●山梨県某所
「ねぇ、知ってる。このキャンプ場に出る殺人鬼の事……」
それは些細な噂であった。
とある湖畔のキャンプ場に、ズダ袋を被った殺人鬼が現れる、と……。
実際には、何の根拠もない作り話。
湖畔にズダ袋を被った殺人鬼が現れる事もなければ、キャンプ場にやってきたカップルが惨殺される事もなかった。
だが、噂に尾ひれがついていき、まことしやかに噂が広まっていた。
まるでブダ袋を被った殺人鬼が、本当に存在しているかのように……。
しかし、湖の中から現れたのは、ズダ袋を被った殺人鬼では無かった。
「チォエエエエエエエエエエエエエエエンソォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、湖の底から現れたダモクレスが、耳障りな機械音を響かせ、逃げ惑う一般人達を襲って、グラビティチェインを奪うのだった。
●セリカからの依頼
「兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)が危惧していた通り、山梨県某所にある湖畔で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが確認されたのは、山梨県某所にある湖畔。
この場所に捨てられていたチェーンソーが、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、チェーンソーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティチェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、何故か頭部にはズダ袋を被っているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716) |
クライン・ベルブレッド(導く光・e53250) |
氷狩・シアン(躊躇い無き剣・e64816) |
宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832) |
天月・悠姫(導きの月夜・e67360) |
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
●山梨県某所
「……キャンプ場の殺人鬼か。ホラー話には丁度良い季節になったものね。でも、それが本当に起るのなら、放ってはおけないわ」
氷狩・シアン(躊躇い無き剣・e64816)は仲間達と共に山梨県某所にある湖畔のキャンプ場にやってきた。
時間は真夜中、丑三つ時。
このキャンプ場にはズダ袋を被った殺人鬼が現れるという噂が、まことしやかに流れていた。
「キャンプ場にチェーンソーか。怖い話には定番といったところかな。まぁ、それが現実に起こりそうなら、事前に阻止しないとね」
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が、納得した様子で答えを返した。
湖畔の傍にあるテントには、幾つか明かりが灯っていた。
念のため、一般人に警告しておいたため、次々と避難を始めていた。
「まだ噂である内なら良いですが、それを実現させる訳にはいきませんね。実際にそんな事が起こったら、それこそ恐ろしい事になりますし……」
クライン・ベルブレッド(導く光・e53250)が、警戒した様子で辺りを見回した。
辺りは騒がしくなっているものの、それでも背筋にゾッと寒気が走るほど、妙な視線を感じていた。
「みんなビビリねぇ。たかが噂でしょ? あたしなんて強虫だから全っ然怖くないわよ!」
そんな中、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)が、必要以上に強がった。
しかし、両脚はガタブル、目はウルウル。
恐怖のあまり、全身でリズムを刻むほど、身体が震えまくっていた。
それでも、必死になって胸を張り、全く怖がっていない事を仲間達にアピールした。
「……とは言え、チェーンソーは警戒した方が良さそうね。噂じゃ、神をズタズタにするって言われているし……。まぁ、私達もそう簡単に負けるわけにはいかないけど……」
宝条・かなめ(偽りの魔女・e66832)が、警戒心をあらわにした。
「髪をズタズタにする能力ですか、厄介ですね。髪は大事に扱わないといけませんし……」
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)もダモクレスの奇襲に備え、警戒した様子で間合いを取った。
時間が経つにつれて、だんだん嫌な気配が膨らんできた。
「ところで、チェーンソーって、髪をズタズタにするもの、だったっけ?」
天月・悠姫(導きの月夜・e67360)が、不思議そうに首を傾げた。
どちらにしても、ダモクレスが『かみ』を切り刻む事は間違いないため、警戒しておく必要がありそうだ。
「チェエエエエエエエエエエエエエエエエエエンソォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、森の中から姿をあらわした。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、何故か頭部にはズダ袋を被っていた。
「でた――!? やっぱ無理! 見たくないっ。血とかブシャーって出るんでしょ?! よそでやりなさいよ、よそで!! もう調子に乗らないし、パリピもしないから許してぇぇぇ……!」
その途端、レイが限界とばかりに悲鳴を上げ、涙目になって命乞いをし始めた。
「チェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェンソォォォォォォ!」
だが、ダモクレスはまったく気にしていない様子で、チェーンソーアームを振り回し、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
●ダモクレス
「……って、よく見たらダモクレスじゃない。よくも騙してくれたわね。もー許さないんだから!」
そんな中、レイがプンスカと怒った様子で、ダモクレスにスターゲイザーを繰り出した。
「チェェェェェェェェェェェンソォォォォォォォォォォォォ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、チェーンソー型のビームを放ってきた。
そのビームはカマイタチの如く、ケルベロス達の身体を斬り裂き、辺りに血に華を咲かせた。
「な、何よ、その攻撃! 驚いて脚を擦り剥いちゃったじゃない!」
