャナ達が強奪し、自らの根城にしているようである。
「普通『子供のした事ですから』と言うのは、被害者の方ですし、その被害も笑って済ませられるものだけなんですけど……」
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が、事前に配られた資料に目を通した。
ビルシャナ達がやっていたのは、子供の悪戯レベルだが、それでも笑って済ませる事が出来ないモノだった。
「ハッキリ言って論外ね。言っても分からないなら、やるしかないわ」
レイが不機嫌な様子で、拳をギュッと握り締めた。
相手が子供であることを考慮し、とりあえず話を聞くつもりではあるものの、場合によってはボッコボコにしなければならないだろう。
「今の時代、体罰は良くないと言われてますけど……やっぱり、言ってもわからないなら、しかたがないですよねぇ~」
そう言って、めぐみが物凄くイイ笑顔を浮かべた後、仲間達と共に廃墟と化した工場に入っていった。
「なんだ、お前達は! ここはボク達の御城! 神聖な場所だぞ! お前達の来る場所じゃない! だから帰れ! いますぐ帰れ!」
その途端、ビルシャナが殺気立った様子で、ケルベロス達を非難した。
それに合わせて、まわりにいた信者達が一斉にパチンコ玉で攻撃を仕掛けてきた。
それは些細な悪戯であったが、ケルベロス達をイラつかせるには、十分なモノだった。
「……噂は聞いているぞ。あちこちで悪さをしているんだってなぁ。まあ、確かに小学生だったら、許される事ばかりだ。それに、小学生と言わず自分の行動に責任持てねえガキなら大体許してやる。……だが、お咎め無しってことにはならねえんだぜ」
相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)が殺意を含んだ目で、ビルシャナ達をジロリと睨みつけた。
「……!」
それだけで、信者達は、ガタブル状態ッ!
全身に鳥肌を立たせ、震えが止まらなくなっていた。
「そ、そんな事でボクらが怖がると思っているのか! 全く怖くないぞ! 全然、怖くないんだから……!」
それでも、眼鏡を掛けた男性信者が、涙目になって叫び声を響かせた。
だが、ビルシャナの信者とは言え、相手は小学生。
その言葉に反して身体は震え、目がギョロギョロと泳いでいた。
「お、お前等、大人げないぞ! ボクらは、まだ子供なのに……。こんな事をして、許されると思っているのか!?」
そんな空気を察したビルシャナが、信者達を護るようにして陣取った。
「小学生だからどうとかは脇に置いて、とりあえず、お前は許さん」
その事に気づいた平坂・穣子(ウェアライダーの巫術士・e25580)が、ビルシャナをボコって、ボコって、ボコりまくった。
……そこに言葉はいらない。
ただ殴るだけ。
その間、テレビウムの田中くんが自らの画面に『今のままだと、どんな人生を歩むことになるのか』の解説動画を流した。
それは面倒くさそうな口調ながらも、割とノリノリで動画にナレーションがついたモノで、子供達に恐怖とトラウマを植え付けるには、十分なほどの破壊力を秘めていた。
●工場内
「もう止めろ! ビルシャナ様だって子供だぞ!」
目鼻立ちの整った男性信者が、ビルシャナを護るようにして陣取った。
洗脳によってビルシャナを信じ切っているのか、その表情に迷いはなかった。
(「うわっ……、イケメン!」)
その途端、レイの瞳が、綺羅星の如く輝いた。
これは迷わずお持ち帰りするレベルのイケメン。
何やら犯罪のニオイがするものの、生唾ゴックンレベルでイケメンだった。
それに、ビルシャナから保護する必要があるため、犯罪ではない……はず。
そう言い聞かせる事で、自らを正当化しているような感じであった。
「被害者が『子供のした事』許しても、親はそうもいかないです。やっぱり二度としない様、言葉で叱りますよね」
めぐみが敵意のない眼差しで、信者達に語り掛けた。
「そうかなぁ? ボクは、そう思わないけど?」
眼鏡を掛けた男性信者が、悪気がない様子で首を傾げた。
「おい、クソガキ共。小学生なら何をしても許される。本当にそう思ってんのか」
そんな中、穣子がオラオラスタイルで、信者達に睨みを利かせた。
「ひぃ!」
その視線に気づいた信者達が、一斉に間の抜けた声を上げた。
「そうだよ。だって、ボクらは子供だもの。だから、何をしてもいいんだよ。ひょっとして、知らなかったの?」
しかし、目鼻立ちの整った男性信者は、怯まない。
