紅風そよぎ

作者:崎田航輝

 爽やかな風が街路樹の葉を揺らしている。
 夏本番が少しずつ近づきながらも、その隙間のような涼しさが訪れた日。快い温度の中、賑わいを見せる街角があった。
 それは空気に淡い芳しさを漂わせる、紅茶店の建ち並ぶ道。
 茶葉の専門店では、ベルガモットの薫る紅茶や、薔薇を加えたローズティー、フルーツティーを含むフレーバーティーが揃い踏み。
 カフェテラスの有る店では紅茶の他、ジャムとクリーム付きのスコーンやヴィクトリアンサンドイッチを始めとしたティーフードに、各種スイーツも味わえて。
 薫る爽風に導かれるように、紅茶と甘味を味わっていこうと──人々は店に立ち寄って、香りと味を楽しんでいた。
 けれど、そんな道へ踏み入る巨躯の男が一人。
「嗚呼、足りない──」
 血の芳香が、と。
 昏い声音を零しながら、剣を握り締めるそれは罪人、エインヘリアル。
 鋭い眼光で人々の姿を捉えると、地を踏みしめて歩み寄り。刃を大きく振りかぶる。
 次の瞬間、剣の奔る音と共に悲鳴が響き渡る。倒れゆく人々の中で、罪人だけが恍惚と刃を振るい続けていた。

「集まって頂き、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日は、エインヘリアルの出現が予知されました」
 現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
 サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)は頷きながら、声を零す。
「エインヘリアル、ですか。危惧していた通りの敵が出た、ということですね」
「ええ。ただ、サイレンさんの情報提供のおかげで、対処をすることも出来ますから」
 皆さんのお力を貸してください、とイマジネイターは見回していた。
 現場は市街地の一角。
 店の並ぶ道に、エインヘリアルは現れるだろう。
「一般の人々は警察により事前に避難させられますので、その点は心配は要りません」
「私達は戦いに集中すればいいんですね」
 イマジネイターはええ、と頷く。
「それによって、周囲を壊さずに終えることも出来るでしょう。ですから……無事勝利出来ましたら、皆さんも紅茶のお店など、寄っていってはいかがでしょうか?」
 種々の紅茶にフレーバーティー、ブレンドティーなどの茶葉が広く手に入る。カフェも本格的な紅茶とスイーツを楽しめるだろう。
 サイレンは頷く。
「そのためにも、まずは敵を撃破しなければなりませんね」
「皆さんならばきっと勝てるはずですから。健闘をお祈りしていますね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
颯・ちはる(寸鉄殺人・e18841)
ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)
レヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)
サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)
天雨・なご(明日を夢見て今日もレベル上げ・e40251)
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)
ティニア・フォリウム(小さな鏡・e84652)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●薫道
 街に降り立てば、鼻先に薫るのは芳しい風。
 石畳の道を見渡せば、甘い匂いもまた交じってくるから。
「豊かな香りのお茶にあまーいお菓子。うん、最高よね……!」
 ふわりと蝶翅を動かして、ティニア・フォリウム(小さな鏡・e84652)は声に花を咲かせていた。
 想像するだけで楽しいティータイム。
 だからこそと──瞳を前方へ向けると。
「優雅な時間を邪魔されるのはすっごく腹立たしいし、話の合わない人はさっさと追い出しちゃわないとね」
 道の先、そこに歩む巨躯の姿を見つけていた。
 それは獰猛な眼光で獲物を求める罪人エインヘリアル。彷徨うその姿を見据えながら、サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)は瞑目する。
 危惧した未来が訪れた驚きと、同時に使命感も覚えるから。
「何としてでも被害を阻止しないといけませんね。さぁ、行きますよアンセム。サポートは任せます!」
 奔り出しながら呼びかけると、応える白の翼猫が風を扇いで戦線に守りを与えた。同時にサイレン自身も翠のハエトリソウを流動させて。
「豊穣の実りよ、その奇跡の果実よ、仲間を癒す力を与えよ」
 黄金の輝きを結実させて、眩い加護を前衛に重ねてゆく。
 その頃には、皆も敵前へ。
 依頼の場が久しい天雨・なご(明日を夢見て今日もレベル上げ・e40251)は、仄かな表情の内に緊張を抱いているけれど。
(「でも、みんながいるもんね。頑張ろう」)
 見回せば心強い仲間がいるから。
 拳をぎゅっと握って気合を入れれば──その心に応えるようにレヴィン・ペイルライダー(己の炎を呼び起こせ・e25278)が視線を向ける。
「よし、なご。背中は宜しく頼む」
「うん」
 それになごが頷けば、レヴィンは銀のリボルバーを抜いて照星を敵へ。その巨躯をしかと捉え、狙い違わず腕元を穿ってみせた。
 その衝撃に、罪人は此方を見据えて剣を構える。
「……血の、気配がする。俺の、求める匂いが──」
「血なまぐさいのがお好きだなんて、野蛮ですね」
 と、淡い声音を返すのは伊礼・慧子(花無き臺・e41144)。怯むでもなく、静やかに言葉を続けていた。
「私は葬送の煙の匂いの方が風情があって好きですが……」
「……、同じことだ。誰かが死ぬなら……必ず血が流れる」
「──だったら、自分の腹でも裂いておけば充分だろうに」
 と、巨躯の返した声よりも、一層深い夜色の声音を投げるのはノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)。
「なんなら僕らがやってやるよ」
 二彩が同居する瞳に、一貫した零下の温度を携えて一撃。咎人の理も義も砕く、慈悲無き刺突を見舞ってゆく。
 巨体が蹈鞴を踏めば、颯・ちはる(寸鉄殺人・e18841)が隙を逃すはずもなく。
「さぁちふゆちゃん、行くよー」
 呼びかければ、疾駆するのはライドキャリバー。
 駆動音の唸りを上げて加速すると、焔を纏って正面から突撃し──罪人が傾ぐと、そこへちはるが跳んでいた。
 ひらりと身軽に翻る姿は疾風のように。高速の蹴撃を叩き降ろす。
 膝をつく罪人は、それでも剣圧を放ってきた、が。
 盾役が受け止めてみせれば、なごが鎖で守護の陣を描き回復。慧子も陽炎の如き属性の力を盾役に与え体力を保った。
 時を同じくティニアが罪人の頭上へ舞い翔んで。
「次は、こちらの番ね?」
 ふぅと息を吹き下ろして『杯に湛えし勝利への渇望』。無数の花々を咲かせ、その蔓で巨体を締め付ける。
「後はよろしくね」
「うん。任せて」
 と、すらりと美しき細剣を抜くのは四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)。
 藻掻く巨躯へ、対照的に冷静な表情を見せて。仕草は飄然と、それでいて洗練されたように素早く、鋭く。
「花の嵐に囚われると良いよ」
 光翼を煌めかせながら剣先を突き出すと──吹き抜けるのは青と紫の花吹雪。その鮮やかな風に巨体は膚を深々と抉られてゆく。