レイが間一髪でビームを避け、涙目になりつつ、ダモクレスに文句を言った。
「チェェェェェェェェェェェェンンンンンンソォォォォ!」
しかし、ダモクレスはまったく気にしておらず、再びビームを放とうとした。
「まずはその素早い動きを、封じてあげないとね!」
すぐさま、悠姫がプラズムキャノンを仕掛け、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作って、ダモクレスを牽制した。
「エクトプラズムの身体よ、仲間を護ってあげてね」
その間にシアンがレイに駆け寄り、ボディヒーリングを発動させ、エクトプラズムで疑似肉体を作って、傷ついた仲間の外傷を塞いだ。
「チェェェェェェェェェェェェンンンンンンソォォォォ!」
それに気づいたダモクレスが耳障りな唸り声を響かせ、ケルベロス達にチェーンソー型のビームを放ってきた。
ダモクレスから放たれたビームは、周囲のモノを斬り裂きながら、まるで意志があるかの如く勢いで、ケルベロス達に迫ってきた。
「しばらく大人しくしてくれませんかね」
次の瞬間、クラインがダモクレスの死角に回り込み、スターゲイザーで牽制した。
「チェ、チェ、チェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
だが、ダモクレスは全く怯んでおらず、再びビームを放とうとした。
「まだ足りなかったようだね」
それと同時にカシスが間合いを詰め、スターゲイザーでビームの発射口を破壊した。
「そんな状態で神速の突きを、見切れるかしら?」
そこに追い打ちをかけるようにして、かなめが雷刃突を発動させ、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「これで、氷漬けにしてあげますよ」
それに合わせて、紅葉が仲間達と連携を取りつつ、ダモクレスを囲み、達人の一撃を繰り出した。
その拍子にダモクレスの一部が凍りつき、バリバリと音を響かせ、大量の破片が飛んだ。
「チェ、チェ、チェ、チェェェェェェェェェェェェンソォォォォォォォォ!」
それでも、ダモクレスはまったく諦めておらず、チェーンソー型のアームを振り回した。
それは『かみ』をも殺す、最強最悪の切れ味を持ったモノ。
「そっちがチェーンソーなら、こっちはドリルです!」
それに対抗するようにして、クラインがスパイラルアームを仕掛け、肘から先を内蔵モーターでドリルのように回転させ、威力を増した一撃をダモクレスに与えた。
「そんなチェーンソー捌きで、この剣に勝てると思っているのですか!?」
紅葉が月光斬を仕掛け、緩やかな弧を描く斬撃で、ダモクレスのアームを斬り落とした。
「チェェェェェェェェェェェェェェンソソソソソソソソソソソ!」
だが、ダモクレスは殺気立っており、別のアームを伸ばして、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
「いくらアームを出したところで無駄だよ。すべて壊すから……!」
それを迎え撃つようにして、カシスが断罪の千剣(ダンザイノセンケン)を発動させ、罪を浄化する為のエナジー状の光の剣を無数に創造し、ダモクレスのアームを次々と斬り落とした。
「……残念だったわね。せっかくのアームが使い物にならなくて……」
シアンが軽く皮肉を言いながら、フローレスフラワーズを発動させ、戦場で美しく舞い踊って、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせた。
「こんな場所より、幻想の世界に行きましょう。そうすれば、その苛立ちも少し安らぐはずよ」
かなめがダモクレスに語り掛けながら、薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑した。
「魔導石化弾よ、これでも食らいなさい!」
それと同時に、悠姫がガジェットガンを仕掛け、ガジェットを『拳銃形態』に変形させ、魔導石化弾を発射した。
「チェ、チェ、チェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
その一撃を喰らったダモクレスが、半ばパニックに陥りつつ、手当たり次第にチェーンソー型のミサイルをぶっ放した。
アスファルトの地面に落下したミサイルは、大爆発を起こしながら、大量の破片を飛ばしてきた。
「みんな、物陰に隠れて!」
それに気づいたシアンが、仲間達に声を掛けた。
「もう一度、湖のなかに沈めてやるわ!」
レイが苛立ちを隠せない様子で、スカルブレイカーを仕掛け、高々と跳び上がって、ルーンアックスを振り下ろした。
それと同時に、ダモクレスのボディが破損し、大量の破片が辺りに散った。
「……炎よ、高く昇りなさい!」
続いて、クラインがグラインドファイアを放ち、ダモクレスの身体を炎に包んだ。
「まだ炎が足りなかったかな?」
カシスも同じようにグラインドファイアを仕掛け、ダモクレスの身体を炎に包んで間合いを取った。
それでも、ダモクレスの戦意は失われておらず、消し炭と化したズダ袋の中から現れた生首が、恨めしそうにケルベロス達を睨みつけていた。
「どうやら、苛立ちは消えなかったようね。でも、これで御終い。もう苛立つ事もないわ」
その隙をつくようにして、かなめが絶空斬を発動させ、空の霊力を帯びた武器で、ダモクレスを斬りつけた。
その拍子に、ダモクレスの装甲が剥がれ、コア部分が丸出しになった。
「ふう、終わりましたね。皆さんご無事でしょうか?」
紅葉がホッとした様子で、仲間達の無事を確認した。
仲間達は多少なのとも怪我をしていたが、命には別条がないようである。
「カップルで来てたら、やられてたかもしれないわね。……彼氏がいなくてよーかった♪ ほんと……よかった……。だから、これは嬉し涙……。悔しくなんて、ないんだから」
レイが瞳に浮かんだ涙を拭い、自分の本心を誤魔化した。
「やれやれ、チェーンソーなんだから、木材でも斬っていれば良かったのよ」
そんな中、シアンが疲れた様子で溜息をつき、ダモクレスだったモノを横目で見た。
ダモクレスだったモノは、完全に機能を停止させ、二度と動く事が無かった。
「これで噂話も、そのうち無くなってくれると良いのだけどね」
そう言って悠姫がダモクレスだったモノに背を向け、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月18日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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