「そうだ、そうだ! ボク達、子供の権利を主張してやれ!」
ビルシャナも調子に乗って、穣子の顔を覗き込み、小馬鹿にした様子で煽り始めた。
「……というか、子供じゃないだろ。オッサンだろ?」
穣子が呆れた様子で、ビルシャナをジト目で睨んだ。
「オ、オ、オッサンなわけがないだろ! ボクは子供だよ! まったく言いがかりは、よしてくれないかな!」
ビルシャナが動揺した様子で、激しく目を泳がせた。
だが、図星。
実際には、オッサン。
それ故に、あたふた。
脂汗を掻きつつ、言い訳をするための理由を考えているようだった。
「聞いたか、今の言葉? こんなオイタばっかやってると、親からも先生からも友達からも見放されて、将来あのオッサンみたいになるぞ」
穣子がビルシャナを顎でしゃくった後、信者達に語り掛けた。
その間、信者達は無言。
だんだんビルシャナがオッサンに見えてきたのか、色々な事が信じられなくなっているようだ。
「だからオッサンじゃないって! ボクは子供! 子供なの!」
それでも、ビルシャナは怯む事なく、自分が子供である事を強調した。
「どこが子供だよ。いい年して、子供物の半ズボンなんか履いて……。そんな脛毛を生やした子供がいるか? そんなんだから、子供相手にしかイキれないような、惨めで恥知らずな大人になっちまったんだろうが! そのうち誰からも相手にされず、一人寂しい孤独な人生を送る事になるぞ」
そこに追い打ちをかけるようにして、穣子がビルシャナをディスりまくった。
既にビルシャナは、涙目。
まるで御通夜の如く、気持ちがどんよりであった。
「……というか、脛毛どころの話じゃないわ? 全身毛だらけ、羽だらけなんだから……! そんな小学生、見た事がないわよ! それで騙し通せると思ってんの!?」
レイが嫌悪感をあらわにしながら、ビルシャナに駄目出しをした。
「うぐっ!」
そのため、ビルシャナは反論する事が出来ず、悔しそうにクチバシを震わせた。
「あと小学生にとって『子供のした事ですから』は魔法の言葉じゃないの。だって当然だもの、魔法も何もないじゃない。そういうのって都合のいい時だけ大人が使うのよ、あんたみたいね! だから、あんたたちも気を付けないとダメよ。こんな奴の言うこと聞いて色々したら中学校生活を暗黒サイドで過ごすことになっちゃうんだからねっ」
その間に、レイが真剣な表情を浮かべ、信者達に対して、非情な現実を突きつけた。
「そんな事は……ない。絶対にない……はずだ」
目鼻立ちの整った男性信者が、弱気な態度で視線を落とした。
既に、限界。
今にも心が折れそうな勢いで、涙目だった。
「まあ、まともに叱ってやれる大人が身近に居ねえのも、ちょっと不幸な話だとは思うがね」
竜人が何やら察した様子で口を開いた。
信者達は、みんな不安げ。
まるで助けを求めるようにして、竜人の顔を見上げていた。
「みんな、騙されたら駄目だ! コイツは同情なんてしていない。その証拠に、あの目を見ろ! 間違いなく、笑顔で人を殺すタイプだろ! だって、ほら……あ、ごめんなさい。ボク、子供だから……その……あの……えーっと……何でもないです」
そんな中、ビルシャナが竜人を非難したものの、視線だけで人を殺せそうな殺気に気づき、慌てた様子で吐き出そうとしていた言葉を飲み込んだ。
「……とは言え、言葉で叱ってもわからない子は、体に教えるしかないですよねぇ。……で、君たちは、どっち? 話せば分かる? 分からない。分かるというなら、こんな所にいないで、家に帰ってお手伝いでもしてなさい。でも、分からないのであれば……体に教えてあげます」
めぐみが、とてもイイ笑顔を浮かべ、ビルシャナ達に迫っていった。
「だから謝っただろ! いい加減に許せよ、しつこいなぁ!」
ビルシャナが身の危険を感じつつ、精いっぱい強がった。
本音を言えば、脱兎の如く逃げ出したかったものの、信者達の目があるため、今にも折れそうな心を奮い立たせて、必要以上に強がった。
「それじゃ、始めましょうか」
めぐみが指の関節を鳴らしつつ、物凄くイイ笑顔を浮かべた。
ビルシャナ、殴る、慈悲はない。
そんな言葉が脳裏に浮かぶほど、フルボッコにする気満々。
「そーね、体に教え込んであげなきゃねっ♪」
レイも何やら察した様子で、ヤル気満々。
今にも殴りかかっていきそうな勢いで、目つきが鋭くなっていた。
「……よし殺す」
竜人も指の関節を鳴らしながら、信者達に迫っていった。
既に迷いはない。
それこそ、微塵も……。
