紅焔

作者:崎田航輝

 夕刻が過ぎ、深い青の帳が降り始める。
 昼の明るさと夜の眩い明かりの狭間で、街に訪れるのは一瞬の薄闇の時間。時が止まったような、静かで短い逢魔が時に──しかし真紅の焔が閃いた。
 轟音と共に地鳴りが響き、破砕音が響く。
 たった今まで平和だった都会の只中。人々が驚愕のおもてで見上げる建物の跡──その瓦礫の間から立ち上がる巨影があった。
 それは躰の端々に煌々と焔を明滅させる、巨大な人型。
『灰に、帰するがいい』
 狩られるべき獲物を、取り込まれるべき矮小な命を、慈悲無く見下ろすように。長大な刃を振り上げるそれは、ダモクレス。
 瞬間、建物を砕き、人々を斬り裂き。砲身から炎を撒き散らしながら、淡い暗闇を目も眩む程の灼熱で塗りつぶす。
 そうして全てを焼き尽くさんと破壊を続けて──数分後。現れた魔空回廊へとダモクレスは消えてゆく。
 後に残るのは燻り続ける焔の残滓。瓦礫の山と、斃れる人々の姿を、赤々と舞う火花が照らし出していた。

「集まって頂きありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ダモクレスの出現が予知されました」
 現れるのは巨大ロボ型の個体。大戦末期に封印されたもので、仲間のダモクレスによって復活させられるようだ。
「魔空回廊を通じて、その仲間達に回収される予定なのでしょう。放置すれば街は破壊され、死者が多数出てしまいます」
 だけでなく、ダモクレス勢力の戦力増強にも繋がってしまうことになるだろう。
「それを防ぐために、撃破をお願いします」
 出現場所は市街地の中心。
 敵は出現から7分後に魔空回廊によって撤退する。こうなると追うのは困難になるため、撃破はその時間までに行う必要があると言った。
「街の人々は、事前に警察によって避難させられます。皆さんは撃破に集中できるでしょう」
 ダモクレスの全長は7メートル。その巨体と遠近に強力な攻撃を仕掛ける武器を活かしてくるだろう。こちらも高所を利用して戦うと良いかも知れません、と言った。
「尚、敵は戦闘中、一度だけフルパワーの攻撃を行ってくるようです」
 敵自身も反動で傷を負うようだが、その分威力は高いだろう。
「おそらくは広範囲の攻撃でしょう。警戒を欠かさないようにしてくださいね」
 敵は強力、それでも皆さんならば勝利を掴めるはずですから、とイマジネイターは声音に力を込める。
「是非、頑張ってくださいね」


参加者
瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)
颯・ちはる(寸鉄殺人・e18841)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
ヴァルカン・ソル(緋陽の防人・e22558)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
雪城・バニラ(氷絶華・e33425)
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●蒼宵
 薄闇に鮮やかな青が混じり、空が深い彩に染まる。
 宵の始めは世界が単色になったようで美しい。
 けれど地面に降りれば、微振動が確かに敵の気配を伝えてくるから──イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)はじっと戦いの時を待っていた。
「大阪城にもいたけど……最近ダモクレスあんまり表立って動いてないし、ちょっと不気味だよね。何か企んでたりするのかな?」
 呟けば、そうね、と隣から返すのが雪城・バニラ(氷絶華・e33425)。
