筋肉こそ正義! 力こそジャスティス!

作者:ゆうきつかさ

●神奈川県某所
「いいか、お前等! 筋肉を信じろ! 筋肉こそジャイティス! そして、俺達こそ筋肉だ! 故に、迷うな、躊躇うな! この場所は俺達にとっての聖地! 例え、誰が文句を言おうが気にするな! それでも、文句を言ってくるようなら、力でねじ伏せろ!」
 ビルシャナが信者達をビーチに集め、自らの教義を語っていた。
 信者達は老若男女関係なく、筋骨隆々ッ!
 邪魔する者達を力で捻じ伏せ、ビーチのに王者として君臨していた。

●セリカからの依頼
「ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、神奈川県某所にあるビーチ。
 この場所にビルシャナが信者達を集め、力にモノを言わせて、海水浴に来ていた一般人達を蹴散らしているようである。
 しかも、ビルシャナに屈服した者達も信者と化しており、ビーチがビルシャナの王国と化しているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は洗脳状態に陥っており、暇さえあれば体を鍛えているようだ。
 その上、見せるための筋肉だけでなく、戦うための筋肉も備わっており、ビルシャナを護るようにして、肉の壁が築かれているような状況になっているようだ。
 そのため、あえて説得せずに、倒してしまっても良いかも知れない。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)

■リプレイ

●神奈川県某所
「そろそろ海に行けば『中年太りのおじさま』鑑賞ができるかと思ったら……何よ、あの鳥!? 私の夏の楽しみを奪うとはいい度胸だわ!」
 ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)は仲間達と共に神奈川県某所にあるビーチに訪れ、ムッとした様子でビルシャナ達を睨みつけた。
 ビルシャナ達はビーチのヌシを気取って、一般人達を追い出し、我が物顔でトレーニングを続けていた。
 そのため、辺りに人影はなく、まるで見えない結界でも張られているような感じであった。
「しかも、筋肉こそ正義って……。私の故郷じゃ当たり前だったけど、地球人にはちょっときついルールじゃないかな。世界王者が0.5トンですら厳しいんでしょ? うーん、手加減が難しそうだなー」
 そんな中、山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、複雑な気持ちになった。
 ビルシャナだけであれば、全く問題がないのだが、信者達は洗脳されているだけの一般人。
 最悪の場合は、デコピン一発で、あの世逝き。
 それが分かっていながら、本気を出す訳にもいかないため、赤ん坊を相手にするレベルで手加減をする必要がありそうだ。
「まあ、とにかくビルシャナの主張を覆せばいいんでしょ?」
 すぐさま、ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)がコアブラスターを仕掛け、胸部を変形展開させて出現した発射口から、必殺のエネルギー光線を放った。
「ぐぎゃ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが間の抜けた声をあげ、そのまま海にザブンと落ちた。
「……」
 これには信者達も唖然とした様子で、みんな目を丸くさせて、海に浮かぶビルシャナをガン見した。
「ビ、ビルシャナ様ァ!」
 その途端、角刈りの男性信者が慌てた様子でビルシャナに駆け寄り、必死に人工呼吸をし始めた。
 だが、クチバシが邪魔な上に、口から生ゴミのようなニオイがしたため、途中でリバース。
 最終的には、やっつけ感覚で、心臓マッサージをし始めた。
「ぷはっ!」
 それだけでも、ビルシャナ的には効果があったらしく、大量の水を噴水の如く吐き出し、何とか黄泉の国から生還した。
「いまの見たでしょ? 筋肉も確かに大事だけど、周囲をちゃんと見る頭がないと、あぁやってビームにやられちゃうの! つまり、体を鍛えつつ、頭を使いましょう!! ただ漫然と鍛えるだけなら、ビームにやられちゃうからね!」
 その間にジェミが信者達の前に立ち、筋肉だけでは解決する事の出来ない現実を突きつけた。
「うう……」
 信者達が激しく動揺した様子で、伏し目がちになった。
「みんな、騙されるな! これは、たまたま油断をしていただけだ! 抹消面から受け止めていれば、あんなビーム弾き返しているからなっ! 何故なら筋肉は裏切らない! 筋肉を信じて鍛えれば、ビームすらも弾き返す事が出来るからだ」
 そんな空気を察したビルシャナが、自信満々な様子で言い放った。
 普通の状態であれば、『いや、無理だろ』と信者達もツッコミを入れているところだが、洗脳されている影響で完全にビルシャナの言葉を鵜呑みしているようだった。
「まあ、鍛えるのは嫌いじゃないけど、流石にやりすぎでしょ」
 獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が女性らしく鍛えた腹筋や脚を魅せるセクシーなビキニ姿で、ビルシャナ達の前に現れた。
「そんな事はない! 俺達はお前のような筋肉を求めている!」
 ビルシャナが無駄に真っ直ぐな目で、銀子の筋肉をガン見した。
 まわりにいた信者達も、歓迎ムードであったが、銀子はゲンナリ。
 ビルシャナ達は銀子の筋肉しか見ておらず、それ以外は眼中にないようだった。
「……と言うか、本当に筋肉がジャスティスだと思っているの? だったら、それを証明して欲しいんだけど……」
 ジェミが服を脱ぎ捨て、ビキニ姿になった。
「……いいだろう。俺達のジャスティスが見たいのであれば、みせてやろう!」
 次の瞬間、ビルシャナが全身の筋肉を隆起させ、巨大な拳の形をしたビームを放ってきた。