そもそも、何やっても許されると高をくくった、その態度が気に食わない。
故に、何の躊躇いもなければ、考えを改めるつもりはない。
その覚悟を示すようにして、竜人が髑髏の仮面を被った。
「や、やれるものなら……やってみろ!」
小太りの男性信者が、興奮した様子でフンと鼻を鳴らした。
さすがに殴られると思っていないのか、何やら強気な感じであった。
「俺はケルベロスでな。壊す具合はよく知ってんだ、だから加減は得意なんだよ」
すぐさま、竜人が間合いを詰め、小太りの男性信者を拳骨で殴った。
「怒れる乙女の鉄拳制裁!!」
それに合わせて、めぐみも手加減攻撃を仕掛け、まわりにいた信者達の意識を奪っていった。
「……」
そのため、ビルシャナが唖然とした表情を浮かべ、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべた。
「……いいか。悪い事したって最終的には許してやるよ。だがそれはテメエが悪い事したって認めて反省した上でだ。人の嫌がることはするな、自分の所有物でない物を壊すな、犯罪なんざ以ての外だ。そういうルール知っとかねえと俺よりもっと怖い連中にもっと酷い目に合わされるかもなあ?」
そんな中、竜人は意識のある信者達を見つめ、含みのある笑みを浮かべた。
「……!」
それだけで、信者達はすべてを悟った。
自分の身に何が起こるのかを……。
「さて聞くぞ。悪い事したら何て言う??」
竜人が信者達を見つめ、最後のチャンスを与えた。
これで反省しなければ、容赦なし。
その気持ちが槍の如く鋭く尖り、信者達の心に突き刺さっていた。
「……ごめんなさい」
信者達に迷いはなかった。
みんな、反省一色。
誰ひとりとして、文句を言う者はいない。
●ビルシャナ
「なんだよ、お前等! こんな奴等にビビりやがって! だったら、ボクがやってやる! やってやるぞおおおおおおおお!」
ビルシャナが殺気立った様子で、ケルベロス達の前に立った。
だが、誰もそこに加勢する者はいない。
「さっきも言いましたけど、言葉で言ってわからない子はお仕置です」
めぐみがビルシャナを見つめ、ニコッと優しく微笑んだ。
それは天使の微笑であったが、ビルシャナ達にとっては、死の宣告。
その事を理解した時、ビルシャナの心臓が早鐘の如く高鳴った。
「あ、やっぱり、嘘! 嘘だから! もう分かったから! だから許して!」
これにはビルシャナも、即座に謝罪!
助かるためなら、手段を選ばない程、必死であった。
「その場しのぎの言葉を吐いたところで、何の説得力がありませんね。やはり躾けねば……。言葉の裏に隠された真実を口にするまで……」
めぐみが笑顔を浮かべたまま、ビルシャナに迫っていった。
「さて……殺すか」
竜人がビルシャナをジロリと睨みつけ、一気に間合いを詰めていった。
「ちょっ、ちょっと待って! 話せばわかる! 話せばわかるから……!」
ビルシャナが涙目になって、命乞いをし始めた。
しかし、竜人に迷いはない。
同じ言葉しか吐き出す事が出来なくなったビルシャナを、殴って、殴って、殴りまくった。
その間に、テレビウムのマンデリンが救急箱を抱え、気絶した信者達を治療していった。
「それじゃあ、お母さんのおなかの中からやり直してください」
次の瞬間、めぐみが女王様乃御仕置(ジョウオウサマノオシオキ)を発動させ、攻性植物を一時に召喚すると、弦形態で装備した上で、ビルシャナを何度も鞭打ちした。
「ひぃぃぃぃ! ごめんなさい! ごめんなさい! もうしませんから! 許してください! つーか、許せゴラァ! あ、ごめんなさい! 本心じゃないです! グギャアアアアアアアア!」
そして、ビルシャナはズル剥けた背中を真っ赤に腫らしながら、グッタリとして動かなくなった。
「結局、反省したのは上辺だけか」
穣子がビルシャナだったモノを見下ろし、深い溜息を漏らした。
予想はしていた事だが、ここまで予想通りだと溜息しか漏れなかった。
「それじゃ、この子達を家に帰しておくね」
そう言ってレイがドサクサに紛れて、目鼻立ちの整った男性信者の肩を抱きつつ、他の信者達を連れて、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年7月1日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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