「勢力の動きはないけれど、巨大なロボ型の個体は絶えなく現れていて……不自然ではあるわね」
 雪白の髪を風に靡かせながら、表情も声に含む感情も淡い。
 ただ、その瞳は真っ直ぐを向いていて。
「まぁ、今はとにかく──人に危害が加わる前に倒してしまいましょう」
 言って戦いの態勢を取れば、次の瞬間。
 轟音と共に地面が揺れて、アスファルトが砕け散る。そこから機械の人型、ダモクレスが立ち上がっていた。
 その巨影はゆらりと見回し、破壊目標を定めようとする、が。
 既に宵の影から走り出す姿が二つ。
「ちふゆちゃん、始めるよー!」
 傍らのライドキャリバーと共に、後背側へ迫る颯・ちはる(寸鉄殺人・e18841)。
 駆動音を上げて剛速に達するちふゆが、先ずは機械の足元へ体当たりを叩き込めば──ちはるは壁を蹴って跳躍。
 脚部関節へと槌を振り上げ一撃、装甲を大きく軋ませる。
 衝撃にダモクレスは視線を下ろした、が、その視界に瞬く輝きが一つ。
 イズナが手のひらから飛び立たせる『紅蝶』。鮮やかな光りながら、羽撃くたびに鱗粉を艶めかせ──敵の視線を囚えてしまう。
「今のうちだよ」
「了解」
 そこへ涼やかに翼で飛ぶのが四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)。
 ダモクレスが静止している一瞬、光の軌跡を描いて曲線飛行。錐揉むように距離を詰めると素早く翻って。
「まずはその機動力から、奪ってあげるよ」
 上下反転した体勢から捻りを加えた蹴撃。迅風の如き一閃で脚部の一端を裂いてみせた。
 一歩傾いで、ダモクレスは初めて番犬の存在を捕捉する。
 奇襲を受けた事は想定外だったろう。
 だが、それでも此方を矮小な存在と認識する視線は変えずに。
『全てを、灰に帰するまで──』
 握る剣に灼熱を纏わせてみせていた。
「炎の刃を操るダモクレスか」
 ヴァルカン・ソル(緋陽の防人・e22558)は目も眩む程の眩さに、呟きを零す。
 巨影の持つ力は偽りではないのだろう、と。
「……しかし、その力を無辜の人々に向け、数多の命を焼こうというのなら」
 声音には静謐を宿したまま、同時に内奥には研ぎ澄まされた意志を覗かせて、すらりと刀を抜きながら。
「我が炎剣にてお相手しよう」
 刹那、竜翼を広げて風を叩き飛翔。低空を滑るようにダモクレスへ肉迫し、炎雷を纏わせた鮮烈な刺突を繰り出した。
 躰を抉られたダモクレスは、刃を翳し反撃を目論む、が。
「SYSTEM COMBAT MODE」
 声音と共にそこへ狙いを定める機巧の戦士が一人。
 地を踏みしめて僅かに体勢を仰がせ、腕部の機械武装を向ける──マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)。
「DESTRUCTOR──READY」
 砲身の先に巨影をしかと捉え、荷電粒子を収束。夜を照らす程の光度を瞬かすと、瞬間。
「FIRE」
 キャノンを発射。宵闇に白色の閃光を描きながら強烈な衝撃を胸部へと撃ち込んだ。
 大音を上げて後退しながらも、ダモクレスは炎を放射してくる、が。
「癒しの花弁よ、皆を助けてあげてね」
 バニラが雪の如き冷気を伴った花吹雪で、その熱を冷やせば──。
「後はこっちでやっておく」
 瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)が黒鉄の歯車を煌めかせ、光の粒子を風に舞わせた。
 明滅する暗色の輝きが、星のように美しく瞬き前衛を回復強化する。そのまま灰は頭上の翼猫へ視線を上げて。
「夜朱、頼む」