●剣戟
 苦痛によろめく罪人は、声音に怨嗟を滲ませる。
「貴様らには、判らないのか……戦う者が、血を求める本能が」
「さあな。ま、お互い嗜好は違うだろうけど」
 レヴィンは緩く首を振って返していた。
「血の芳香は好きになれないな。だって誰かが不幸になっちゃうだろ?」
「そうだよー」
 と、ちはるもくるりと見回す。
「せっかくいい雰囲気といい香りが流れてきてるのに。景色的にも香り的にも血腥くされるのは、ちょっとなぁ……」
 “仕事人”であるちはるにとって、それは慣れていないものではないけれど。
「好むわけでもないし──拒否するよ拒否ー」
 言うが早いか肉迫して一撃、螺旋の渦巻く掌打を加えた。
 宙へ煽られる巨体へ、司は飛翔し接近。
「華麗なる薔薇の舞を、受けてみよ」
 旋転しながら剣閃を滑らせ、花を象るように巨躯の端々を斬り捌いてゆく。罪人が声を洩らしながら墜ちてゆくと──。
「サイレンさん、お願い」
「ええ、判りました」
 間隙を作らずサイレンが植物を畝らせていた。
 意を汲むように棘を鋭くし、高速で伸びたハエトリグサは──巨躯へと飛びつくと、兇猛に腕の一端を食い破る。
 罪人は振り払おうと剣を暴れさせるが、空に踊るティニアにはどこ吹く風で。
「悪いけど、隙は突かせてもらうからね」
 錐揉みの軌道を描いて滑空すると、突き降ろす棍で肩を貫いた。
 血潮に塗れながらも、罪人は倒れずレヴィンへ斬撃を浴びせる。が、一瞬後には慧子がそっと掌で器を作って。
「すぐに癒やします、待っていてくださいね」
 その内よりひらひらと蝶を羽ばたかせていた。光を棚引かすそれは、影から踊り出るように鱗粉を漂わせて傷を治癒。
 なごも月光を彷彿させる魔力球を煌々と光らせて。真っ直ぐに投げ飛ばしてレヴィンを包み、癒やしながら力も強化した。
「これで、大丈夫だよ」
「ありがとな。じゃ、攻撃と行くか」
 レヴィンが弾倉に弾を籠めると、頷くなごも攻勢。太陽の如く眩いエネルギーの塊を、先ずは巨体へ放っていく。
 弾ける衝撃に罪人がふらつけば、そこへレヴィンが『贅沢な弾丸の使い方』。文字通りにありったけの弾丸を連続射撃し巨体に無数の風穴を開けた。
 罪人は苦渋を零しながらも一直線に抵抗姿勢。
 だから単純で助かると、ノチユは刃を握る。
「ただの馬鹿力だけで番犬が殺せると思うなよ」
 瞬間、敵の一閃を逸らしてみせると黒髪を星屑の如く煌めかせ。
「足りないなら、最期まで血飛沫に塗れさせてやる」
 ──喰われるのは、お前だ。
 後方へ振り向きざまの一閃。『夜の背』を見せる斬撃で半身を斬り抉った。
 体勢を崩す巨体へ、司はすかさず『紫蓮の呪縛』──刃から吹かせる衝撃波で、縛るように動きを封じ込める。
 その一瞬に、慧子が双剣で冥色の剣撃を見舞っていた。影の刃は息の根を止めるにも無駄な血を好まないのだと、ただ命だけを裂くように。
 その深い一撃に斃れる罪人へ、ちはるは『五体剥離の術』。
「おいで、有象無象。餌の時間だよ」
 掌に書き込んだ術を手刀で体内へ送り、数多の毒虫を召喚させて。罪人の躰を器に蠱毒を為して、命を朽ちさせていった。