●海
「ならば、怪力王者たる私がお相手しましょう!」
 ことほが片手で軽々とバーベルを持ち上げ、ビルシャナ達に圧倒的なパワーを見せつけた。
 そのバーベルは普通であれば、両手を使っても持ち上げる事が出来ない程の重さ。
 それを軽々と持ち上げて見せたため、信者達はドン引き。
「う、嘘だ。そんなのハッタリだ!」
 ビルシャナに至っては、何かトリックがあるのでは、と勘ぐっている様子であった。
「ハッタリも何もオウガなら華奢な女子でも、このぐらい片手で余裕なんだけどなー。嘘だと思うんだったら、持ってみて。正義を自称するぐらいだから持てるよね?」
 ことほがビルシャナ達の前に、バーベルをズドンと落ちた。
「……」
 それを目の当たりにした信者達が、唖然。
 ビルシャナに至っては、豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべたまま、表情が凍り付いていた。
「そ、それじゃ、俺が見本を見せてやろう!」
 その動揺を隠すようにして、ビルシャナがバーベルを持ち上げようとした。
 だが、どんなに頑張っても、バーベルはウンともスンとも言わず、無駄に時間ばかりが過ぎていった。
「ビ、ビルシャナ様! 俺達も手伝います!」
 そんな空気を察した信者達が、ビルシャナと一緒にバーベルを持ち上げようとしたものの、どんなに頑張っても持ち上げる事が出来なかった。
「……あれ? これがあなた達の言う正義? 冗談よね?」
 ことほが信じられない様子で、再びバーベルを軽々と持ち上げた。
「そもそも、バーベルを持ち上げる事が正義ではない。正義とは、筋肉だ!」
 その事を誤魔化すようにして、ビルシャナが全身の筋肉を隆起させた。
 それに釣られて、信者達も同じように筋肉を隆起させたものの、『……何か違う』という気持ちがチラつき、消えようとしなかった。
「それじゃ、本当にジャスティスかどうか試させてもらうわね」
 ファレが悪の女幹部風の水着姿でラブフェロモンを発動させ、含みのある笑みを浮かべながら、オーク顔の男性信者に迫っていった。
「俺は……何があっても屈しない!」
 オーク顔の男性信者が頬を赤らめ、雑念を消し去るようにして空を見上げた。
「集中集中、鍛えてるんだからこの位でめげちゃ駄目よ?」
 ファレがオーク顔の男性信者の耳元で囁きながら、敏感な部分をなぞるようにして指を這わせた。
「んくっ!」
 それだけでオーク顔の男性信者が果ててしまい、ヘナヘナと崩れ落ちるようにして座り込んだ。
「コ、コイツは修行が足りないだけだ。お、俺で試してみろ!」
 ビルシャナが酷く興奮した様子で鼻息を荒くさせ、ファレの前に陣取った。
「だったら、見せて。筋肉こそジャスティスなら、この位は耐えられるでしょ?」
 ファレが自分の胸を押し当て、全身の敏感な所を撫で回した。
「んはっ!」
 その途端、ビルシャナが速攻で果て、内股座りで崩れ落ちた。
「……!?」
 これには信者達も、唖然。
 『おい、鳥ィィィィィィィィィィィィ!』と言わんばかりに、驚いている様子であった。
「ただ鍛えるだけじゃ、こんな風に柔よく剛を制されちゃうわよ? ……で、他に訓練して欲しい人は?」
 ファレが勝ち誇った様子で、信者達の前に立った。
「ま、まだだ。俺には、まだ筋肉の壁があるッ!」
 次の瞬間、ビルシャナが指をパチンと鳴らし、信者達をまわりに集めて壁にした。
「殺さないように注意しないと……」
 すぐさま、ジェミが仲間達に声を掛け、信者達を優しく締め落として、次々と意識を奪っていった。
「見た目の割に惜しい筋肉だったね……!」
 それに合わせて、ことほも手加減攻撃を仕掛け、信者達の意識を同じように奪っていった。
「み、みんな、怯むな! ビルシャナ様をお守りしろ!」
 その事に危機感を覚えた褐色の男性信者が、半ばヤケになりながらケルベロス達に襲い掛かってきた。
 その後を追うようにして、他の信者達も殴りかかってきたものの、みんな揃ってノープラン。
 とりあえず、殴ってから考える的なノリで、後先考えずに行動しているようだった。
 そのため、みんな揃って返り討ち。
「……そんな力じゃ全然足りない」
 まるで流れ作業の如く、銀子がジャーマンスープレックスを仕掛け、パイルドライバーで襲い掛かってきた信者達を黙らせた。
「負けてたまるかァァァァァァァァァァァ!」
 ビルシャナが苛立った様子で、続け様にビームを放ってきた。
「ま、負けない!」
 それを迎え撃つようにして、ジェミが腹筋でビルシャナのビームを受け止めた。
 その気持ちに反して、ビームの一撃は予想以上に強力で、危うく意識を失いそうになった。
「鳥頭の筋肉にっ! 負けるもんですかぁ――!!」
 そんな自分を奮い立たせるようにして、ジェミが裂帛の叫びと共に、自分自身に気合を入れた。
「さて、いつまで強がる事が出来るかな」
 ビルシャナが邪悪な笑みを浮かべ、再びビームを放とうとした。
「……と言うか、ビームを飛ばしている時点で、筋肉とは関係ないと思うけど……」
 その間に、ことほがライドキャリバーの藍と連携を取りつつ、ビルシャナにホーミングアローを放った。
 それに合わせて、藍がビルシャナを追い詰めるようにして、ガトリング掃射で攻撃した。
「うぐぐぐ……! 俺の筋肉は、こんな事では……負けん!」
 それでも、ビルシャナは諦めておらず、全身に筋肉を隆起させ、攻撃が効いていないフリをした。
 しかし、実際には砂浜を転がり回るほどの激痛が全身を走っており、ビルシャナの瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。