 声に応ずる夜朱はぱたりと翔び立ち、柔らかな翼でそよ風を生み防護を万全としていた。
「──街を燃やさせはしねぇ」
 炎が晴れれば、灰は視線を敵へ向けて宣戦の言葉を投げかけてみせる。
「灰に、いやスクラップになるのはお前のほうだ」
『……』
 ダモクレスは反抗の意思を表すように刃を振り上げた。が、それよりも疾く伊礼・慧子(花無き臺・e41144)が斧のルーンを赫かせて。
「力を、受け取ってください」
 破魔の魔力を宿した光を投射する。
 その力を宿されたイズナが、星の煌めきを秘めた光槍を翳すと──周囲に浮遊する穂先が流星のように撃ち出された。
 冷気を含んだその衝撃が金属の巨体を蝕むと、同時に宙へ翔んでいるのがヴァルカン。焔の弧を描くように紅蓮の斬撃を見舞っていく。
 炎すら灼き祓う一閃に、ダモクレスはよろめきながらも斬撃で対抗しようとした、が。
 その腕元へ、既に司が流麗なレイピアを翳している。
「僕のこの剣技を、避けられるかな?」
 瞬間、紫の風が吹き抜ける。
 衝撃波となって飛来したそれは『紫蓮の呪縛』。躰を刻まれながら、まるで縛られるように巨影は動きを鈍らせた。
 そこへ靭やかに腕を伸ばし、弓弦を引き絞るのが慧子。
 ──かかれ、見えざる矢。
 刹那、捉える事も叶わぬ程の細い矢が飛来する。『瞬息の一矢』──水気を纏ったそれは機械の躰に刺さると同時に飛沫ごと凍りついた。
「さあ、この隙に」
「うん!」
 頷くちはるは既にビルからビルへ、駆け上がって巨体の頭上。
 宵空を背にひらりと跳んで、宙返りを繰り返しながら回転力を得ると──寸鉄で一撃、捩じり込むように首筋を穿ってみせた。

●反撃
 番犬達の時計が二分の経過を告げる中、ダモクレスは体勢を崩し膝をついていた。
 ただ残存する体力は多いのだろう、機械的な戦意にも翳りは無く。
『如何に足掻こうとも、短き命は灰燼に消える』
 言いながら再び赤々と熱を灯す。
 その炎に消えゆくことが、まるで運命だというかのようで。慧子は瞳を細めて、その眩さを見つめていた。
 炎も灰も、慧子は嫌いではない。火葬に惹かれるその心が、炎に慰霊の安らぎを覚えさせるから。
 うつくしい終焉は炎とともに訪れる。死は安らぎ。
 己の内奥にそんな思いがあるからでもあろう。焔のゆらぎに見とれてもしまう。
 けれど。
「望まない人がいるのに無理矢理与えてしまうのは論外ですね」
 冷静さも失わず、しかと刃を握り直していた。
「まだこの街は、その時ではないんです」
「そうだね」
 頷く司も怜悧に、巨影をただ倒すべき存在として見据える。
「全てを破壊するなんて迷惑なことはさせない。人々に被害が出る前に、撃破させてもらうよ」
「うん。それに静かな夜なのに騒がしくするのはダメだからね」
 朗らかに言ってみせるイズナは風を泳ぎながら、廻る穂先に氷色の螺旋を描かせて。
 わたしたちがちゃんと止めてあげるから、と。
「絶対逃がさないからね!」
 瞬間、清冽な冷気と共に放って巨体を抉り込む。
 よろける機械の脚を、足場にして素早く蹴り上がっていくのはちはる。
 とん、とん、とんとリズムを刻むように胸部まで舞い上がり──槌で突き通すように、装甲へ亀裂を刻んだ。
「このまま、やっちゃってー」
 と、見上げればビル上からちふゆが奔り出して跳躍。スピンしながらの突撃で、火花を散らしながら巨影をよろめかす。
 ダモクレスはそれでも炎雷を撒きながら斬撃を放ってくる、が。
「灼かせはしない」
 灰が真正面へ疾駆し、壁となっていた。
 脳裏に明滅する景色を思いながら、故にこそ何にも焔を届かせぬようにと、焼け付く衝撃を身を以て受け止める。
 そのまま倒れず七彩に耀く光を広げて、自身と前衛を癒やしながら強化を兼ねてみせた。