●紅風
 街に華やかな薫りと人々の笑顔が帰ってくる。
 番犬達の迅速な事後処理によって、通りは元の平穏を取り戻していた。
 活気が戻る中、番犬達もそれぞれに過ごし始めるから──ちはるもまた歩き出して。
「やっぱり味わっていきたいよね!」
 と、早速カフェへ入り、落ち着いた店内でメニューを開く。
「んー、スイーツ系も気になるけど……」
 今日は紅茶だけをじっくり頂いてみよう、と。
 まずはストレートの一杯を注文。ダージリンの茶葉のピュアティーで、深く芳しい香りを楽しんだ。
「美味しいねー」
 ほうと吐息すると、次にフルーツティーへ。
 瑞々しさを感じるアップルティーを味わいつつ──。
「あ……このラズベリーティー、甘酸っぱい香りが好きかも」
 次に頂いたそれは色味も美しく、茶葉を購入決定。
「これティーロワイヤルにしたいな……」
 アルコールを飛ばさず味わってみたいと、思うと楽しみになって。
「……よし、ちふゆちゃん、帰りにブランデーも買うから付き合ってね!」
 ティータイムを終えるとちふゆと共に店を出て、軽い足取りで歩んで行くのだった。

 レヴィンとなごはカフェを訪れていた。
 洗練された内装の中、席についたレヴィンは物珍しげにメニューを眺める。
「さて、何にしようか──」
「ねえねえ」
 と、そこでなごがつんつん。
「何だ?」
「ボクあれ頼んでみたいんだけど。アフタヌーンティーってやつ」
「え、あれってあの、スタンドに皿が三つぐらいのってるやつだよな。オレも前から気になってたけど……でもちょっと高そ……」
 いや、とそこでレヴィンは首を振り。
「折角の機会だ、頼んでみるか!」
 こっそり財布を見つつも奮発。
 紅茶はヘリポートでの記憶を頼りにアールグレイ。なごは飲みやすそうという理由で冷たいフルーツティーを頼んだ。
 程なくやって来たのは──華やかな三段のティースタンド。
「これ、どれから食べるんだろ?」
「普通に上からじゃないのか?」
 レヴィンが言うと、えー、となごは小首を傾げる。
「上ってケーキだよ。デザートは最後じゃない?」
「ふむ──だよな、実はオレもそう思ってた」
 レヴィンが爽やかな笑みで意見を翻すと、早速二人で下段から実食。サーモンのサンドイッチが何とも美味だった。
「なんか貴族みたいでオシャレだね……」
「ああ。ところでこれはクリームとジャム、どっちを使うんだ?」
 中段のスコーンにレヴィンが逡巡すると、なごもうーんと悩んで。
「両方使っちゃえ。……ん、おいしいよ」
 さっくりの食感と甘味が相性抜群で。レヴィンも真似しつつ、更に上段のケーキも頂きつつ紅茶を啜る。
 アールグレイは柑橘の香りが涼やかで。フルーツティーはチェリーとアップルの甘味が快かった。
「食べ方は難しいけど、美味しいね」
「そうだな」
 レヴィンは満足に頷いて……また共に食事を続けていく。