●ビルシャナ
「さっきまでの威勢はどうしたの?」
 そこに追い打ちをかけるようにして、銀子が遠隔爆破を仕掛け、スイッチを押す事で、見えない爆弾を爆発させ、ビルシャナの体を吹っ飛ばした。
「あはははは……」
 続いて、ファレがインフェルノファクターを発動させ、額に『地獄化した正気の炎』が灯し、狂ったように笑いながら、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。
「畜生、こ、こうなったら……!」
 ビルシャナが身の危険を感じ、踵を返して、脱兎の如く逃げ出した。
「……何処に行くの?」
 その行く手を阻むようにして、銀子がアイスエイジインパクトを仕掛け、生命の『進化可能性』を奪う事でビルシャナを凍結させた。
「ふふふふふ……」
 続いてファレが憎悪を込めたディスインテグレートを仕掛け、触れたもの全てを消滅させる不可視の『虚無球体』を放った。
「俺の声に応えろ、筋肉ッ!」
 それと同時にビルシャナが全身の筋肉を隆起させ、気合と根性で虚無球体を避けようとした。
 だが、虚無球体はビルシャナの左肩ごと腕を消滅させ、飛び散った大量の血を消し去った。
「受けてみなさい、これが私の……自慢の! 拳よっ!」
 次の瞬間、ジェミが-自慢の拳-(ジマンノコブシ)で鍛え上げた背筋を使い、渾身のブローを繰り出した。
「そんな攻撃、俺の筋肉で防いでやる!」
 すぐさま、ビルシャナが全身の筋肉を隆起させ、ジェミの拳を自慢の腹筋で受け止めた。
「ば、馬鹿なっ!」
 しかし、自慢の腹筋は断末魔と共に吹っ飛び、向こう側が丸見えになった。
 そこから大量の血がドクドクと溢れ、ビルシャナがクチバシをパクパクさせながら、崩れ落ちるようにして息絶えた。
「……これで、みんなKOかしらね? つまり……私の筋肉の勝利、ね! やっぱり筋肉こそ正義なのは変わらなかったのかしら! でも、仲間がいてこそなのよね!」
 そう言ってジェミが勝ち誇った様子で、堂々と胸を張った。
「さあ、ここからは収穫の時間よ!」
 そんな中、ファレがノリノリな様子で、自分好みのデブ男をナンパに行った。
 一方、銀子は我に返った信者達に駆け寄り、自慢の筋肉をスポーツなどに活かす事を勧めるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月15日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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