 同時、マークはコア内部で高密度グラビティチェインの塊を回転。護りのフィールドを形成し始める。
「CENTRIFUGAL DEFENCE──DEPLOY」
 前列を包み込むように拡がる『遠心防御』は、超高速回転を伴って──青白い光を発散させながら炎の残滓を打ち消して、仲間の体力も保っていった。
 その間に慧子は看板から欄干、低いビルを飛び石の如く経由。ダモクレスの眼前にまで迫って影の刃を奔らせ、装甲の一端を切り落としてみせる。
「だいぶ、破損も進んで来ましたか」
「なら、このまま一気に体力を削り取るまでだよ」
 飛び退く慧子と入れ替わりに、司は耀く翼で青闇を翔けて巨影へ肉迫していた。
 ダモクレスは再度剣を振るおうとするが、司が己が脚先へ青紫の焔を湛えるほうが疾く。放たれた一打は、敵の焔を引き裂くように寒色の傷を描いてゆく。
 巨影は蹈鞴を踏むように大きく下がったが──そのまま反撃の動作に入って来なければ、見据える灰が違和感を抱くのに時間はかからなかった。
「様子が変わったな」
「なんだか、中で燃やしてるみたいだねー」
 と、ちはるも見遣って呟く。巨影は内燃機関へエネルギーを注ぎ込むかのように、身に滾らす焔を色濃くしていた。
 ちはるが仲間にもそれを伝えれば──頷くバニラも皆へとハンドサインを送りつつ、見回して一際分厚い建物の陰へ。
「隠れるなら、ここからしらね」
「うん。もう時間もなさそうだ」
 と、司もそこへ舞い降りて、仲間へも潜むように合図を送る。
 皆がそこへ向かう中、その最前で護りの態勢を築くのはマーク。
 脚部のパイルバンカーを直下へ撃ち出し、篭もった破砕音と共に地面へ突き刺して。肩部のショルダーシールドを前面へ向け、防御姿勢を取っていた。
 灰とちふゆもそこへ並ぶと、一瞬遅れてダモクレスが焔を放出。溜め込んだ熱量の全てを放つように、赤く滾る雨を降り注がせた。
 隕石が落ちたように建物が潰れ、瓦礫が灼け散ってゆく。
 火の粉と煙に全てが覆われ、静寂に包まれる──が。直後に瓦礫を振り払い、斃れず立っているのは盾役の面々。
 その壁に守られた皆もまた、気絶したものはおらず──。
「すぐに癒やすわね。少しだけ、待っていて頂戴」
 薄煙の中から、声と共に白妙の風が吹いた。
 それはバニラが煌めかす治癒の花嵐。心地良く膚を冷やし、熱気を払うように皆の傷を浚ってゆく。
 時を同じく、灰は『廻花』──最前へ立っていたマークへ毒を糧とする種を与え、咲き誇る花弁によって破損を消失させてみせた。
 夜朱も癒やしの風を生み出せば、戦線に憂いは残らない。
 薄闇の中、ヴァルカンは切れ長の瞳で見上げていた。
「後は、こちらが斬るだけだな」
 視線の先、崩れた建物の間に佇むダモクレスは──負荷を受け大きく傷ついていた。
 残り火を燻ぶらせながら、それでも自己回復に奔ろうとしている、が。ちはるが瓦礫の坂を駆けて慧子に託された破魔の力を叩き込めば、ヴァルカンも同時に翔び上がっていた。
 ダモクレスは抗うように剣を掲げる。だがヴァルカンは退かず怯まず、風を履いて真っ直ぐに加速して。
「譲るつもりはない」
 強く握り込む柄から、刀身へ破邪の力を伝えるように。紅蓮の炎を帯びさせた刃で一閃、翔び抜けながらの斬撃で巨影の加護を両断した。

●藍夜
 アラームが鳴り響き、残り二分を伝えていた。
 番犬達は頷き合って敵を見据える。此処からこそ、心を緩められない。ダモクレスは確かに死を間近にしているが、未だ斃れてはいなかったから。
『全てを、炎に……』
 最後のエネルギーを全て火力に注ぐように、巨影は再び眩い炎を瞬かせる。
「……」
 その火と、燃える瓦礫を見遣って灰は一度瞳を閉じていた。