 夏風を感じるカフェテラスで、ノチユはティータイム。
 家では日本茶、外ではカフェラテが多いから……少々新鮮な気持ちで、ストレートティーとスコーンを頼んでいた。
「……なるほど」
 カップを手にすると、芳醇な香りが立ち昇る。
(「いい匂いがする、すごく」)
 難しいことはわからないけど。
 甘すぎず、苦くもなくて、すっと溶けるようで飲みやすかった。
 そうして景色を眺めてひと息つく。蒸し暑い日々がしんどかったから、久しぶりに涼しいとやっぱり寛げて。
 引き立つ香りと味を確かめるようにまたカップを傾ける。
「……違和感はないから、僕はこの味がすきってことで良いのか」
 あとで茶葉も買おう──淹れ方を訊くのも忘れずに、と。
 思いながらスコーンにも手を伸ばす。
 彼女を真似るように、ジャムとクリームをたっぷりつけて。その甘味がまた紅茶と良く合って。
「……今度誘おうかな」
 呟きに心を乗せて。暫しゆったりとした時間を過ごした。

 涼風を浴びるように、サイレンは暫し息をついて人波を眺めている。
 徐々に賑やかになる景色が、平和が戻った事を証明してくれるようで。これも勇者への道の一歩だと、心に実感を得ていた。
 と──そこへ歩んでくるのが司。
「サイレンさん、一緒にお店で紅茶とかどうかな?」
「良いですね。私も丁度、これからどこかに寄ろうかと」
 サイレンが快く頷くと、司もまた微笑みを見せて。二人で茶葉と喫茶の店へ入ってゆく。
 席につくと、既に鼻先を良い香りが擽る。木目調の美しい壁や床、テーブルも異国の情緒があって。
「こちらのお店の雰囲気は素敵ですね」
「うん。きっと紅茶も美味しいよ」
 司は応えてメニューを眺めた。紅茶はストレートからフレーバーまで多彩で迷ってしまうほどだけれど。
「色々あるけれど、どれにする?」
「そうですね……私はフルーツティーを頂きます」
「美味しそうだね。僕は、ローズティーとか興味あるかな──」
 というわけで、二人で注文。食べ物はお勧めのスコーンにして──品がやってくると、先ずはそれぞれに一口、紅茶を頂く。
「……うん。美味しいし、香りがすごく良いね」
 司の一杯は、期待通りの薔薇の香り。花弁と蕾から出たという芳香は上品でふくよかで、仄かな甘味も感じられる。
「こちらも、美味ですよ」
 と、サイレンが微笑むフルーツティーは、お勧めのブレンド。マスカットとアップルの清らかな甘味に、オレンジの快い香りが加わって爽やかだった。
 ジャムとクリームを付けたスコーンは、勿論紅茶を一層美味しくしてくれて。
「こうしてゆっくりとお茶を楽しむのも、いいね」
「ええ」
 司の端正な笑みに、サイレンも瞳を細めて応えて。和やかなひとときを送ってゆく。

「ううーむ、どんなタイプのお店にしましょうか……」
 慧子は店々を見回し悩み中。
 紅茶には余り詳しくない、けれどカフェのアルバイト店員としては、本格的な味というのも多少経験しておきたかったから。
 逡巡した結果、気軽に入れるけれど、格調高さも備えた綺麗なカフェへ。本格的なアフタヌーンティーを注文した。
「最初はサンドイッチですね」
 マナーを確認しながら、実食。キュウリの挟まれたそれを味わうと、次にスコーンの軽い食感と、クリームとフルーツの盛り付けが可愛らしい一口サイズのケーキを堪能して。
「ん、美味しい……」
 学びながらも、美味を楽しめるのは嬉しくもあって、暫し食に集中。紅茶も新芽の多い等級らしい、華やいだ香りが快かった。
 食事を終えれば、店員に聞きつつお土産を選定。
 軟水に合わせたイングリッシュブレックファストと、フルーツにスイートスパイスを加えたフレーバーティーを購入して。
「とても良いお買い物が出来ました」
 満足の心持ちで、慧子は帰路へついていった。

 ティニアはカフェにてメニューを眺めている。
「本当に、沢山あるのねー」
 紅茶は手軽に楽しめるもの以外はほとんど経験が無くて、この機に色々試してみようと思っていたけれど。予想以上にその彩りは豊かだ。
「……飲みすぎてお腹いっぱいにならないよう気をつけないとね」
 呟きつつ、店員にも尋ねながら──やはり花に心惹かれるように、フレーバーティーを頂いてみることにした。
 最初に頼んだのはローズティー。立ち昇る香りがまさに花園のようで。
「香りも味も、素敵ね」
 優しい甘味も、薔薇だけが持つ無二のもの。
 それをゆっくり堪能すると、次は金木犀の紅茶。淡い黄金が加わったその色と、秋を先取りしたような香り高さが得も言われぬ味わい。
 更に蓮の芳香が爽やかなロータスティーに、和の味にも合う桜の紅茶も楽しんで。
「お土産を選びたい……けれど絞りきれないわ」
 そのどれもが美味だから、悩ましく。考えた結果、ティニアは気に入った全部を買って帰ることにしたのだった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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