 燃えていく街、炎に包まれる街──過るのは過日の景色。
 ここまで規模も相手も大きくなかったけれど、それは矢張り今も忘れられない光景で。
「もう何も、壊させはしない」
 破壊しようとする機械があるならば、それを破壊するのだと。真っ直ぐに巨体へ奔ると、黒鉄を纏った拳で痛打を加える。
 足元を砕かれ傾ぐダモクレスへ、司も飛翔し剣先へ蒼い渦を凝集していた。
「螺旋の力よ、敵を氷漬けにしてしまえ!」
 意志と共に放たれる冷気の螺旋は、巨影の全身を凍気に包み込む。
 炎の薄らいだ機械の躰へ、慧子も足元から膝、腹部と敵自身を足場に跳躍。孤月を描く斬線を閃かせ、半身を深々と抉り裂いていた。
「残り一分……このままなら、間に合うはずです」
「ええ。気を抜かずに、行かないとね」
 言いながら、バニラも手を伸ばして白色のオーラを収束する。氷晶の如く澄んだ輝きを帯びたその塊は、六花を舞わせながら巨体を貫いてゆく。
「DESTRUCTOR READY──RUN ACCELERATION」
 ダモクレスが大きくバランスを崩せば、マークが腕を曲げて肘のロケットを噴射した。
 そのまま剛速で至近に入ると、スパイク付きの鉄球となっている拳を振り抜き一撃。苛烈な衝撃で敵の片腕を粉砕する。
 そこへ奔るちはるは、ちふゆの回転力へ自己の螺旋を重ねて『流転大崩』。二つの力を咬み合わすように極小の嵐を形成し──巨影を引き摺り込むように崩壊させてゆく。
「あと少しだよー」
「ああ」
 応えるヴァルカンは、倒れ込むダモクレスへ『桜火繚乱』。残霊の放つ雷に合わせて紅炎の剣閃を滑らせて、縦横無尽に機械の躰を寸断していた。
 時を同じく、イズナが高空より翔び降りる。
「これで、終わりだからね!」
 浮かぶ穂先を槍へ組み合わせ、長く鋭いランスと成して。一等星が降るように眩い冷気を伴って刺突。突き抜ける衝撃で、ダモクレスの命を打ち砕いた。

 いつしか景色に燻る火も消えて、青色の静寂が帰っていた。
 敵の残骸が消滅するのを見ながら、灰は振り返る。
「終わったな」
「──ああ」
 頷くマークも戦闘態勢を解き、武装を収めていた。そうして見回せば──見えるのは崩れた建物の数々。
 司は軽く息をついてその中へ歩み出す。
「随分と派手に壊されたね」
「全部、ヒールをしないといけないわね」
 と、バニラも続いて修復作業を始めていた。
 淡い光と共に建物が形成され直していく中、ちはるもコンクリートの山へ近づきながら。
「ちふゆちゃんも瓦礫撤去のお手伝いよろしくね!」
 瓦礫を拾い上げるとちふゆのメットインへと放り込んでゆく。雑な扱いに不満げなちふゆだが、そこはちはるとの仲。抵抗はせず運び出しを助力した。
 慧子も一帯に広くヒールをかければ──暫しの後には美しい街並みが戻ってくる。
「これで大丈夫でしょうか」
「うん」
 空から視線を巡らすイズナも、明るい声音だ。
「みんな、元の生活に戻れるね」
「そうだな」
 護るべき者を護ることが出来た。ヴァルカンは、徐々に人通りが帰ってくる街を見ながらその実感を胸に得て。
「では、帰還しようか」
 後は静かに踵を返して帰路につく。
 皆も頷き、それぞれの帰る場所へ。
 宵の青が夜の藍となり、風の温度も仄かに下がる。逢魔が時は過ぎて、街には平和な夜が訪れようとしていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年7月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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